我輩は○○である   作:far

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その場のノリと、ふわっとしたものの提供でお送りいたします。


我輩は穴埋め中である。

 

 我輩は穴埋め中である。もっと言えば、企画の穴埋めであるな。

 緑谷少年の企画が、当初の予定よりも長期間になってしまったため、その間に別の企画を流すことになったのだ。

 ちょうど都合よく、番組のホームページに今までとは毛色の違った相談が来ていたことであるし。個性開発の別分野を開拓してみようと思う。

 

 題して。洗脳の個性でヒーローになる方法。である。

 

 言っておくが。別に我輩の札束ビンタのことではない。その個性を持っていることは、我輩の最重要機密である。

 ヴィランであることも最重要機密であるが、ある意味それより上の機密だ。

 ヴィランであると、何らかの形でバレた場合。今の表の生活が全部ふっとぶ。そして指名手配され、ヒーローと警察に追われる身となるだろう。

 だが洗脳がバレた場合。おそらく、ヴィラン連合の中に、我輩の居場所が無くなる。

 自分の意思を書き換えることができる存在。そんな危険物を隣に置いて笑っていられる人は、普通はいないのだ。

 

 先生は普通に大丈夫そうだが。でも先生はけっして普通ではないし。

 

 ボスと黒い人も、おそらくは大丈夫だが。それは我輩の性格、人となりを知っているからだ。

 何も知らぬ他の方々には、ムリだろう。まだあまり関わっていないマグ姐さんは、正直わからない。

 洗脳の個性を手放せば良いのだろうが、便利すぎて惜しい。

 

 というか。今、気付いたのだが。生きるだけなら、ヴィラン連合より、札束ビンタの方が役に立つのではなかろうか。

 

 

 ……………………

 

 

 この問題は、深く考えてはいけない。我輩は、そう悟った。

 

 

 番組の話に戻ろう。

 

 一応、緑谷少年の企画も、途中経過という形で、少し流してはいる。

 場所が特定されて、ヤジウマや悪質なヤカラが来てはマズい。それゆえ、映画の予告編のようなブツ切りの形で、ではあるが。

 というのも。実はすでに途中で一度、悪質な業者が夜中に粗大ゴミを捨てていったことがあったのだが。

 それにキレてしまったひとりのバイトが立ち上がり、その会社を特定。社会的に葬ったという、イヤな事件があったりしたので。

 これ以上のハプニングがあっても困る。という、大人の事情でもある。

 

 ステインさん。自重。

 

 それで、まあ。使える画が少ないというか。ワンパターンになりがちであるので。別の子も育ててみようという、そんなはなしである。

 その別の子であるところの、洗脳の個性を持つ少年であるが。

 皆さんの予想通り。原作にいた、彼である。

 

 例によって、名前までは覚えていなかったが。

 

 そして彼の名前は、世間には流れない。少年A、もといS少年という仮名で呼ばれ、顔にはモザイク。声もあの高い、聞き取りにくいあの声に変換される。

 というのも、しょっぱなの彼との面接で、彼の将来の方向性が決まったからだ。

 

 極力メディア露出を避ける、アングラヒーロー。

 知名度を上げ、それを利用した副業をこなすウワバミさんの、正反対の道といえる。

 あのひと、CDの手売りや握手会という、どこぞの集団アイドルのようなことも経験があるらしい。

 地道な下積みは大事だ。そういう例として聞かされたのだが。正直、なにかが違うと思う。

 

 S少年の個性は、対策さえされなければ、ほぼ無敵だ。

 同じ洗脳ではあるが。我輩の持つそれとは違って、意識ではなく肉体の方を支配する。命令することで、強制的に何かを実行させる強個性である。

 動くな。力尽きるまで腹筋しろ。自分を縛れ。左手でボクシングをしながら、尻に武器を挟んで、右手で鼻をほじってガンガンいこうぜ! と叫べ。舌を噛んで死ね。その場で脱げ。一番恥ずかしいと思うことを、絶叫しろ。

 ざっと思いつくだけで、これだけのことをさせられる。なんと恐ろしい個性であろうか。社会的にも物理的にも、いともたやすく相手を葬る、えげつない個性だ。

 

 強い。強すぎる、個性である。

 

 こんな個性を持ちながらも、ヒーローを志した。自分のためではなく、個性を使おうと思った。それだけでS少年は、ヒーローの資格がある。

 だが華々しく活躍すればするほど。きっと、彼は世間にうとまれる。賞賛されながらも、遠ざけられる。敬遠される。腫れ物を扱うようにされる。距離をとられる。

 人間など、そんなものである。そんな人ばかりではないが、そんな人が大多数だ。

 

 だから、この路線で行こうぜ。

 

 米国版コウモリ男をパク… もとい、我輩の記憶から再現し、この世界風に再構築した映画を見せて。S少年には、ダークヒーローや、仕置き人路線をお勧めした。

 人知れず、悪を討つ。それなりに人気のあるジャンルで、理解もしやすい。

 その道の先輩もいる。来年に雄英高校で、主人公らの担任になるはずの男。個性を消す個性、抹消ヒーロー イレイザーヘッド。ちなみに命名は、同期だったプレゼント・マイク。

 

 そしてS少年。そのために必要なものが、君には足りない。何かって? 筋肉である。

 ほら、No.1ヒーローだって、オールマイト。全部筋肉って名乗って… え? あれ全能って意味?

 

 ―――いや。あれはきっと筋肉という意味もある。そう我輩は信じる。だから君も信じろ。

 君に足りないものは、筋肉、柔軟性、装備、武術、時間、師匠、それと何より―――筋肉が足りない! 筋肉と二回言った? 大事だからである!

 

 殴る蹴るの暴行ができずに、ヒーローが勤まるか! ってワイプシの虎先輩も言っていたのである。

 まずは肉体改造だ! 海浜公園に行くのである! お前もス… ゴホッゴホッ 謎のバイトの弟子にしてやるのである!

 

 

 

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