第三王女であるラナー様の部屋から件の男と少女が出てきた。男の名はレオン・D・ファンション、数日前にあった帝国軍が
それにしても連れている娘は何者だ?ここ最近色々話題に上がっていたが娘がいるなんて話は聞かないし、嫁か?いや嫁には若すぎる気もするが…まあ付いていけば分かる事か。
レオンとツアレはラナーの勧めで護衛の仕事をアルカディアに任せ王都の町へと繰り出していた。
城門の正面はメイン通りとなっており町は活気に満ち溢れていた。
「城内の雰囲気も戦争をしたとは思えないほど呑気な感じだったけど、町の中はそれ以上だな」
レオンは王都のメイン通りと呼ばれる道を歩きながら観察していく。
道を行き交う市民には笑顔が溢れており、町を警邏する兵士達は平和すぎるのかやる気が無いのかは分からないが呑気に欠伸をしながら町を見回っている。
「王国内の出来事でも住んでいる場所が違うと、自分達とは関係の無い世界の出来事に感じる物なんだろうかね?」
実際は帝国が戦争を仕掛けに来た時、パナソレイによってエ・ランテルから来た伝令が来た日はこの王都も大騒ぎだった。しかし国王や貴族が兵の準備をしている段階で新たにもたらされた情報は『帝国軍壊滅・帝国軍撤退』であった。
この帝国軍が撤退したという情報によって、男集は徴兵を免れたのだ。そしてこの情報によって市民は自分達とは係わりの無い戦争になってしまった。
王都の様子は帝国が攻めてきた3日後には普段となんら変わらない日々になっていたのだ。
「なあ、あーツアレだったか?少し聞きたいんだが、お前は今年の帝国との戦争ってどうなったか知ってるか?」
レオンは自身の二歩後ろを俯きながら歩く少女、ツアレへ質問を投げる。
「も、申し訳ありません、私はイーノ様に召し使えてからは外の事はまったく分からないんです。せ、戦争があった事もまったく知りませんでした」
「そうか、それじゃしかたないな…ところでイーノって誰?」
「さ、先程まで私を連れていた方です」
レオンは先程のリットン伯爵達とのやり取りを思い出す。
しつこくアイテムを寄越せと言ってきた細目の男、見た目がザ・マジックキャスターの男、レオンのメイドになったツアレ。
(んー?イーノなんて呼ばれた男なんていたっけ?あ!豚巾着か!間違えた腰巾着もしくは金魚の糞か)
ツアレは自身の新しい主を怯えながらも観察する。
自身がレオンと呼ばれる男に引き取られる時の会話からして貴族ではないのであろう。着ている服はズボンにシャツと随分とラフな格好だがその生地はツアレが今まで見た事が無いほど上質なものだった。
(とても綺麗な服、とても高価な装飾品を持っていたから凄いお金持ちなのかな…どうせお金を持っている人にまともな人間なんて居ないんだ…)
ツアレにとってお金を持っている人間はろくでもない人間ばかりなのだろう、先程のリットンのブレスレットを寄越せと迫る姿は恐ろしい物があった。お金で全て解決できると思っているとはああいう事なのだろう。
目の前を歩くレオンは声を掛けて来た時はツアレの方へ顔を向けたがそれ以降は前を向いている、手を握ったりもしていない。
ツアレは考えるこれは自分自身にとって自由になれる最初で最後のチャンスなのかもしれない。
(もし、今走って逃げたら村まで帰れるかな…でも、もし逃げれなかったら…どんなに酷い事をされるか分からない)
どれだけ歩いただろう、一度声をかけてからレオンは一向にツアレの方を見向きもしない、それは自分に付いてきていると確信しているからなのか、逃げないと確信しているからなのか。それとも逃げても捕まえる自信が有るからなのかどうかはツアレには分からない。
(今なら、ちがう…今しかチャンスは無いかもしれない。なら「おい」ひゃ!ひゃい!?」
「ん?どうかしたのか?」
「な、なんでもありません!も、申し訳ありません!」
ツアレは自身が今から行う行動がばれたのではないかと思い咄嗟に謝罪して頭を下げた。しかし謝罪の声は思いの外大きかったのか周囲の注目を集める事になってしまった。
