さてやって参りました、本作品のヒロインの一人、楯無さんの初登場回!
もうぶっちゃけますが、先達のIS二次創作作者の皆さんにならい同室は楯無さんです。ついでに出会い方も一緒。
めっちゃ話します。というかむしろ半分以上「」です。
今回も楽しんでいただけると幸いです。
セシリア・オルコットの決闘宣言の後は、織斑先生によって普通に授業が再開され、ソフィーと「はいあーん」なんてしながら食事をとった昼休みも終え、放課後。
もう何か精神的疲労が凄かったので早く休もうと思い席を立つと、副担任の山田先生が声をかけてきた。
「織斑君、ヴァンフリーク君。ちょっといいですか?」
「はい?」
「どうしました?」
聞き返す俺たちに山田先生は微笑んで、
「えっとですね、寮の部屋が決まりました」
そう言って部屋番号の書かれた紙とキーを寄越してくる。
ここIS学園は全寮制だ。名目は生徒たちの保護のため。未来の国防がかかっているとなると、どの国も優秀な操縦者の勧誘に必死なのだ。手荒な手段に出るところが少なくないぐらいには。
ふむ、しかしおかしいな。急に男子生徒を受け入れることになったせいで、俺と春万の部屋はまだ決まっていないとのことだったが……
同じように不思議がっていた春万がそう尋ねると、
「そうなんですけど、事情が事情なので一時的な措置として部屋割りを無理矢理変更したらしいです。……二人とも、その辺りのことって聞いてます?」
「ええ」
「はい」
何せこれまで前例のない、男性のIS操縦者、それも二人だ。その希少価値と同じく、危険性も計り知れない。
国としては何とかして監視と保護をつけて自分の手元に置いておきたいところだろう……まあ、あくまで日本政府の意向に従わなければならない春万と違って、直接民主制であることをいいことに政府の実権をマギアルカが牛耳ったスイス所属の俺にとっては関係のないことだが。
ともあれ、今日から早速寮生活だと言うのなら、早く荷物を取りに行かねばな。今からホテルに取りに行くとして、まあ十九時前後には帰れるだろう。といってもそれほど荷物はないが。
いつの間にか会話に入ってきた織斑先生と話を始めた春万を尻目に、俺は教室を出ていこうとするが、その直前で織斑先生からストップがかかった。
「待てヴァンフリーク。それと織斑もだが。お前たちのISだが、準備に時間がかかる。予備機がなくてな。学園で専用機を用意することになった」
織斑先生のその言葉に、ザワッと教室内にどよめきが走った。
現在幅広く国家・企業に技術提供が行われているISだが、その中心たるコアを作る技術は一切開示されておらず、現在利用されているのは束さんが作成した四百六十七個のコアだけなのだ。
完全にブラックボックスと貸しているコアは束さんにしか作り出せず、各国ではそれぞれ割り振られた一定数のコアをやりくりして研究を続けているのである。
尤も束さん曰く、
ちなみに俺とソフィーのISは、この四百六十七個のコアではなく、束さんが隠し持っていた分を使って作成したとのこと。
なので、
「申し訳ありませんが、俺には必要ありませんよ」
「ほう?」
「お前、千冬姉さんの厚意を断るって言うのかよ?」
「私の厚意ではなく政府の厚意だ。それと織斑先生だ」
「痛ぇっ!?」
何やってんだコイツら。そんな思いを込めた視線を送っていると、それに気付いた織斑先生が咳払いを一つ挟んだ。
「……俺は既に会社の方から専用機を用意されています。なので新しく用立ててもらう必要はありません」
首にかけたネックレスを見せながら言うと、織斑先生は納得したように頷いた。
ヴァンフリーク社がIS産業にも手を出し始めたと言うのは有名な話だし、もちろん彼女も知っているのだろう。
「なるほどな。分かった。倉持技研にはそのように伝えておこう。もういっていいぞ」
「では」
長居する気はない。軽く頭を下げて会釈して、俺は今度こそ教室から退出した。
§
「1025室……ここだな」
部屋番号を確認し、山田先生からもらったキーをドアに差し込む……ん? 開いてる?
同居人、か? いや、確か俺たちのために新しく用意したと言っていたような。
首を傾げながら改めて部屋の気配を探ってみると、どうやらドアの近くに人がいるようだった。
とりあえず開けてみよう。ここで立ち止まっていても仕方がないしな。
ガチャ。無造作にドアを開けると、
「お帰りなさい。ご飯にします? お風呂にします? それともわ・た・し?」
「………………………………」
……あ、ありのまま、今起こったことを話すぜ! 俺は学園から充てがわれた自室に向かったはずが、何故かドアを開けると裸エプロンで新婚さんごっこをしている痴女が居た……何を言っているのか分からないと思うが、俺にも分からない…………。
……。
……いや。何だこれ?
