我輩は○○である   作:far

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なかなか体育祭にたどり着けない。


我輩はビビっているのである。

 我輩はビビっているのである。というのも、マッチョだったのだ。

 細長い体型であった黒い人も。それなりに筋肉質ではあったが、太ましくはなかったトゥワイスも。不健康そのものなウラナリであったボスまでも。

 

 みんな、マッチョであった。

 

「わけがわからないよ」

 

 いやいやいやいや。待って。本当に待って欲しいのである。なにがあったの? ねえ、何があったのであるか?

 黒い人など、つい先日に会ったばかりであるよね?

 ふと飲みたくなって、未成年でも酒を出してくれる、このアジトに顔を出しただけであるのに。これはいかなる仕儀であるか。

 

「天狗じゃ。天狗の仕業じゃ!」

 

 昔、剣術の道場やってたら、ふらっと子供がやって来て。その子にケイコつけようとしたら、逆に叩きのめされた道場主が放った、起死回生の一言である。

 ふつうに子供に負けました。では、道場終了のお知らせ待ったなしであるが、妖怪の仕業にしてしまえば、面目は立つ。

 コイツは蟲の仕業ですな。や、ゴルゴムの仕業だ。でも可。

 そしてこの世界で、それらに相当するシロモノといえば、だ。

 

 で、誰の個性であるか?

 

 混乱が極まって、一周回って冷静になった我輩は、そうたずねた。

 と、同時に。イヤな直感が頭を駆け抜ける。

 

 待て。マッチョだと? マッチョといえば、この間―――

 いかん、すでに聞いてしまった。答えを聞きたくない。まさか、この事態を引き起こしたのは―――

 

 今までに見たこともないような、さわやかな笑みのボスが指差す先には、同じく無駄にさわやかな笑みを浮かべて、筋肉を強調するポーズを決めた、三人のマッチョがいた。

 

 何も見なかったことにして、帰ってしまおうか? 猛烈にそうしたくてたまらぬが。

 もしこのまま、戻らなかったらイヤ過ぎる。ヴィラン連合、総マッチョ化。そんな光景はイヤだ。拒否する。断固阻止である。

 

 もしかして、とうとうやってきたのであろうか。我輩が、人を殺す覚悟を決めるときが。

 

 我輩が悲壮な覚悟を決めたその時。ボスがもうガマンできぬといった様子で、笑い始めた。

 すると、みるみるうちに筋肉はしぼみ、背すら縮んで。いつもどおりの、不健康なボスに戻ってしまったではないか。

 驚く我輩の前で、黒い人も戻っていく。さすがに服までは戻らず、いつものキッチリした格好ではなく、だぼっとしたヤボったい服だが。それでもいつもの黒い人である。

 トゥワイスは、まあ、どうでもいいが。「「ひでぇな!?」」あ、意見が一致してる。

 

 さて、マッチョどもは―――あ、やっぱり変化はないであるか。変わらず、いや、ポーズは変化しているが、マッチョたちは相変わらずマッチョのままである。

 自分でも何を言っているのか、よくわからなくなってきたので、ここで一息入れようと思う。黒い人、ビールください。あれば黒いのを。

 

 酒のサカナに、マッチョらの個性について話してもらった。

 

 白人マッチョが個性 維持。若さを保ったり、他人の個性を持続させたりするそうだ。え、なにそれ強い。

 握力マッチョがまさかの無個性。握力は素の筋力で、生まれつき強かったのだそうな。

 糸目マッチョ。こいつが犯人で、個性 十四人の悪魔。これが原因である。自分を含めて、十四人までをマッチョにする恐ろしい個性である。

 

 道理で、死刑囚だというのに、あんなにマッチョだったわけだ。刑務所で、あんな筋肉を身につけられるほどの食べ物、カロリーを摂取させてもらえるわけがないのである。

 必要な栄養、カロリーがなければ、人はやせる。筋肉も落ちる。当たり前の話である。

 だというのに、出会う死刑囚がみんなマッチョばかりであったので、あの刑務所では何かヤバい人体実験でもしているのではなかろうかと、疑っていたのだ。

 

 謎は全て解けた。じっちゃんの名に懸けて。もっとも我輩、今生での祖父の名も顔も、とんとわからぬが。

 

 目的であった一杯飲むのは、達成したので。さ、逃げるとしよう。

 意外とマッチョ状態が気に入ってしまったらしいボスが、我輩も仲間にしようとしている。それが何となくわかる。

 黒い人も、目で何かを訴えてきている。間違いない。助けて、という雰囲気も見て取れるが。ごめん、ムリ。

 我輩はおもむろに個性で自分の存在感を消し、音を立てずに、扉を目指して移動を開始した。

 くっそ、移動系の個性が、本当に欲しいであるなあ!

 

 

 




●コイツは蟲の仕業ですな。
蟲師より。普通の人には見えない、不可思議な蟲という生き物と、それに関わる蟲師の物語。江戸と明治の間の架空の時代をイメージした、和風の世界観の中でおとぎ話にも似た、現実とは少し離れたお話がいい味出してます。主人公ギンコが、蟲に関わる事件を見つけた時の、お決まりのセリフ。

●ゴルゴムの仕業だ
 仮面ライダーBLACKより。ゴルゴムは敵の秘密結社の名前。
 主人公のてつを、もとい南光太郎は30分の番組内で、そのゴルゴムの起こす事件の謎を解いて犯人である怪人を見つけて戦って倒さねばならない。のだが普通にやっていては時間が足らない。水戸黄門すら1時間の尺がいるのだ。
 そこで世紀王としての直感で強引に結論するのだ。タンスの中が海に?ゴルゴムの仕業だ!マグロが各地で盗難?もしやゴルゴムの→調査→やはりゴルゴム!
とりあえずちょっとでも異変があれば新手のスタンド使いか!とかおのれルパンレンジャー!みたいなノリで、主人公は走り出す。番組の尺という、大人の事情のために。
何でもゴルゴムの仕業にするのは、BLACK放送当時からの古典的なネタ。当時はネットがなかったので、サブカル雑誌ファンロード上でネタが成立していた。

 昭和系ライダーではあるが、他の昭和ライダーほど特訓はしない。ピンチになったらイベント(例:宇宙に捨てられる)か戦闘の中で覚醒してパワーアップする方向で強くなる。新技を身につける特訓とか、先輩ライダーたちによる可愛がり(ライダーキック全員分受けて耐えろ)とか、再改造……はある意味やったな。格闘術とか技とかの方向ではなく、ひたすらにパワー。レベルを上げて、リボルケインか手足で殴れ。
 対処に困った敵組織が、過去に戻って覚醒が浅いうちに、と思ったら未来から複数やってきて集団でボコられた。彼と主人公補正無しに戦ってはいけない。ディケイドはよく勝てたな。
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