ハグしよ?プリキュア 作:猫犬
果南ちゃんの誕生日ってことで書いちゃいました。内容は誕生日関係ないけど。
一部改稿しました。
「ハグ、そこだ!」
「よっ!」
「くっ!」
私、松浦果南。何故か戦っています。
~☆~
「ほっ、ほっ」
冬のある日。果南は日課のランニングをしていた。最近は肌寒さが一層強まった気がするが、日課にしている為かあまり気にならない。あまり人とすれ違わないが。
いつもは淡島から弁天島まで走っているが、最近はそのまま学校に行った方がいい気がして荷物を持って走っている。鞄をリュックみたいに背負えば走るのには問題なかったからこうなったのだが。
「ん?あんなところに何か倒れてる?」
千歌の家の前の砂浜に走りながら目を向けると、砂浜の上に何かが打ち上げられていた。果南は少し気になったから砂浜の方に足を向けるとそこには、
「わっ、イルカだ。大丈夫?」
体長一、二メートルほどの子イルカが打ち上げられていた。流石に放置をする訳にもいかないから近づく。
子イルカは海に戻れなくなっているようで困っているようだった。見た限りでは怪我をしている様子はなく、波に流されてここに来てしまったようだった。
(子イルカならぎりぎり持ち上がるかな?)
そんなことを考えながら、子イルカに触れてみる。
「よっと」
普段からボンベやらなんやらを運んでいた果南だからか持ち上げることができ、子イルカは暴れることなく海に帰される。子イルカは少し沖の方に泳ぐと振り返る。
「ピィー」
「もう打ち上げられるんじゃないぞー」
果南は手を振ってそう言うと、子イルカは沖の方に去って行く。それを見届けると、果南はランニングを再開させるのだった。
『あの子なら可能性があるかな?』
~☆~
「ふぅ、どうしよう」
朝練、授業を終えた果南は椅子の背もたれに背を預けて悩んでいた。本来なら練習の予定だったのだが、理事長の仕事で鞠莉が、生徒会の仕事でダイヤが、図書委員の仕事で花丸とその手伝いにルビィが行き、半数いない状況になったことで練習が急遽無くなった。そのため、果南は暇を持て余していた。
(部室行ったら誰かいるかな?)
ふと浮かんだことで、とりあえず即行動の果南は席を立つ。いなければいないで、ダイヤの手伝いに行けばいいやと思いながら部室に足を向ける。
ドーンッ!
すると、校庭の方から爆発音が響いた。
いきなりの爆発音に果南は窓の方に戻って外を見ると、校庭のど真ん中で砂煙が舞っていて、部活で校庭を使っていた生徒たちは逃げていた。
「何これ?」
よくわからない状況に果南は小さく呟く。すると、砂煙が晴れて、校庭の中心に半径五メートルほどのクレーターができており、そのクレーターの中心に一人の生徒が立っていた。
「善子ちゃん?」
そこに立っていたのは紛れもなく津島善子、その人だった。服装は真っ黒いローブに黒い悪魔みたいな角を頭に付けているが。
爆発の原因が善子なのは一目瞭然で、余計に果南を悩ませた。
(善子ちゃんは、善い子だから、あんなことしないよね?というか、そもそも、どうやったらあんな爆発が起こる訳?)