とりあえず、一旦閉めるか。ガチャ。
深呼吸でもして落ち着こう。寝不足が祟ったかなハハハハハハ。
ガチャ。
「お帰り。私にします? 私にします? それとも、わ・た・し?」
選択肢がなくなっていただと……。
精神衛生上確実によくないと判断して、幻聴と切り捨てる。そろそろ荷物が重いと思ってたんだよな。早く用意して夕食……の前に一回寝るか。
「ちょっとちょっと! 無視しないでよ! 勇気出してこんな格好で君を誘惑してるのに、おねーさん悲しいぞ?」
そう言って、どこから取り出したのか「不服」と書かれた扇子を、俺にビシッと突き付けてきた。
そこでようやく、彼女の姿を確認する。
まず目に飛び込んでくるのは、エプロンの生地を押し上げ大胆に谷間を覗かせるおっぱ……ではなく。
ショートカットにされた水色の髪。怒っているようにつり上がった切れ長の赤い瞳。全体的に余裕でありながら、どこか悪戯っぽい子供らしさを感じさせる。何と言うか……気ままな猫? チェシャ猫辺りかな?
ふむ……ちょっと面白いかもしれないな。
「OK。確かに少し失礼だったかもな。一度最初からやり直してみよう」
「えっ?」
「俺は荷物を置いて一旦外に出て、もう一度入ってくる。だから君はもう一度俺を誘惑してくれ。できるだけいいリアクションが取れるように努力しよう」
「え、あ、うん。わ、分かったわ……あれ? 何で私、誘惑をお願いされてるのかしら? 私、一応した側よね?」
と言うわけでテイク2。いや、テイク3かな?
何やらお困りの様子の少女を置いて俺は部屋を退出する。
待つこと一分ほど。俺は再び部屋の中へ舞い戻る。
「お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し……ってひゃぁっ!?」
「ああ、ただいま。その三択ならば、せっかくだし君にしようか」
俺は爽やかな笑みを浮かべて、彼女の腕を取った。
ビクリと肩を震わせた少女を、微笑んだままに押し込み、ドア横の壁と俺とで挟み込むような体勢へ。
掴んだ腕は離さない。痛くない、けれど振りほどけない絶妙な力加減で持って取り押さえたまま、もう片方の手でドアを閉め、音を強調するようにカチャンッ! と鍵を閉めた。
「ちょ、ちょ、ちょっと、あの……!?」
「どうしたんだ? 君から誘惑してきたんだろ? そんな扇情的な格好をして……俺だったからよかったものの、他の男だったら問答無用で襲われてたぞ?」
「ひゃぁぁぁぁぁぁ…………」
そんなことを耳元で言ってやると、悪戯好き(推定)な少女は面白いほど真っ赤になった顔を背けた。
身を捩って逃げ出そうとするも、俺の腕と彼女の足の間に挟み込まれた俺の足がそれを阻む。
「さあ、いつまでもこんなところで話をしてないで、部屋に入ろう」
「へ、部屋?」
「そう。……そういえば、ご飯を用意してくれていたんだっけ? じゃあ早くそれを食べて、シャワーを浴びて……ベッドに行こうか」
「しゃ、シャワー!? べっどぉっ!?」
「ああ、何ならシャワーも一緒に入るか? 隅々まで洗ってやるよ……」
「あうあうあうあうあうあう……っ!?」
ついに言語を忘れてしまったようだ。自分から悪戯を仕掛けてきたくせに、どうやら反撃されると弱いらしい。少し面白く感じながら追撃をかけようとしたところで……俺は気付いてしまった。
彼女が着用していたエプロン……その腰のスリットから覗く、細い紐の存在に!
