インフィニット・オーバーワールド   作:マハニャー

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 どうも侍従長です。

 ロストベルト3やイベントで忙しく更新できませんでした……。ブラダマンテちゃん欲スィ……けどぐっちゃんと項羽に全部使ってもうた……。
 ストーリー更新した直後にかわいい鯖追加すんのやめてほしいですわぁ……。

 そんなこんなでパソコンに向かってたら、いつの間にか俺ガイルとワルトリのクロスオーバーのプロローグが書き上がってた話。……何があった?

 何はともあれ、今回は戦闘八割です。
 もちろん戦うのはあの人。機体はサブタイからお察しの通り猫耳アーチャーでございます。
 後半興が乗ってかなり無理のある展開になってますが、深夜テンションなので許して(懇願)


Story-19 翡翠の狩人

 どうしてこうなった。

 俺、イチカ・ロウ・ヴァンフリークは、目の前の光景にしみじみそう思った。

 

 場所はお馴染み第三アリーナ。その観客席に俺の姿はあった。

 フィールドにISを纏って佇むのは、今の俺の新たな友人たる(ファン)鈴音(リンイン)と、我が後輩ソフィー・ドラクロワ。

 

『さぁ……準備はいいかしら?』

『えぇ。いつでもどうぞ』

 

 不敵な笑みを浮かべる二人の少女……。

 

 さて、もう一度言おう。

 どうしてこうなった?

 

 

 

§

 

 

 

 事の発端は、凰と再会した翌日、ホームルームが終わって直後のことだった。

 のほほんさんをはじめとする女子たちに別れを告げて立ち上がったところで、我らが1組の教室を襲撃したのは、やはりというか凰だった。

 扉を勢いよく開け放ち、仁王立ちで俺を真っ直ぐ指差して、凰は不敵な笑みを浮かべた。

 

「ヴァンフリーク! 私と試合をしなさい!」

「……は?」

「場所は第三アリーナよ。先生の許可は取ってあるから場所の心配はしなくていいわよ」

「手が早いな……いやそうではなく、何故?」

 

 教室まで乗り込んできたかと思えば、いきなり喧嘩を吹っ掛けてくるチャイナ娘。

 みょんみょんと跳ねるツインテールに気を取られつつ、その故を問えば、

 

「だってあんた、強いんでしょ?」

「はぁ、まあ」

「だからよ」

「…………」

「…………」

 

 ……説明終わり?

 

 困惑する俺に構わず、凰は胸の前で腕を組む。

 

「アンタが春万に勝ったって聞いてね。あのバカ、性格はゲス中のゲスだけど、才能だけは本物だもの。腹立たしいことにね。ゲスのクセに」

「……そうか」

「そんな春万をボッコボコにしたって言うアンタの実力を、是非とも見せて欲しいのよ。どう?」

 

 後ろから抗議の声が聞こえた気がしたが、まあ気のせいだろう。

 

 ふむ。……まあ、俺としては別にどちらでもいいのだが。精々個人練習の時間が減るぐらいで特に実害はない。

 中国の代表候補生の実力を実地で体験できるのならば、それはむしろ大きなメリットとなるだろう。

 周囲の生徒たちが固唾を飲んで見守る中、俺は承諾の言葉を返そうとして、

 

「――その話、ちょぉっと待ったぁ!」

 

 出鼻を挫くように聞こえてきた声に、凰の後ろへ目を向ければ、そこには凰に負けず劣らずの偉そうなポーズを取るソフィーの姿が。

 何故か胸の前で腕を交差させ、左手で片目を隠して……また漫画でも読んではまったか?

 いやそもそも、いきなりやってきて何いってんだお前。

 

「アンタ……ソフィーだったわよね。どういうことよ?」

「ふふふ……決まってるでしょう。不肖わたくし、先輩の可愛くて強いパーフェクトキュートな後輩、ソフィーちゃんが、果たしてあなたが先輩の相手をするに値するか否かを見極めて差し上げます!」

 

 相も変わらずふざけたポーズとふざけた自己紹介だったが、言っていることは本気のようだった。

 しかし意外にも凰は乗り気になったようで、

 

「ふぅん? そう言えば、アンタも専用機持ちだったわね。本気なの?」

「ええ、もちろん本気です」

「私は代表候補生よ? 本気で勝てるとでも?」

「言わずもがな。私って負けず嫌いなので、勝てない勝負ってしない主義なんですよ」

「……へぇ」

 

