インフィニット・オーバーワールド   作:マハニャー

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 どうも侍従長です。
 遅れてごめんなさい(恒例)。

 作者の息抜きも兼ねて、出番の少ないアイリ回。後半はルクス(彼女のお兄さん)とのオハナシ(肉体言語ではない)。
 というかたぶんこの一夏じゃルクスには勝てない。


Sub-story.1 アーカディア兄妹との一日

 世界の命運をかけたフギル・アーカディアとの決戦から数ヵ月。ある春の麗らかな日。

 俺こと織斑一夏は、ソフィーを伴うこともなく、単身アティスマータ新王国の王都に来ていた。

 もちろんただの観光ではなく、『七竜騎聖』補佐官としての公務の一貫だ。

 尤も、ついでに普段あまり会えない彼女(・・)との時間を作ってやるという目的もあるのだが。

 

 王城に程近い場所にある大きな噴水の縁に腰かけて、俺は何をするともなしに周囲を眺める。

 ロードガリアの名を冠する街は、王都の名に恥じない賑わいを見せていた。

 かつての戦い、最終決戦の舞台となったのはまさにこの街だ。激戦の傷跡はあちこちに残っている。

 一部倒壊した建物が散見されたり、抉れた街道などが目に入ったりもするが、そこで暮らす人々の表情に悲観的なものはない。

 道行く主婦も、客引きをする露店商も、胴馬声で怒鳴る大工の棟梁も、元気よく遊ぶ子供たちも。

 誰も彼も、突如降りかかった災禍にも屈さず、明日へ進もうと言う眩しいほどの希望の輝きが見える。

 この光景には、戦乱の混乱を見事鎮めて見せた現女王の尽力もあったのだろうが……俺たちや、友人であるルクスたちの働きもあってのものだと思うと、何とも誇らしい気分になれる。

 

 思わず、ふっと口許を綻ばせると、不意に目の上に柔らかい何かが押し当てられ、視界が塞がれてしまった。

 続けて聞こえてくる、どこか恥ずかしそうな澄んだ声。

 

「だ、だーれだ?」

 

 ……正直、視界を塞がれても気配と声だけで下手人が誰かなどすぐに分かるのだが、野暮なことは言うまい。

 俺は我知らず口許に笑みを刻みながら、目の上に置かれた手を優しく握る。

 驚いたようにその手が震え、動きを止めた隙に、俺は一気に背後へ振り返って、

 

「……ぁ」

「やぁ、アイリ。随分と可愛らしい悪戯をするようになったな?」

「……えへ」

 

 からかうように言うと、その少女――アイリ・アーカディアは可愛らしくはにかんだ。

 今日の彼女は、春の日にマッチしたシンプルな萌葱色のワンピースを着ていた。随所にフリルが付けられているがそれが悪目立ちしない絶妙な塩梅の辺り、制作者の腕前を推し量れる。

 ワンピースの裾から伸びる折れそうなほどに細い手足に、柔らかな日差しを反射して淡く輝く銀髪も相俟って、正に妖精のよう、という形容が相応しかろう。

 現に、既に周囲からかなりの視線を集めている。

 

 見せつけるように、アイリの髪をそっと撫でると、猫のようにうっとりと目を閉じた。

 彼女はこのスキンシップがお気に入りなのだ。

 

 

「えっと……一夏さんに会いに行くって言ったら、ティルファーさんにやってみろって言われて……」

「ティルファー……ああ、三和音(トライアド)の真ん中の娘か」

「何だか三つ子みたいな言い方ですね……そ、それで、一夏さん。その……」

「ん?」

 

 顔を赤くして俯いたアイリは、ワンピースの裾をきゅっと握って、上目使いにこちらを見上げて、

 

「このワンピースも、皆さんに見繕ってもらったんですけど……その、どう、です、か?」

 

 期待と羞恥、少しの恐怖に瞳を潤ませて、おずおずと訊ねてくるアイリのその姿は、どこか小動物のようで。

 端的に言って、クるものがあった。大抵の男ならこの表情をされただけでノックアウトされるだろう。

 これが完全に無自覚無意識だというのだから、恐ろしいものだ。

 だが、例えその表情がなくとも、俺が返す言葉は決まっていた。

 

「もちろん、よく似合ってる。可愛いよ、アイリ」

「……ほんと、ですか?」

「ああ。嘘なんて言うものか」

「……えへへ」

 

