我輩は○○である   作:far

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我輩は密出国中である。

 我輩は密出国中である。密入国ならば耳にするが、出国のほうはあまり聞かないな。

 

 まあ、どうでもよいが。

 

 ひそかに海外へと飛ぶのに、特に大した理由があるわけではない。しかもひそかにというのも。ウワバミさんには内緒で、という意味である。別に非合法な手段で出国するわけではない。

 その理由も、タイへと行って帰ってくる、うまい口実が見つけられなかった。というだけである。

 本場のロッティが食べたい。それくらいしか言い訳が思いつかなかった。

 

 なおロッティとはクレープっぽいもので、甘くてカロリーの高い、ある意味での女性の敵である。

 

 なお密出国するのも、密入国するのも。空港を経由するのはお勧めしない。

 変身やら変装の個性を警戒して、国内線ならともかく、国際線ではかなりの対策が練られているようだからだ。

 何度か利用したが、指紋や目の虹彩の認証。赤外線などの各種センサーの仕掛けなど。数々の対策を見て取れた。

 この国を守るため、日夜がんばってくれているようだ。

 

 テキトーな海岸から漁船で、という伝統の手法についてはガバガバらしいが。お役所仕事なぞ、そんなものである。

 実際、自分の持ち場ではがんばれるけれども。他人の管轄については、どうでもならぬのであるな。

 

 そんなことを思いつつ、タイへと飛ぶ。目的は、神の手である。

 

 時は昭和。個性を持つものも増えだし、うさん臭いオカルトが流行った頃。

 そのオカルトの一つに、心霊手術なるものがあった。

 患者の体内に、切りもせずにそのまま手を突っ込み、盲腸や腫瘍などを引っこ抜く。しかも傷は残らないという、実に怪しげなものだった。

 

 だがしかし。これ、映像がきっちり残っていたりするのである。

 

 しかも日本に招いて、診断書つきの患者を用意して、スタジオで観客とタレントの前でやった記録が。

 

 当時のテレビのことなので、ヤラセである確率も非常に高いが。しかしつい最近まで、この心霊手術を行った医者(?)は現役であったのだ。

 そして九十歳を前にして、先日亡くなった。我輩がタイに向かっているのは、それが個性によるものであったのかどうか? 個性であったなら、受け取れないか? という興味本位なものだ。

 

 それとタイの炒飯、カオパットが食べたい。特にカオパットサパロット、パイナップルを使った炒飯が興味深い。

 タイ料理は、代表的なトム・ヤン・クンやグリーンカレーを始め、辛いものが多いのであるが、無論それだけではないのである。

 もし辛いものだけであったならば。コ○イチのカレーですら、最近ようやく1甘のものを食べられるようになった我輩だ。行こうなどとは、思いもせぬ。

 焼き豚や豚足の、甘辛く煮たのを乗っけたご飯。台湾の魯肉飯のリベンジとして、これらも味わわねばなるまい。

 ご飯ものはそれでいいとして、揚げ物はネームーシーコーン。スペアリブをマリネ漬けにしてから、高温で揚げる。絶対に美味い。

 魚類学者でもあった今上天皇陛下が、皇太子時代にタイに養殖をすすめて贈ったという、ティラピアも食べねば。日本人的に。白身の魚なので、素揚げがいいか。

 牡蠣とモヤシのお好み焼き、ホイトート。タイ風焼きそばパッタイ。タイラーメンと。屋台の味も見逃せない。

 

 ああ。しまったなあ。二泊三日の予定であるが、食べきれるか? 胃薬の準備は万全であるが。

 

 うん? 個性の話はどうしたって?

 それはそれ。人生、楽しんではならないということは、ないのである。

 人生、前向きに。楽しく。それでこその人生。

 

 

 

 なお。

 

 確認した結果。くだんの心霊医者は、無個性であった。

 彼が個性などとは別の、本物の霊能者であったのか。それとも手術も出来ぬ環境の中で、悪いものはこうして取り出したから、大丈夫だと。プラシーボ効果を期待して、患者を安心させていた癒す人であったのか。

 それとも、ただの詐欺師であったのか。答えは謎のままである。

 

 

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