 意訳すると、「お前相手とかマジ楽勝過ぎワロタだから喧嘩売ってんだよ言わせんなタコ」というソフィーの言葉を聞いて、凰はピクリと眉を跳ねさせた。え? 超訳? 何のことやら。

 まさに一触即発。共に笑顔で睨み合う二人はしかし、それ以上言葉を交わすこともなく、颯爽と踵を返した――

 

「……これ、どういうことなの~?」

「さぁ……」

 

 いやぁほんと、どうなってんだろうな。

 俺、当事者だったはずなんだがなぁ……。

 

「とりあえず、アリーナに向かいませんこと? わたくしもあの二人の試合は気になりますわ」

「……そうするか」

 

 そう言うセシリアの声は、高揚に弾んでいた。まあ、滅多に見られない戦いではあるか。

 釈然としない思いを抱えつつも、のほほんさんとセシリアを連れて俺は指定された第三アリーナへ向かうのだった。

 

 

 

§

 

 

 

 というわけで、話は冒頭に戻る。つまりは全て成り行きで、俺の存在は一ミリたりともこの状況に関与しちゃいないのだが。

 

 それなりに早く着いたはずの俺たちだったが、意外や意外、アリーナの席はその半分以上が埋まっていた。

 何でも、俺とは違ってコミュ力お化けなソフィーは入学数週間で既に相当数のお友達を作っているらしく、俺とのこともあって校内ではそれなりの有名人なのだとか。

「やっぱりたった二人の男子ってブランドには勝てないんですよねー……」と愚痴られたことがある。それを俺に言ってどうする。

 ともかく、そんな有名人と中国から来た代表候補生の試合ということで、この試合の注目度はそれなりに高い。

 

 二人の実力を推し量ろうとする者、物見高く見物に来た者、ネームバリューに釣られて来た者。

 多種多様な視線を向けられる張本人たる二人はといえば。

 

 中国の代表候補生、凰鈴音が纏うのは、真紅の龍。

 その手には、両端に刃の着いたあまりにも特異な青竜刀。いや、あれはもはや斬馬刀と言った方がいい気がする。

 しかし何より特徴的なのは、両肩の横に浮かぶ、棘つき装甲(スパイク・アーマー)の形状をした非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)であろう。

 

 あれこそが、中国が誇る第三世代機《甲龍(シェンロン)》である。

 

 対して、凰の対面に立つソフィーを彩るのは、凰の《甲龍》と補色をなす翠。

 翠と黒を基調に組まれた装甲は、極端なほどに無駄を削られており、猫耳を模したヘッドドレスも相俟ってしなやかな獣のような印象を受ける。

 腰の辺りには矢筒を模した非固定浮遊部位が浮いており、細やかな手で構えられるは大弓。

 

 かの天災が、ソフィー・ドラクロワのためだけに用意した、第四世代(・・・・)

 ギリシャ神話の純潔の狩人より、名を《アタランテ》と言う。

 

 共に戦闘準備を終えた二人は、口許だけの笑みを浮かべて言葉を交わす。

 

『さぁ……準備はいいかしら?』

『ええ、いつでもどうぞ』

 

 既に開始の合図は鳴らされている。後は、動き出すのみ。

 果たして先に動くのはどちらか。

 

「……イチカさん」

「どうした? セシリア」

 

 事前に売店で買ったポッ○ーを左隣ののほほんさんと一緒にポリポリしていると、逆のセシリアから話しかけられた。

 

「イチカさんはこの試合の結果がどうなると思っているんですか? ……そもそも彼女、ソフィーさんは強いんですの?」

「む……」

 

 ソフィーの実力を知っているのはこの学校では俺だけだからな。

 これまでに彼女たちが目にして来たソフィーの印象からして、ソフィー=強者というイメージは考えにくいのだろう。大部分はソフィーの自業自得なのだが。

 だが、まぁ……どうせ俺が言わなくとも、今日ここで、第三アリーナに集った全員が目にすることになるのだ。

 

 咥えていたポ○キーをチョコの付いていない部分まで食べきって、俺はニヤリと笑って、

 

「あいつは強いぞ? 具体的に言えば、全力で俺と戦って勝率四割をキープするぐらいには」

「え……」

 

 セシリアが呆けた声を漏らした……直後、試合が動いた。

 

 

 

§

 

 

 

 この試合で、先に動き出した……というより痺れを切らしたのは、凰鈴音の方であった。

 読み合いを放棄して、異形の青竜刀を振りかぶって愚直なまでに突っ込む。

 蛮勇とも取られかねないが、一応鈴音なりの策があってのことだった。

 

(相手の手の内が分からない以上、読み合いなんてしても意味がない。ただ待ってるだけなんて論外、向こうが動かないならこっちから突っ込む!)

