でも1週間って10日だよね!?(血涙)
城内の灯りも少なくなり話し声も無く、聞こえてくるのは見回りをしている兵士の鎧が擦れる音だけ。第三王女の室内も例外ではなくラナーもベッドに入り、かわいらしい寝息を立てている、が。
それはラナーに掛かればとても簡単な演技でしかない、当の本人はベッドの中でこれからのことを考えて落ち着かない様子だ。
(あぁ、今からレオン様とデート、それも空中デートだなんて、楽しみです。でもどうやって城を抜け出すのかしら?)
現在レオンは『準備が有るから夜お迎えに来るよ』と言って夕暮れと共に出て行ってしまっている。
城内の見回りにはメイドも居て定期的にラナーの部屋の扉を開け室内を見て回っている。城を抜け出すには兵士の目を掻い潜るだけではなく、室内にラナーが居る状況を残さなくてはいけない。
(誰にもばれずにお城を抜け出す、ふふ、まるで禁断の愛、逢引、駆け落ち。あぁレオン様まだですか)
ラナーの室内に響き渡るのはかわいらしい寝息、かわいらしい寝息のはず。
ラナーが1人ベッドに入り悶々としているとラナーの耳元に突然レオンの声がささやいた。
「お待たせしましたお姫様、お迎えに参りました」
ラナーは声の聞こえた方へ顔を向けるもそこには誰も居らず何時もと変わらない室内があるだけだった。
「レオン様?何処にいらしゃるんですか?」
「姫様の目の前ですよ?」
ラナーは目の前を凝視するもレオンの姿は何処にもない、しかし誰も居なかった部屋に突然レオンが現れた。
「まあ、レオン様は姿を消す事も出来るのですね!」
目の前に突然現れたことに驚く事も無くレオンの行動を褒める、しかしレオンとしては驚くと思ったのだろう、ラナーの思いもよらない行動に目を丸くしている。
「あっれー?ラナー驚かないの?」
「なぜ驚くんですか?レオン様の声が聞こえましたから直ぐ傍に来られているのは分かりましたから♪」
「あ、はい」
レオンは思う、驚かそうとする事が無駄なのでは、と。
「それでレオン様、どうやってお城から抜け出すんですか?仰られていたように空から抜け出すんですか?」
「
「ショートカット?」
レオンは首を傾げているラナーを横目にベッドに幻術を掛けてゆく、ベッドの中に眠っているラナーが作られ、そこに本人が眠っているかのような状態が作られた。
「まあ!私がもう1人!これはどんな魔法ですか?」
「ただの幻術だよ、普通の幻術よりレベルが高いから触れる事が出来るし、触れたときに体温を感じる事もできる。俺の幻術を見破れる実力を持つマジックキャスターは王国には居ないと思うからばれる心配は無いはずだ」
「触れる幻術…」
ラナーは恐る恐るレオンの作り出した
「本当に私が眠っているみたいです、この魔法が有ればいつでもお城を抜け出せますね!」
「お姫様がいつでも抜け出すのはいかがなものかと…さて、流石にドレスで帝国に行く訳にもいかないから取り合えずこれに着替えてくれるかな?」
レオンが取り出したのは装飾品が着いていない質素なズボンと上着だが。
「お姫様が着るには少々みすぼらしい衣装かもしれないけどドレスが汚れたりする方が嫌だろ?それに万が一にもありえないけどその服なら兵士が持っている程度の武器なら切れたり貫通したりしないから安心だよ」
何の変哲もない衣装、しかしそれは言葉の通り表面上の話で実際は、ユグドラシルで『上級』の装備でミスリル製フルプレート程の防御力を有する。
「それに俺が絶対に守ってあげるから心配は無いよ」
「はい、レオン様を信じているので心配していません♪」
ラナーはレオンから衣装を受け取るとおもむろに着ているドレスを脱ぎ始めた。レオンは思いもよらない行動に驚きラナーに背を向ける。
「お姫様!?着替えをするときは周りの目を気にしていただけると嬉しいのですが」
「誰の前でも着替えるわけではないですよ?レオン様にでしたら見られてもいいですから」
「そういうのはもう少し大人になってから言いましょうね!?」
ラナーの着替えが終わり、レオンがラナーを抱き寄せる。
「レオン様!?」
「時間が勿体無いからささっといきますよ
その景色は先ほどまで自分が居た部屋の景色ではなく木々が生い茂る森の中ような光景であった。
「レ、レオン様!これは一体!?何が起こったのでしょうか!?」
「ん?
