オーバーロード~死の王と幻影の王~   作:ミズナラ

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 今回は顔面蒼白になられた理由と、自己紹介をしていただきました。


25話

 既に依頼を受けカルネ村へ向かったアインズを追い掛ける為、レオンはラキュースを連れ、遅れた分を取り戻すべく足早にエ・ランテルを出立したのだ。

「ねえレオン、一つ聞いて良いかしら」

「なんだ俺のスリーサイズは教えてやらんぞ?」

「そんなの興味無いわよ、聞きたい事は一つよ。ええ、確かに理には叶っているという事は認めるわ、普通に走って追いかけたらいつ追いつくか分からないものね、聞いた話だとエ・ランテルからカルネ村に向かう道は2つあるらしいから違う道を選んで合流できない可能性も排除できるものね、ええ、理屈は理解できるのよ。でもね、今私の置かれているこの状況を説明して貰えるかしら?」

 普通先行している者を急いで追い掛ける場合。自分達が走って追い掛ける、馬などを借りて追い掛ける、目的地に行く馬車に同乗させて貰う、こういった選択肢が一般的だろう。そう『一般的かつ常識的』に考えた場合であれば。

 今現在レオンとラキュースが居る場所はエ・ランテルから800メートルほど離れた位置、そして、地上から見て400メートル程の『上空』。

「質問しておいて自分で答えを言ってるじゃ無いか、走って追い掛けるとか疲れるから却下、馬を借りる?お金が無駄だから1番却下、なら残された選択肢は1つしかないだろ?俺の飛行(フライ)ならそれなりのスピードが出せるし上空からなら探し他人も簡単に見つかるってもんだろ。あ、分かった、ラキュースはアルカディアの背中に乗りたかったんだな?そら俺の飛行(フライ)よりアルカディアの方が早いもんな。でもアルカディアは姫様の護衛を任せてきたから居ないんだ、ごめんな?」

「そうね、アルカディアの背中に乗って冒険するのは憧れるわ、竜騎士とかイイと思うわ…違う、私が聞きたいのは私をお姫様抱っこしている必要性よ」

 レオンはエ・ランテルの城門を出るとラキュースの意見など聞かず有無を言わせず抱き抱え上空へと舞い上がり今に至るのだ。

「そら仕方ないだろ、ラキュースが飛行(フライ)の魔法を使えるなら個別で行くけど、魔法の使えない人間を連れての移動ならコレが現実的だろ?」

「ぐ、確かにそう言われると何も言い返せないけど…」

「まあラキュースみたいな美人を抱っこできるなんて役得だからな」

「はぁ…だったらもっと嬉しそうに抱き抱えなさいよ」

 何時もの調子にラキュースもやれやれといった様子だが、どこか嬉しそうに微笑むのだった。

 

 

「お!みーっけ!」

「ちょっと、いきなり大きな声出さないで。びっくりするじゃない」

「悪い悪い、でも大きい声出すとストレス発散にもなるぞ?」

「ソレとコレは意味が違うで「あ、飛行(フライ)が切れる」へ?」

飛行(フライ)が切れる、レオンがそう呟くと身体が宙へ浮く感覚が襲ってきた、視界も下がり、下から風が吹きつけ始めたでは無いか。言う所の落下を始めたのだ。

 ソレに気付いた瞬間ラキュースに途轍もない恐怖が襲って来た。上空400メートルの位置から何も身を守る術がない状態になったのだ。

「ちょっと!?早く飛行(フライ)を唱えなさいよ!」

「いやー魔力少なくなりすぎちゃったから直ぐには無理かな」

「はあ!?早く!ねえ!そんな事言ってないで早く!!」

地面が近づく恐怖、自身の身体に叩きつけてくる風の強さが落下の速度を否が応でも理解させる。恐怖からレオンの首にしがみ付き飛行(フライ)の発動を要求するも当の本人は魔力がないからと言って笑っているではないか。

「ねえ!お願い!早く!!早く!!!」

 この様なところで死ぬのか、もっと沢山冒険をしたかった、カッコいい決め台詞を言いたかった。僅かな時間の中で様々な思いが湧き上がってくる。

 最早ラキュースにレオンの顔を見る余裕は無く、自身を抱きかかえている男の笑顔に気付くことができない。

飛行(フライ)

 地面に衝突すると思った瞬間、身体に起こったのは大地にぶつかった衝撃では無く、身体が宙に浮く感覚だった。それはエ・ランテルを出た時感じた感覚と同じもの、レオンが飛行(フライ)の魔法を発動した証拠だった。

 

 

 

 

「おまたせーごめんよー組合の手続きに時間かかっちゃってさーめんごめんごー」

 そこにいる者全てが予想だにしなかった登場をした男は驚いている友人(アインズ)を他所に遅刻の理由を話し出した。

「…まさか上から降って来るとは思いもしませんでしたよ、なかなか派手な登場ですね」

「驚いたでしょ?やっぱり登場する時は人が思いつかない様な事をするに限るよねー」

 アインズは考える、恐らくこの男なら空からの登場だけでは無く水の中からや土の中からでも現れるのではないのかと。というか今後も後から合流する度にこの様な登場をするのだろうか。