 嬉しそうに顔を赤くしてはにかむ表情の、恐るべき破壊力よ。

 美少女なんぞソフィーで見慣れている俺でさえ、グラッと行きかけた。

 多分ソフィーと違って、演技っぽさがないからだろうな。出来るだけアイリにはこのままで居てほしいものだが、ソフィーとかなり仲良くしているらしいので心配ではある。

 いやまあ、ソフィーとアイリで俺を挟んで愛憎入り乱れた泥沼の争い、なんてことになっていないだけ感謝すべきなのだろうが。

 ……一番悪いのは、アイリからの想いを自覚しておきながらはっきり告げられていないのをいいことに目を背けている俺だという事実は棚にあげる。

 

「……さて、ずっとこうしてもいられない。時間は有限なんだから、行こうか? 王都、案内してくれるんだろう?」

「あっ、は、はい! 任せてください!」

「相手の女子にエスコートされるというのも、複雑な気分だけどな」

「ふふっ、なら今度は一夏さんにエスコートをお願いしてもいいですか?」

「何なりとお申し付けを。どこへでもご案内いたしますよ、お嬢様?」

 

 芝居がかって言った台詞に返ってきたのは、思わず見とれてしまいそうな柔らかい微笑。

 

 今日はいい一日になりそうだ、なんて我ながら現金なことを考えながら、案内人兼本日のデートの相手に並んで歩き始めた。

 

 

 

§

 

 

 

 それからの俺たちは、アイリの案内に従って王都内を歩き回った。

 主に見て回ったのは、日頃人が多く集まる主要な公共施設などだ。

 あの戦いで、ロードガリアは幻神獣(アビス)の大群に襲われたりなど壊滅的な被害を受けた。

 しかし、この国の住人は思っていたよりずっと逞しかったようで。主な施設はほとんど元通りになっていた。

 幻神獣(アビス)の死骸が一まとめにされて捨てられているのを見たときには度肝を抜かれた。

 丁度今夜、それを燃やしてマイムマイムする予定だったらしい。……何も言うまい。

 

 几帳面なアイリらしく、滑らかな語り口で、簡潔で分かりやすいよく整理された説明だった。

 素の記憶力がいいのだろう。質問をして、答えが返ってこなかったことはなかった。

 

 そんなアイリは俺の傍らを少し弾んだ足取りで歩いていた。

 その表情は穏やかに微笑んでいて、楽しそうである。

 俺たちの距離は大したものではない。どちらかが手を伸ばせばその手を取ることが出来るだろう。

 だが、俺もアイリもそうすることはない。

 こちらとしては別にそうしてもいいのだが、アイリは何というか控えめな性格で、こうして隣を歩いているだけで満足らしい。

 

 ロードガリアにはあまり来たことがなかったからな。アイリに頼りっぱなしで情けない限りだ。

 どうにか彼女を労うことはできないものか……そんな思考を始めたところで、

 

「あっ……」

「ん? ……あぁ」

 

 不意に立ち止まったアイリの視線を追えば、そこには、俺の世界で言うクレープを売っている露店が。

 

「欲しいのか?」

「えっ!? あ、い、いえ、大丈夫です! 時間もあまりありませんし、またいつでも食べにこられますから……」

「食べたいのは否定しないんだな。……よし」

「い、一夏さん? あ、あの……っ?」

 

 まだぐちぐちと言い訳するアイリを無視して、その露店の店員に話しかける。

 

「すまない。これを二つくれ」

「はーい! チョコとストロベリー、どちらにしますー? あ、ミックスっていうのもありますけどー」

「なら俺はチョコで」

「はーい。そちらの彼女さんはどうしますー?」

「か、かのっ……!?」

「……あれー? もしかして違いましたー?」

 

 純粋な表情で店員の少女から放たれた問いに、赤面して固まるアイリ。

 そんな彼女も可愛らしいが、それはともかく注文しなければならない。

 

「アイリ。君はどうする?」

「あ……で、でも私は……」

「遠慮するな。これは、今日案内してもらったことに対するせめてもの礼だ。受け取ってくれ」

「…………わ、わかりました。じゃあ、私はストロベリーを……」

「はーい! 少々お待ちくださいねー!」

 

 俺たちからの注文を受けるや否や、少女の手が目にも留まらぬ速度で動き始めた。

 鉄板で生地を焼いて、クリームや具を乗せて、形を整えてソースをかけて包み紙を巻いて。

 数秒と経たずに完成させた少女に拍手を送って、俺は二人分の代金を払ってクレープを受け取った。

 

