我輩は○○である   作:far

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今回で第三部完結です。とくに勝ってはいませんが。

 1~ 3話 第一部 転生。捨てられて拾われて。個性がわかった。
   4話  間話
 5~19話 第二部 我輩と先生とボスと、時々黒い人
20~46話 第三部 芸能界編と、ヴィラン活動編


我輩は啓発されたのである。

 我輩は啓発されたのである。目が開いたかのような気持ちとは、このことか。

 いや、まさか。動体感知(布)の個性が、先生の見えぬ目の代わりになろうとは、思いもしなかったのである。

 

 てっきり、パンチラレーダーだとばかり思ってしまい、他の発想は全く無かった。そこで考えが止まっておった。

 いやはや。我輩たちの個性は、手に入れた個性の持つ力はわかる。が、その使い道までは教えてくれない。

 たいがいのことに言えることであるが。使い方しだいで、できることは増えるのだな。

 

 先生は、かつてのオールマイトとの戦いで、顔の鼻から上をつぶされてしまっている。

 そこには傷跡だけが残っている。つまり目も耳も鼻もありはせず、見えないし、ニオイもわからず、おそらく音もあまり聞こえていない。それを個性で、何とか補っているのだ。

 対戦相手から考えて、たぶん顔面に強烈なパンチをくらったのではあるまいか。

 そして先生が現在、表向きは死亡したことになっているということは。

 

 それだけの一撃を受けて、おそらくは高所から。それも河や海などの水場か、ビルの暗い谷間へ落とされたに違いない。

 

 そして「やったか!?」「ヤツもここから落ちては、ひとたまりもあるまい」「さすがのアイツも死んだだろう」などなどの。フラグ満載の会話が、ヒーローの間で交わされたに決まっておる。

 

 だって、それがお約束というものなのだ。ここは、そういう世界である。だからきっと、そうなのだ。

 

「死亡確認っ!」

 

 というやつであるな。まあ、これを言われた方々とは違って、万全の状態での生存はできなかったが。

 それは先生が悪役であったからか。それとも、ラーメンのドンブリ頭ジジイがいなかったからかは、わからない。

 

 

 

 ところで、少しはなしは変わるが。

 前回の電話のあとで。緊急企画として、お孫さんの特訓を番組でやることにしたのだが。

 

 具体的に何をやったら良いのかは、誰にもわからなかったため。とりあえず育ちの早いモヤシとカイワレを発芽させまくる。水をやる前に、水に個性をこめさせるなどの、スタッフと我輩考案の、謎の特訓をさせるハメに。

 三日目の終了直前に、コッソリ植物巨大化の個性をお孫さんに無事譲渡できた時は、心底ほっとしたものである。

 あまりに合わない個性を入れると、ひどい事になる場合があるらしいので、少し怖かったのだ。今回は直系の孫という遺伝子上のつながりと、植物に影響を与えるという同じ系統の個性を持っていたので、そう心配はなかったのであるがな。

 

 先生なら、問題が起きたらすぐに個性を抜けばよいが、我輩は死んだあと。それも相手の同意「らしきもの」がなければ受け取れぬからなあ。

 

 ともあれ、それで旦那さんの方の個性は片付いた。旦那さんの方は。

 それで前回、さらっと言っておいたが。奥さんの方の個性も、いただいているのだな、これが。

 

 いや。別に厄介なものではないし、危険度も無い。

 もとい。生前には、危険度はあったようだ。本人は、自分の個性をこういうものだと思っていた。

 

 個性 メシマズ(小麦粉) パンや麺などの加工された物ならば問題は無いが、小麦粉のまま料理に使ったならば、絶対においしくない料理ができる。

 

 天ぷらの衣。ハンバーグのつなぎ。焼肉の仕上げに少し振りかける。そんなささいな使い方でも、確実にマズくなった。

 苦く、くさい、ゴムのような歯ごたえという、三重苦になったという。

 小麦粉ではなく、片栗粉や米粉を使うことで回避していたが、主婦にはなかなかやっかいな個性だったのではないだろうか。

 彼女の息子は、巨大化の個性を小麦限定で受け継いだこともあり、母親自身はともかく、その個性をたいそう嫌っていた。ウドンなら大丈夫だが、かかっていた打ち粉が変化していてダメになっていたりと、幼少時から何度か被害にあっていたので。まあ、しかたがない。

 

 だが何よりの悲劇は。この個性、メシマズではないのである。

 

 個性 錬金術(小麦粉) 小麦粉をゴムのようなものに変化させる。

 