「ところでそちらの方は?顔色が優れない様ですが」

 レオンにしがみついているラキュースの顔はもともと白かった肌が更に血の気が無くなり青白く変色していた、しがみ付いている腕の力も抜けぐったりしてしまっている。

「んお!?大丈夫かラキュース!?一体何があったんだ!?」

 その場にいた者たち全員が思っただろう、絶対に貴方のせいだろう、と。

「仕方ないなー獅子のごとき心(ライオンズ・ハート)ほら、コレで自分の足で立てるだろ?」

 レオンの魔法によって顔色が戻り地面に足を下ろした、地面に降り立つ時に足下を確認するそぶりが有ったのは余程の恐怖が有った為だろう。

「はあ…ありがとう、もう大丈夫よ」

「沢山大声出せてストレス発散になっただろ?良い気分転換になった「そんな訳あるかぁぁ!」ひでぶ!?」

 レオンが良い事をしたと言わんばかりの鷹揚な態度に腹を立てたのか、それとも言葉に腹を立てたのかは分からないが、そのどちら共だろと思われるが。ラキュースの渾身のアッパー、もとい昇◯拳がレオンの顎に炸裂した。

 その瞬間ナーベラルが剣に手を掛け抜こうとする、それに気づいたアインズがすぐさま剣を持つ手を制止し、小さな声でナーベラルをなだめる。

「よさないかナーベ」

「しかし、御身に手を挙げた行為は死罪に値すると思われます!」

(NPC達にとったらそうなるんだろうなー、でもどう考えても絶対にレオンさんの自業自得だろうし遊んでるだけなんですよナーベさん!)

「よく見てみるが良い、レオンさんも叩かれたのに笑っているだろう?アレはレオンさんなりのコミニケーションの取り方というやつだ」

「…畏まりました」

 ナーベラルにしてみると至高の御身に手を挙げたラキュースを許す事など到底出来ないが、アインズの言葉と笑顔で戯れているレオンを見て剣から手を離した。

 

 

 

「さて、そろそろ自己紹介をして頂いてもよろしいでしょうか?」

 2人のやり取りからかなりの高度から落下してきたという事は理解出来た。その事に怒りを露わにしレオンに食って掛かるのはアインズにも十分理解出来る。

 しかし、このまま2人を放置し続けるのは危険だ。ナーベラルが納得していないのだろう、ラキュースに対し怒りを露わにしている、これ以上は色々と危険な状況になってしまう。

「ほらラキュース、戯れるのは後にしろって。ご挨拶ご挨拶」

「そもそも貴方が…まあ良いわ、もっと言いたい事が有るけど自己紹介が先ね。お見苦しいところをお見せしました、私の名前はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ。ラキュースとお呼び下さい。アダマンタイト級冒険者チーム蒼の薔薇のリーダーをしています」

「私の名前はモモン、そしてこちらがナーベです。よろしくお願いします、しかしレオンさん、てっきりお一人で来られると思っていたのですが」

「んー王都の冒険者組合でたまたま会ってさ、そしたらついて来るっていうもんだから、まあ別に良いかなって。あ、勝手について来てるだけだからお金払う心配とかしないで大丈夫だよ?」

 本来アダマンタイト級冒険者を雇うとなれば金貨数枚を支払う事になるだろう。しかし今回はラキュースが勝手について来たという事になっているのでレオンは支払うつもりはない様子だ。

「お金に関してはよくわかりませんが…お2人はどう言った仲なのでしょうか?」

 レオンが女性を連れて来た事に驚きだが、その女性と楽しそうにじゃれあっているところを見ると余程親しい間柄なのだろうと思考する。

(もしかしてレオンさんの良い人とか!?そう言えばレオンさんの報告書には何名か女性の名前っぽいのが書いてあったな。10年もこっちにで生活してたら結婚しててもおかしくは無いよな…クリスマス忙しい人だしな!)

「うちの姫様とラキュースは親友の間柄らしくてね?仕事柄俺も良く会ってるんだ。10年くらいの付き合いになるのかな?」

「なんでそこが疑問形なのよ、ラナーとは親友と断言して貰って大丈夫よ」

 

 

「さて、モモン君依頼内容の説明をしてもらっても良いかな?エ・ランテルでは依頼を受けてカルネ村に向かったとしか聞いてないんだ」

 レオンはカルネ村に向かっている細かい内容など知らずに合流して来たのだ、誰が依頼主でカルネ村に何の用があって向かっているのか。

「ああ、細かい内容を聞いて追いかけて来たわけではなかったんですね。今回我々は薬師のンフィーレア・バレアレさんの依頼を受けてカルネ村まで薬草採取の護衛を受けているのです。そしてこちらが依頼主のンフィーレア・バレアレさんです」