「…………はぁ」
「ちょっ!! あなた女の子に詰め寄っておきながら溜め息とか! 溜め息とか!!」
「いや……だってなぁ……裸エプロンだと思ってたのに、水着エプロンだったとか……何と言うか興醒めだわ……」
「しっ、しっつれいな!!」
はぁ……うん、何か損した気分。
「っていうかあなた、私みたいな美少女が水着とはいえこんなあられもない姿でお迎えしてくれたのに、その反応はどういうことよ!」
「そう言われても。慣れてるし」
「慣れてるって? 何に!?」
「どっちもだな。美少女にも。裸エプロンにも」
「あ、あのソフィーって娘ね? 裸エプロンにも慣れてるって……ふ、二人はそういう関係、なの?」
「…………」
「ちょっと! その曖昧な微笑みやめて!? すっごい気になるじゃない!!」
いやー、あれは驚いた。
一週間ぐらい続いた長期の任務を終えて部屋に帰ってきたら、ソフィーとマギアルカの二人が、それぞれ色違いの裸エプロン姿で出迎えてきたのだ。
一週間の禁欲生活で、思春期であることも相まって色々と溜まっていた俺は、二人の艶姿についうっかり理性を手放して――やめよう。これ以上は色々とよろしくない。
しかしミーハーだなこの娘。いやまあ、既に正体はわかっているわけだが。
ちょっとこの娘の反応が面白いので、もうちょっとからかってみることにした。
§
「じゃあ改めて自己紹介と行こうか。知っていると思うが、俺はイチカ・ロウ・ヴァンフリーク。察するに君が俺のルームメイトなんだろう? よろしく頼む」
「……二年生、
あれから十分ほどの時間が過ぎた頃。俺たちは向かい合って腰を落ち着けながら自己紹介をしていた。
ベッドに腰かけて、生徒会長を強調しながら言う彼女ー-楯無に思わず苦笑をこぼす。
あんな姿を見せてしまっては、今さら生徒会長の威厳もなにもあったものではない。まあ誰が悪いのかと言われれば、悪ノリした俺なのだが。
「ふむ、二年生か……なら俺も敬語を使った方がいいのかな?」
「白々しいわね……どうせ、最初から気づいてたんでしょ? 誘惑なんて言い方をするぐらいだし。それと、言葉遣いはそのままでいいわよ。今さら変えられても違和感が凄いわ」
クッションを胸に抱いて、プイッと顔を背ける彼女の姿は、まるで拗ねた子供のようだった。
ちょっとやり過ぎたか……と少し反省する。しかし後悔はしていない。
「まあ、会社の都合で調べさせてもらっているよ。更識楯無。IS学園二年生にして学園最強の意味合いをもつ生徒会長に就任。専用機を自分一人の手で作り上げた、自由国籍を持つロシア代表操縦者。いやぁ、この肩書きだけを見ると、何であなたがこんな場所にいるのか、本当に疑問に思うな」
「こんな場所って……IS学園のこと?」
「ああ。ここは本当に下らないところだよ。今日一日授業を受けていて分かった。ここの連中は真面目に勉強はしちゃいるが、それだけだ。知識だけ詰め込んで満足してる。ISというもののことを、人の、自分達の命を簡単に奪いうるものだと言うことを理解していない。流行のファッションかなにかだと勘違いしているようで腹が立つね。その結果が女尊男卑なんていう風潮だ」
「…………」
「正直甘く見ていた。いや、過大評価しすぎていた。世界で唯一の操縦者育成機関……どんなものかと思えばこの程度か。来る意味がなかった。無駄足無駄骨。骨折り損の草臥れ儲け。確かに今ではISはスポーツにまでなっているが、どの国でもISを本当にスポーツの器具程度に見ているところなんてない。だからこそ軍用機なんてものが生み出される」
「……あなたは、ISに否定的なの?」
「ISそのものと言うより、ISの扱いに対しては否定的だな。そもそもあれは
「……国の上層部と繋がりがあるものとして、耳の痛い話ね」
意図的に聞かせるように溢された呟きに、俺は何も言わず笑みを向ける。
そんな俺の反応に、彼女の視線がスッと細まり、部屋の温度が少し下がったかのような錯覚に陥る。
まあ、こんなお遊びのような殺気に俺が何か反応を返すわけもない。もう少し本気なら違ったが。
「その目だよ。あなたのその目は、明らかに他の連中とは違う。殺し殺され、命の価値など簡単に踏みにじられる地獄に身を置き、自らの力だけで生き残ってきた修羅の目だ。そんな目ができるあなたに、こんな場所に身を置く価値があるのか甚だ疑問なんだが」
「……価値がなくとも、そうしなければいけない理由があるのよ」
「それは『御実家』の指示かい? それとも日本政府の?」
「…………あなた、一体どこまで知っているの?」
「さあ? 悪いが答える気はないよ。せっかくの手札をこんなところで切るつもりはない」
暫し底冷えするような視線で俺を睨み付けていたが、俺が小揺るぎもせずに受け流しているとやがて諦めたかのように大きく溜め息を吐いた。
「はぁ……資料を見て、何か怪しいな-って思って無理して同室になってみれば、まさかこんな厄介な人だったなんて……かんっぜんに誤算だわ」
そう言って、『不覚』と書かれた扇子を広げる楯無。……今どこからそれを出した?
