「レオンさん?」
『今、行くぜ』その言葉をメッセージで言っていった友人はいつまで待っても現れない。
「もしかして転移の場所を間違えて違うエリアに移動したのかな?焦ってたみたいだしカーソルの押し間違えかな?」
ショートカットキーに登録していたとしても、幾つも登録してあった場合キーの押し間違えということはある。
「レオンさん焦るとボタンの押し間違えとかやるからな、王座の間の前に転移したのか?もしくは自分の部屋に転移をしたのかな?」
なら探しに行くべきか?しかし王座の間で最後の時を迎えようといっていたのはレオンだ、入れ違いになっても困るのでここで待つことに。
「でもレオンさん急がないと時間無くなっちゃいますよ、本当に困った人だな」
困ったと言っているモモンガの声はどこか嬉しそうだ、共にユグドラシルに残り、ギルドを維持してきた友人は時間にルーズだが約束を破ったことは無かったのだ。
「さて残りの時間はっと…あれ?時間が表示されてない、コンソールが出ない……どういうことだ!!」
モモンガの憤怒を込めた声が王座の間に響き、消えていく。
サービス最終日。全てが終わる瞬間に友人を待っていたらコンソールがでない?メッセージも強制的に切られたのでは無いのか。
最後の最後に運営はやってくれた、今の状況に対してなんと説明をするのだろうか。誰か説明してくれと思う。
だが誰も説明などしてはくれないのだろう。ここには自分しか居ないのだから。
しかし。
「どうかなさいましたか?モモンガ様?」
自分以外の声が、それも女性の声が聞こえてくるではないか。
声のするほうに顔を向けるとそこにはモモンガの方へ顔を上げたアルベドだった。
「いかがなさいましたか?モモンガ様?」
アルベドが反応の無いモモンガにもう一度尋ねる。
なぜNPCが喋って居るのか、理解できない状況に頭はショートしそうだった。
「なにか問題がございましたか?」
アルベドはやはり返事が無いモモンガに近づく、モモンガはアルベドから漂う甘い匂いに反応し意識を持ち直しアルベドの方へ顔を向ける、すると豊かな胸を見た瞬間。
「あ、あれ?」
今起こったことに対し焦っていた感情が一瞬で落ち着いたのだ。
「…GMコールが利かないようだ」
アルベドの方へ向き話しかけてしまう、本来であればNPCから返事が帰ってくることなど無いのだ、しかしアルベドを見るとそこにいるのはNPCではなく、生きた人間のような自然な表情の動きが見える。
「申し訳ありません、無知な私ではモモンガ様の問いである『GMコール』と言う物に関してお答えできることが出来ません、ご期待にお応えできない私に、この失態を払拭する機会を頂けるのであれば、これに勝る喜びはございません」
会話をしている、こんなことは今までありえなかったことだ。だが会話が出来てるということは何か異常が発生したのかもしれない。
視線を動かしセバスとメイド達を見る。
「アルベド、セバスよ何か異常は発生していないか?どんな些細なことでも構わん」
「いえ、モモンガ様。問題が発生したという報告は受けておりません」
「私どもも、特に変わった事はなかったと思われます」
「ふむ……」
モモンガからすれば、NPCであるアルベド達と会話をしている事が前代未聞の大問題なのだが。
モモンガは一瞬レオンがアルベドに変化しているのではと疑ったが、セバスと同時に質問をし二人が喋ったことからその可能性は低いと感じた。
「こういう時は現状確認が優先か、セバス」
命令しても問題ないだろうか、不安になりながらも決断する。
「大墳墓を出て、周辺地理を確認せよ、行動範囲は周囲1キロ、行動時間は1時間。もし知的生物が居た場合は友好的に接してここに連れて来い」
「承知いたしました、モモンガ様」
「ふむ、プレアデスから1人連れて行け、もし戦闘になった場合はプレアデスを先に撤退させ情報を持ち帰らせろ。だが極力戦闘は控えるように、お前達の帰還が最優先だと知れ」
セバスたちはモモンガの自分達の帰還が最優先という言葉に静かに喜び。確実な情報の入手を決意する。
「残ったプレアデスは何処かの階層に転移していると思われるレオンさんを探し私に連絡しろ」