「善子さん、何をしていますの!?」
すると、校舎からダイヤが出て来て善子を叱る。爆発が起きたというのに怯まない辺りに果南は驚きながらそれを見守る。
「我が名はヨハネ。この世界に裁きを下す者よ」
「善子さん、ふざけないでください!校庭にこんな穴を開けて」
「ダイヤ、ストップ」
どんどんヨハネに近づくダイヤに、途中で追いついた鞠莉がダイヤを止める。
「鞠莉さん、止めないでください!」
「ダイヤこそ落ち着いて、下手に近づくのは危険よ」
「はっ!」
「「きゃっ!」」
鞠莉がそう言うとヨハネは手をかざし、ダイヤの足元に黒い弾を放つ。弾が地面に当たると、そこには穴ができていた。二人はその余波で声を漏らすと数歩引く。
「これは警告だ。今すぐ我の支配下に加われば命までは取らないでおこう。だが、考える時間くらいはやろう」
ヨハネの声は学校全体に響き、学校にいる人全員に聞こえていた。つまり、全員に対して言っているということだった。ヨハネと相対している二人は状況がまだ完全に掴めておらず立ち尽くす。
とりあえず、果南は二人の元に行こうと教室を出ようとし、
『何処に行く気だい?今行っても君じゃ何もできないよ?』
直後に教室に明るい声が響いた。果南が悩んでいる間に教室には果南一人になっていたはずだから、いつの間にか誰かがいたことに驚いて、声がした教室の前の方を向く。
『やぁ、朝ぶりだね』
そこには、子イルカが浮いていて、右ヒレを上げていた。それは朝出会って、助けてあげた子イルカだった。浮いていることやら、喋っていることなどなど信じられないことが目の前に広がっていて果南は言葉を失っていた。
『ああ、驚かせてしまったね。でも、早くしないとあの子たちが危ないよ?』
子イルカはマイペースにそう言うと、果南はハッとする。そして、子イルカを無視して教室に出ようとする。
『だから、今行っても何もできないよ。けが人が増えるだけ』
「でも、ここで行かない選択肢は私には無いよ!二人を助けないと!善子ちゃんを止めないと!」
『魔法弾を放つあの子に、普通の人間の君が行ってなんになるの?』
「それは……」
『それとも、君なら何かできるの?』
子イルカは淡々とそう言う。言っていることは全て正しいから返すことが出来ずに果南は黙る。
(確かに、私がいても何ができるかはわからない。でも何もしないで見ているなんてことをしたくない!)
「……助けたい」
『ん?』
「大事な親友のピンチなんだよ!助けたい!」
果南が言葉にした直後再びヨハネの声が響く。もう時間切れが来たことに果南は焦り、教室を出ようとし、
『待って!』
「なに?」
また声をかけられて止められる。三度目だから、果南は声が大きくなっていた。
『危険に飛び込んでまで友達の為に行こうとする、君の意思しかと見た。だから、君に力を貸してあげる。あの二人とあの子を助ける力をね』
「力?……いったい君は何者なの?浮いてるし、喋るし」
『あっ、そう言えば、名乗ってなかったね』
今更ながら、果南が疑問を口にすると子イルカは明るい声でそう言い、
『僕はルカ。僕と一緒に世界救いませんか?』
「はい?」
~☆~
「して答えは?」
ヨハネにそう言われて、二人はどうしたものかと悩む。とりあえず、今の善子がいつもの善子と違うということしかわからない。善子の身に何が起きているのか、何が目的なのかといったことが一切わからずに、答えることができなかった。
「無言……支配下には下らぬと取ろう。故に消えよ!」
二人の無言を否定と受け取ったヨハネはそう言って、手を二人に向ける。そして、先ほどの魔法弾が放たれる。
二人は回避しようとするが、弾が速いため回避が間に合わず、二人のいた場所に弾が着弾して砂煙が上がる。
「さて、まずは二人。他の奴らはどうかな?あの二人のように散るか?」
ヨハネは二人を屠ったことで、他の生徒たちが支配下に下るのも時間の問題だと思った。
しかし、
「けほっ、けほっ」
「あれ?」
「ふぅ、間に合った」
二人はさっきまでいた位置の前に一人の少女が立っていて、まるで魔法弾を叩き落としたかのように、右手を降ろしていた。その少女の服装は青を基調とした駅員のような服に、帽子といったものだった。
「おまえ、何者だ?」
「ん?えーと、通りすがりの正義の味方?」
『そうじゃないでしょ!ちゃんと、名乗口上はしてあげないと』
「恥ずかしいし」
『ここはズバッと言ってあげないと』