俺がそれを訊く前に、楯無はしなやかに伸びた細い足をぷらぷらさせながら口を開いた。
「イチカ・ロウ・ヴァンフリーク。幼い頃の災害によって両親を失い天涯孤独の身となったところを、現ヴァンフリークグループ総取締役マギアルカ・ゼン・ヴァンフリークに拾われ彼女の養子となる。それから数年の間を彼女の元で過ごし、彼女が起業した際に秘書として入社。そのタイミングで織斑春万がISを動かしたことで行われた世界中を対象にした調査で見出だされ、IS学園に入学……」
「何か問題でも?」
「いいえ。実際に裏付けを取るために会社の関係者にも話を聞いてみたけれど、あなたのことを知っている人は、誰も彼も懐かしそうに話していたらしいわ。この事からも、データを改竄したわけではないことが分かる。けれど、何故かしらね。あなたの言うところの、地獄を過ごしてきた私の勘が、それだけじゃないって言ってるのよ。あなたには、そして彼女……ソフィー・ドラクロワには、何かがあるって」
「ソフィーにも、か?」
「ええ。むしろ謎の数で言えば彼女の方が多いのだけれどね。けれど、より謎が深そうなのはあなた。だから私はあなたにつくことにしたの。監視と、あとついでに護衛も兼ねて。よろしくねイチカ君♪」
「護衛はついでか……別に要らないんだが。ああ、こちらこそ。元々この問答は互いの不信感を多少なりとも払拭するためのものだからな。打ち解けられたのならよかったよ。よろしく頼む、楯無」
先程までの緊張感などどこへやら。今のやり取りで多少緩められた雰囲気の中で、俺たちは互いに笑みを浮かべて握手をした。
そのまま他愛のない雑談へともつれ込む。和やかに言葉を交わしていると、ふと楯無が探るような視線を向けてきた。
「そう言えばあなた、私が疑っているって言ったときに特に否定もしなかったわね。何か隠してるって認めるの?」
「ん? ああ、認めるよ。確かに俺たちにはお前たちに隠しているものがある」
「……それ、言っちゃってよかったのかしら?」
「構わないからこうして話してるんだ。俺もマギアルカもそこまで躍起になって隠したいわけではないんだよ。俺たちの素性も目的も」
「そうなの?」
「ああ。だから、監視が必要なら好きにしてくれて構わない。存分に俺たちのことについて……あ、いや、俺のことに関しては好きに探ってくれ」
「ふーん……まあ、そういうことなら私も遠慮しないわ。覚悟してよね? 日本の暗部を担う我が一族、更識家の総力を挙げて、私があなたを丸裸にしてあげるから♪」
悪戯っぽく笑って『お覚悟を!』と書かれた扇子を(一体どこから取r以下略)突きつけてくる楯無に、つられて俺も不敵に微笑んだ。
「ね、イチカ君。最後に一つ、ヒントだけもらってもいいかしら? あなたたちの目的はなに?」
「ヒントと言うか、その聞き方は完全に答えを求めてるやつだぞ……そうだな」
目的か。とても一言で説明できるような事情ではないが……
「世界を救いに来た、って言ったら信じるかい?」
そんな風に言ってみると、案の定微妙な表情をされた。然もありなん、と俺は笑う。
さて、話も済んだことだし、そろそろ食事でもするか。
しかし時間的に学食は閉まっているだろう。見越して、荷物を取りに行くついでに食材を買ってきていて正解だった。疲れているなかで料理と言うのは少し怖いが、まあ仕方がない。
椅子から立ち上がり、レジ袋と調理用具一式を持って台所に向かうと、楯無が追いかけてきた。
「イチカ君、料理作るの?」
「ああ。食堂は閉まってるだろうからな。自分で作った方が楽だ。……ああそうだ、楯無、お前はもう夕食は食ったのか? まだならついでにお前の分も用意するが?」
「んー、あなたを待ってて実はまだなのよねー。そうだわ、どうせなら一緒に作りましょうよ。親睦を深めるのも兼ねて♪」
ふむ。それもいいかもしれないな。ここで彼女の腕前を知っておくのもいいだろう。
しかしまあ、その前に……
「それはいいが、楯無。お前
「…………あっ」
いや、エプロンだしある意味合っているのかもしれないが。
ちょっと顔を赤くしながら駆け戻っていく楯無の後ろ姿を見送りながら、俺は我知らず微笑みを浮かべていた。
どうやら、思っていたよりも面白いルームメイトに出会えたようだ、と。そんなことを思いながら。
夜。風呂場にて。
「じゃっじゃじゃーん! 更識楯無呼ばれて飛び出て参ッ・上ッ☆ おねーさんが背中流してあげるわイチカ君!」
「…………何も物理的に丸裸にする必要はないんじゃないかなぁ」
そんなことがあったとかなかったとか。
はいと言うわけで最新話でした。
楯無さん、何か書いてるうちに楽しくなってきて、何故かお出迎えのシーンが凄い長くなりました。そしてイチカのタラシ度(確信犯)が原作を超えている……。
zeroイベもミッション全部終わらせて、必要な素材も全部交換して落ち着いたので、この三連休でもう一話ぐらいなら行けそうです。
あーでも次って言ったら戦闘シーンだもんな-微妙だなー。
何はともあれ、これからもよろしくお願いします。