我輩は会見中である。
目の前に、でんと置かれたマイク。隣に座っている、ウワバミさんと三茶さん。広い空間に、ひしめく人々。そしてこちらへと向けられたカメラたち。
会見というか、記者会見である。
まさかこれを開く側に回ろうとは、思っても見なかったのであるな。
きっかけは先日の、我輩の不用意な一言だった。ここでもうぴんと来た方も多いだろう。そう、あれだ。「お父さん」発言である。
あのあとは、つい見た目があまりにも似ていたので言ってしまっただけ、と説明して、その場は収まったのだが。場所が悪かった。そして間も悪かった。
具体的には、朝の、車も人も通っている公道で。ヴィランを捕まえたあとであった。
つまり、ひとことで言うと。ネットでつぶやかれてしまったのである。
その結果、玉川三茶さんは、子供を捨てた疑いが。ウワバミさんは隠し子疑惑が持ち上がってしまったのだ。
三茶さんは警官である。子供を捨てたという疑惑をもたれてしまうと、社会的にまずい。いや、警官でなくても致命的だが。
ウワバミさんはヒーローではあるが。そういえば未成年の我輩を、お持ち帰りして同居しているという事案をかかえている。隠し子ということにしたら事案は回避できるが、普通にスキャンダルである。
そして我輩は、このお気楽生活が、ひょっとしたらば終わってしまう。
我々のそれぞれの事情もあり、世間様に向けて釈明しようということになった。そういうわけでの、記者会見である。
こんなつもりはなかったのである。悪気は無かったのだ。今回、良かれとすら思っていないあたり、我ながら今までよりもタチが悪い。
反省した我輩は、自分も記者会見に出ると主張して、今この場にいるのである。
とはいえだ。正直に話した場合、ウワバミさんが事案であるので。そこを何とかごまかさねばならない。
事前の打ち合わせで、我輩は経済的な都合で高校に通えていない、孤児出身のヒーロー志望の少年。という設定が決まった。ウワバミさんは素質を見込んで我輩を拾い、保護者として現在同居している。という設定。
我輩がヒーロー志望であると世間に認知されてしまう以外は、何も問題は無い。
認知された以上は、いずれヒーロー資格を取りにいかねばならない。というか、ウワバミさんがそういう方向で我輩を育てようとするだろうから、そうなるだろうが。まあ、あって困るものでもないだろう。
表向きはヒーロー。実はヴィラン。探せばどこかにいそうな気がする。というか先生が飼っていそうだ。
ともあれ、そういう方向で記者会見を乗り切ろうと思う。
違うと知っているのに、同僚たちにイジられるネタになって困っている三茶さん。女性ヒーローの先輩(独身)から、あんたいつの間にと電話が来てしまったウワバミさん。
さあ、行きましょうか。