「うぅ。すべてを包む海、キュアハグ」
ヨハネに言われて、少女は頬を掻いてそう言うと、その隣でポンッとコミカルな煙を上げて現れた、デフォルメされた子イルカがツッコむ。そして、少女は恥ずかしそうにそう言って両手を広げた。
「キュア?まさか!」
「え?なんか知ってるの?あと、その姿どうしたの?」
ヨハネは盛大に驚いた表情をする。
少女――まぁ、変身させられた果南は前半をヨハネに、後半を隣で浮いているデフォルメされた子イルカ――ルカに問う。
~☆~
「世界を救わない?」と言われた果南は、特に説明を聞くこと無く今は二人を救うのが先と二つ返事で了承した。
その結果、ルカの前で光が集まりスマホのようなものが果南の手に収まった。
『それは正義の味方になる変身アイテム――キュアフォンだよ』
「なんか、一気にきな臭くなってきたかも」
『まぁ、最初はお試し期間ってことで、僕の言う通り復唱して』
「あっ、うん」
『プリキュア、スタートアップ』
「プリキュア、スタートアップ……え?」
復唱して画面をタッチすると、キュアフォンが輝き、果南の身体を包む。そして、果南の服装が制服から駅員みたいな感じに変わっていた。
「あれ?これって
てっきり、魔法少女みたいにフリフリな衣装になるのかと懸念していた果南は少し安心した。しかし、なぜかHPT衣装だったことに対して疑問だった。
『これで、君は世界を救う正義の味方、キュアハグだよ。ちなみにその衣装は果南ちゃんのイメージに合った物に自動的になった感じだよ』
「待って、キュアってまさか……」
『日朝枠のあれのパロだよ。でも、あれとは一切関係なく、この物語に登場する全てはフィクションで、現実の団体とは一切関係ありません』
「急に、説明口調にならないでよ。あと、私高校生だよ?」
『でも、あっちだって、高校生のキャラも変身してた気もするし……』
「あー言えばこう言う」
『でも、君は格段に強くなった。具体的には三階から飛び降りても怪我することなくて、体力も格段に向上しているよ』
「そうなんだ。あんまり、変わった気がしないけど?」
『まっ、それに関してはすぐわかるよ。あと、そろそろ行かないと、あの二人まずいかも』
ルカに言われて果南が外を見ると、今まさに二人に魔法弾を放とうとしているところだった。
「ちょっ、ここからじゃ間に合わなく無い?」
『平気だよ、一直線に飛べば間に合う……はず』
「そこは言い切ってよッ!」
果南はそう言って、床を蹴って窓枠に足を乗せて一気に飛び出す。本当にここから飛んで怪我をしないのかは謎だったが、こうでもしないと間に合わないから、ルカの言葉を信じて飛び出す。
(これで転落死したら恨んでやる)
『信じてないでしょ!?』
ルカのツッコミを背に受けながら、二人の前に着いてそのまま腕を振り下ろして魔法弾を叩き落として、さっきの場面に至る。
~☆~
「やっぱり恥ずかしいよ。あと、あれ善子ちゃんなの?」
『まぁ、追々説明するよ。ほら、来るよ!』
「あっ、うん」
ルカがそう言うと、ヨハネが魔法弾を放ち、果南はそれを叩き落とす。魔法弾では埒があかないと判断したのかヨハネは地を蹴ってハグ(変身中だから果南表記からハグ表記)に接近する。ハグは二人を巻き込まない為に、接近して迎え撃つ。
『あの子は不運なことに操られてるだけ。今この世界には脅威が迫っているんだ。僕はその脅威からこの世界を救うためにこの世界にやってきた魔法界の住人だよ』
「世界の危機?魔法界?よっと!」
『この世界の隣にある世界だよ。ある時、この世界――物質界と魔法界の間に空間の穴ができて繋がってしまったの。それで、この世界の探索に行ったある方が闇に触れて、戻って来た時には前と姿が変わっていて魔法界を滅ぼそうとした』
「はぁー。よっ!」
「くっ!」
『僕たちは必死に応戦した。でも、とても太刀打ちできるものじゃなくて、退けるので精一杯だった。そして、物質界に逃げたことで、僕は派遣され、空間の穴を通って一緒に戦ってくれる人を探した……』
「それで、朝砂浜に打ち上げられてたの?」
『お恥ずかしいことに、この世界の海は波が強いね。慣れてないから宙にもなかなか浮けなくて、難破しちゃったよ。今はなれたから浮いてるけど』
「いつまで話してるんだ!」
ルカの説明が一段落すると、ヨハネが遂にツッコんだ。ちなみにハグとヨハネはずっと戦っていました。パンチにキックと肉弾戦メインで。そもそも、魔法をろくに使えないハグと魔法弾を放っても叩き落されるヨハネにはこれしか選択肢が無かったのだが。
