我輩は交流中である。一発変換で「こうりゅうちゅう」が拘留中と出てしまい。捕まったのかよ! とツッコミを入れたのは、つい先ほどだ。
我輩は無実である。だって、バレなければ犯罪ではないのだからして。
今は反省会と称して、いつものバーでヴィラン連合の幹部連で、鑑賞会を開いておる。
先日の雄英殴りこみの時。カメレオンの異形系の人が戦闘員にいたので、せっかくなので撮影係りになってもらったのだ。正直、戦っても強くなさそうであったし。
彼はなかなか、良い仕事をしてくれた。オールマイト 対 脳無の一戦など、金が取れるほどの出来である。
まあ内容が、謎の改造ゴリラ vs No.1ヒーローなので。これは、オールマイトの人気上げにしかつながらぬ。よって残念ながら、世間には流さないのであるが。
ただ娯楽にはちょうど良いものなのも確かなので。こうして、仲間うちでの飲み会の口実になってもらったというわけだ。
我輩が知らないメンツも、増えている。
ゲラゲラと下品に、豪快に、ビールジョッキを片手に笑いながら映像を見ているのは、マスキュラー。個性 筋肉増強 の持ち主の、ウォーターホースを殺すはずだった男。
暴れたい。人を傷つけたい。何かを壊したい。そんな欲求を抱えた、社会不適合者で異常者だ。
その隣で、同じくジョッキを片手に、少し真剣に見ているのはマグ姐さんことマグネ。デカいオネエで、最近知ったが、ここに来る前は強盗殺人で生活をしていたのだそうだ。
カウンターでボスから二つ離れた席には、全身を隙間なく黒い布で覆っているトゥワイスがいる。彼の個性は二倍。何でも複製を作ってしまう個性で、人間ですら個性ごと複製する強個性だ。
「トレース・オン!」
アレの上位版であるな。ただ、解析の魔術はないので、そこは直接多くの情報を調べねばならぬし、作ったものは爆発しないが。
二重人格を包めば一つ、という暗示で押さえ込み。正反対のことを口にしながら、行動は統一されている。つまりは、彼も異常者である。ヴィラン連合に、まともな人はいません。
今も観戦しながら「なんだよ思ったより弱いな!」「まいった強いぜ!」と独特の口調でヤジを飛ばしている。
うむ。危険人物しかいないな。
まとめて葬ったほうが、世のため人のためなのではなかろうか。そう思えてならぬ。
それぞれが、それぞれの理由で、今の世の中とは相容れぬ。溶け込めぬ。とうてい、ただびとらの中に紛れては生きてゆけぬ。そんな連中である。
いまこうして同じ場所で笑っていられるのが、実に不思議である。仲間意識というものが、彼らにあったのか。それともここで芽生えたか。
まあ、仲は悪くはない様子だ。
しかし見事なまでに男ばかりである。なんというか、ムサい。気楽で良いのだが、普段ウワバミさんと同居しているので、少々落差がキツい。
おや? そういえばトガちゃんは?
ん~………… あっ、そういえば。彼女の加入は、ステインさんの事件の後であったか。あの事件で、ステインさんの模倣犯がぞろぞろ出てきたのであったな。思い出した。
いや、待て。ステインさん、事件起こさないかも。
この動画を見せに行くついでに、ちょっと探りを入れてみようか。でも、起こさないって断言されたらどうしよう。
……まあ、いいか。
もうしばらく先の、雄英襲撃の第二段。林間学校で、爆豪をさらって、勧誘。そしてそれを助けに動くヒーローたち。
そしてそれが世間に流されて、出来上がった舞台の上で。先生と、オールマイトの対決が始まる。
我輩にとっては、あの二人の対決と決着。そこまでの流れが大事なのであって、正直ヒーローの綱紀粛正はどうでも良いのだ。
何なら、政治家の友人たちに動いてもらって、監査機構を強化するなり何なりしても良い。
あの二人の対決で先生が勝ったなら。それはそれで良い。我輩はヴィランであると、割り切ってしまおう。
有力なヒーローを人知れず弱体化させ、引退させてしまおう。主人公に適当な個性を追加で入れて、弱らせよう。
表にいながら、闇の中に片足を突っ込んで生きよう。どっぷりは漬からぬ。命くらいは、何とかしよう。
だが、原作どおりに。先生が負けてしまったなら。
自由に生きても良い。先生は、そう教えてくれたが。さて。その自由で、何をしたら良いのであろうか。
困ったことに、我輩にも仲間意識はあるのだ。
さて本当に。どうしたら良いのであろうかな―――
はい、そこ。せっかく、ひとがウィスキーのハイボール片手にひたってるんだから、邪魔はせんでくれ。
わかったから。オールマイト、お前を殺しに来た(キリッ)とか、やって楽しかったのはわかったであるから。言ってやったぜ、じゃねーのである。
意外と負けロールプレイも楽しいもんだなって、ヤダ。このボス、余裕ありすぎ…?
ちょっと黒い人? これは飲ませすぎではなかろうかね、黒い人?
ああ、もう。ほんと、ほっとけないであるなあ、このボスは!
●「トレース・オン!」
Fate/StayNightなどより。赤い弓兵がいれば、この言葉はそこにある。これは彼専用の魔術の呪文である。自己暗示用であるので、実は呪文は何でも良いらしい。
エミヤシロウは、この呪文で、剣や武器に属するものという条件付ではあるが、だいたいの物は魔力と痛みを代償にコピー品を造り上げてしまう。