「畏まりました、モモンガ様」
セバスとメイドたちはモモンガに頭を下げると、一斉に立ち上がり行動を開始した。
モモンガは残ったアルベドへと視線を向ける。
「ではモモンガ様、私はいかがなさいましょうか?」
「ああ、そうだな」
アルベドやセバスたちは自分の命令に従ってくれたが他の者達、各階層守護者達はどうなのだろう、自分に従ってくれるのだろうか、確認しておかなくてはならない。
「第四、第八を除く各階層の守護者達に連絡を取れ、六階層のアンフィテアトルムまで来るように伝えろ、時間は1時間後だ、アウラとマーレには私が伝えるから連絡の必要は無い」
「畏まりました、モモンガ様」
足早に王座の間を出て行くアルベドを見送るとモモンガは深いため息をついた。
「なんてこった、俺はタブラさんの作ったNPCを汚してしまったのか…」
『モモンガを愛している』
こんな事になるのであれば『ビッチ』の部分だけ消すだけにしておくべきだった、タブラ・スマラグディナにどんな顔をして会えばいいのだ。
「ひとまずアルベドの事は後回しだ、レオンさんと合流してやらなくてはならない事を一つ一つ片付けていくしかない」
「んーそろそろ試すか」
カーディナルにもたれながら今居る世界がゲームの中なのか確実に判断する方法を思いついた。
「確かユグドラシルって18禁行為って即効アウトになったよな」
だが今の状態で18禁行為の確認をするとなると。
「男の18禁行為っていったら下半身を触るか下半身露出だけど…露出とかただの変態じゃないか」
変態というかもはや犯罪行為だ18禁以前の問題だろう、だが実験をするのならせめて自分にとってもメリットが無くては面白くない、何よりもしもアカウントが停止される可能性があるのならチャンスは1度きり。
「なら当初の目的と併用して楽しゲフンゲフン…実験するとしよう」
レオンは立ち上がりカーディナルから離れ、自分のドッペルゲンガーとしての能力の確認を始める。レオンはドッペルゲンガーの最上位種『
これはユグドラシルというゲームのおいてかなり優位に立てる。なぜなら情報というものが何より重要であったPVPにおいて『戦士職がまるで魔法職のように上位魔法を使用してくる』などとありえない事を可能にするのだ。もちろん完全な状態で使用可能というわけではない、変化して使用する能力は80%に落ち、装備は本人(レオン)の現装備のままでの使用になるので装備などによっての能力強化は出来ないのだ。スキルを使用する前後に装備を変更しておけば多少の能力ダウンは補えるのだが。
「クリュプトンは使わないでいいな、見た目の変化がメインの実験だし」
『
「とりあえず戦士職の『レイナ』になってみるか」
レイナとはレオンのアインズ・ウール・ゴウンとは関係の無いリアルでの友人が使っていたアバターだ、この実験での変化は見た面が何処まで出来ているのかという点なので、見慣れている方がいいのだ。
「お互いの名前が『レ』始まりで言い合いしたな…いかんいかん感傷に浸ってる場合じゃないな、んーとりあえずレイナを思い出しながら」
レイナを思い浮かべながら肉体の変化をイメージすると、レオンの体が波打ち始めた。
「うお!?なんだ!おお!んん!?ああ!おぉ」
レオンの体から凹凸がなくなったかと思うと、それも一瞬のことで新たな凹凸が生まれた。
「すっげー装備が変わった、目線も下がった、声も変わった、なにより体つきが変わってる」
髪は銀髪になり、身長もレオンの時に比べると縮んだが、自身の体を見ながら頭を抱える。
「いやさ、人の趣味にとやかくは言うつもりが無いんだけど…でかくね?」
でかい…お尻もそれなりに大きいしウエストはくびれているのだが、何より胸がでかい。このキャラクターを作った人物の願望があふれていますと言わんばかりに。
「なんだよこの『俺の理想の女性を形にしました』的なプロポーション」
そうレイナでゲームをプレイしていたのは男性なのだ、別にネカマをしていた訳ではなく、本人曰く『男のケツ見ながらゲームするとか楽しく無いじゃん?だったら好みの女性を作ってゲームするほうが楽しいじゃん!』との事である、が。
