横道にそれたら、筆が進みまくって勧誘がどうでもよくなった件について。
我輩は勧誘中である。というのも、ソルジャーことB級ヒーローに対して、また動きが出たのだ。
ヒーロー協会からの、ヒーローの名称が使われなくなった事への補填として。一つのテレビCMが放送されたことが、そのキッカケであった。
(火山の噴火や台風の映像が流れる) 災害に!
(ヴィランの犯行の映像が流れる) 犯罪に!
(マイナーどころのヒーローたちの映像が次々と)立ち向かえ! 戦え! ソルジャーたちよ!
(オールマイトの映像になって)私がヒーロー協会のCMに、ソルジャーの応援に来たっ! 彼らを呼ぶ時は、協会へお電話を。番号は8・8・8のオールエイト。オールエイトだ!
このCMを見たボスが、なぜかやる気を出してしまった。それも、オカしな方向にだ。
ちょうど都合良く起きた、巨大化の個性持ちの野良ヴィランによる災害に、救助する側で参加すると言い出したのだ。
うむ。言い間違いでも何でもない。救助する側である。それを邪魔する側でも、お遊びで救助される側に回ったわけでもない。
急なことだったのと、内容が内容であるので。参加するのは開闢行動隊全員ではない。
ないのだが。
その代わりにと、ゴリラ脳無を投入するそうだ。
その指揮は、なぜか我輩である。
ああ、また偽マイトに変装せねばならぬ。
そう思ったら、脳無以外の面々もまた、元死刑囚のレイザーの個性でマッチョ集団になっておった。
なお彼らは、この筋肉は見せる用の筋肉ではなく、実用できる筋肉であると証明すると言わんばかりの活躍であった。
ボスの五指全てで何かを持つと、ボロボロに崩壊させる個性は、障害物の破壊に生かされた。
ひょっとすると、ボスが誰かを助けるために個性を使ったのは、初めてだったのではなかろうか。
それを見て、複雑な気分ながらも「あの子が立派になって…!」と、涙を隠せない黒い人。
彼も、その便利なワープの個性で、人を安全な場所へと運び続けた。
黒い人は性格的にヴィランに向いていないのでは? こう思ったのは、何度目であろうか。
トゥワイスもマッチョ化して参加していた。彼の個性で、作業中に全員の分身を増やしていって、途中で本人たちだけがコッソリ離脱。
全員何事も無く脱出できたのは、黒い人のワープと、彼のおかげである。
意外なところではマスキュラーも参加した。もっとも、救助の方ではなく、巨大化した野良ヴィランと戦う方であったが。
巨大化した質量と筋肉に、増加した筋肉で対抗できるのか。試してみたくなったらしい。
しかしながら。真正面からの殴り合いは、正直、周りに大迷惑であった。
確かに、野良ヴィランを相手する役も必要ではあったと思う。しかし、あまりにも周りのことを気にしなさすぎた。減点である。
マグ姐さんも付き合ってくれた。人にだけ磁力を付与する姐さんの個性は、被災者の発見と引き寄せに、とても有効に働いた。
外見がデカいマッチョなオカマであるので、助けた人たちにも怖がられておったが。それは仕方が無い。
それでも傷付いたり、苛立つ様子を見せず。「失礼しちゃうわ」とニヤリと笑って。何でもない様子で救助を続ける姐さんは、実に格好が良かった。
もしも、この場にミスターがいてくれたならば。被災者を運ぶのも、瓦礫をどかすのも、もっとはかどったであろう。
だが、彼は次の雄英襲撃の切り札だ。秘密兵器として、残念ながら今回はお休みである。
トガちゃんと荼毘くんは、単に都合が悪かったのと、連絡がつかなかった。定職についておらぬ自由人とて、予定やら都合やらは、あるものなのであるな。
そして最後に、ボスの分身が取材に来たTVカメラに向かって、アオリを入れた。
「なあ。どんな気持ちだ? 俺らヴィラン連合に先を越されて、上を行かれてさ。どんな気持ちなんだ? 戦え、ソルジャー? そうだな。もっと戦えよ。ほら、でないとさ。また俺らが出張らなきゃ、いけなくなるだろ?」
運が悪いことに。ちょうどその時、駆けつけたソルジャーの人が、ボスの分身を攻撃してしまった。
その攻撃を避けもせずに、まともに食らって体が崩れていく中で。
「さすがはソルジャー、助けるんじゃなくて、戦うんだ。ああ、お前は。ヒーローじゃないな」
なおもアオリながら、消えていった。
最近、アオリ力高くないですか、ボス。まさかネット掲示板とかで、遊んでいないでしょうね?
と。まあ。そんな事件があったわけで。
そのまま黙っていては、B級とはいえ、ヒーローの名折れ。
しかし制度は変えたばかり。朝令暮改は、よろしくない。
そういったわけで、改変ではなく、上乗せが行われることになった。具体的には、新たに準A級、シェリフとセーバーの階級が導入されたのだ。
運転免許の種類に、準中型が増えたようなものであるな。
法律系の資格を取ればシェリフに、医療系の資格を取ればセーバーに、それぞれ免許が更新される。
結局のところ、ヒーロー側としては結果で示すしかないわけであり、そのために必要なのは、活躍できる場所。
その可能性を広げるための、技能向上。この二つは、その場所への道筋をつけたわけである。
それでこれを機に。Pとして、一つヒーロー事務所でも持っておこうかと思ったのだ。
特に深い理由は無い。例によって、思い付きである。
むろんPはヒーロー資格なぞ持っておらぬ。なので、単なる経営者として、ヒーロー事務所を運営するということである。
それで今、社員を勧誘中なのであるが。
マニュアルくん。君、いいね。一緒に一旗、あげてみないか?