「そこ!」
ヨハネのパンチをガードすると、そのまま腕を掴んで背負い投げの要領でヨハネを地面に倒す。
背中を叩きつけられたヨハネは一瞬硬直し、その隙にハグは追撃するべくパンチを放つ。ヨハネはそれを横に回転すると、パンチが地面に当たって穴を作る。
「おまえ。この人間を殺す気か!」
「あれ?普通のパンチでこの威力なの?」
ヨハネはガチで慌て、ハグは素で地面に穴ができたことに驚く。
『ハグ。こうなれば、一気に行くよ。あの子は操られているだけだから、必殺技で救うんだ!』
「え?必殺技?」
必殺技なんてものを知らない為に、首を傾げるハグ。
『こう、あの子を救いたいって気持ちがあれば、自然にできるはず!』
「あっ、うん」
割とざっくりした説明に困惑していると、体勢を立て直したヨハネは宙に浮く。
「もうこれで終わりにしてくれる」
「なんか、ヤバそう」
そう言いながら手を空に掲げると、ヨハネの上空に魔力が収束し始める。何やら危なそうな気しかしないハグは頬に汗がつたう。
ハグはそれを回避しようと考えるが、小さな魔法弾で地面に穴ができたことから、これが当たれば間違いなく学校が大惨事になることを察する。
少し離れた所には寄り添っているダイヤと鞠莉、それに校舎の中には生徒の皆がまだ残っているはずだった。
「ねぇ、ルカ。私には何かないの?魔法とか武器とか」
『うーん。あるのはこれくらい?』
「ホイッスル?」
ルカに問うとルカは右ヒレをハグに向け、そこには駅員が使うようなホイッスルがあった。これでどうしろ?と思いながら受け取ると、
「くらえ!
「絶対やばいでしょ!」
ハグが声を上げると、ヨハネの上空に収束した巨大な球がハグに向けて放たれる。大きい故か小さいやつよりは遅いが、威力はすごそうなのだと感じた。
「どうにでもなれ!」
ピーッ!
そして、ハグは自棄になって、ホイッスルを口に持って行き、勢いよく吹く。
ホイッスルから放たれた音の波が
ヨハネは自分の技が阻まれたことに驚きの声を上げる。
「隙ありだよ!」
「しまった!」
「ハグしよ!」
そして、硬直しているヨハネにピョンッとジャンプをすると、そのままヨハネの身体にハグをする。大体のことはハグでなんとかなる精神の結果だが、直後にヨハネの身体から黒いモヤが出て来て、ローブが消えていつもの制服に戻る。
善子が元に戻ったので安堵すると、地面に降りて善子を降ろす。
『初勝利おめでとう』
「ん、これで終わったの?」
『うん。今回はね』
とりあえず危機が去ったことで安堵すると、ダイヤと鞠莉が駆け寄って来る。それで、重大なことに気付いた。
「どうしよ。二人にコスプレしてるって思われちゃう」
『あー、大丈夫だよ!』
「え?」
「良かった。善子はいつも通りのようね」
「ありがとうございます。キュアハグさん。私たちを助けていただき」
「あっ、うん。この子を一応保健室に寝かせてあげな?」
「そうしますね」
ダイヤが善子をおんぶすると二人はそのまま保健室の方に去って行く。
『変身してるから正体がばれることは無いよ』
「それ、先に言っておいてよ」
『聞かれなかったからね。それで、今後のことなんだけど』
「その前にもし正体がばれたら○○になる的なことはあるの?」
『ううん。ないよ』
「そっか」
『それで、また何か起こると思うけど、また戦ってくれる?嫌なら他を探すけど』
「うーん。まぁ、いいよ。困ってるのなら助けたいし。今回はこれのおかげで三人を助けられたし」
『ありがと。それと、これからよろしくね』
二人は右手と右ヒレをコツンと合わせてそう言うと、二人の前にさっき善子の身体から出た黒いモヤが集まってとある形になって“それ”になる。色も黒から肌色のような色に変化していた。
「え?」
【キュアハグよ。今回は我の負けだ。だが、次は負けぬ】
“それ”を見たことで小さく驚きの声を漏らすも、“それ”は言葉を紡いだ。そして、再びモヤになって消えていった。
「ねぇ」
『どうしたんだい?』
「なんで、あれうちっちーの形をしてたの?しかも初代バージョンだし」
『あれこそ、この世界の調査に出たセイウチのウッチーが戻って来た時の姿だよ。その名もダークうちっちー』
「私より、曜が主人公になった方が良くない?」
『手伝ってくれるんでしょ?』
(どうやら、私の普通の高校生活は一旦終わったみたいです)