レオンは転移の魔法で自分が移動できる範囲で帝国に近づき時間の短縮を図った、エ・ランテルまで来てしまえば帝国領は目と鼻の先だ。
「一瞬でエ・ランテルまで、魔法と言うのは本当に便利ですね…これが王都の外」
「ラナー様は城、王都から出たことは無いのかな?」
「はい、普段の生活の中でお城から出ることはありません。レオン様とお会いしたあの日は滅多に無い外出でした」
第三王女、第三と言っても王族である事には変わりない、王族が城の外に出る事など稀だ。まして誰にも言わずに出てくるなどありえない、この事がばれてしまえばレオンは誘拐犯扱いで死罪は免れないだろう。
「だからレオン様とあの日お会いする事ができたのは運命だったんです♪」
「あ、はい」
当の本人達はのんきなものだ。
「さてラナー様、今夜帝国まで俺達を連れて行ってくれる優秀なペットを紹介するよ」
「ペット、ですか?」
紹介すると言うと白いワイバーンが空から舞い降りてきた。レオン達が転移して来てから周辺を警戒し見回っていたのだろう。
「可愛いペットのアルカディアって言うんだ仲良くしてくれると嬉しいな」
アルカディアの頬を撫で襲ってこない事を見せる。
「ペット、ですか」
アルカディアもレオンがラナーに敵意を向けない限り襲うつもりなど無いのだろう。ラナーを一瞥するも鼻先をレオンに押し付けもっと撫でろと言わんばかりだ。
「むぅ」
(今絶対に『レオン様は私?のモノだ』って表現よね?当のレオン様は気づいていないみたいだし…あぁ、私もあんな風に撫でられたい)
「レオン様!アルカディアばかりでなく私も撫でてください!」
「どうした突然?「撫でてください」はいはい」
(撫でられてるアルカディアが羨ましかったのかな?ラナーも可愛らしいところも有るんだな)
ラナーの望み通り頭を撫でるも撫でられているラナーとアルカディアの間には見えない火花が散っていた。
「さ、こんな所で時間を無駄に出来ないからな、アルカディア背中に俺達を乗せて帝国へ向かってくれ」
レオンはラナーを抱きかかえアルカディアの背に飛び乗りる、アルカディアも主人の命令が先決だと理解し二人を乗せ空高く舞い上がる。
(あぁ、これが空中デートなのですね、レオン様に抱かかえられ優雅に空中散歩。あぁ、すばらしいです)
ラナーはまだ知らなかった、『空中デート』の意味を、レオンの感覚が自分のイメージしていた感覚とずれていた事に。
「―――さて、魔法による強化も終わった事だし、ささっと帝都まで行くか!」
「はい!レオンさまぁぁぁぁぁ!?」
馬と言うのは持続性の有る走りで長時間走ることを想定した場合時速50キロが平均らしい。地上での世界最速の動物であるチーターなどは瞬間的な速度は110キロである、その代り持続して速度を保つ事ができない為長距離を移動するのであれば馬の方が速いだろう。
猛禽類のハヤブサの急降下時の最高速度は390キロを記録したと言う話も有る。ではアルカディアの速度はどれ程なのだろう、魔法によって強化され時速200キロを出せるようになった、それも水平飛行時の速度で持続できると言うから驚きだ。しかしそれを経験せず対策せず理解していない場合はどうなるだろうか。
(レオン様!?こ、これは早すぎます!)
