どうもこんばんは侍従長です。壮絶に遅くなりまして申し訳ありません。
テストやら何やらの忙しさと色々あってモチベが上がらず……ついに三週間以上間が空いてしまいました。
けれどFGOのイベントはしっかりやりました。メカエリチャンもしっかりお迎え。けど単発できたエルドラドの方が優先……アガルタナウだからスゲー微妙な心境。うちの二体しかいない星五不夜城のキャスターだし……アサシン枠のメインのもう片方は不夜城のアサシンだし。
メガロスとレジスタンスのライダーで詰んでる。もうだめたすけて。耐久パが意味をなしてねえんだよ……。
(石220個も貯まってるんだしコンテしちゃおっかな※無課金です)ボソッ
さらに申し訳ないことに今回はいつもより短めです。サクッと終わります。
早く鈴音を出したかったんじゃ……ヒロイン入りするかはわかんにゃいけどとにかく書きたかったんじゃ……。
それに伴い、セシリアのシャワーシーンは割愛。ヒロインならそれはもう事細かに描写したけど、流石にね。
あ、それとバハムートの原作が、15巻が手に入らなくて困ってます……。双と知らずに16巻を買ってワケわかんなくなりました。
まあ、それほど何かが大きく変わったって訳じゃなさそうだったのは幸い……いや、何いってんだ俺。がっつりあったじゃねぇかマギアルカについて。
「というわけで、一年一組のクラス代表は織斑君に決定しました!」
朝のホームルームにて。教壇に立った山田先生の言葉に、教室に困惑したような雰囲気が満ちた。
ふむ、意外だな。ミーハーな女子たちなら、ここぞとばかりに騒ぎ立てると思ったのだが。
どうやら困惑しているのは、名指しされた本人も同じなようで、
「ちょっと待ってください、山田先生! 何でヴァンフリークじゃなくて俺なんですか? 勝ったのはヴァンフリークの方でしょ?」
わりかし素直に敗けを認めるんだな。いや、いつまでも騒ぎ立てるのは周囲にみっともなく映るからか? どっちでも構わんが。
「決まってるだろ、織斑。俺が辞退したからだ」
「なっ、辞退……って、何でだよ!?」
「面倒臭いから。以上」
バッサリと切り捨てると、織斑とクラスメイトたちは呆気に取られたような表情をした。
仕方ないからもう少しだけ説明してやろう。
「あのなぁ……そもそも、入学したてでロクにISにも触れたことがないような連中を集めて競い合って何になる? 体のいい晒し者だろうが。真面目に取り合う必要性なんてない。最初にセシリアがいった通りに、代表候補生として十分な実力を持つセシリアに任せておけばよかったんだ。とんだ茶番だよ」
「え」
「他のクラスだってそんなもんだろう。ついでに言えば、こいつは大仰な言い方をしちゃいるが要するに普通の学校で言う、クラス委員とかそういうやつだ。担任含む教師からしち面倒くさい雑用を押し付けられるのが確定してる役職に、何故自ら従事せねばならん。労力と報酬が釣り合ってないだろう」
「は……?」
「等価交換は基本だろうが。従事者は雇用主に労力と時間を捧げ、雇用主は従事者にそれに見合った報酬を提示する。鎌倉幕府の御恩と奉公、あれと同じだよ。これでも俺は企業の人間なんでね。ボランティアなんかの慈善事業でもない限りタダ働きはしたくないんだ」
『…………』
む、少し喋りすぎたか。
教室内に漂う何とも微妙な空気に、コホン、と咳払いして。
「まあ、何はともあれ。栄誉ある(かもしれない)クラス代表に就任したんだ。頑張ってくれ」
いやぁ、我ながら白々しいなぁ。
§
「畜生が……いいぜ、ヴァンフリーク。徹底的に潰してやるよ」
§
「認めない……あのような者が天才である春万を負かしたなどと……認めるものか……!」
§
「というわけでっ! 織斑君クラス代表就任おめでとう!」
「おめでと~!」
打ち鳴らされるクラッカー。疎らに響く拍手。甲高い歓声。
場所は寮の食堂。集まっているメンバーは一組の面々全員。
何が行われているのか? 愚問である。パーティーだ。
壁には『織斑春万クラス代表就任パーティー』とえらく達筆な字で書かれた紙が貼り出されている。
つまりはまぁ、そういうことだった。
少し準備するものがあって、俺が遅れてやってきた頃にはパーティーは既に始まっていた。
正直こんなパーティーには欠片も興味がないのだが、クラスでの付き合いを考えるとそうも言ってられない。
「何か悪いな、皆。けど、ここまでしてくれたんだ、誰が相手でも勝ってみせるさ!」
「きゃー! さっすが織斑君!」
「応援してるからね! 学食のスウィーツ半年分フリーパスのためにも!」
ほう? それは相手が俺であっても、ということか?
