我輩は○○である   作:far

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我輩はお大尽中である。

 我輩はお大尽中である。昔は、お大臣だと思っておった。

 お大尽とは、大金を使って遊ぶことをいう隠語である。

 隠語ゆえに大尽金や大尽遊びなど。流用された単語は辞書に載っておるのだが、お大尽や大尽単独では、記載されておらぬ。

 

 で、お大尽というのは、あれだ。

 体育祭で活躍し。そのおかげで、我輩と黒い人に自由をもたらしてくれたヒーロー、切島くん。

 彼に何かおごってあげよう。あの時に決意したことを、実行したわけだ。

 

 まずは迎えに行った。事前の連絡は、研修先のフォースカインドさんにしかしておらぬ。本人にはナイショだ。

 この間ドッキリが結果的には失敗してしまったので、少し取り返しておこう。そんな軽い気持ちでの、軽いイタズラである。

 

 ちなみにフォースカインドさんとは、知人である。知っている人ではあるけれども、友達ではない人だ。

 行きつけの店で、たまに出会う人である。彼は四本の腕を持つという、軽い異形系で目立つ。ゆえに、店にいたら目に付くという寸法だ。

 

 そして我輩も、客側としては目立つ存在であったらしい。

 

 店に入って。ああ、またいるなと目を向けて、目が合う。軽く礼をする。

 これを何度か繰り返し、そばを通る時などに、あいさつくらいはして。この頃は、会話くらいは交わすようになった。そんな仲である。

 

 なお店は、ネコキャバである。

 

 猫の異形系の個性を持った女性たちと、本物の猫が持て成してくれる。そんなネコカフェとキャバクラの合体したお店が、SAI玉にあり。我輩とフォースカインドは、その店の愛好者なのだ。

 我輩は自分と同じ、顔もネコの獣人系を。彼はネコミミの若い子を。それぞれ好みは違ったが、客には違いない。

 

 彼はヒーローである自分が、こんな場所に通っているのがバレたらマズいと思っているらしく、軽い変装をしていたが。四本ある腕が、隠しようがないので、正直バレバレであった。

 普段は丸坊主の頭に、黒スーツにネクタイ。任侠ヒーローを名乗るだけあって、事務所には神棚に提灯に刀などの、それらしい小道具と。それらしい物で身の回りを固めておるのだが。

 

 全部、ファッションである。

 

 つまり彼は、ファッションヤクザである。

 

 ヒーロー飽和社会と言われるほど、同業者があふれて、仕事を取り合うヒーロー業界。

 そんな中で生き残るため。己の味や色を、各ヒーローは押し出していった。キャラ付けした、とも言う。

 フォースカインド。彼は地味であった。

 肉弾戦を得意としており、そこに持ち込むための戦術も磨いた武闘派。実力はあった。

 しかしその個性は、腕が四本あります。というだけで。オールマイトと違って、力は人並み。よって戦闘内容も殴る蹴る、関節を極める。

 腕が多い分、独自の関節技などはあったが、それでも地味であった。

 顔も地味な方であった。少なくとも、美形とは言えぬ。どちらかと言えば、いかつい。

 

 商業的な意味で。生き残るには、どうしたら良いのか。彼は、悩んでいた。

 

 そんなある日。戦闘でついた、左目のあたりを斜めに走る傷を見て、彼はひらめいた。

 

 あーあ。これじゃまるでヤクザだよ。―――ヤクザ? ……これだ!

 

 そうして生まれたのが、(ファッション)ヤクザヒーロー、フォースカインドである。

 

 

 そんな彼が、アロハを着て、レゲエ風の長髪のズラをかぶって。我輩のオゴリということで、思うが侭にハメを外している姿が、そこにあるじゃろ?

 

 

 うん。なんか切島くんと鉄哲くん、ごめん。

 切島くんにオゴるついでにと、連れて来てしまったのであるが。まさかここまでハッチャケるとは、思わなかったのだ。

 研修生である君らの前でなら、もう少し体裁を保ってくれると思ったのであるが。思ったよりも、君たち、気に入られていたらしいな。

 ヒーローとしてのガワではなく、素を見せてくれているぞ。

 

 だからそんな、夢を壊されたみたいな顔をしていないで、楽しんでくれ。ここはいい店なのであるからして。

 ほら、三毛猫のノンちゃんも心配そうにしておるぞ。おやつを頼んであげるから、あげてみなさい。きっと癒されるから。

 

 不良というか、ヤンキーというか。そういうスタイルの類似かつ上級として、フォースカインドさんのところを選んだのだと思うが。

 世の中というものは、基本、世知辛いのだ。勉強になったな、少年。

 強く生きろよ。

 

 




おかしいな。ちょい役だったはずのフォースカインドのことを、なぜこんなに語ってしまったのだろうか。
当然ですが、彼のアレコレは独自設定です。
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