我輩は体育祭の見物客である。隣には変装したステインさんもいる。
そして同じく変装した、ボスとトゥワイスとマスキュラーとマグ姐さんとトガちゃんと荼毘くんもいる。
黒い人を除けば、ヴィラン連合幹部連の勢ぞろいである。
全員、思い思いの飲み物と、なぜかおそろいのポップコーンを手に観戦中だ。
どうしてこうなった。
ああ、さすがに脱獄死刑囚のムーンフィッシュと、マッチョ三銃士は置いてきている。なにごとにも、限界はあるのである。
それにしても、よく入場できたであるなあ。雄英高校の警備、かなりガバガバであるな。
この体育祭。外部の人間が多数出入りするので、警備の人数は多いようだが。
それでも人数が足りていないし、観客にも現役ヒーローが多いという事での油断もあった。そういうことであろうか。
しかしUSJから体育祭まで、二週間と少ししかなかったはずであるのに、いろいろありすぎたせいであろう。まったく、そんな気がしない。
ざっと思い出すだけでも、USJの後の、打ち上げがてら帰れま10をやって。素人童貞作ってヘコませて。Pを作って、法律などをいじって。死刑囚らを脱獄させて。
え~っとあとは切島くんをきたえて。我輩もダンスをきたえたな。それと先生とお茶して、強化系の個性をひとつ持たせてもらって。あとはハ○エース?
濃かったであるなあ。しみじみ、そう思う。
そうそう。それと、ステインさんのPVも撮って、ネットに流したのであった。あれが効果を発揮した。
全国どころか、世界各地で反プロヒーロー活動が盛り上がり始めている。
原作では、海外の反応などまではどうであったか、さすがに記憶に残ってはいないが。きっと同じようなものであろう。
偽マイトを登場させてしまったので、反応がどうなるものか、心配であった。それだけに、この結果には、ほっとしたものである。
新入りの二人も、原作通りにやってきてくれた。いいぞ原作補正さん。久しぶりに、いい仕事したであるな。
トガヒミコ。血を摂取した相手に化ける、個性 変身の持ち主。その個性のせいか、気に入った相手になりたい。血を見たい、飲みたいという欲求がある。
すでに、何人も殺っちゃっているらしい。つまりは、危険人物である。
常時アヘ顔がかわいい、というとんでもない評価を、どこかで読んだのが記憶に残ってしまっている。
荼毘くんは、炎の発動型個性の持ち主で、詳細は不明。ただエンデヴァーの関係者ではなかろうか。そういうウワサはある。
火傷しまくった顔に、仮面のような形のまともな皮膚を、乱雑に縫い付けている。そして人を燃やすことに、何ら抵抗が無いらしい。
つまりは、危険人物である。
どちらも、ヴィラン連合に来るべくして来た人間と言えよう。だって変人かつ危険人物であるのだから。
ふつーの人や、よい子はヴィラン連合に来ません。
そんな面々が、なぜこの雄英体育祭に、雁首そろえて座っているのかと聞かれたら。
「よし、行くぞ。新入りの歓迎がてら、ハイキングだ」
ボスが唐突に、そんなことを言い出したからだ。
見ると、嫌な予感しかしない。そんな笑顔であった。絶対に何かたくらんでおる。
この場に黒い人がおらぬのも、嫌な予感の重みを増す。
我輩を嬉々として巻き込んでいる以上、荒事は無いとは思う。というか、思いたいのであるが。
念のため、我輩も変装中。もはや少し懐かしい、USJの時の、13号先生風の宇宙服の着ぐるみである。
「エヴィバディ! 雄英体育祭へヨーコソー!」
あ、プレゼントマイクのトークが始まった。解説の相澤先生の、左手の薬指に光る指輪についてツッコミを入れている。
ふ~ん。式は挙げないんだ。まあ、犯罪者の恨みを買ってる自覚があったら、できないよね。テロとか怖いし。
お相手も公表はしない、と。ふ~ん。まあ、そのあたりを追及するのもヤボであるか。
そして催しは、選手入場へと進む。
「ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!! ヒーロー科っ! 一年っ! A組だろぉおおおおおっ!?」
ああ、その台詞はマズい。ちょっとボスがイラっとしているのがわかる。
ボス。ちょっとガマン。ガマンして。まだ始まってすらいないから。ねっ。
爆豪の選手宣誓「オレが一位になる」発言が飛び出し、それがなぜかボスのツボに入って爆笑するまで、がんばってなだめていた我輩を。誰か少しほめて欲しいのである。