Fate/EXTRA in wave   作:-Yamato-

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第11話 実働部隊

 

「エミヤくんと岸波さんには、実動部隊をお願いします」

 

 一悶着はなんとかかんとか終結を向かえた。俺の多大なる精神的疲労を対価にして。

 そして、ようやく本題の本題へと話が戻る。

 

「何をするんだ?」

 

 俺と一緒に岸波も首をかしげている。

 

「僕たちの中で唯一アリーナへの入場資格を持っているお二人には情報収集を頼みます。僕たちはバックアップ、主に情報の解析や、作戦の立案を行います」

 

 学校については彼らはそれぞれの方法で情報を収集・解析を行っている。しかし本戦が始まったばかりの現在、アリーナやそこに出てくるエネミーについての情報はほとんど入手できていない。

 だから、対戦が確定しアリーナへの入場資格をもつ二人が実際にそこへ入り情報を持ち帰ってくるという役割を担い、その解析をハッカーとして高い能力を持つ遠坂やラニが行うというのは順当と言える。

 

「アリーナくらいならモニタリングもできるでしょうし、何とかなると思うわ」

 

 自信満々にバックアップを約束する遠坂。

 

「岸波は、いいのか?」

 

 俺は作戦参加に否はない。むしろ、一人でも行動を起こすつもりでいた。しかし、岸波は巻き込まれただけ。だから、今ならばまだ抜けられるかもしれない。

 

逆に言えば、ここで抜けないならば、それは巻き込まれたのではなく自らの意志で参加したことになる。

 ムーンセルへの反逆行為と取られ、消されてもおかしくない作戦。抜けるのならば、今しかない。

 

 けれど、岸波は首を縦に振りはっきりと了承の意志を示す。

 

「アーチャーは反対しているんだろう?」

 

 岸波は苦笑する。

 その反応からすると、アーチャーは反対しているが岸波が自分の意志を押し通した、というところか。

 

「他のみんなも、本当にいいのか?」

「構わないわよ。ね、ランサー」

 

 最終の確認に最初に応えたのは遠坂。斜め後方に視線を流し、霊体化しているランサーにも同意を求めている。ランサーの性格ならば、ここで否の答えは出さないだろう。

 

 ラニも頷く。

 

「僕はすでに意思表明をしました。それでは、現時刻をもって作戦を開始しましょう」

 

 不退転の決意を持ってレオは宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※

 

 

 

 

「ここが、アリーナか」

 

 あんぐりと口を開けて見回してしまう。一緒にアリーナに入った岸波も同じ表情で首を巡らせていた。

 

 海の中だった。

 

目の前をクリスタルのように透き通る魚が泳ぐ。海底では、海草が花のように揺れ、見上げる海面は緩やかなさざ波が立ち、光を反射してキラキラと輝く。青い水は天上の光を柔らかく海底まで届かせ、世界を幻想的に彩る。

 まるで、宝石箱をひっくり返したかのような光景が二人の眼前に広がっていた。

 

『ほらほら、いつまでも呆けてないで、探索を始めなさいな』

 

 耳元で聞こえてきた声は遠坂のものだ。

 

『とりあえず、アリーナをぐるっと回ってみてもらえる?』

 

「こっちで、何かすることはあるのか?」

 

 何もない場所へ向かってしゃべるのは、なんとも間抜けな気がする。

 

『今のところ特にないわ。貴方たちにハッカーとしての能力は期待していないから』

 

 なんとも傷つく答えが歯に衣着せずに返ってくる。

 

「では、行こうか」

 

 士郎と岸波の間に入るようにして実体化したアーチャーは、彼女の背中を軽く押して促す。奴の背中は俺たちとの会話を拒絶していた。

 

 遠坂からの指示は、アリーナ内を探索すること。ならば、あえて一緒に行動する必要はない。

 それに——万が一を考えた場合、ここは別れて探索した方がいい。

 俺たちは岸波たちとは逆側の道へと入っていった。

 

 

 

 

 

interlude

 

 

 ずんずんと先を歩くアーチャー。

 ついていくのが大変で、小走りになる。

 

 呼びかけると、ようやく気がついたようで足を止めて追いつくまで待ってくれた。今度は歩調を合わせて歩く。

 

 それにしても、どうして彼らと一緒に回らないんだろう。

 ここは、エネミーも出て危険だ。一緒に回れば安全に探索ができるのに。

 

 アーチャーはあの二人に思うところはあるようだけれど、それでも彼は戦場で個人的な感情を優先させるような人ではないと思う。

 

「買いかぶられたものだ」

 