女子に囲まれる織斑を一瞥して、俺はとあるクラスメイトの許へ向かった。
「おーい、のほほんさん」
「あ~、イッチーだ~。こんばんは~」
「はいこんばんは」
こちらを振り返ってふにゃりと微笑むのは、我がクラスメイトの一人、通称のほほんさん。
どう見てもサイズの合っていないダボダボの制服に、いつも眠そうなほにゃりとした顔、間延びした独特な口調、と中々に個性的な少女だ。
本名は
「イッチー遅いよ~。もぉパーティー始まっちゃったよ~?」
「すまんすまん。言われてたものを用意してたら遅くなってな。あとはちょっとした仕上げだけだったんだが、流石に量が量なもので」
「お~っ、そ、それはもしや~!?」
眠そうな目をカッと見開いて、俺が両手にか抱えていた荷物を凝視するのほほんさん。
それを奪おうとのほほんさんの手が延びるが、さっとかわす。
「む~!」
「どうどう、ちゃんと頼まれたものは作ってきたから、少し落ち着け」
どうにかのほほんさんを抑えて、抱えていた荷物を菓子やコップの散乱した机の上に置く。
ドサッ、という音に周囲から視線を集まるのを感じながら、俺は満を持して荷物の封を開ける。
姿を現したそれらを見て、女子生徒たちの間から黄色い歓声が爆発した。
そこにあったのは――ホールケーキ、マカロン、クッキー、ビスケットと言った、大皿に盛り付けられた大量のスウィーツだった。
「わぁーすっご! 何これすっご!!」
「こんな綺麗なの生で初めて見た!」
「お、おいしそー……!」
「ま、眩しい……! もはや眩しい……!」
「ぐあぁぁぁっ! 目が、目がぁぁぁっ!!」
約一名どこかの大佐が居た気がしたが、まあ気にしないでおこう。
うむうむ。好評なようで何よりだ。
「ヴァ、ヴァンフリーク君……これ、どうしたの?」
「差し入れだよ。パーティー用のな」
「さ、差し入れって……こんなの、いくらするの……?」
戦々恐々と言ったようすで聞いてきたクラスメイトに、俺は笑って首を振った。
「何、これは俺が今日作ったものだからな。かかっているのは材料費だけだから、気にせずに食べてくれ。感想をくれると嬉しいんだが……って、どうした?」
俺の言葉を聞いて、何故か女子たちが彫像のように固まってしまった。何だ、いきなりどうした。
「て、手作り……? こ、こんなすごいのを……ヴァンフリーク君、一人でっ!?」
「? ああ。お菓子作りは半分趣味だからな。久しぶりに楽しかったぞ」
……今度は、何故か全員が一斉に崩れ落ちてしまった。
示し合わせたように全く同じタイミングだったため、不覚にも面食らってしまう。
「ま、負けた……女子力で、完敗だわ……!」
「む、無理……料理には自信あったけど、これは無理……!」
「操縦も上手くて立ち居振舞いも完璧で、その上お菓子作りまで……」
「おお、神よ……! 何故貴方はこのような理不尽を許し給うたのか!」
阿鼻叫喚の地獄絵図へと化した食堂。
あー……どうやら俺は、女子たちの触れてはいけない何かに触れてしまったらしい。
気まずく頬を掻いていると、くいくいと袖を引かれる。
そこには只一人、痛痒にも感じていないという風に目を爛々と輝かせるのほほんさんが。
「ね~ね~イッチー! もういい~? もういいよね食べてもぉ~!?」
「ああ、もちろん。遠慮なくどうぞ」
「わぁ~い!」
作ってきたケーキの一つを手早く切り分けて紙皿の上に載せ、スプーンを添えて差し出す。
すると彼女は大喜びで受け取って、満面の笑みでケーキを口に運ぶ。
途端にのほほんさんは顔と雰囲気を普段以上に蕩けさせて、
「おいひぃ~~♥」
……うん。こうも美味しそうに食ってくれるというのは、料理人冥利に尽きるというものだ。まあ、俺は本職ではないのだが。
そんなのほほんさんの様子を見て、他の面々も恐る恐るスウィーツを口に運んで、
「わ、すごっ」
「甘過ぎずくど過ぎない完璧な甘み……!」
「ふわぁ……! く、口の中がアヴァロン……」
先程までの絶望はどこへやら。巻き起こる絶賛の嵐。