 

 という、脳筋思考ではあったが。

 

(武器からして相手は遠距離型。まずは間合いを潰す。防御してきたらその上から叩き潰す、回避したなら追撃して切り伏せる、反撃してきたらそれも――……ッ!?)

 

 だがその突進は、強制的に制止させられた。

 射線をずらすために意図的に軸を揺らした鈴音の飛翔を嘲笑うかのような、正確無比な狙撃によって。

 顔面のすぐ横を駆け抜けていった翡翠の矢を見送って、体勢を立て直すが、

 

「ッ!? なっ……くぅっ!!」

 

 間を置かない二発目の狙撃。慌てて飛翔を再開すれば、飛行ルートに先回りするかのような狙撃が追加で放たれた。 

 卓越した操縦技術によって何とか回避し続ける鈴音だったが、永久にそれを続けることは不可能だ。何発目かの矢に行く手を阻まれて、足を止めてしまう。

 途端に降り注ぐ、翡翠の矢の雨。

 実際にはそこまでの密度ではない。精々一度に四、五本といったところだろう。

 だがその一矢一矢が、的確にこちらの急所へと撃ち込まれてくる。人間である以上反応せざるを得ない箇所へと。

 

「こんのぉっ!!」

 

 青龍刀を振り回して矢を弾き、改めてソフィーに向き直って……鈴音は思わず息を呑んだ。

 

 視線の先には、矢筒から生み出した矢を弓に番え、その鏃をこちらへピタリと向けるソフィー。

 常に笑顔を絶やさない彼女の瞳は、今や常の温かさなどどこにもなく、冷然とした目でこちらの一挙手一投足を観察している。

 そう、まるで、大いなる龍を狩らんとする、狩人のように。

 

 鈴音が一瞬怯んだ、その隙すらソフィーは見逃さない。

 五指の間に四本の矢を番え、一息に放つ。

 

(回避……は無理っ!)

 

 彼我の距離と弾速から回避は不可能と判断して――鈴音は、切り札の一つを切った。

《甲龍》に搭載された第三世代型兵器――《龍砲》を。

 

 直後、鈴音に迫っていた矢が、一斉に砕け散った。

 

「っ」

 

 それを目にしたソフィーの表情が、僅かに歪む。

 対照的に、強気に笑む鈴音。

 

「とりあえず、謝っとくわ……アンタの実力、正直舐めてた。大した精度ね」

「ふふーん♪ そうですよー? 私だって強いんですから」

「えぇ、今理解した。だから――全力で行くわ!」

 

 鈴音の宣言が轟き、《甲龍》の両肩の装甲が駆動した瞬間、それまでソフィーの居た地面が轟音と共に吹き飛んだ。

 

 

 

§

 

 

 

「……何ですの、あれ」

「狙撃だろう、それは」

 

 淡々と弓を射続けるソフィーを見て、セシリアが引き気味に呟く。

 何だか、自分の中で何かが砕け散ってしまったかのような表情だ。

 

「いえ、狙撃というのは分かりますが……何故弓であんな精度の狙撃を……ろくに狙いを付けているようにも見えませんのに……ああもう!」

「セッシー、どうどう~」

「わたくしは馬じゃありませんわ!」

 

 自棄っぱちになったセシリアもむべなるかな。

 それほどまでに、先程までソフィーが事も無げに行っていたことは常識外れなのだ。

 

 ソフィー・ドラクロワという少女は、マギアルカすら手放しで称賛するほどの『天才』だ。

 こと戦闘において、彼女の持つ才能は織斑春万やダグラス・ベルガーのそれすら凌駕する。俺など足元にも及ばない。

 しかも彼女は、持って生まれた才能に胡座をかくこともなく、努力を積み重ねている。

 水中で必死に足を動かしている白鳥のように。普段の余裕の笑顔は、それを隠すための隠れ蓑に過ぎない。

 今はまだ経験の差と、俺だけのアドバンテージのお陰で勝ち越しているが、あと一年もすればどうなるか分からない。

 