「あ、お金……」

「お礼だって言っただろう? 俺の奢りに決まってる」

「えと……ありがとうございます、一夏さん」

「どういたしまして」

 

 喜びながらも礼を言うことを忘れないのは流石と言うべきだろう。

 隠しきれない嬉しさを滲ませて、アイリは早速小さな口を開けてクレープにかじりついた。

 途端、その表情が分かりやすいほどに輝いた。

 

「美味いか?」

「はい!」

「それはよかった」

 

 素直なアイリに微笑んで、俺も自分の分を口に運ぶ。

 ふむ……甘い。甘いが、しつこすぎないいい塩梅だ。

 向こうのクレープよりやや生地が厚い感じがするが、それも気にならない範囲。あとでレシピを聞いておこうか。

 

「アイリ、そっちの味も気になるんだが、いいか?」

「えっ!? は、はい……」

 

 あ、しまった。ついソフィーと接するときのようにしてしまった。

 訂正を入れようとするが、はにかみながらクレープを差し出してくるアイリに口をつぐむ。

 内心で謝罪しながら、それに口をつけた。

 舌の上に濃厚な甘味を感じるが、ストロベリーよりも真っ赤になったアイリに微妙な雰囲気になる。

 

「あ、あの!」

「ん?」

「い、一夏さんのも、いただいてもいい、です、か……?」

「……ああ、どうぞ」

 

 意を決したように訊いてくるアイリに、少し驚きながらクレープを差し出す。

 瞳を閉じて髪を耳にかけ、小さな口を開けるアイリの姿が妙に色っぽい。

 パクリと一口かじると、口許を押さえて元の体勢に戻る。

 

「あー、どうだ? 味は」

「えと、美味しい、です」

「…………」

「…………」

 

 何だこの空気は。

 ソフィーのやつは割と最初から開けっ広げだったから、実を言うとこういう雰囲気には慣れていないのだ。

 

 やがてアイリは何かを誤魔化すように赤い顔で笑うと、俺の手を引いて歩き出した。

 

「さ、さあ一夏さん! まだ案内したい場所はありますから……!」

「あ、おいアイリ、それは分かったが少し落ち着いて……」

「きゃっ……!」

 

 注意を促すが、時既に遅し。

 案の定側溝に足を引っ掛けてよろけたアイリを、慌てて手を伸ばして抱き留める。

 ついでに投げ出されてしまった食べかけのクレープも回収。

 何事もなかったことに安堵してアイリへ目を向ければ、思いの外至近距離に彼女の顔があって思わず硬直する。

 

「一夏、さん……」

「――すまない。わざとじゃないんだが」

「いえ……ありがとうございます」

 

 そっとアイリの体を離そうとするが、きゅっと服の裾を握られて動きを止める。

 アイリはどこか懐かしそうに目を細めて。

 

「……私たちが初めて顔を合わせた時も、こんな感じでしたね」

「ああ……そうだったな」

「あの時は、あなたとこんな風に、で、デート……するようになるなんて、思いもしませんでした」

「それは、俺もだな。あの時の君への印象は、同僚の妹ってそれだけだった」

 

 正直な俺の言葉に、アイリはくすりと微笑む。

 

「私、ずっと自分のこと、何も出来ない、無力な存在だと思ってて……兄さんのために、せめてこれぐらいは、って社交界に出て……王国の人たちと仲良くなったりして……そんなことしか出来ない自分が嫌で」

「…………」

「でも、あの日、あの時、あなたがかけてくれた言葉に励まされて……私は、自分を誇ってもいいのだと、知ることができました。そして、こんな……嬉しいような、苦しいようなこんな感情も、初めて知りました」

「……そうか」

 

 

「だから……ありがとうございます、一夏さん……大好き」

 

 

 俺の頬にそっと手を添えて。ふわりと、柔らかく微笑んで。

 そんな彼女の表情は、これまで見てきたどんな表情よりも透き通っていて……綺麗で。

 

「アイリ……」

「一夏、さん……」

 

 まるで吸い寄せられるように、二人の顔が少しずつ近付いていく。

 アイリがすっと目を閉じて、俺もまた瞼を――――

 

「おっ、おー……だ、大胆だな、妹も、一夏も……」

「出歯亀は趣味が悪いわよ、お姫様?」

「そういうあなたも、興味津々……はむ」

「こ、こんな往来でだなんて、少し羨ましいです……ハッ!? わ、私は何を!?」

「あらあら……お世継ぎは、アイリさんの方が早そうですわね、主様」

「あはは……嬉しいけど、兄としてはちょっと複雑かなぁ」

 

