我輩は○○である   作:far

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我輩は体育祭のスポンサーである。

 

 我輩は体育祭のスポンサーである。正確には、その一人である。

 かつての一大イベント、オリンピックは、個性禁止での純粋な競技としたがゆえに、人気を失った。

 ヒーローとヴィランの戦いの派手さに負け。記録は、個性ありでのはるか下。

 純粋な身体能力と技能の勝負といえども、才能の差はあるわけで。個性をそこに含まないのはいかがなものか。そんな意見も強い。

 さらに、発動系や変異系は、個性を使わなければ良い。しかし異形系にいたっては、出場すら出来ぬ。

 もともと利権まみれと言われ、開催地をめぐっての誘致合戦が行われるたびに、接待やワイロが飛び交っていたのも良くなかった。

 取って代わるものが現れた時。衰退する以外には、道は無かったのだろう。

 

 その取って代わったのが、日本では雄英高校体育祭である。

 個性ありきの各種競技に、最後はお約束の一対一の決闘。しかも雄英にはリカバリーガールという、最高峰の治癒の個性持ちがいるので、無茶ができる。

 爆発物やら、高所からの落下やら。普通は仕込めないものを、平気でぶっこんで来る。

 普通科、経営科、サポート科の生徒らも出場するのであるが。本当に毎年大丈夫だったのであろうか。

 

 東の雄英、西の士傑と言われる名門高、士傑高校。あそこが、昔に一度対抗しようとしたことがあったらしいのであるが。

 治癒の個性自体が、大変に珍しいものであり(なにせ先生ですら持っていない!)優秀な、と付けば国に一人いるかどうか。

 つまり。士傑にはいなかったわけで。まあ、結果はお察しである。

 

 まあ、長々と語ったわけであるが。

 つまりは、この体育祭はたいへんに注目度が高いのである。で、あるからには。広告を打つのに、最適であるのだな。

 

 我輩の広告も、他の多くのそれにまぎれるように、存在している。別におかしな広告ではない。

 最近出版された、一冊の本の広告である。その内容は、ひとことで言うとこうなる。

 

 我輩の旅が、一冊の本になりました。

 

 番組で全国各地を回ってレポートしておるのだが、スタッフの中に、写真を撮りためていた者がおった。

 それに目を留めた監督が、それと各地の紹介文を合わせて、本を一冊作ってしまったのだ。

 思い出が形になったようで、うれしかったので、少しばかりムリをした。

 本来ならば、スポンサーの募集や契約は、すでに締め切られている。当然であるが、カネもケタ違いにかかる。

 

 しかし我輩には。洗脳という非情な手段があるわけで。

 

「ああ、あの卑劣な術か」

 

 良心がとがめないでもないので、ひっそりと目立たぬような位置に紛れ込ませたのは、そういうわけであったりする。

 中途半端なあたりが、実に自分らしい気がして、複雑な気分になる。

 

 さて。

 

 そのあたりの感想を振り切って、観戦に集中しよう。うむ、そうしよう。それが健全である。

 そう思って、第一競技の障害物競走を見る。

 ふむ、原作の展開は忘れたが、轟が氷で他の選手やら、妨害ロボやらをうまく封じておるな。

 そこから抜け出したのは。おお、あれはS少年。S少年ではないか。どうしてあの位置に? まさか自力で脱出を?

 あっ、こまめに何か言ってる。それでもって、前の人たちが左右にどいていく。

 

「ああ、あの卑劣な術か」

 

 おそらく、洗脳してどかしているのであるな。S少年の術、もとい個性は操られている間の記憶が無いという、恐ろしいものであるからなあ。

 左右にどいた彼らは、自分が道を開けた自覚すらないであろう。

 

 おっ、アレが入試で出たという巨大ロボ。入試の時は、きっとどうにもならなかったであろうそれを、たいがいの生徒らが超えていく。

 入学してまだそんなにたっておらぬのに、成長しているのであるなあ。何人かの生徒など、飛んでおるよ。

 あ、つぶされた。

 超えられぬ生徒も、当然いるわなあ。無事であろうか? あー、かわいそうに。無事ではなさそうだ。

 こら、そこ。トガちゃんはケガ人に興奮しない。マスキュラーさんも、殴ってみたいのはわかったから自重して。缶ビールでも飲んで、野次を飛ばすくらいでガマンするのである。

 

 ふむ。負傷や負荷をやわらげてくれる、専用装備が無いせいか、緑谷少年がイマイチふるわないな。

 このまま爆豪か轟か、あるいはその少し後ろで虎視眈々と狙っているS少年か。一位はこのうちの誰かに――――

 って飛んだー!? 緑谷少年が爆風で飛んだー! あれって、着地はどうするんだ。

 ってまた飛んだ!? え、あれ体は大丈夫なのであるか?

 吹き飛ばされて。落ちてきたところを、また殴られたようなものであるよね?

 強烈なカウンターが入ったようなものだと思うのであるが。

 

 あっ。案の定、最後の着地で地面に叩きつけられて、エラいことになってる。トガちゃんステイ。

 爆発で飛んだせいで、けっこうクルクル回ってたからなあ。それで自分の位置を見失って、受身を取り損ねたのであろうな。

 

 爆豪と轟も、さすがにぎょっとして止まっておる。

 一位争いで必死に走っている中を、突然空から級友が降ってきて、ベチャリとつぶれるとは思ってもいなかったようだ。

 その間に、止まらなかったS少年が追いついた。

 

 そしてなんのためらいも無く。緑谷少年をかついで、そのまま走り去った。

 仲間は、見捨てない。そうだ、それでいい。それでこそだ、とステインさんがうれしそう。

 

 それを見て、我に返って走り出した爆豪と轟に抜かれてしまったものの。S少年は間違いなく、この場のヒーローであった。

 最後、爆発での加速で一位をとった爆豪よりも。声援は彼にこそ降り注いでいる。

 爆豪がそのせいで、一位を取ったのにイラついているようだが。まあ、そこは原作どおりか。

 方や負傷した友人を連れて、ゴールまで駆けた主人公。もう片方は勝利だけを目指したヒール。声援がどちらに送られるかと言えば。まあ、残念ながら当然というやつである。

 

 ところで。確か、この一位の人って、次のポイントを取り合う競技で、とんでもないポイントを持たされていたような。

 彼と組んでくれる人って、いるのであろうか?

 

 

 




●「ああ、あの卑劣な術か」
NARUTOより。生きた人間を生贄に、死んだ人間をあの世から呼び戻して使役する卑劣なアドバンス召喚の術。
作中での評判は当然悪い。ナルト「このエドテンとかいう術、気に食わねェ! 戦いたくねェ人とも戦わされる!」カカシ先生「穢土転生…この術は許せない…!! 俺に続け!」ザブザ「死人まで利用するか…穢土転生…気に食わねェ…」半蔵「何より許せないのは穢土転生…この術のようだ…体が勝手に動く…」土影「穢土転生…これは二代目火影の卑劣な術だ…」
あまりに卑劣呼ばわりされるので、開発者の二代目火影の読者の間での通称が卑劣様となった。
当初はネタ扱いの卑劣様呼ばわりであったが、当人が穢土転生されて蘇り、大活躍した結果。卑劣様の名は不動のものになったw その活躍内容は、ぜひ原作で確認して欲しい。
なお、原作での戦争の原因はだいたいこの人のせい。しかも悪気はなく、当時としては正しかった事も多い。でもマダラの死体をこっそり研究しようとして、うっかり蘇生されて逃げられたのは言い訳できない。
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