 ソフィー曰く、「弓も銃も大して変わらない」のだとか。

 ……そんなわけないだろ、と思うかもしれないが、ツッコんではいけない。

 

『気流とか相手の動きとかを読んで、狙いの場所に銃口を向けて、放つ。引き金を引くか矢羽を放つかの違いぐらいしかないですよ』

 

 そう聞いた時の俺の表情は、筆舌に尽くし難いものだったと思う。

 

 閑話休題。

 

「でも、まだどっちも本気じゃないよね~?」

「へぇ? 何でそう思う、のほほんさん」

「だって、ソフィソフィは最初の位置から一歩も動いてないし、リンリンは『アレ』を使ってないもん~」

 

『アレ』? あぁ、アレか。

 

「まあ、黙って見ているといい。どうせ、そろそろ本気を出すだろうからな」

 

 そう言った俺の言葉に呼応するように、凰が切り札の一つを切った。

 ソフィーの撃ち放った矢を、《甲龍》から生じた『見えない弾丸』が粉々に砕き散らしたのだ。

 

「へぇ……あれが、か」

「うん、中国の第三世代型兵器、『衝撃砲』~」

「空間自体に圧力をかけて砲身を生成、余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出す――」

 

 ……なるほど。詳しい原理はともかくとして、中々に強力な武装のようだ。

 砲弾自体はともかく砲身すら見えないのは厄介だ。

 更に言えばその構造上、砲身射角に制限がない。つまり上下左右、真後ろにすら撃ってくるということだ。

 

「流石にアレは、イチカさんにもキツいのではなくて?」

 

 悪戯っぽく問うてくるセシリアに、俺はニヤリと笑って、

 

「問題ない。楽勝だ」

「「えっ?」」

 

 あまりに簡単そうに言い切ったからか、二人は呆気に取られたようだった。

 しかし実際、あの程度なら対処は至極簡単だ。

 

 派手に砂埃を巻き上げるフィールドを眺めながら、俺は呟いた。

 

「確かに一見強力無比な武装だが、対処法は意外と簡単なのさ。……もちろん、ソフィーだってそれに気付いてる」

 

 

 

§

 

 

 

 衝撃砲で砂埃を巻き起こすことによって、ソフィーの視界を奪った鈴音。

 勢い込んで突っ込もうとした鈴音だったが、けたたましく鳴り響いた警報(アラート)に動きを止めた。

 そんな鈴音の数センチ前方を突き抜けていく、一本の矢。

 

「なっ……!?」

「――隙あり、ですよ?」

 

 その声が聞こえてきたのは背後からだった。

 振り返り様に『龍砲』を放つが、既にそこにソフィーの姿はない。

 

 呆然とする鈴音を、横合いから凄まじい衝撃が襲う。

 

「くぁ……ッ! こん、のぉッ!!」

 

 攻撃を受けたのだ――と認識するのもそこそこに、振り向くが、今度は真逆の方向から矢が飛来する。

 辛うじて身を捻るが、直後にはまた別の方向から迫る追撃。

 

(コイツ……これだけ激しく動きながら、こんな正確に狙ってくるとか! あり得ないでしょ!?)

 

 少しずつ削られていくシールドエネルギーに唇を噛み締める鈴音。

 

「ふふーん♪ 先輩の《アキレウス》ほどじゃないですけど、《アタランテ》もスピードに特化してますからね。このぐらいわけないんですよ!」

「ちぃッ!!」

(捉え、られない……!)