初めて経験する空気の壁に驚くラナーをよそにアルカディアの表情はどこか嬉しそうにも感じられる。
「どうだラナー様、良い風だろ?」
ラナーの驚きと衝撃をよそにレオンは楽しそうだ。頑張れラナー様、距離にしておよそ500キロメートルだ、ノンストップでいけば時間にして2時間半……長いですね。
「アレが帝都か、遠くから見る分には王国と差異はない感じかな」
エ・ランテル周辺から出立しておよそ3時間、レオンたちは帝都アーウィンタールの近くに有る森に到着していた。
「レオン様…ラナーはもう…」
何度か休憩をはさんだとは言えラナーの体力は最早限界のようで、抱き抱えるレオンに力なく身体を預けている。
それも仕方の無い事だろう、道中でラナーにも強化魔法を掛けていたが経験の無い者が常に時速200キロの風圧を受けていれば衰弱してしまう。
「ん?やっぱりお城育ちのお姫様にはきつかったか」
(いやいや、一般の兵士でも普通は体力が持たないと思いますから!)
見当違いの感想にも突っ込みを入れる元気も無いようである。
その様子を見てアルカディアは鼻で笑っているようであった。『この程度の飛行に耐えれないのか』とも『この程度で根を上げるようでは主に笑われるぞ』ともとれる哀れんだ視線をラナーに送っていた。
(く、アルカディアめ覚えておきなさい!)
「まあ、お姫様には仕方なかったのかもな
「疲れてしまいましたレオン様…あれ?身体が軽い?」
「そら
ラナーが落ち着くとレオンはアルカディアに
「これでアルカディアは心配ないだろう、今の俺にも見る事は出来ないけど繋がりを感じるから大体の場所は分かるから問題は無いだろ。いいかアルカディア、俺達が帰ってくるまで勝手に移動したら駄目だからな?誰かが来た場合気付いていない様なら放置して、気付いている様だったら上空に逃げろ」
ラナーには姿が見えない為レオンは何もない空間に話しかけているようで何とも間抜けな様子だ。
「さて、ラナー様俺達は今から帝都と皇城に潜入するわけだ、それに伴って今アルカディアに掛けた魔法より高位の不可知化の魔法を俺とラナー様に掛けていく。この魔法はアルカディアに掛けた魔法と違って音や気配まで消す事が可能な潜入に最適なほうなんだが…『今の俺』では逸れてしまうとラナーを瞬時に見つけることが難しい。だが俺とラナーが振れていればお互いの姿は見えるし周りには聞こえない会話が可能だ」
お互いが見えない状態での潜入には危険が伴ってくる、ましてラナーは非戦闘員、逸れてしまって兵士に見付かりでもしたら大問題だ、敵国の王女が夜の帝都、皇城を歩いていれば問答無用で捕縛されてしまうだろう。
レオンからしても王都のマジックキャスターや兵士などの実力は理解できているがここは未開の地、万が一自分を上回る相手が居てもおかしくない。
(俺を知ってるプレーヤーが居ない事を祈るよ)
ユグドラシルではアインズ・ウール・ゴウンを目の敵にしているプレーヤーは少なからず存在するのも事実なのだ。
「取り合えず手を握ってるだけでも問題ないから絶対に離さないでね?」
「それは嫌です」
「え!?何で!?俺と手を繋ぐのそんなに嫌!?」
「ずっと抱き締めて下さい♪」
「え、あ、はい」
レオンに抱きつき先ほどまでアルカディアが見えていた場所に笑顔を向けるラナー。そこには見えない視線と見えない火花が散っているかのようであった。
「
魔法を唱えるとラナーとレオンは周囲から存在が無くなってしまったと錯覚してしまう。
「さて、お姫様?何処から見て回りますか?」
『何処から』と言ってもレオンは帝都に来た事はないので何処に行きたいと言われても連れて行くことなど出来ないのだが。
「では皇城に行きましょう」
「練兵所や軍事施設では無くて?」