 このゴムのようなもの。色や質感をある程度なら操れるようで、形も自由自在。

 ゴムでも小麦でもない、謎の物質に変わっておるのだが、その不思議はどうでも良い。

 個性なんぞは、どれもこれもエネルギー保存の法則とか、質量保存の法則に反したものだらけだ。

 例えば八百万さんの創造の個性は、人が食べたカロリー程度で、物質を生み出すが。E=mc^2 という、アインシュタインが見出した法則によれば、そんなささいなエネルギーでは、1gの物質も生み出せないはずなのだ。

 

 そこらへんの個性の謎は、世界中の科学者から素人やオカルティストまで。気になった様々な人らが考え、調べているのだが、いまだに謎は謎でしかない。

 使えるから使っている。とにかくそういうものだと認識されているというのが、現実だ。

 遺伝子に結びついているのも事実ではあるようだが、それだけではないらしいし。

 

 遺伝子が関係しているならと。シャレで巨大な人造人間の出るアニメで設定されていたS2理論、スーパーソレノイド理論をネットで提唱したところ。

 

「遺伝子の二重螺旋構造を使えば、なんかスゲェエネルギーが取り出せるんだよ!」

「な、なんだってー!?」

 

 学会の一部で妙に真剣に議論されるようになって、笑わせてもらった。

 なんか真剣になりすぎて、大学を追い出されてしまった助教授もいるらしいが。そこまでは知らぬ。

 

「ボクは悪くない」

 

 何を信じるかは、その人の自由であると思うのだ。

 

 

 ところで。オールマイトを信じる、ステインさんのメアドがそこにあるじゃろ?

 

 ボスのヴィラン連合と彼は、ケンカ別れに近いが一応同盟は結べたらしい。ほぼ原作通りの展開だ。

 原作よりも戦力が少ない上に、情熱というか、執念が薄くなっているボスが、よくそこまで持っていけたと感心する。

 

 そこでだ。ちょっとした助力を、こちらから入れようと思うのだ。

 

 

「良かれと思ってぇ!」

 

 

 なにやら幻聴が聞こえた気がするが、気のせいであろう。

 ついでに、我輩自身もステインさんに顔見せしておこう。無論、黒幕とは別人としてだ。

 今回の策には自信がある。決して、我輩が殺されることなどあるまいし、彼は乗ってくるという、確固たる自信が。

 

 オールマイトにインタビューする仕事に、一緒に来る?

 

 オールマイトの熱烈なファンである彼が、この企画に乗ってこないはずがないのだ。

 ステインさんは、名誉などいらぬという覚悟で、自分で顔の肉をはぎとって、ガイコツのような特徴的な顔になってしまったが。

 しかし。質感、色、形。これらを自在にできるゴムのようなもの。これがあるならば、どこぞの怪盗の三代目のような変装マスクが作れるのだ。

 

「な……生マイト!」

 

 そう言って涙を流していた、原作のスピンアウトマンガ(すまっしゅ!)のステインさんは、実にうれしそうであった。

 あれをぜひ、この目で見てみたい。そんな思惑もあったりする。

 

 友好度を上げるという実利を得る。自分の欲望を満たす。両方を目指さなくてはならないのが。仕事にロマンを混ぜねばならぬのが、我輩の生き方のツライところである。

 だが覚悟はできている。

 我輩は薄暗がりを、おっかなびっくりと。あの海賊都市(ロアナプラ)の元サラリーマンのように自分の意思を持って。自由に生きてみせるのである。

 

 

 




●「やったか!?」「ヤツもここから落ちては、ひとたまりもあるまい」「さすがのアイツも死んだだろう」
無数の作品より。物語には、よくある展開というものがあり、定型、テンプレートと化してしまったものもある。キャラが死亡する前に、そのキャラが家族の写真を見ていたり、もうすぐ結婚するんだと言い出したりするアレである。これはその逆。やったか!?→無傷で煙の中から出てくる。 このように、やってないフラグの数々である。

●「死亡確認っ!」
魁!男塾より。王大人(ワン・ターレン)が敗北したキャラに、とりあえず言うセリフ。これを言われて、その後蘇生しなかったキャラは、たぶんいない。最強の生存フラグである。

●スーパーソレノイド理論
新世紀エヴァンゲリオンより。作中に出てくる巨大生物が、何をエネルギーとして活動しているかを、一応は説明できるらしい理論。名前だけは作中でさらっと出た、という程度。ネット上で、一時はヘイトを一身に集めたといっても過言ではない、指揮官葛城ミサトの父親が提唱。S2(エスツー)理論。それによって動くS2機関という無限動力も存在し、アニメだけでなくスパロボにも登場。
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