我輩は臆病である。つらつらと考えてみたが、やはりステインさんは危険人物過ぎるという、まっとうな結論にたどり着いてしまったのだ。
自分は正義だから、殺しても良いのです。
そんなステインさんに近付くのは、まったくもって恐ろしい。怖い。対抗手段もありはせぬ。
そこで、一方的に言いたいことだけを吹き込んだ伝言を用意。スピーカーごしに聞かせて、彼との専用に用意したメールアドレスを教えることにした。
声は吹き込んだあとに、音楽編集ソフトによる変更で、別人に仕上げた。そちら系の個性が無いので、やむをえぬ。
吹き込む内容は、まずは特殊刑事の件とアシスタントの件の仕掛け人であると、政治力を売り込んだ。
かつてステインさんは、街頭で通行人たちに向かって、正しき社会とは。と熱弁をふるい、世の中を変えようとしていた黒歴史がある。
残念ながら当然の結果、何も変わりはしなかった。それどころか、まともに聞いてくれる人すらいなかったという悲しい結末を迎え、彼はこじらせてしまったのである。
そんな彼に、今ならこちらでやりたいことを代行する。その力がここにある。そう告げたのだ。
その夜。メールの着信音がした。第一段階は、乗り越えた。
「お前を 殺す」
自爆が得意なテロリストのように、いきなりそれだけ書いてあったならば、どうしたものであろうか。
おそるおそる、メールを開いてみたところ。
拝啓、名も知らぬお方へ。あなたからの突然の申し出に、戸惑いながらもお返事いたします。
なんであろうか。妙に丁寧なのだが。文章だとキャラが違う人だったりするのであろうか。なにこれ怖い。
ともあれ。その内容をかいつまんで説明すると。現行のヒーロー制度の廃止を訴えているらしい。
違うだろう。ヒーローとはもっと尊いもので、カッコいいもので、金なんて知ったことではなくて、名誉は自然と与えられるもので、欲しがるものではなくて。
こんな仕組みの中では、ヒーローは腐ってしまう。真のヒーローは生まれてこない! だから廃止しよう!
そう、言いたいらしい。意訳すると、であるが。
なるほど、盗人にも三分の理。狂人にも理屈はあるらしい。
ただ、素直にそのまま廃止してしまうと、治安の崩壊待ったなしなのであるが。それをそのまま言ったところで、聞きはすまい。
で、あるならば。こちらで代案と妥協案を用意して、説得せねば。さもなくば、なにやらよくわからない理屈をつけて、こちらを敵と見なす、かもしれぬ。いや、正直そこまで反応は読めぬ。
うむ。まずは名称でも変えるとしようか。プロヒーローから、職業ヒーローへと、呼び方を変えるのだ。
ヒーローという名は、もはや変えられぬ。しかし、職業としてそれをやっているということにすれば、どうだ? それは真のヒーローではない。そうは、ならぬであろうか。
ステインさんに比べれば、ぬるい。迂遠であり、手ぬるい。だが、それが政治家の戦い方なのだ。
別に我輩は政治家ではないが。
まあネタはいただいた事であるし。彼に対する用事はすんだ。
あとは、まあ。一足早くヴィラン連合に勧誘でもしておくのである。
完全に所属してくれることは、おそらくない。お互いに、コネの一つとして、抑えておく。その程度がせいぜい。それが良い。それで良い。
ステインさんが危険人物であるのは、間違いないのだから。
●「お前を 殺す」
ガンダムWより。主人公の一人、ヒイロ・ユイが第一話でガンダムで海岸に着陸、ヒロインに偶然出会ったボーイミーツガールの瞬間に放ったセリフである。ヒドい。何がヒドいって、ヒロインはこれで彼に惚れてしまうのだ。それでいいのか、リリーナ。
ヒイロは「任務 了解」など、感情をあまりださない兵士キャラなのだが、一度機体ごと自爆して生き残った後には、同じように自爆を選べるか自信が無いと語る同僚に「一つだけ言っておく。死ぬほど、痛いぞ」とジョークを飛ばすなど、自分というものを見せはじめる。
なんだかんだいわれるけど、けっこうW好きです。翼のあるガンダムとか、OPとかね。ただ、ごひはよくわかんない…