しかし、このぐらいは普通じゃないのか……そうか……。
「……よかったら、今度教えてやろうか? お菓子作り含む料理とか。人数的に食堂を借りることになるからそんな頻繁には出来ないが」
「えっ、いいの!?」
「ヴァンフリーク君が先生のお料理教室……アリね!」
「是非是非お願いします! 手取り足取り教えてくだしあ!」
うんうん。意欲があって大変よろしい。
満足げに頷いていると、ふと自分に向けられる強い憎悪の籠った視線を感じてそちらの方へ目を向ける。
そこに居たのは、やはりと言うべきか、織斑と篠ノ之だった。
織斑は一瞬で表情を柔和なものへ変えたが、篠ノ之は依然として俺を殺意に満ちた目で睨み付けている。
俺は少し考えると、机上のケーキを二切れそれぞれ皿に載せて二人へ差し出した。
「……っ?」
「お前らも食えよ。そもそもこの集まりは、お前のためのものだろう?」
「誰が貴様になど――」
「……ああ、ありがとう。いただくよ」
「なっ、春万!?」
怒鳴りかけた篠ノ之を遮って、ケーキへ手を伸ばす織斑。
ふん……俺への嫌悪よりも外聞を取ったか。
織斑はケーキを一口掬って口に運ぶと、
「……美味い。流石だな、ヴァンフリーク」
「お気に召したようで何よりだよ、クラス代表」
フッ、と笑みを残して踵を返した二人の背中を見送る俺の横に、豪奢な金髪の少女が並んだ。
「意外、ですわね。もっとあなたに対する敵意を剥き出しにすると思いましたのに」
「あいつは狡猾なやつだからな。そう簡単に本心は見せんよ」
「狡猾、ですか……」
ぎゅっと眉根を寄せる少女、セシリアに、俺はニヤリと笑った。
「まあ、ただの小悪党である、とも言えるけどな?」
「……ふふっ。ええ、そうですわね」
軽やかに笑うセシリアに、俺は心中で少し安堵した。
あの試合の前に織斑の行った妨害行為は、結局何事もなく流されてしまった。
偏に、証拠がなかったのだ。
状況証拠は十分。だが肝心の物的証拠が存在しない。
格納庫に設置された監視カメラには、確かに整備中の生徒と談笑する織斑の姿が確認されたが、それだけだった。
本人の供述していた機器への接触についても、角度的にカメラに写り込まないように計算されていた。
こんな状況でセシリアが処分を訴えたとしても、負け惜しみとして一蹴されてしまうだろう。
セシリアとしては歯痒い限りだろうが、こうして笑えている辺り、吹っ切れたと見ていいだろう。
「今度はそんな小細工ごと粉砕してみせますわ!」と意気込むセシリア……まあ、頑張ってくれ。
ふむ……まだパーティーも続きそうだし、そろそろ済ませておくか。
俺がこのパーティーに出席した本当の目的を果たすために、俺はセシリアを呼んだ。
「セシリア……少しいいか?」
「はい? ええ、構いませんけれど……」
疑いもせずに付いてくるセシリアに少し罪悪感を覚える。
これから彼女に告げる事実は、ともすれば彼女の世界を根底から覆すかもしれないのだから。
セシリアを伴ってテラスに出る。
周囲の気配を確かめて……窓の鍵をかけた。
流石に驚いた様子のセシリアだったが、俺の真剣な雰囲気を感じてか表情を引き締めた。
そんな彼女に微笑んで、俺は持っていた荷物から紙の束を取り出し手渡す。
怪訝な表情のまま受け取った彼女は中身をざっと目を通して、さらに首を傾げた。
「これは……家名のリストですの?」
「あぁ。まあ、それ自体には大した意味はないんだが。――そのリストは、お前が家督を継ぐ以前にオルコット家の手によって潰された連中だよ」
「はぁ……」
何が何だか、といった表情だが、まあ無理もない。
本題はここからなのだから。
「貴族、商家、企業……と、まあバラバラだが、そいつらには一つだけ、
「手口……?」
「ああ。ほぼ全員、
「え……」
脅迫やら懐柔やら。
オルコット夫婦の不仲は有名だった。故に、利権を狙うハイエナどもはこぞってそこを狙った。
そしてその全てが、セシリアの母親によって叩き潰されていた。
この事実から導き出される結論……即ち。