 閉じようとして、聞き覚えのある声に反射的に顔を上げる。

 少し遠巻きにして俺たちを眺めていたのは、否が応でも目立つ男女六人。

 簡単に言うと、没落王子と愉快なハーレムメンバーたちである。

 ……我ながら酷いな、この呼び方。

 

「えーと……こんにちは、一夏、アイリ」

「……ああ、こんにちは。リーズシャルテ姫殿下におかれましても、ご機嫌麗しゅう」

「ん、こんにちは」

「おう、元気そうだなフィー」

 

 何とも微妙な空気で挨拶を交わす俺たち。

 その中でふと、先程からアイリが一言も発していないことに気が付いて腕の中に目を向ければ。

 

「~~~~ッ!!」

 

 俺の服に顔を埋めて悶絶していた。僅かに覗く耳が真っ赤に染まっていて、途方もない羞恥に駆られていることが容易に伝わってくる。

 ……いや、まあ、恥ずかしいよなぁそりゃあ。

 表面上は平然としているが、俺とてこの状況でルクス(アイリの兄)と顔を会わせるのは運命を呪わずにはいられない。

 

 そんな俺たちを見て、ドリル姫……間違えた、リーズシャルテ姫は頬を掻きながら気まずげに、

 

「あー……邪魔した、よな?」

「…………ええ、まあ。できれば自重していただきたかったところですが」

 

 俺の言葉に、自覚があったらしい二つの金色と青の顔が逸らされる。

 

「……言い訳しておくと、一応私は止めたのよ? 下世話なことはやめなさいって」

「なっ、クルルシファーお前! むしろノリノリで覗いてたくせに! セリスだって何だかんだ言いながら興味津々だったじゃないか!」

「な、何を言うのですかリーズシャルテ!? わ、私はただアイリが心配で……決してルクスと私に置き換えたりだなんてそんな……!」

「……全部自分で言ったわね、この隊長様。まあ、気持ちは分からなくもないのだけれど」

「ほら見たことか! 結局セリスだってむっつりじゃないか! ……ま、まぁ、私だって、少し羨ましかったり……」

 

 口論していたかと思えば、三人揃ってルクスに意味ありげな視線を向ける国家レベルの重要人物たち。

 何と言うか……他所でやれよ。

 

 溜め息一つ。同じく溜め息を吐いていたルクスと苦笑を向け合う。

 ……お前、逞しくなったな。

 

 

 

§

 

 

 

 その日の夜。新王国王宮の、とある応接室の一つにて。

 女王陛下への使者としての仕事を終えた俺は、チェス盤を挟んで対面の人物………ルクス・アーカディアと向かい合っていた。

 

「……チェックメイト」

「……参りました」

 

 俺の勝利宣言に、両手を挙げて返したルクスは苦笑しながら、

 

「いやぁ、一夏は強いなぁ。終始押されっぱなしだったし」

「ルクスは割と素直だからな。手の内が読みやすいのさ」

「……クルルシファーさんとやった時も、同じこと言われたよ」

「何だ、エインフォルクとやったことがあったのか」

「うん。色々あって、クルルシファーさんの弱点を探そうってなってね」

「いや……何でそこでチェスを選んだ。どう考えても得意分野だろう」

「うっ……」

 

 と、和やかに談笑する俺たちだったが……まだ、本題と言える話をしていない。

 そもそもラフィ女王陛下との謁見を終えた俺をここに呼んだのはルクスなのだ。

 まぁ……ルクスのほうから誘ってくる話など、一つしかないのだろうが。

 

「さて……チェスも一段落したし、そろそろ本題に入ってもいいかな?」

「構わないよ。大体何の話かは分かるからな」

「話が早くて助かるなぁ。……うん、お察しの通り、アイリのことだよ」

 

 ……やはり、な。

 部屋の空気が少し変わったような錯覚を覚える。

 話を切り出したルクスは、どこか透き通るような微笑を浮かべて、

 

「僕は、アイリに心配をかけて、泣かせてばかりの不甲斐ない兄だけれど……それでも僕は、アイリの『兄さん』なんだ」

「……ああ」

「だから僕は確かめなきゃいけない。たった一人の妹が初めて好きになった人のことを、さ」

「…………」

 

 ルクスは、その灰色の双眸で俺を真っ直ぐ見据えた。

 

「一夏。君は、アイリのことをどう思ってるの?」

「――……俺は」

 

 答えようとして、言葉を止める。

 これは俺にとってもルクスにとっても……そしてアイリにとっても重要なやり取りだ。

 胸に手を当て、もう一度考えてみる。

 

 ……俺は彼女を、アイリ・アーカディアを、どう思っている?

