三話まではあった
我輩は移動中である。チャリで。
喜ばしいことに、身長がこの間とうとう1mを越えた。これまでは子供用自転車にしか乗れそうになかったので、自転車は乗っていなかったのだが、解禁である。
まことに都合の良いことに、移動系の個性も今しがた手に入った。重ねてめでたい。
戦闘や日常でも役立つ身体強化系や、感知系や移動系などの便利なものは大抵ボスの先生に持っていかれてしまうのだが、この個性はたぶん大丈夫。
騎乗(人力)
原理はわからないが、自分の力が動力になっている乗り物を強化する個性である。本当に原理はわからないが。
この個性の元の持ち主は、幼少時に三輪車で車と競争し、自転車でよくスピード違反で逮捕され、鳥人間コンテストで殿堂入りという名の出場禁止処分を受けたという。
ただ。あくまで強化するのは乗り物だけで、身体は普通のままだった。そういう話である。
「
健康的に自転車を乗り回すボスの先生は想像し難いので、多分取り上げないでくれと頼めば、以降この個性は我輩のものとなるだろう。
というか、有名どころのヒーローやヴィラン、ボスの先生が気に入った個性の持ち主が亡くなるたびに出張させられているのだ。移動系の個性の一つや二つは持っていたい。
ぜいたくを言えば、変身や変装の個性も欲しい。1mと少しの身長の、立って歩くネコでは、個性でもなければ姿を偽るのは難しいのだ。
だが、友人にあげるから。と持っていかれてしまうのである。
また手に入れればいいだろう。そう簡単に言うボスの先生は、個性収集のめんどうさを忘れているのではあるまいか。
もはや八割がたの人間が、何らかの個性を持っているという超人世界。そこらの人間から個性を抜き取ってしまえば、目立ってしまう。事件である。表ざたになる。
つまりは、オールマイト。NO.1ヒーローであり、ボスの先生の天敵がやって来る。
他のヒーローもよってたかってやって来るだろう。
ボスの先生はかつてNo.1ヒーローに敗北。今はひっそりと死んだ振りをして、力を蓄えている。
だからボスの先生は、今まではコッソリとバレないように。個性を取ったら死体も残さぬように始末したり、もはや歳で発動できなくなった老人を狙ったり、逆に赤子から取って無個性であったと錯覚させたり。あるいは納得づくで買い取ったり、そのカリスマから献上されたりと。色々と気を使っていたのだ。
勝てる算段がついてから。そして何より、因縁の相手とは最高に盛り上がった舞台の上で直接引導を渡したいから。
悪の帝王になりたいというロマン。それで裏社会で今の地位まで上り詰めたボスの先生は、そういう人だ。
「命は二の次…… それより自分が大事だ……!」
「俺は自分が思うがまま! 望むがままに! 邪悪であったぞ!」
社会の闇に隠れて、暗躍する。めんどうもあるが、それを楽しんでもいたと思う。なぜならそれもロマンだから。
だが何年も続ければめんどうが勝る。面倒くさい、は人類の強敵なのだ。
そこに一部だが面倒を取っ払う、我輩の登場である。
だからここはもう少し、我輩をねぎらってくれてもいいのではなかろうか。具体的には、もう少し個性を残していただきたいのだが。そう抗議したところ。
わかった。報酬をアップしよう。と返ってきた。
違う、そうじゃない。昇給とかそういう話でなく。いや、我輩が目立って表に存在がバレたら困るというのはわかるが、そのためにももう少し何とか。
面白そうだったり便利な能力が、手に入ったとたんに無くなるというのは空しいのです。
聞いてください先生。先生――! だからこの個性は取り上げないでー!
●「
絶滅危惧種かと思いきや、割と生き残っているらしい、暴走族のマンガ。なお物語の最後の落ちは、よくわからない。
●「命は二の次…… それより自分が大事だ……!」
天―天和通りの快男児―より。かつて業界に君臨した凄腕として登場。その印象深いキャラクターで、スピンオフで主役になったアカギさんのセリフ。
なぜか思考はまともだが、麻雀の打ち方がわからないほどボケてしまったアカギ。これ以上自分が自分でなくなるより前に、自殺するので葬式に来いと、かつての好敵手らを呼ぶ。それぞれ一人ずつが止めようとするが、そんな中での言葉。
自分を貫き通す。ウソにはしない。強烈な自我と生き方であった。
なお、アカギの最強の敵のワシズも、スピンオフ主人公になっている。
●「俺は自分が思うがまま! 望むがままに! 邪悪であったぞ!」
幻想水滸伝IIより。狂皇子と呼ばれ、命乞いをした村人(女)に、助かりたいならブタのマネをしろと言って、やらせたあげくに「ブタは死ね」するようなルカ・ブライトの最後の言葉。なお、彼は中ボスである。