「どうも初めまして、今回依頼をさせて頂きましたンフィーレア・バレアレです。カルネ村までの護衛をモモンさんにお願いしました」

「ああ、護衛の依頼でしたか。冒険者としては初めての仕事ですので色々ご迷惑をおかけするかもしれませんが護衛としての腕は確かだと自負しておりますのでご安心して下さい」

「レオンさん、こちらの4人の方と合同でンフィーレアさんの護衛を受けカルネ村まで向かっていたんです。こちらがリーダーのペテルさんです」

 アインズは漆黒の剣の4人を紹介していく、しかしレオンからすれば何故他の冒険者と護衛の依頼を受けているのか理解が出来なかった。自分達の実力なら他の冒険者の手を借りずとも仕事をこなせるのだから。

(んーもしかして護衛の依頼は最低人数とか決まっているのかな?だとしたら今後も誰かと組まないとダメなのかな?めんどくさいな、ナザリックから人数調整用に誰か呼んできた方がいいのかな?)

「ペテルさん、こちらが私の友人レオン・D・ファンションさんです。そしてレオンさんの友人…でよろしいですかね?ラキュースさんです」

 アインズは何も気にせずに紹介していくが、漆黒の剣の面々からは驚きの声が上がった。自分達の目の前にいる女性は冒険者達の憧れアダマンタイト級冒険者なのだ。王国に2つしか存在しないアダマンタイト級冒険者チーム、その1つのチームのリーダーが目の前に立っている。

「は、初めまして!銀級冒険者チームの漆黒の剣のペテルと言います!アダマンタイト級冒険者の方と仕事が出来るなんて…よろしくお願いします!」

「うおーーマジか!?アレがアダマンタイト級冒険者の証か!初めて見たぜ!」

「この様な機会を作って頂いたモモン氏には感謝しかないであるな!」

 漆黒の剣の3人がけしてエ・ランテルでは見る事が無いアダマンタイト級冒険者に盛り上がる中、1人ニニャだけは別の人物を敵視してるかの如く睨みつけている。

「『エ・ランテルの厄災』…第三王女直属の護衛でありながら貴族に媚びを売る人物…」

「はっ、『厄災』か、そっちの方が浸透してるんだろうな。『エ・ランテルの英雄』なんて貴族どもが風聴し始めたもんだし」

 ニニャの視線に気づき、厄災と呼ばれた事に冷笑を浮かべる。

 レオンは10年前の戦争によって『エ・ランテルの英雄』と呼ばれる様になった、しかしこの呼び名が浸透しているのは主に王都周辺の町や村だけ、その理由は貴族派が自分達の派閥に居るのが王国ナンバー2の男で、英雄と呼ばれる男だと言う事を誇示したい為。

 しかし、戦争の有ったエ・ランテルなどでは『英雄』ではなく『エ・ランテルの厄災』と呼ばれている事が多い。

10年前確かにレオンは帝国の脅威からエ・ランテルを守った、しかしその結果に問題があった。レオンはたった1人で帝国兵4万人を結果的に虐殺とも思える状態で倒したのだ。確かにエ・ランテル側の犠牲者は108人と少数だがそれは問題では無い、結果レオンは()()()1()()()帝国兵を倒してしまったのだ。

 これがエ・ランテルの市民達からレオンが『厄災』と呼ばれる原因だ、いくら自分達の平和を守ってくれたとしても、圧倒的過ぎる力は恐怖の対象でしかないのだから。

 

「すみません、ニニャは貴族に対していい思いがないもので…」

 ニニャの態度に気づいたペテルが急いでフォローする、本人の貴族に対する思いは分かっているし尊重もするがこの場でその態度を出すのは問題だ。少なくとも2日間はともに仕事をする仲間なのだから我慢して貰わなくてはならない。

 自分の仲間の行動によって依頼主であるンフィーレアに危険が及ぶ事だけはあってはならないのだ。この様なことで依頼主に危険が及んだなどと冒険者組合に知られてしまっては、別のチームと問題を起こす連中と、今後の仕事に支障が出てしまう。

「ああ、気にしなくていいよ。媚びを売っているつもりは無いけど言っていることに間違いは無いんだから。貴族に媚びを売るか…ラキュース、君にも媚び売っといた方がいいかな?」

「なに馬鹿なこと言ってるのよ。まあ、冒険者の先輩としてもっと敬ってくれても良いのよ?」

 はいはい、とラキュースの言葉を流し進行を妨げた本人だということを棚に上げアインズ達へ出立を促していく。

「そろそろ出発しましょうぜ、こんな所で何時迄も油売ってたら目的地までいつまで経っても着かないよ?」

 




 皆さんは絶叫系お好きですか?普通に考えれば400メーター上空から落ちてきたら気を失う気がしますが…

 漆黒の剣さん!憧れの剣ですよ!今の持ち主がちよっと中⚪病発祥してますけど憧れの剣ですよ!
 ニニャさん、言葉には気を付けた方が…

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