我輩は○○である   作:far

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書き始めるまではネタがないのは一緒なのに、初期と比べて、書き始めたら文章量が増えてきた。これが慣れか。
継続は力なり、か。日刊についてきて、感想をいただけているのがとてもありがたいです。しおりをはさんで、少しづつ読んでいる方もありがとうございます。


我輩は呼び出されたのである。

 我輩は呼び出されたのである。

 いつもの先生からのもの。ではない。

 ボスからの連合の飲み会や、ネトゲのオフ会の呼び出し。でもない。

 そういう場合は、黒い人から前もって連絡があったあとに、彼が個性で迎えに来てくれる。

 ヒーロー関連のアレコレや、芸能人としての仕事関係、でもなく。

 

 現在入院中の、ステインさんからである。

 

 ヤバイ。

 

 あなたの主張をネットを通じて、今の世に広く問うために。などと調子の良いことを吹き込んで、勝手に撮影する許可だけをもらった。

 そして実際にやってみた結果が、先日のアレである。

 Pからの指示で。という予防線は張ったが、現場監督のネコとして顔を出してしまった。

 ニセマイトには、本気で怒っていたであるからなあ。ひょっとすると。我輩、粛清待ったなしであるやもしれぬ。

 

 いや、粛清はないか。

 粛清であるなら、体が動くようになるまで待って、黙ってブスリとやる。そのほうがあの人らしいと思うであるし。

 

 しかしながら。無視するのはやはり、はなはだマズい。それはそれで、恐ろしい。

 

 仕方が無い。ここはひとつ、覚悟を決めて、病院に出向くとしよう。

 ところで。お見舞いの品は、何にしたら良いのだろうか?

 

 メロンはどうか? いや、甘いものが好きかどうかわからぬ。せんべいは? 歯やアゴが無事かどうか。

 いや、待てよ。こんなこともあろうかと。対ステインさん用の、とっておきがあった。今こそアレの出番である。ここで使わずいつ使う。

 

 さあ、輝け。オールマイトのサイン色紙よ。

 

 緑谷少年が、海浜公園で特訓していた時分。ステインさんは、恐れ多いからとサインをねだるのを遠慮していたが。あれは明らかに欲しがっていたであるからなあ。

 これを盾にすれば、死にはすまい。

 それに落ち着いて考えてみれば。ステインさんは、カタギには直接迷惑をかけないような流儀のはず。病院で荒事をする気はない、と思う。たぶん。おそらく。そこそこ自信を持って、身の安全を賭けられる。

 

 そうして足を運んだ病院の一室で。我輩はひとつ、ステインさんから頼みごとを受けることになる。

 

 

 その結果として、危険人物になってしまった切島くんが、こちらになります。

 

 

 違うのだ。我輩は最善を尽くしただけなのだ。

 

「なぜベストを尽くしてしまったのか」

 

 基本を教えただけである。我輩は悪くない。悪いのは、個々の個性はそれぞれで伸ばせ、と言わんばかりに、ろくに教えていない雄英が悪い。

 緑谷少年に、手が壊れるなら、衝撃を受け止める篭手や手袋をつけようね。くらい言ってやれというハナシである。

 轟くんも、かたくなに炎の個性を使おうとせず、氷ばかりを使っておるが。そのあたりを、話し合ってすらいなさそうであるし。

 なにも一から十まで教えろとは言わぬ。それをやると、指示待ち人間や、教科書どおりのことしかできぬ者を量産してしまう。そういう人間はヒーローには向かぬ。

 だが、一年生なのだ。これから鍛えていく方向性を話し合ったり、助言したりは、あってしかるべきなのではないか。そう言っているのだ。

 

 環境と試練は用意するから、それを乗り越えて来い。というだけならば、教師は要らぬのだ。

 

 で、切島くんであるが。体育祭を前にして、自分をもう少し鍛えよう。そう思ったらしい。

 それで頼ったのが、かつてのバイト師匠。個性特訓の企画で、二人の弟子を育て上げた男。ステインさんである。

 そういえば第二弾は切島くんであったな。なにやら、すでに懐かしさすら覚える。第三弾の緑谷少年が長引いたであるからなあ。

 

 あれ? ステインさんが関わったのは緑谷少年とS少年の二人だけで、切島くんは我輩とスタッフが面倒を見たのであるが。

 えっ。なんで我輩たちに頼らないで、ステインさんのほうに相談が―――あっ、そっちのが頼りになりそうだったからですか、そうですか。

 だが残念であったな。彼は今、入院中である。よって、ここはあきらめて、また我輩の世話になるが良い。

 こう見えて、我輩も仮免とはいえ、職業ヒーロー。師匠と呼んでくれてもいいんじゃよ?

 

 話し合いの結果。コーチと呼ばれることになった。うむ。まずまずの満足である。

 

 そしてコーチとして、二つのことを教えた。何であれ、力を扱う基本である。

 出来うる限り高めること。そのあと、それを一点に集中すること。この二つである。

 

 まあ、わかりやすく言うと。休載の多い人気漫画の、硬である。

 

 武術などなら、踏み込みや体重移動、遠心力などで威力を高め。それを身体操作でうまく誘導して、相手に当たる時に一点に集中。と、いったところか。

 個性にもよるが、切島くんの硬くなる個性ならば、これは可能である。現在可能なだけ硬くなり、それを指先に集中すれば、相手の防御などたやすく貫くであろう。

 相手の体も貫通してしまったら、さすがにマズイが。まあ、期間も短いことであるし。そこまでヤバいことにはならぬ、はずである。

 

 そう、思っておったのだが。

 

 一点だけの硬化なら、いつでもできる。そう気付いてしまった切島くんが、登校中も授業中も、ご飯の時も、放課後もずっと。寝ているとき以外のほとんどを修行に費やした結果。

 手刀で、相手のはらわたを貫きかねない、立派な危険人物に。

 切れ味を付けるように、硬化すると皮膚の上に出てくるナニかを調整すれば、木刀くらいはスパッといけるぞ。

 やったね、切島くん。これでちゃんと切島くんだ。

 

 どうしてこうなった。

 

 ああ、うん。わかったのである。雄英の教師らが教えていないのは、教えると危険すぎるまで育つからか。

 そうなる前に。心構えやら法律やら。色々教えておかねばならないことがあるからであったのか。

 うん。一年生だもんね。まずはそっち方面から教えていくよね。

 そっかあ。やはり世の中って、よくできているのであるなあ。いやはや。勉強になったのである。

 そういえば、原作で十三号先生も言っていたなあ。容易に人を殺せる力を持っていると忘れないでくれと。

 さすがは雄英教師。頼りになる。

 

 では、その頼りになる雄英教師に、切島くんの今後のことは、任せるとしよう。

 あとは、よろしく頼むのである。

 

 




●「なぜベストを尽くしてしまったのか」
 なぜベストを尽くさないのか。という上田教授の有名な本のタイトルの反意語。世の中には、なぜここまで、どうしてそんなところに、という場所で全力を尽くしてしまった例があるのだ。

●休載の多い人気漫画
 現在は連載が続いているらしい。ゴンさんは復帰できるのだろうか。冨樫先生のHUNTER×HUNTERのことである。
 休載明けからは、パワーを上げるのではなく、複雑な思考を要求される方向でインフレを起こすという実験をしている気がする。
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