 でも、事実だと言うと顔をしかめるアーチャー。

 つきあいは短いが、それくらいはわかる。

 感情がないわけではないくせに、それを後回しにする傾向のあるこのひねくれ者のサーヴァント。そんな彼が、あえて別行動を選んだのには、それなりの理由があるはず。

 

「今後のことを考えた場合、手の内をみせたくはないからな」

 

 今後のこと、ということはアーチャーは彼らが敵になるかもしれないと考えているのか。

 

「彼ら、だけではない」

 

 モニターのしている校舎組さえも敵になる、その可能性をアーチャーは考慮している。

 それは、聖杯戦争が是正できたあとか。

それとも——

 

「さて、どうかな」

 

 アーチャーは、素人である自分よりもずっと先を見ている。だから、あらゆる可能性を見通しているんだろう。

 それでも、信じたいと言えばアーチャーは笑うんだろうか。

 

「君を私が?」

 

 だって、アーチャーの口元が緩んでる。

 

「微笑ましい、と思ったのは確かだが」

 

 笑っているのは一緒だ。

 

「ふむ。気に障ったのなら謝罪しよう」

 

 別に、気に障ったわけじゃない。

 アリーナの壁に触れてみる。

 ヒヤリと冷たく硝子のように透明な壁は、迷宮のずっと先を明らかにする。けれど、まるで果てなどないかのように青い色が広がっている。

 

 視界の端に、魚とは違う動きを見せる黒い物体が写る。

 

「さあ、エネミーのおでましだ」

 

 アーチャーはいつの間にか、その両手に白と黒の中華刀を構えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 モニター画面を見ながら、唸りつつ背中を椅子の背もたれに預ける遠坂。

 

 場所は、レオが提供した自室。しかも彼は伊達や酔狂でわざわざ自室を生徒会室に改装している。もちろん、これは彼の自室の一部でしかない。

それでも自身の領域をこの作戦のために解放するということから、彼の本気が見て取れるというものだ。

生徒会室らしく長机をロの字型に並べ、掃除用具ロッカーや黒板まで用意してあり、無意味に本格的だ。

 

 こんな見た目ながらセキュリティーは最高ランク。外部からの無許可の侵入はほぼ不可能となっている。

  

「アリーナの表層的な事しかわからないわね」

 

 その生徒会室の中で、遠坂は眉根を寄せ厳しい顔をして呟く。

 

「仮にもムーンセルが作り上げたアリーナです。防御が堅いことなど、分かりきっていたではないですか」

「それは、そうなんだけも」

 

 ラニの言葉に同意しつつも、すっきりしない返答をする。

 

「何か気になることでも?」

「レオ、あなただって気になっているんでしょう」

 

 暗に、同じ事を気にしているだろうと言うとレオは苦笑する。

 

「岸波さんとエミヤくんお二人の対戦以降、新たな対戦が組まれていませんからね」

 

 テーブルの上に両肘を置き、指を組む。

 

 校舎組は士郎たちが潜るアリーナの解析だけを行っているわけではない。様々な情報の集積を行っている。

 もうすぐ二人のモラトリアムが終わる。それだけの時間が流れているというのに、他の対戦が組まれていない。

 つまり、聖杯戦争が進んでいないのだ。

 

「私たちの行動がムーンセルに警戒されいている、と見るべきでしょう」

 

 会話に参加せずコンソールを操作をしていたラニが、モニターから目を離さないまま自分の意見を述べる。

 

「観察しているのかもしれないけれど」

 

 ムーンセルの機能が正常に働いているのならば、観察していると分析する方が正しい。なんらかの意志が介在しているのならば、警戒しているとする方が正しい。

 

「僕は、警戒していると見ています」

 

 レオが自分の見解を口にする。

 

「だからこそ、次の作戦は慎重に慎重を重ねるべきです」

「もちろん、そのつもりでプログラムを組んでいくわよ」

 

 期日は明日の朝まで。

 今日で彼らのモラトリアムは終了する。

 

 これまで二人が入手した情報を元に組んだ、ハッキングプログラム。決戦場はアリーナとはことなり、より深い階層に設置されている。つまり、学校やアリーナ以上にムーンセルに近い階層だ。学校側からは決戦場へのアクセスは困難。覗き見するだけで脳が焼き切れるほどの攻撃的な防衛が施されている。

 

 しかし決戦場からムーンセルへのアクセスは想定外のはず。

 遠坂はラニと一緒にハッキングプログラムを組み立てている。繊細にして暴力的、精緻にして疎略的という相反する性質を持たせて、無理矢理にでも穴を開ける。

 小さくても穴さえあれば、あとはなんとでもできる。

 

「期待しています」

 

 レオの言葉に、ラニと遠坂が深く頷いた。

 

interlude out

 

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