今回、セリフがありますが、モブの人です。
我輩はザンゲするものである。いたいけな少年に、結果として酷なことをしたやもしれぬと、神に許しを請う。
個性を持つものが八割と言われる、この超人世界。若い世代ほど個性持ちが多いと考えれば、今の十代は九割を越えるのではなかろうか。
各人各様、さまざまな個性を持つ人々の中には、信仰を捨てた人や、逆に自ら教祖になって新興宗教を立ち上げた人。心の平穏を求めて、既存の宗教団体に頼る人などが現れた。
科学がどんなに進もうとも、魔法や幽霊などのオカルトが消えないように。個性という超常が世にあふれても、宗教は消えなかった。
出張先でふと見つけた、こじんまりとした町の教会。その神父さんに、我輩は罪を告白し、許してもらい、心を軽くしたいと願い出た。
なお、そこで教えてもらったのであるが。ザンゲというやつは、本来は許しの儀式。平たく言うと、信者限定のサービスなのだそうな。
だが遠くから来たので特別に、と神父さんが言ってくれたので、そのご好意に甘えることにした。
「神の慈しみに信頼して、あなたの罪を告白して下さい」
決して悪意はなかったのです。ふざけてもいなかった。ただ、彼のためになればと、そう思ったのです。経験を、つませてあげたかった。
この期に及んで、出てきたのはまずそんな言い訳であり、予防線であった。罪を告白しに来たというのに、自己弁護から入ってしまった。
そんな我輩を、神父さんは叱り付けることなく。ただ、促してくれた。我輩は意を決し、告げる。
風俗に連れて行きました。
「ハ?」
お前は何を言っているんだ。たった一言で、そう伝わってくるような「ハ?」であった。
そして伝わったからには、説明せねばなるまい。
自分に自信がなく、挙動不審気味で、深く考え込むクセがあり。その際にはぶつぶつと小声で考えを口にする。
意思を強く持つことが出来るが、それを表に出すのはうまくない。そして相手を下の名前で呼ぶのを照れてしまうくらいに、女性慣れしていない。
そんな童貞丸出しの知人がおりまして。で、風俗に連れて行きました。
「はぁ」
よくわからない。そう伝わってくるような(中略)伝わったからには、説明せねばなるまい。
彼は、将来ヒーローになる男です。それも大物になるかもしれない。その後押しとして、すこし自信をつけてあげよう。そう考えて風俗に連れて行きました。
「で?」
それからどうなった? そう伝わって(中略)説明せねばなるまい。
自信はついたようです。ただ、浮かれているというか。陽気さが空回りしているというか。こう、少し。人として、ダメになったというか。
思ったのと違う、というか。見ていて、痛々しくて。悪いことをしてしまったなと。
「……」
無言であったが、それで終わりか? そう伝わって(以下略)
以上です。
「それでは神の許しを求め、心から。心の底から、悔い改めるため、祈りを唱えて下さい」
妙に力の入ったセリフであった。もちろん、ここで否はない。ふつうに祈る。
「良かれと思ってぇ!」
いや、それ祈りじゃないから。
そして父と子と聖霊の御名によって、という決めセリフで許しをもらい、教会を出た。
ありがとう、神父さん。少し、楽になったのである。
しかし我輩が去ったあとに、塩を撒いていたのは何故であるか? それは異教の儀式ゆえに、やめたほうが良いと思うのである。