我輩は見物するネコである。今回、別に見守ってるわけでもないので、見物というのが妥当であろうと思うのだ。
目の前で、ボスの集めたヴィラン連合の戦闘員たちが、高校に入りたてで、まだほぼ訓練していない学生たちに駆逐されていく。
それを生暖かい目で、モニターごしに見ながらかじるセンベイがうまい。
ペットボトルのお茶を飲みながら思う。熱い茶の方が、良かったな、と。
原作が始まってからというもの、時の流れが早いように感じてならない。
たまにはこうして、ゆったりとせねば。
パリポリと。せんべいの次は、うにせんを口に放り込む。
今日はヴィラン連合のデビューの日。ボスこと死柄木 弔と、脳無のお披露目と。
これは直接は言わぬが、複数の個性を持つ脳無の存在を使って、自分の存在をにおわせる。そんな回りくどいながらもお約束な。オールマイトへの、先生からの復帰のあいさつ。
それに雄英高校という、数々の一流ヒーローを輩出してきた場所を叩いて落とす、対ヒーロー戦略の一環。
あとは、もしかしたらであるが。入り込んでいる内通者の、信用を上げるため。ここでヴィラン相手に積極的に戦ったならば、そうそう疑いはかけられないであろう。
そんないくつもの狙いがある、重大な作戦ではあるが。当然ながら、我輩は不参加である。
表側で、それなり以上の立ち位置を作り上げてしまっているので、そのまま暗躍してた方が良い。そう先生も、ボスも判断してくれたのだ。
荒事では役に立ちそうにもないしな、お前。とは、ボスの言である。
これでもS少年に付き合って、多少のパルクールは身に着けたのであるが。
そうして戦力外通告を受けた、我輩であったが。そう言われると、逆に何かしたくはならないだろうか?
あんな一山いくらの、十把一絡げの連中を連れて行って、我輩はダメというのが。こう、なにか気に食わないというのもある。
しかしバレてはマズいのも確か。そこで、変装である。今回の襲撃先である雄英の施設のひとつ、
宇宙服のような格好に全身を包んだ、スペースヒーロー十三号である。
彼(?)と同じ格好をしていれば、とりあえず問題はあるまい。
もっとも、戦いはしないのだが。こうしてモニタールームに忍び込んで、置いてあった茶菓子を勝手にいただきながら、見物するのがせいぜいである。
この衣装、ガワだけである。傷付いたならば、あっさりと正体がバレてしまうのだ。だからやむをえぬのだ。
何をしに来たのだ、と。そう、問われたならば。まあ。記念に、とでも答えるしかないのであるが。
ぬ。いかん。相澤先生が、脳無相手に個性を消したのに、まったく油断しない。
外見が、まんまゴリラであるからなあ。そりゃあ、個性を封じても腕力を警戒するというものであるな。
ん? ボスが黒い人に何かを―――おお。四方にワープで戦闘員らを送って、そのまま攻撃を。おおう。さらにそれをサバいて反撃まで。やるな、イレイザーヘッド。
しかしボスはそれも予測していたか、次の戦闘員らを送り込ませている。その崩れた体勢では―――あっ。捕まった。
やはり、囲んで棒で殴るというのは、人類の最強戦術であるな。数の暴力は強いのだ。
よし。今だ。
黒い人に、舌打ちをして合図を送る。電波を妨害しているので、携帯その他では連絡がつかないのだ。
舌打ちは、むろん個性である。無差別で、わりと広い範囲に舌打ちの音を一方的に送りつける。一応は、テレパシーに属する個性だ。
大きな音も出せないし、狙った人だけに送ったりという便利な使い方もできぬが。モールス信号なり、暗号を使うなりすれば、使えないではない。
今回のように、単純な合図にも使える。
黒い人には、あらかじめ頼んであったのだ。イレイザーヘッドを無力化したら、周りを闇でつつんで見えなくしてから、我輩をそこへ呼んでくれ、と。
そしてワープゲート。黒いもやを通して移動した我輩の目の前には。目隠しをされて、手足を縛られて。念入りに無力化された相澤先生がいた。
我輩の戦闘力は、そこまで信用がないのであろうか。
まあ、長居は無用である。ふところから取り出した札束で、ひとつの命令をすりこむ。
次に、結婚しようと言われた女性のことを、真剣に考えろ。
これで我輩の仕事は終わりである。一足早く、バーに引き上げさせてもらおう。
何がしたかったのかと言われれば。
そういえば相澤先生に、ずっと結婚しようと言っていた。そんな設定の女性が、ちょっとだけ原作で出ていたな、と思い出したのである。
ミッドナイトに結婚のチャンスを与えたので、その女性にもあげないと。という使命感が。
これで早い者勝ちである。両者には、がんばって欲しい。
自分の私生活を犠牲に、ヒーロー活動をがんばってきた相澤先生も幸せになってもいい。そう、思うのだ。
だからこうして、強引に横車を押しても、我輩はあやまらない。
「良かれと思ってぇ!」
うるせえ、幸せになりやがれ。そんな気分なのである。