我輩は体育祭をサカナに飲むネコである。つまりは、絶賛打ち上げ中ということであるな。
なにやら、他の面々が一体感のようなものを感じさせており。我輩、若干の疎外感を感じておる。
一足遅れて合流した事もあり。まわりはすでにカンパイを済ませて、勢いが付いている。というのもあるだろう。
よろしい。ならばこちらも酒である。黒い人。ウォッカのジュース割りを三杯作って。
この場のノリに乗り遅れたら、後片付けとかで、すごい苦労する気しかしないであるから。
後始末、手伝ってくれないんですね。と、あきらめた様子で。黒い人は度数96度のウォッカ。ほぼアルコールといっていいスピリタスを、まずはオレンジジュースとシェイクした、スクリュードライバーを出してくれた。
割っただけのもので良いと言ったのに、きちんとシェイカーでシェイクしてくれるあたり、いい人である。
スピリタスをベースにしたこともあって、クセがなくて飲みやすい。くいっといける。
二杯目はグレープフルーツで。グラスの縁をぬらして、塩を付けてから注いで完成、ソルティドッグ。これも飲みやすい。どんどんいける。
三杯目はジンジャーエール。ライムを添えて。モスコミュールである。さっぱりした飲み口が心地よい。
どれも、前世で宅飲みしていた時の定番である。だいたいは、割っただけの手抜き版であったが。
ウォッカのジュース割りと称して、ここでたまに作ってもらっている。時に懐かしさを味わう時間も、人生には必要なのである。
まあ、今は懐かしさのためではなくて、この飲み会の勢いに追いつくためであるのだが。
さあ、駆けつけ三杯やりつつ、先に飲んでいた面々と乾杯して回ったことであるし。
我輩も雄英の試合をサカナにしての飲み会に、本格参戦である。黒い人、ハイボールよろしく。オー○ドパーで。
「さきほど入ったニュースです。雄英高校の体育祭に、突然筋肉質の男女が乱入し。踊った後に、自分たちはヴィランだと名乗って、逃走する事件がありました」
電源を入れたテレビから、いきなりこれであった。
いい感じに酒が入っているところに、これは卑怯である。笑うわ、こんなん。
一同、大ウケである。マスキュラーのまっとうな笑い声って、初めて聞いたぞ。
「あらためて言葉にすると、わけわかんねえな」
ボスの言葉に、全員が賛同する。でも、それやったの君らだからね。
特にマグ姐さんとか、レイザーの個性じゃなくて、素のままの体でやってたでしょ。鍛えぬいた体ってのは、見せびらかしたくなるのよって、まあ、わからんではないですけども。
俺も素だったぜって、マスキュラー、そうであったっけ? ああ、個性だけに頼って素が貧弱だったらカッコ悪いんできたえてるのであるか。
ふ~~ん。えっ、ボス。なんですか? 我輩も、みんなも、何も言っていませぬが?
でも気になるなら、ちょっとは外に出たり――あ、面倒ですか。そうですか。
あ、試合が始まった。
どうやら雄英は、続行を決断したらしい。ただし、一般人の観客や、ヒーロー科以外の生徒など。戦闘力のない人は帰らせた上でだ。
来るなら来い。私が、いる。そう宣言する、オールマイトの説得力よ。
テロには屈しないというのが、正しい戦略であることだし。対応できる人間だけ残して、続行。これが最善なのではないだろうか。
まあ別にボスたちは、要求も予告も。何もしなかったのであるが。
マッスルダンスの途中、ファイトA組とか叫びつつ、人文字でAとか書いてたし。最後の、気にせず続けてという発言も意味深であるし。
もしやあらためて襲撃しに来るのでは? そう、警戒するのもわかる。
実際は何も考えていないのであるが。ですよね? ボス。
うむ。考えていないそうだ。ですよね。だって、もう飲んじゃってますもんね! 明らかに今日のお仕事終わりって感じでありますな!
画面の中では、切島くんと鉄哲なる少年が戦っている。一回戦第二試合と、画面に出ておる。
あれ、第一試合見逃した? えっ、巨乳の女の子が、絶縁シート出して雷少年ボコって瞬殺?
なんとはなしに。原作補正さんの、必死さと瀕死さを感じる。まさに死亡確認。
教えてくれて、ありがとトガちゃん。君も飲んで飲んで。ビールのトマトジュース割りでもどう? 名前はレッドアイである。
「延々、よけもしねぇで、殴り合いだと? 熱血しやがって。暑苦しいぜ!」「若いっていいよな!」
トゥワイスが独特の口調で、試合を評した。
足を止めての、意地の張り合いでもあるのだろう、真正面からの殴り合い。たいがいの男は、こういうのが嫌いではない。
そしてここにいる女子は、ズタボロになる男子が嫌いではない。
つまりは。みんなして、この試合に注目していた。
ところでみなさん。この切島くん、我輩の生徒なのであるが。どっちに賭ける?
ボスとマグ姐さんとマスキュラーとトゥワイスが、鉄哲に賭けた。切島くんに賭けたのは、黒い人とトガちゃんと荼毘くんだけである。
黒い人は別にして。付き合いが長いほど、我輩への信用度が無いというのは、いかがなものか。
「いや。お前のことは、信じてる」
えっ、ボス? と、ちょっとばかり感動したのであるが。
絶対にロクなこと教えてないという方向で信じてるって、やかましいのである。
一発の威力は、わずかながら切島くんが上だ。殴るための踏み込みにも、殴られた踏ん張りにも、足の親指の付け根への力の集中は有効である。
個性の発動にも、一点集中を心がけているらしい。殴られる箇所と、拳に個性を集中。必要な場所にだけ、切り替えて発動している。
だがしかし。いかにも、その作業に慣れていない。考えてやっているのが、見て取れる。それは行動の遅れ、キレのなさにつながってしまい、何も考えずに拳を繰り出す鉄哲に押し負けてしまっている。
「
香港映画俳優にして拳法家の言葉は、偉大であるな。
しかし切島くんも、この言葉にそむいているわけではない。徐々に、考えずに実行することができるようになっていっている。
そして、慣れてしまいさえすれば、それはもう成長である。
成長した彼は、個性だだかぶりな対戦相手を、見事に打ち倒してみせてくれた。
よし。我輩の勝ちである。これで、ムーンフィッシュとマッチョ三銃士の面倒は、外した人たち持ちで!
よくやったのであるぞ、切島少年。今度、何かオゴってやるのである。
何なら、風俗でもいいぞ。
まあ。こちらからは申し出ないので、まず無いであろうけどもな!
さて、黒い人。大穴に賭けて良かったとか言っちゃってる、黒い人。
乾杯用の、勝利の美酒を我々に。種類はお任せである。
●「
ブルース・リー主演、燃えよドラゴンより。ゆでたまご先生が、ストーリーをモロにパクってラーメンマン主役で描いたマンガがあったが、現在ならアウトであろう。
カンフー映画というジャンル自体が日本では衰退しているが、レンタルなりネットで探すなりで、何か一本見ておくのもいいかもしれない。
インド映画一本見たら、だいたいインド映画がわかるみたいな感じである。