我輩は○○である   作:far

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原作開始。


遊び、遊んで、遊び疲れるまで。
我輩は聞いたのである。


 我輩は聞いたのである。鐘の音を。物語の開幕を告げる、時の声を。

 

 中学生がヘドロヴィランに人質に取られるも、オールマイトが捕縛。

 

 ネットの記事で、これが目に入るやいなや、それは聞こえてきた。

 始まったな。さあ、時報が知らせたぞ。ここから先は、我輩が何かをしなければ、もう止まらない。

 

 我ながら、絶対何かをしでかす気しかしない。

 

 大丈夫。きっと大丈夫だ。原作補正を信じろ。

 そう思っていたのだが。我輩は忘れていたのである。もう、オールマイトと一緒にやる仕事が入っていたことを。

 そして前回。そこにステインさんを誘ってしまったことを。忘れていたのである。

 

 だって、まだ余裕があると。そう思っていたのだ。うっかり、入学から開始だろうと勘違いをしていたのだ。

 そういえば、入試とか受けてたわ。ネットの記事を見るまで本気で忘れていて、思い出してすごくあせった。

 

 そりゃあ、幻聴の一つも聞こえるというものである。

 

 そしてもう一つ、思い出したことがある。

 今度のオールマイトとのお仕事の場所だが、海浜公園なのだ。そして企画内容が、この間の個性特訓の第三弾。

 

 え、第二弾はなんだったって? 硬くなる個性の、主人公のクラスメイトになるはずの男、切島くんだったぞ。

 原作の姿よりも、はるかに地味な格好だったので、派手に仕上げたところ。なぜか個性の硬度が上がり、企画は成功した。

 なぜ成功したのか、誰にもわからないので再現できないし、応用もきかないが。

 

 そして第三弾だが。第三弾なのだ。第三弾の、個性特訓シリーズなのだ。

 海浜公園で。入試前で。特訓する。さて。何を連想する? 正解は―――

 

「ああっ! いつかの自爆ネコ!」

 

 正解は、ただの原作である。誰が自爆ネコかね、緑谷少年。

 どうやら、我輩たちの個性特訓シリーズの企画を緑谷少年に受けさせることで。受け継がれる個性、ワンフォーオール継承をごまかそうということであるらしい。

 突然、急に個性が生えてきたわけではない。こうして特訓した結果、引き出したのだ。そう言い張りたいというわけだ。

 しかも前例が二件ある。説得力はそれなりだ。

 

 生前、ネットで目にしたのだが。似たような個性で、妙に親密で気にかけられていて、緑谷少年の父の影が薄すぎるので。緑谷少年に、オールマイトの隠し子疑惑や、親戚疑惑が持ち上がっていたことがある。

 「私達って、妙なところで似てるよな!」とオールマイト自身が言っていた事もあったし。

 

 だが、似たような個性の持ち主なので、弟子にした。そういう具合に、初めからある程度表ざたにしておくというのも、一つの手である。少なくとも、隠し子疑惑は打ち払える。

 また生徒にしたのも、オールマイトが来年から雄英で教師になるので、その練習もかねてということにすれば、なぜNo.1ヒーローがわざわざ? という疑問に答えることができる。

 

 放送することで発生するだろう問題と、その解決を、番組の監督さんとオールマイト。そしてなぜか我輩で話し合った結果、そうなった。

 来年からオールマイトが雄英で教師をするという特ダネを、しかるべき時が来たなら一番に流しても良い。その許可が出た監督さんは、うれしそうだ。

 

 そして撮影が始まった。

 冷蔵庫や机、レンジ。古びた家電や粗大ゴミ。それらを相手に格闘し、運ぶ。額どころか、全身に汗を流して。緑谷少年は海浜公園を少しずつ、少しずつきれいにしていった。

 

「最近のヒーローは派手さばかり追い求めるけどね。ヒーローってのは本来奉仕活動! 地味だ何だと言われても! そこはブレちゃあイカンのさ…」

 

 オールマイトの金言が光る。なんか少し離れたところで、感動して泣いてるヘンな格好の木っぽい人(シンリンカムイ)もいるが。今回バイトで雇ってもらった人も、スゴイ勢いで首を上下に振りながら、涙を流している。

 バイトというか、変装したステインさんなのだが。それ以上激しく動かされると、変装マスクが取れてしまいそうだから、無理にでも自重して欲しい。落ち着け。

 

 自分のためではなく、誰かのために。No.1ヒーロー(ワン・フォー・オール)いわく。それがヒーローというものであるらしい。

 そして、誰かを踏みにじろうとも、自分のために。直接言葉にはせずとも、先生(オール・フォー・ワン)に我輩はそう、教わった。

 ついでに目の前に。誰かのため、正しき社会のために。自分の理想のために、誰かを踏みにじるステインさん(ヒーロー殺し)がいる。

 

 我輩はネコ(なんちゃってヴィラン)である。誰かを踏みにじりたくはないが、我が道を行く。誰かのためだけに生きられないが、情を捨てることもできない。

 我輩は、中途半端だ。

 目的を見据え、まっすぐに進もうとする緑谷少年。この物語の主人公。彼を見て、我輩は―――

 

 

 今、ここでテキトーな個性を彼に植え付けたい衝動に、全力であらがっていた。

 

 

 そうなったら絶対に、皆ビックリするだろうけれども。そんな出たての芸人のような、後先考えていない行動に出てはならない。ガマンしろ。耐えるのだ。ガンバレ我輩の理性。

 静まれ。静まるのだ。我輩の右腕よ―――!

 

 

 




●静まるのだ。我輩の右腕よ―――!
厨二病の症状の一つ。邪気眼を持たぬものにはわかるまい。なお、たいがい一年もしないうちに勝手に治る。しかし後遺症は一生モノである。
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