「アバター作るのに半日費やしてから本人視点のゲームって気づいて発狂してたな、何回も落ち着けって言っても聞かなかった本人の自己責任だけど」
自身の後姿など見ながらゲームが出来るわけも無く、ショックを受けていたがその後、装備画面を見る時は自分の姿が見える!と喜んでいた友人を思い出す。
「なんかレイナじゃなくて
友人を思い出したためにアバターのレイナではなく、レイナを操作していたプレイヤーになった気になってしまったが頭を切り替える。
「18禁行為…それすなわちエロい事!てことはやっぱり胸揉むのが一番手っ取り早く確実で楽しめるよな」
自身のレオンで胸を揉んだところで18禁の行為とカウントされるか微妙だしやはり揉むのは女性の胸だろと言う事でレイナになったのだ。
「触るぞ、揉むぞ……ん、おお!やわらかいな、つかやっぱりでかいな」
自身の手に収まらないほどの胸を揉みながらもう1つの疑念を思い出す。
「やっぱり下半身も無くなっているのかな…」
下半身も確認するか悩んでいると視線を感じ目を向けてみるとそこにはレイナを見ているアルカディアとカーディナルの姿が。
「…うん、もう実験はこの位にしておこうかな、いざと言う時の為にレオンに戻ってもおいた方がよさそうだな」
二体の視線に耐え兼ねたのかレオンの姿に戻る、レイナは戦士職なので戦い方には慣れている筈なのだが、恥かしい感情が勝ったのだろう。
「しかし胸を触っても何の問題もないと言う事は、やっぱりここはユグドラシルの、ゲームの世界ではないと言う事でよさそうだな」
『ゲームの世界に閉じ込められた』『新しい別のゲーム』『ユグドラシル2』これらの可能性は無くなった、なら今いるこの場所は、この世界は自分が住んでいた世界でもなくゲームの世界でもない別の世界と言うことになるのだろうか。
ユグドラシルの世界でないことは理解できた、なら次はこの世界の生物との接触だ、できればモンスターと戦闘して自分の実力の確認をしたい、流石にレイドボスやワールドエネミー等のクラスがそこら辺の茂みにいるとは思いたくは無いが、レオンは第十位階怪物召喚〈サモン・モンスター・10th〉でレベル80のアルカディア達を召喚できた、ならそのレベルのモンスターも生存している可能性は大いにあるのだ。いつ強力な敵との戦闘に成ってもおかしくは無い、故に自分の実力とこの世界の平均的なレベルは早急に理解しておくことが重要だ。
そして意思疎通が可能な人間種との接触、できれば人間との接触が理想的だ、今はドッペルゲンガーで異形種だが元はレオンも人間だ、やはり交流が可能なら最初は人間がいい。
「よし、とりあえず適当に移動しながら考えよう、つってもまとまって行動するのも効率が少し悪いな」
ここはワイバーンであるアルカディアに空から周辺の偵察に行かせ、カーディナルを自身の護衛に就けるのが安全で効率がいいだろう。
「アルカディアは空から周辺に人間やエルフなどの村や集落などがあるか探してきてくれ、カーディナルは俺と共に森の中を散策しようか、モンスターが居るかもしれないからな」
レオンが言うとアルカディアは空高く舞い上がりすばやい動きで飛び去っていった、カーディナルはレオンの前に来て体を低くした。
「ん?もしかして背中に乗ってもいいのか?」
カーディナルは頭を低くし肯定の意を示した、それを見たレオンは喜びカーディナルの背中へ飛び乗った。
「あーもーサイコー…ライダーってなんか憧れてたんだよなー後でアルカディアにも乗ろう、それっぽく見えるように武器も出しておこう…スクショ撮れないのがマジ辛いわー」
恍惚した表情を浮かべながら何も無い空間から神器級の槍を取り出す、槍頭は大きく、槍頭の下には巨大なクリスタルが埋め込まれ、柄には赤、青、紫の3つの宝石が埋め込まれている。
「やっべー槍持って魔獣に騎乗してるとかちょーやべー今の俺絶対ちょーかっこいいわ」
もはや語学レベルが幼児退行している気もするが本人は満足しているようでカーディナルも誇らしげに森の中へと歩き始める。
いかがだったでしょうか?今後もオリジナルの魔法やスキルが出てきますが、できる限り原作の魔法やスキルをメインに書いていきたいと思いますので宜しくお願いします。