 

 それこそが、ルクスへの、そして有耶無耶になってしまったアイリの告白への答えとなる。

 

 好きか嫌いかで言えば、間違いなく好きの部類に入る。

 彼女から向けられる好意も嬉しい。それは嘘じゃない。

 だが、俺のこの感情は、本当にアイリのそれのような、恋愛感情なのか?

 

 もしそうなら、ソフィーは? アイリより先に出会い、アイリより先に好意を告げられたあの後輩へは?

 体まで重ねておきながら答えを返せなかった俺は最低だと自覚しているが……それでも、答えを出すことができなかった。

 俺の根幹に根差す失うことへの恐怖は、今尚薄れることなく残っている。

 

 黙りこくってしまった俺を見て、ルクスは苦笑して、

 

「まあ、君にはソフィーさんも居るから、悩むのはわかるけど」

「…………」

「それとも……君の過去の経験からかな(・・・・・・・・・・・)?」

「――――知っているのか?」

 

 思わず顔を上げて訊けば、ルクスはどこか面白がるような笑みを浮かべていた。

 

「前にマギアルカ隊長から聞いたんだよ。一夏をよろしく頼む、って言ってた。あの人もあんな顔をするんだ、ってちょっと驚いたよ」

「……プライバシーってものを考えろよ」

 

 頭を抱えるも、少しだけ感謝。

 同性の親友に自分の過去を赤裸々に語るなんてことをせずに済んだのは助かったと言っていいだろう。

 

「正直、君が元居た世界、そして君の町の人たちには色々言いたいことと言うか腹に据えかねるものがあるんだけど……それを踏まえた上で、一つだけ言わせて欲しい」

 

 そこでルクスは言葉を切って……次の瞬間、彼の表情が一変する。

 目元に皺を寄せて、口許を引き結んで、厳しい目で俺を睨んで……端的に言って、怒りの表情へと。

 

「アイリを、僕の妹を、馬鹿にしないでくれ」

「……!」

「あの娘は本当に優しくて、本当に強い娘だ。余程のことがなければ君を見捨てたりしない。例え君が罷り間違って世界から追われる立場になってしまったとしても、きっとアイリは君に付いていく」

「…………」

「そしてもし、君がどうしようもない外道に、悪に堕ちてしまったとしても。きっとアイリは君の傍を離れずに、ひっぱたいてでも連れ戻そうとする。……そういう娘なんだよ。君ならよく分かってるはずだろう」

「……そう、だな」

 

 ……思わず、納得してしまった。ルクスの言うその光景が容易に想像できる。

 ああ、まったく……俺の周りの女の子たちは、揃いも揃って強い娘ばかりだ。

 

 そんな感傷的な気分に浸っていると、不意にルクスから殺気のようなものが漂ってきた。

 首を傾げてその表情を窺えば、妙に凄みのある笑顔を浮かべていて、

 

「まあないと思うけど、もし万が一、君がアイリに本気で嫌われるようなことをした場合……分かるよね?」

「…………」

 

 言いながら、腰の機殻攻剣(ソード・デバイス)に手を添えるルクス。

 さしもの俺も頬を引きつらせるしかない。このシスコンめ……。

 尤も、俺とてそんな気はない。

 

「安心しろ。……少なくとも、アイリを泣かせるようなことはしないと約束する」

「うん、それで十分だよ」

 

 やれやれ……面倒臭いとも思うが、これが本当の兄妹というやつなのだろう。

 

「というか、そんな大事な妹を俺に預けていいのか?」

「君だからこそ、だよ。あの戦いを通じて君の人間性は知ってる。だから任せるんだ」

「……そうかい」

「ああ。――妹を頼んだよ、親友」

「――任せろ、親友」

 

 そう言って、俺たちは笑い合った。

 

 

 

§

 

 

 

「いやぁ、大変だね一夏も。人気者でさ」

「……………………………………」

 

 

 

 ……………………………………おまいう。




 アイリの出番増やそうとか言ってたら今度はソフィーの出番がなくなってることに気がついた。

 鈴のお話になったら……たぶん、出番は増えるはず、たぶん!
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