 

 速い。あまりに速すぎる。

 その圧倒的な速度でフィールドを駆け回る(・・・・)ソフィーに照準が合わず、《龍砲》が当てられない。

 そもそも衝撃砲は奇襲性は高いが、射程は精々中距離(ミドルレンジ)がいいところ。あくまでメインは近接戦闘なのだ。

 

 このままでは、一方的になぶられるばかり。

 だが、鈴音とて中国という国家を背負う代表候補生の一人。

 その心は、未だ折れない。

 

「これならどうよッ!!」

「おっとぉ!?」

 

 状況を打破するために鈴音が選択したのは、狙いを定めない無差別砲撃。

 威力を犠牲にして連射性能を引き上げ、自身を中心に三百六十度全方位へ衝撃砲を撃つ。撃つ。撃って撃って撃ちまくる。

 さしものソフィーも、作為も何もない半分自棄っぱちの攻撃を避けきるのは難しい――

 

「と、言うとでも!?」

「ちょっ」

 

 鈴音はその時、信じられないものを見た。

 降り注ぐ無色の砲弾を、まるで見えているかのように、的確に回避していくソフィーの姿を。

 

「何で避けられるのよ!?」

「こちとら本業は狙撃手ですからね! <ruby><rb>気流を読むなんて日常茶飯事</rb><rp>(</rp><rt>​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​・​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​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

 もはや唖然とするほかない。

 思いついても、果たしてそれを実行できる者がどれだけ居るのか。

 

 観客席のとある一角では、友人たちから視線を向けられて、

 

「いや無理ですわよ!?」

 

 と絶叫する某国の代表候補生が居たとか居ないとか。

 

 神業の如き回避を見せるソフィーだが、そうして激しく動いている間だけは隙が出来る。

 鈴音は青竜刀の柄の連結を解き、回避の隙を狙って一気に接近。体勢を崩したソフィーに斬りかかる。

 しかしソフィーは、崩れた体勢を逆に利用して紙一重で斬撃を避け――続け様の衝撃砲を喰らって吹き飛ばされた。

 

「えぶっ!?」

「まだまだぁ……っ!?」

 

 追撃を仕掛けた鈴音だったが、左肩を襲う衝撃に仰け反った。

 驚愕しながら視線を向ければ、ほとんど地面と平行になりながら弓を構えるソフィーの姿が。

 

(そんな、体勢で……よくやるわね!)

 

 お返しとばかりに衝撃砲を撃つが、今度は完璧に回避されてしまった。

 続けて二発、三発と撃つが、当たらない、そのことごとくが掠りもしない。

 

「なっ……」

「凰さんは正直すぎますねー……撃つ方向に視線を向けてたら(・・・・・・・・・・・・・)すぐ分かっちゃいますよ(・・・・・・・・・・・)?」

「だから――そんな簡単に言ってんじゃないわよ!?」

「えー……?」

 

 何故そんな不思議そうなのだ、と歯軋りしながらも機体を駆る手は止まらない。

 矢継ぎ早に、相手の苦手な場所へ青竜刀を叩きつけ、回避直後の隙を狙って衝撃砲を乱射する。

 しかしそれだけしても尚、足りない。目の前の敵を、この強敵を打倒するには、全く足りない。

 

 鈴音本人も気付かない内に、彼女の口許は自身を凌駕する強者との戦いの喜悦に歪んでいた。

 嗚呼……彼女なら、コイツなら。私の全てを受け止めて、それを超える何かを返してくれる。

 

 凰鈴音は、常々自分には才能がないと口にしている。

 事実、ソフィーや、それこそ織斑春万と比べれば数段劣るのは確かだろう。

 だが彼女にはそれらとは全く異質な、しかし類稀なる才能があった。

 

「ヤッバい……ヤバいヤバいヤバい! 楽しい、愉しすぎてヤバい!! アンタ、最っ高よソフィー!!」

 

 そう、それは、イチカの天敵たるかの銀虎と同種の才能。

 例え相手との戦力差が絶望的なものであっても、勝てないと分かっていても、笑ってその牙を突き立てんと挑みかかっていく心の有り様。

 

「全力で来なさいよ……絶対、ブッ飛ばしてやるからァ!!」

 

 まあつまりは、喧嘩(負けず嫌い)の才能だ。

 

 とてもイイ笑顔で睨み付けてくる鈴音に、ソフィーは愉しげに口許を緩めた。

 そして、腰の矢筒から引き抜いた一本の矢をゆっくりと弓――《天穹の弓(タウロポロス)》に番え、引き絞る。

 キリキリキリキリ……と、嫌に大きく響く音に危機感を覚えた鈴音は、妨害のための衝撃砲を放とうとするが、うまく作動しない。見れば、《龍砲》に一本の矢が突き立っていた。

 舌打ち一つ。しかし、時既に遅し。

 