「お前の母親は、夫であるお前の父親を、いや、父親との夫婦関係を囮にしていた、ってことだ。不仲自体が演技だったんだろうな」
「で、でも……そんなこと……!」
「なら聞くが、お前の父親は、どこか有名な貴族の出だったり、大企業の御曹司だったりしたのか?」
「え? ……いえ、お母様が市井にいらした際に出会われたと……」
「ならなおのこと……不仲だったと言うのに、何故お前の両親は別居することも離婚することもなく一緒に居た? 公務にも二人で向かっていたんだろう? 夫の実家とのパイプを保つため、なんて理由もないなら、嫌悪感を堪えて一緒に居る意味がない」
「っあ」
ひきつったような声を漏らすセシリア。
立て続けに叩きつけられた事柄を、上手く消化しきれていないのだろう。その瞳は困惑で揺れている。
「で、でも……! 本当にそうなら、どうしてわたくしにそれを言ってくださらなかったんですのッ!?」
「決まってるだろう。……全部、お前を守るためだったからだよ」
「――――」
そう。
周囲からの侮蔑も、世間での醜聞も……娘からの嫌悪も。
それらを厭わずに自ら汚名を被ったのも、全ては、愛する娘のため。
利権にたかるハイエナどもの牙を、何よりも大切な娘へ向けさせないために。
「あっ…………あぁぁ、お母様……お父様ぁ……!」
ついにセシリアは、顔を覆って泣き崩れてしまった。
その涙は後悔などの感情も含まれているだろうが……それでも、彼女にとって必要なものだ。
月明かりの下で輝く雫は、まるで宝石のようで。
「今度、実家の誰かに話を聞いてみるといい。ご両親が亡くなる以前にオルコット家に仕えていた部下のかたも居るだろう」
「っ……はい、はい……っ」
泣きながら何度も頷くセシリア。
何も言わず肩を擦ってやっていると、セシリアは目元を勢いよく拭って立ち上がった。
「ありがとう、ございます……イチカさん。心から感謝を」
「……まあ、気にするな」
「いいえ、気にしますわ。あなたが教えてくださらなければ、わたくしはお父様を一生恨んだままだったでしょうから」
「……そうか」
「はい!」
飛びっきりの笑顔を浮かべて頷くセシリアに、俺も釣られて微笑む。
「早速聞いてみますわ!」と意気込んで去っていくセシリアを見送って、ハァ、と
テラスの手摺に体を預けて脱力。
そして、ふと視線を扉の方へと向ければ、小柄な人影が見える。
「もういいぞ。――楯無」
「……バレてた?」
バツが悪そうにしながら姿を現したのは、IS学園生徒会長にして我がルームメイト、更識楯無だった。
「盗み聞きとは感心しないな、生徒会長サマ?」
「……エヘッ☆」
キラリ、と、擬音が付きそうな笑みを見せる楯無に、俺は呆れを多分に含んだ視線を向けた。
すると楯無は、先程の俺のように、ハァ、と溜め息を吐くと、
「ごめんなさいね。イチカ君に会いに来たらオルコットさんを連れて出ていくのが見えたから……私にも、更識の当主として、監視対象であるあなたと英国の代表候補生の密談を放ってはおけなかったのよ」
「人聞きの悪い……と言いたいところだが、その辺りは理解しているさ。ここで聞いた内容を無闇に言い触らすことがないのならば言うことはない」
「大丈夫よ。私は更識であると同時に、この学園の生徒会長。生徒を守る義務がある。彼女の害になるようなことはしないと誓うわ」
真剣な目でこちらを見つめる楯無に、俺は一つ頷く。
元より楯無を疑ってなどいない。だからこそ、彼女に聞かれていると承知の上であの話をしたのだ。
「けど驚いたわね。オルコット夫妻の関係に、そんな裏があったなんて」
「冷静に考えれば矛盾だらけの関係だ。セシリアが気付く可能性も十分にあった」
「驚いたって言うのはそれだけじゃなくて……あなたが行動を起こしたこともよ」
「…………」
探るような視線を向けながら、彼女は静かに続けた。
「この一週間、あなたと一緒に過ごしてきたのは誰だと思ってるの? 一瞬で相手の全てを暴いてしまうあなたでなくとも、ある程度はあなたの人間性も見えてくる」
「…………」