ドレスを着たツアレが往来で謝る姿は珍しいのだろう、女性達は怪訝な顔をし男達は下賎な笑みを浮かべ2人を見ている。
「なんで謝ってんだ?まあいいや、着いたぞ」
しかしレオンにとって周囲の目など気にならないのだろう。ツアレは怒られるとばかり思っていたがレオンが何も言ってくる気配が無いので頭を上げると、目の前には周囲に連なっている建物よりも高級な雰囲気が漂う店舗の前まで来ていた。
「ここは?」
「城を出る前にメイドに聞いといたんだ、なんでも有名らしいぞ?」
一体何が有名なのか分からないがレオンは扉を開けツアレを中に入るように促す。中に入ると棚が天井まで造られており沢山の布やボタンなどの装飾品が並べられている。
「凄い…こんなに沢山の布見た事無いです」
置かれている布は数も凄いが生地も沢山の種類が有る。
「いらっしゃいませ、本日はどういった御用でございましょうか?」
店舗の奥から現れたのはドレスを着た初老の女性だった、初老と言っても背筋は真っ直ぐで笑みを浮かべるその顔には薄っすらとしわが見えるが『笑顔が似合う』といった印象を抱かせる女性であった。
「突然の依頼という形になってしまうんだが、この子に4着ほどメイド服を仕立ててもらえますか?」
入り口で恐縮しているツアレの背中を押し女性の前へ立たせる。
「メイド服、でございますか」
「ああ、今日から家でメイドとして働いてもらうことになりまして」
「なるほど…では今日から働かれるのでしたら2着ほどは既製品で残り2着を身体に合わせて仕立てるという事でどうでございましょうか?」
「ええ、それでお願いします。それと宜しければその他に生活に必要な衣服なども見繕ってあげてください。俺は少々席を外してもいいですか?」
「ええ構いません、それでは畏まりました。ではお嬢さん此方へ」
女性に連れられツアレは店舗の奥へ消えていった。
「さて俺はリング・オブ・サステナンスで食事は要らないけど
城を出て何処に行くかと思えば王国で一番とされる仕立て屋に行ったと思ったら、
オリハルコン級冒険者の盗賊が夕方の街中で普通に買い物してる男女の追跡って…技術の無駄使いだと思わないか?
まあ俺の追跡を察知できる奴なんて居ないだろうからな、楽な仕事だ。
幻術によって姿を消して追跡したらいいだけの簡単なお仕事ですってか、簡単で眠たすぎて欠伸が出るわ!これは大将に費用請求しなくちゃな。
しかし思ってた以上に意外と紳士だな、今までの買った荷物を全部
大分王都の外れまで来たな…こんな所に何かあったか?ん?アレは屋敷?それなりに大きそうだけど外観は出来てから年数が建っているのが分かるな。
屋敷の横には小屋と言うよりは倉庫と言ったほうがしっくり来る建物が2つ。
あ、少女が男の片腕を掴んで屋敷の中へ入っていった。
やっぱり夫婦なのか?でも少女の方がまだ若すぎる気がするけど…さてどうしたものか、屋敷まで尾行したから、任務は完遂っちゃあ完遂だけど…せっかくだ、屋敷の中までとは言わなくても窓にへばり付いて有る程度の会話も調査しておくか。
別に一組の男女が建物に入ったら恐らく行うであろう行為をしないか楽しみで敷地に潜入するわけじゃないからな!
さて、どんなお楽しみが有るのか楽しみだな!
レオンさんとツアレ嬢の初めてのお使いでした。
さあレオンさんはツアレ嬢のハートをゲットできるのでしょうか?
どうやって攻略するか楽しみですね!
オリハルコン級盗賊さんの今後にも期待したいですね(ゲス顔)
最近ドッペルゲンガー設定あった意味無くね?と言われる声がちらほらありますが恐らく次回(もしくはその次)でその能力を使うときが来るはずですから!
ちゃんとレオンさんのドッペル設定は意味を成す時が来る筈ですから!
期待して(過度な期待は厳禁)まっちょれyo!
作者がドッペル設定忘れてたわけじゃないからね!?忘れてないからね!!