 その時、鈴音は背筋が凍るような恐怖と共に、胸の奥から燃え上がるような興奮を感じた。

 

 鈴音が嗤って顔を上げた、その瞬間、《天穹の弓(タウロポロス)》――引き絞れば引き絞るほどに際限なく威力を増す弓から、翡翠の一矢が放たれた。

 無論、鈴音にその矢がどれ程の脅威を秘めているかなど分からない。しかし、鈴音の勘が、皮膚が、嗅覚が、あらゆる全てが危険を訴えていた。

 だから避けた。身も世もなく、あらゆる思考を放棄して、死に物狂いで、避けた。

 

 ボッッッッ!!!! と、壮絶な風切り音を残して鈴音の横を通り過ぎていった矢は、そのままフィールドを覆う遮断フィールドに衝突して、

 

 ドガァァァァァァァンッッッ!!!!!! と、秘めた破壊エネルギーの全てを解放した。

 生徒の安全を守るために、ISの絶対防御並みの堅牢さを誇る遮断フィールドが、撓んだ(・・・)

 

「…………何よ、そのバカみたいな威力は」

「…………えーと、私もちょっと予想外です」

 

 乾いた笑みを浮かべるソフィーを見て、小さく吹き出す鈴音。

 今の激烈極まる一矢の威力を見ても尚、鈴音の闘志は些かばかりも衰えていなかった。

 むしろ、上等。相手にとって不足なし。

 認めよう。彼女は、ソフィー・ドラクロワは自分より、凰鈴音より遥かに強い。

 けれど、だからどうした。勝てないと分かっていて挑むのが愚行だというのなら、私は愚かでいい。

 

 双剣を振りかざして迫る鈴音に、ソフィーは、一切の気遣いと加減を捨てた。

 全力を以て叩き潰すべき相手と断じた。

 

 右の矢筒から一本、左の矢筒から一本。二本の矢を抜き取り、同時に矢に番える。

 鏃を向ける先は、空。遥か彼方へと続く天穹。

 エネルギーで構成された矢が、今までにないほどの輝きを湛え――発射。

 

「――――《訴状の矢文(ポイボス・カタストロフェ)》」

 

 直後、アリーナの天井に、星空が生まれた。

 否、満天の星々に見えたのは、そう錯覚するほどの夥しい数の鏃である。

 アリーナにいる誰もが戦慄する中、星は墜ちる。

 広大なフィールドを埋め尽くすのは、次々と降り注ぐ矢の驟雨。

 ただ一つの命の生存すら許さぬ、美しき死の雨。神々の怒り。

 

 その美しくも禍々しき雨を前に、鈴音が選んだのは――正面突破。

 

「――――――――――ッッッッ!!」

 

 起動するのは、全てを置き去りにする加速。瞬間加速(イグニッション・ブースト)

 残ったシールドエネルギーの全てを瞬間加速につぎ込み、鈴音は飛翔する。

 彼我の距離は約十メートル。ソフィーの許に辿り着くのには数秒とかかるまい。しかし、その数秒こそが命取り。

 鈴音の頭の中に防御という選択肢は既にない。

 矢の雨に曝された装甲が次々と砕けていく。衝撃砲はもはや正常に稼働できる状態にはない。視界には無数の警告。

 その全てを、鈴音は無視する。思うのはただ一つ。この剣を視線の先の敵に叩きつけることのみ。

 

 数時間も経ったようにも思える、しかし実際には数秒と経ってないような、長いようで短い時間。

 既に雨は止んだ。鈴音を妨げる障害はない。

 もはや痛みなど感じない。ただ無心に、絶対に離さずにいた青竜刀を振り下ろして

 

 

 

 

 

『試合終了。――勝者、ソフィー・ドラクロワ』

 

 

 

 

 

「…………………………は?」

 

 無感情に響く、ソフィーの勝利を告げるブザー。

 何故? 未だ鈴音の青竜刀は振り下ろされず、ソフィーは矢の雨を放って以降何もしてない。矢の雨は、ここに辿り着いた時点では止んでいた。

 