「あなたは、相手に請われたり危急の事態にならない限り相手の事情に必要以上に踏み込むことはしない。それは冷たいのとは違う。何を知っていてもあくまで自分は他人でしかないと弁えているから」
「……調べたのは俺ではなく社の人間だがな」
「同じことよ。例えあなたが依頼したわけでなくとも、あなたは自分の意思で、彼女に真実を伝えた。……ましてやオルコットさんは数日前に出会ったばかり。まだ友人ですらなかった。そんな風にしてあげる義理なんてないはずよ」
「……そうだな」
「聞いてもいいかしら? 何故、そんなことをしたの?」
§
「聞いてもいいかしら? 何故、そんなことをしたの?」
問いを口にして、私――更識楯無は目の前の青年、イチカ君を見つめた。
これまでずっと観察してきた中で見えた彼の人間性からして不自然な行動。
もしかしたら、彼の謎に包まれた素性のヒントが得られるかもしれない。
――イチカ・ロウ・ヴァンフリーク。
今年からIS学園に入学してきた、二人目の男性操縦者。
ヴァンフリークグループ総取締役マギアルカ・ゼン・ヴァンフリークが起業した際、彼女の秘書として入社。
元は孤児で、マギアルカ氏に拾われたとあるが……それ以前の経歴は、不明。
彼がいくらでも調べていいと言ったので、早速調べてみたのだが、結果を言えば何も分からなかった。
どれだけ調べても出てこないのだ。かつてのイチカ・ロウ・ヴァンフリークについての情報が。
まるで、痕跡一つ残さずこの世界から消え去ってしまったかのように。
果たして……彼は、ゆっくりと俯けていた顔を上げて、私を真っ直ぐ見据えた。
「せっかくの家族なんだ。いつまでも……亡くなってしまってからも、争っていてほしくはないだろう?」
口にしたのは、常識的な倫理観を持っていれば誰もが口にするであろう一般論。
けれど――彼の闇を切り取ったかのようなその瞳には、言葉以上の感情が渦巻いていた。
羨望、嫉妬、諦念、後悔、自嘲、悲嘆……ありとあらゆる負の感情が込められたその瞳に吸い込まれてしまいそうな……そんな錯覚さえ感じる。
「セシリアは運が悪く、また運が良かった。亡くなってしまってからでしか御両親の真意を知れず、しかし知ることができた」
「…………」
「まだ、取り返しがついた」
淡々と語る彼の声からは、必要以上に感情が削ぎ落とされていて。
また、その言葉に……誰よりも大切な、たった一人の妹のことを思い出して、ズキッ、と胸に痛みが走った。
観察眼に優れた彼がそんな私を見逃すはずもなく。
「お前も、何か問題を抱えているなら自分から行動を起こした方がいい。時間が解決してくれるなんて考えるな。よかれと思って、なんて言い訳にもならない」
やはり、淡々と。声を荒げるでも、潜めるでもなく。
まるで独白するように。透徹した目でどこかを見据えて。
少し目を離せば消えてしまいそうな儚さを纏った彼に、私は何も言えなかった。
思考が漂白されて、ただ彼の整った顔を見つめるだけ。
固まってしまった私の表情を見て、イチカ君は苦笑。億劫そうに歩き始めた。
俄に反応できない私の横を通り抜け様、彼は耳元でそっと囁いてきた。
「――第二回モンド・グロッソ――」
「……え?」
鸚鵡返しに聞き返すが、彼は振り返ることもせずに
「好き勝手言った詫びだ。ヒントだよ」
ヒント……イチカ君の過去に繋がる……ヒント?
そのままテラスから出ていってしまった彼を見送ってからも、私の思考は停滞したままだった。
§
「あぁ……まったく。お前の言う通りだよ、楯無」
「何してんだろうな、俺は……」
§
水面に浮かぶ月の影が、ゆらりゆらり。二人の少年少女の心を映し出すように、緩やかに揺れていた。
と、前書きからもわかる通り、この話書き始めたの大分前です。
駄目元の10連でシトナイちゃんお迎えしたので死ぬ気でロストベルト進めてます。オニランドいきたい。
あとヴェンデッタもはじめて時間が全然足りない。
次は例によって間が空くと思います。
影の薄いアイリのエクストラでも書こうかなぁ。