軍事施設に侵入し現在の兵の徴兵状態や戦力を確認するのではなく、皇城に行けといったラナーにレオンは疑問を覚える。
「んー理由はいきながら教えてくれると嬉しいな
「王都も帝都もそこまで差は無いんだな、今が夜だからか?」
「現状は王国より帝国の方が繁栄していると思います。今は夜ですので人が町に出ていないだけですが。城下の賑わいは王国以上だそうです」
「ふーん、繁栄しているなら国としては安泰なんじゃないのか?なんで場所の指定や勧告もなく戦争始めようとしてるんだか」
「繁栄しすぎているのも問題なのかもしれません、現皇帝がいかに優れていてもそれを超える者が出てきていて。配下の支持がそちらに流れてしまっているのかもしれませんね」
「優れた者はそれを超える才能に追いやられるってか。はー、トップてのは疲れそうな人生送ってるんだな」
皇城に潜入しラナーが求めたのは秘書官の部屋への潜入であった。
「秘書官の部屋ねえ、確かに秘書の部屋なら必要な書類が有るわな」
「やはり土地勘が無い場所なので無理をして様々な場所を探索するより効率がいいと思いました。それに帝国には逸脱者と呼ばれる大魔法詠唱者のフールーダ・パラダインと言う人物が居ますから」
『フールーダ・パラダイン』帝国における最大戦力にして最強と呼ばれるマジックキャスター、その力は第6位階の魔法を使用でき逸脱者と呼ばれ、その戦力は1人で帝国全軍に匹敵すると言われている。
「逸脱者…そいつって強いの?」
「えっと、私は魔法に関しての知識はあまり持ち合わせていませんので明言は出来ないのですが。なんでも第6位階の魔法を使用できると聞いた事があります」
(第6位階?その程度の魔法で逸脱者?マジかよ…出会っても問題ないな、ラナーを抱えたままでも余裕で撃退可能か。いや、もし俺の知らないこの世界独自の魔法が有った場合は危険か?王国はマジックキャスターの扱い悪いし、軽視してる傾向が有るから魔法に関しての情報って多くないんだよな)
「レオン様?」
ラナーは考え込んだレオンに不安を覚えてしまう。もしかしたら自分の常識を覆し続けるレオンをもってしても第6位階の魔法を駆使するマジックキャスターとは危惧する相手なのだろうか。
「ん?ああごめんよ、帝国最強の強さに驚いていたんだ」
(ああ、やはり逸脱者と呼ばれるのは伊達ではないのかしら。レオン様の方がお強いとばかり思っていたけど、もしこの場でレオン様とお別れすることだけは避けたいから…)
「やはりもう王国に帰りますか?情報は何一つ手に入りませんでしたが帝国観光だと思えば」
「予想以上のしょぼさに」
「え?」
「ん?」
「何だラナー様怖くなったのか?心配しなくてもやばくなったら即時撤退は視野に入れて行動してるから問題は無いぞ?」
「そういうことではなくて…相手は逸脱者と呼ばれる方ですよ?」
ラナーは自分の耳が信じれなかった、目の前の男はなんと言った?帝国最強の話を聞いて『しょぼい』といったのだ。
「第6位階の魔法で逸脱者とか言われてたら
自分の常識が通じない、まさにラナーが感じたのはそれだけだった。
(ああ、やはりレオン様は私の常識を覆してくださるのね。あぁ、もっとこの方の事を知りたい、もっとこの方の力を知りたい)
「どうする?不安なら撤退するか?」
「大丈夫です、レオン様と一緒に居るだけで不安なんて何一つありません♪」
「嬉しい事言ってくれるねーそれじゃあちゃちゃっと秘書官の部屋に行きますか」
ラナーの言葉に気分を好くしたのか笑顔で城内を散策し始める。
しかし始めてきた場所、秘書官の部屋が何処になるのかなど知るはずも無い。
「レオン様は秘書官の部屋に心当たりが有るのですか?」
「有るわけ無いよ?始めてきた場所だし」