 怪訝に思って首を傾げていると、ふと、機体の腕が動かないことに気がついた。

 見ると、腕だけでなく全身の関節部に、幾本かの矢が突き刺さっていた。

《訴状の矢文》によるそれではない。それらは既に粒子に還元されている。

 ならばこの矢はいつ当たった? 決まっている。雨が止んだあと(・・・・・・・)だ。

 いつ放った? 鈴音の目が確かならば、《訴状の矢文》を放つより前。

 だというのに、確かに彼女の矢は自分に届いた。

 ならば答えは一つ――事前に真上に向けて撃っていた(・・・・・・・・・・・・・・)ということだろう。

 読まれていた(・・・・・・)。自分の動きの何もかもが読まれていた。

 

「…………何よ、それ…………」

 

 乾いた呟きが、口を衝いて出た。

 勝敗は決した。どれだけ闘争心を燃やそうともはや無意味。

 今頃になって全身を痛みが襲ってきた。自分の体を省みなかった結果だ。幸いにも数ヵ所の打撲程度のようなので、我慢しよう。

 機体の方は……とりあえず、本国からの説教は確実だろう。今から気が重い。

 

 自分の状態を確認して、鈴音は改めてソフィーへ、自分を下した勝者に向き直った。

 

「…………」

「…………」

 

 無言でみつめあう。言葉は要らない。

 言いたいことは、さっきの戦いで全部叩きつけた。

 

 だから、必要なのは、

 

「次は、勝つから。ソフィー」

「いつでも待ってますよ、鈴さん」

 

 

 

§

 

 

 

 その日の夜。俺、イチカは自室から出て屋外に居た。

 IS学園は周囲を海に囲まれた絶海の孤島である。故に、少し歩けばそこは断崖絶壁である。

 俺が立っているのも、そんな場所の一つだ。

 

「…………」

 

 何をするでもなく、ただ海を見つめる。

 夜の海は穏やかで、海面に映った月の影が時折静かに揺れるのみ。

 ゆらりゆらり。ゆらりゆらり。

 凪いだ海面は、少しの漣で容易にその有り様を変える。

 

 ――凰鈴音。織斑一夏に助けられ、彼を救えなかったことを今尚悔やんでいる健気で優しい少女。

 俺は彼女に名乗り出るべきだろうか……と考えて、すぐに却下する。

 織斑一夏はもう死んだ。ここに居るのは、一人の豪商によって命を吹き込まれた一人の男。

 彼女が会いたがっているあの日の少年は、もう、どこにも存在しないのだ。

 

 だから。このままでいい。

 彼女にはこのまま、イチカ・ロウ・ヴァンフリークの良き友達で居てもらう。

 

「……ほんとにいいんですか? それで」

「ナチュラルに心を読むなよ、お前は」

 

 傍らからかけられた言葉に苦笑しつつ、俺ははっきりと頷いた。

 きっと、それでいいのだ。

 

 俺のとなりで膝を抱えて座り込むソフィーに問いかける。

 

「お前は? お前は、あれでよかったのか?」

「んー……まあ、正直言いたいことは色々ありましたけど、今のところは、あれで満足ですかね」

「そうか」

「はい」

 

 暫し、無言。

 沈黙が訪れるが、それは決して居心地の悪い沈黙ではない。

 耳に届くのは、お互いの息遣いと遠く揺れる波の音のみ。

 俺は目を閉じて、その静寂に身を委ねて……

 

 ピリリリ、ピリリリ……

 

「…………」

「…………」

 

 この連絡を待っていたわけだが……やはり、タイミングが悪いと言わざるを得ない。

 一気に場が白けたのを感じながら、ポケットから端末を取り出して確認する。

 

「ソフィー、仕事だ」

「えー……はいはい、了解ですよっと。場所はどこです?」

「そろそろお前の機竜にも送られてきてる頃だろう。行くぞ」

「はいはーい」

 

 一息に立ち上がって、とっとっとっ、とステップを踏み、ぴしっと敬礼を決める。

 そんなソフィーの仕草を鼻で笑いつつ、俺はネックレスに触れてISの拡張領域から《黄龍》の機殻攻剣(ソードデバイス)を取り出した。

 ブツブツいいながら同じようにするソフィーを尻目に、俺は呟いた。

 

「さて……今日も、世界を救うお仕事だ」

「先輩ちょっとクサいですよ?」




ソフィー「純潔の狩人とか言ってますけど、私自身はとっくに純潔じゃな「おいバカやめろ!」

 最後の展開は超雑です。それまでで燃え付きました。
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