「で、ではどうやって探すのですか?手当たり次第に部屋を開ける訳ではないですよね?」
城内の部屋を一つ一つ見て回っていたらそれこそ日が上ってしまう。
「そこら辺見回りしてる兵士にでも聞こうと思うよ」
「はい?」
レオンは巡回している兵士達に近付いてゆく。ラナーは不安を感じてしまうが、2人組みの兵士には2人の姿が見えていないのだ、目の前に敵国の王女が侵入しているとは思いもしないだろう。
「こいつ等でいいだろ
レオンが魔法を唱えると2人は足を止める、その視線は空中をさ迷っていて焦点が合っていないようだった。
「声だけ聞こえるようにしてっと、よう兄弟元気にしてるか?」
レオンは数年来の
「あんたか、どうしたんだ?」
「いやー秘書官に会いに来たんだけど部屋が分からなくてね、悪いんだけど部屋の場所教えてくれない?」
「ああいいぜ、なんなら俺達が連れて行ってやろうか?」
「いやー2人は仕事中だろ?場所教えてくれたら勝手に行くから大丈夫だ」
「確かに仕事は放置できないか、いいぜ教えてやるよ」
レオンは
「ここが秘書官の部屋かーまあ当然護衛の兵士は居るよな」
レオンとラナーは秘書官の部屋の前まにやってきたが扉の前には兵士が2人たっていた。本来は目の前で会話しているレオンを捕まえなくてはならないのだが、魔法によって姿も声も見えていないので暢気なものだ。
「では、先ほどの兵士達と同じ魔法を掛けて扉を開けさせるんですか?」
ラナーも最初の頃はすれ違う兵士達に見付かってしまうのでは、と考えていたが悠然と城内を歩き会話をするレオンを見ていると不安など無くなっていた。
「いや、もし交代の兵士などが来た時に違和感を感じたら面倒だから
別の方法、もしこのまま扉を開け入ろうとしたら兵士達は心底吃驚する事だろう。なんせ自分達の目の前で誰も居ない扉がひとりでに開閉をするのだから。しかしそんな事をすれば騒ぎの元になってしまう。
「別の方法、それは一体?」
「まあ見てな
レオンは周囲のものが動きを止めた事を確認すると扉を開け室内に入ってゆく。
「ここが秘書官の部屋か、机の上も綺麗に整理整頓されてるな。これなら簡単に資料が見付かりそうだな」
部屋は広く書類などが綺麗に纏められている、秘書官の性格が出ている部屋だった。しかしベッドなどが無い事から寝室は別に有るのだろう。
「綺麗過ぎる部屋だな…そろそろ時間も動き出すか」
レオンは書類が置かれている机の前に置かれている椅子に腰掛けラナーを自身の膝の上に座らせる。
「え?この書類は一体?レオン様は?なんで私座って?」
「驚いた?もう部屋の中に入ったよ」
「れ、レオン様!?」
(いつの間に部屋の中に!?これって前にも同じような事が)
「もしかしてレオン様と始めてお会いしたときも同じ魔法を使われましたか?」
「お、流石はラナー様だな、あの時も同じ事をしてラナーを抱きかかえてたんだよ」
レオンは話しながら周囲に
「ラナー様これで書類を見ても音で誰かが気付く事はないよ、思う存分情報収集といきましょー」
「はい、一緒に見ましょう。あ、初めての共同作業ですね♪」
「え、あ、はい」
「しかし驚いたな、軍隊の準備は既に完了していて既に帝都を出て行軍を開始しているとは」
「はい、予想以上に事は進んでいたと言う事ですね。軍隊も10万の兵を導入とは、よくこれだけの情報が王国まで流れてこなかった事に驚きです」
(帝国の情報操作がそこまで優れていたのか、王国の情報収集が脆弱だったのか。恐らくは両方と言ったところかしら)
「さて、ラナー様そろそろ撤退しますか?いつまでも書類と見つめ合っててもしかたないしな」
「そうですね、軍隊の規模は分かりました、まさかこれほどのものとは思いもしませんでした。」
(今までよりも戦争が早く始まる、今何処まで進軍しているか分からないけれど今から兵を集めていては帝国軍がエ・ランテルに進軍してきた時に間に合わない。どうすれば)
今更王国に帝国軍を相手に出来るほどの兵を徴兵するのは難しいだろう。そもそも帝国の軍隊はきちんと訓練されていて『軍隊』として成り立っている。一方で王国の兵は徴兵された農民が大半だ、訓練もしていない形だけの軍隊などお飾りもいいところだ。
レオン達はアルカディアを待たせている森まで戻ってきた。
「んでラナー様、今回の戦争どう見るんですかい?」
「はっきり言って状況は芳しくありません。何も準備していない王国に帝国が攻め入ったらひとたまりも無いでしょう、今回の戦争を凌いで領土の大半を失うだけで済むかもしれませんがそれでも今後王国を維持するのは難しくなっていくと思われます」
一番の問題は兵力差では無い、今この情報を王国にもって帰ったとしてもいったい誰が信じるというのだろうか。国王が今の状況をどう考えているかは不明だが少なくとも貴族達は『戦争が起こらない』を本気で信じているものが多くなっている現状だ。そんな中で発言力が低い第三王女が『戦争はもう直ぐそこまで来ている、自分がこの目で直接見てきた』などと言ったところで絶対に誰も信じない。
「ふーん…なあラナー様1つ言いかな?」
「はい、なんでしょうか」
ラナーは恐れた、もしやレオンは王国を見捨ててどこか違う国に旅立ってしまうのではないかと。
「ラナー様はまだ王国で暮したい?王女でいたい?」
「私は…正直「まだわかんないよなー」え?」
「いくら賢いって言ってもまだ人生なんて分からないよなーまだ10歳にもなってないしなー」
ラナーはレオンが何を言いたいかが分かった。そう自分はまだ『子供』なのだ。ならばその『子供』を利用しよう。
「王国はきっと帝国に戦争で負けてしまうのかなーそうなったら俺は困るからどこか別の国に移動しようかなー」
「まあ、それは困りました!私はまだ王国で暮したいんですレオン様も一緒に王国で暮しませんか?」
「えーでも戦争に負けてしまうかもしれないんだろー?」
「でも王国にはレオン様が居て下さいますから大丈夫ですよね?」
ラナーには目の前の男がどの様に戦争を終わらせるか見当もつかない、しかし今までと同じで『ソレ』はラナーには理解できないような力なのだろう。ラナーには今回の戦争で王国が滅びる未来は見えていなかった。
「ああ、もちろんだともラナー様の為に王国に勝利をもたらせますとも」
「まあ!なんて頼もしい事でしょう!ではレオン様が帝国軍を追い返して下さったら
「それは楽しみだなーじゃあさっそく王国に戻って準備をしようか」
(レオン様がどう思われているかは分かりませんが私にとって今求めるのはレオン様だけ。でもレオン様が王国で私と暮して下さるなら)
ラナーとレオンは顔を見合わせ笑いあう、レオンの笑みは報酬を思ってか、ラナーの笑みはレオンと共に居られる思いか。
もはや二人にとってリ・エスティーゼ王国は都合のいい国でしかないのかもしれない。
「ところで…またアルカディアに乗って王国まで帰る事になるんですよね?」
「そんなに風が気持ちよかった?」
「……キモチヨカッタデス」
「…フッ」
「今アルカディア笑いましたよね!レオン様!あの子私をいじめるんです!」
「いやーラナー様と会ってからアルカディアが感情豊かになった気がするよ。でも帰りは時間が勿体無いから魔法で帰ろうか」
「それは残念です♪」
お待たせしました、ラナー様とレオンさんの空中デートでした。
え、デートになってない?若い男女が2人で出かけたらデートデスヨ?
次回は原作の10年前に起こった戦争になります。
1週間は10日なんだよう!10日って言ったら10日なんだよう!!orz