オーバーロード~死の王と幻影の王~   作:ミズナラ

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3話

 モモンガはイスに座り直径1メートル程の鏡『遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リーモートビューイング)』を使いナザリックの周辺を見ている。ユグドラシルでは使うことが無かったアイテムだが周辺を確認する程度なら十分役に立つ、しかし使い方がよく分からず長い時間試行錯誤していたのだが。

 

「ふむ、これで移動か、拡大はこうするのか」

 

 鏡の前で両手を大きく動かし鏡に映る景色を動かしている、しかしさきほどから映るのは最初から代わり映えの無い草原や木々だけだ、知的生物などを探しているのだが何時までたっても見つからず飽きてきた。

 モモンガは先ほどの六階層での出来事を思い出した、守護者たちが自分の事をどう思っているか確認したのだが守護者達の忠義は本物であった。だが他の仲間のことは如何思っているのだろう?流石に辞めていった仲間のことは聞きにくいが共に最後まで残っていた友人のことは聞いても問題ないだろう。モモンガは横に立つセバスに尋ねてみることにした。

 

「セバスよ、お前に聞きたいことがあるのだが」

 

「は、私にお答えできることであればなんなりと」

 

「ではセバスよ、お前はレオンさんの事を如何思っているのだ?あの人は私となかなか時間が合わない事もあったがあの人は毎日ここにログイんん!顔を出していたのだろう?」

 

 モモンガとレオンはプレイする時間帯が違うことが多かった、お互いが同じ休みの日は一緒に行動して喋ったり狩にも行っていたがそれでも時間が合った時の話だ、休みの日以外は少し顔を合わせる程度だった、2人の勤務時間が違うから仕方の無いことではあったが、レオンはログインを毎日欠かさずしていたのだ。

 

「私がレオン様に思うのは誰よりもお優しいお方だと言うことでございます」

 

「ほう、それはなぜだ?」

 

「はい、もちろん最期までこの地に残ってくださったモモンガ様も慈悲深いお方でございますが、レオン様は日頃から私やプレアデスそして一般メイドたちにも御声を掛けて下さっておりました」

 

(なにそれ!?レオンさん毎日ログインしてると思ったらそんなことしてたの!?NPCに声掛けとか怖いんですけど!?)

 

「そ、そうか、そういえばシャルティアが先ほど声を掛けていただいたとか言っていたな」

 

 六階層に各階層守護者を集めた時にレオンの居場所を知らないか確認したのだがその時にシャルティアが『第二階層を慌てた様子で走っておられたようでした。しかしそのような状況でも私に御声を掛けて下さったでありんす』と言っていたのだ。

 

(あの時は色々と把握することが多すぎて気にしてなかったけど、よくよく考えるとNPCに声掛けてたって…俺と一緒にいる時はそんな事してなかったから1人で居る時だけしてたんだな…レオンさんも疲れてたんだな)

 

 モモンガは付き合いの長い友人が疲れからそのような奇行に走ったのだと思うことにした。

 

(でも今となってはその奇行がNPC達にとってはプラスの行動になっていたわけだ、なんて声を掛けていたかは分からないけどNPC達にとっては自分達を気にしてくれていたって事になるのか)

 

「そ、それ以外に何かしていたかは知らないか?」

 

「鍛冶長のところに行き武器やアイテムなどを作られていたと聞いております」

 

「ああ、レオンさんは素材やデータクリスタルが集まったら新しい武器を作っては増やすのが趣味だったな」

 

 レオンはモモンガと二人でナザリックを維持する費用を集める傍ら素材を集めては変わった武器やアイテムを作るのが趣味だったのだ。

 作る武器は実用性を重視した物から一見何のために作って何処で使うのか分からない代物まで様々だ。物理攻撃力0の剣だが魔力向上、魔法攻撃力アップ、魔法防御力アップなど戦士職が持つような物ではなく魔法職が持つかのような剣や槍などを作ってはよく見せられていたのだ。

 

 

 

「モモンガ君これ装備して見てよ、前作った武器に『魔法三重化(トリプレットマジック)』『魔法抵抗難度強化(ブーステッドマジック)』『魔法効果範囲拡大化(ワイデンマジック)』『上位全能力強化(グレーターフルポテンシャル)』『上位幸運(グレーターラック)』『上位硬化(グレーターハードニング)』をセットしたんだ、魔法職には中々いい感じの武器になったと思わない?」

 

「いったいどれだけのデータクリスタル使ったんですか?結構な付与効果じゃないですか…ん?装備不可能?レオンさん装備するのにどんな条件付けたんですか?」

 

「そんな難しくないよ?武器が槍だから『戦士職の職業(クラス)レベル何れかがレベル10以上で装備可』ってだけだよ」

 

「馬鹿ですか!?いったい何処の戦士職にガチ魔法職装備持たせるんですか!?そこは槍じゃなくて杖とかでしょ!?」

 

「いやいや何事にもサプライズは必要でしょ?」

 

「誰に向けてのサプライズですか…よく見ると『伝説級(レジェンド級)』の槍じゃないですか、本当にどれだけのデータクリスタルと素材使ったんですか」

 

「いやー本当は『神器級(ゴッズ級)』で作るか悩んだんだけどね、流石に勿体無いかなーって思って辞めたよ、素材に関しては適当に市場で物色したり課きゲフンゲフンしたりしたぐらいだよー」

 

「本当になにやってるんですか!?」

 

 

 

(…レオンさん何処行ってしまったんだろう?ゲーム終了までログインしてるのは俺も分かってるし、やっぱりこの世界に来たときに違う場所に転移したのだろうか?)

 

 セバスと会話しながらも遠隔視の鏡を操作しているとモモンガは目的のものを見つけることが出来た、それはナザリックからおよそ南西に10キロほどの距離にある周りを森に囲まれた村だった。

 

「やはりこの村にいるのは人間か、これは祭りか?」

 

 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リーモートビューイング)に映る映像を見ていると村人が走り回っているのが分かる。

 

「いえ、これは違います」

 

 セバスの口調が固いものへと変わっていた。映像を拡大していくと全身鎧を着た戦士風の者たちが村人を殺していたのだ。

 

(人が殺されていると言うのに何も感じない、人としての感覚が麻痺しているのか?それとも価値観が人ではなくなっているのか?)

 

 殺戮の映像を見ていると言うのに何も感じない事に不安を感じ映像を動かしていく、2人の少女が手を繋いで走って逃げているのが映った。その後ろから騎士達が追いかけているのが見えた。

 

「如何なさいますか?」

 

 モモンガは一瞬考え。

 

「見捨てる、この村にもはや価値は無い」

 

モモンガがそう言ってセバスの方を見るとセバスは目が見開いていた、驚きを感じている事はモモンガにも感じ取ることが出来た。

 

(あれ?やっぱり助けに行くって言うと思ったのかな?)

 

「セバスよどうしたのだ?」

 

 確かにセバスはナザリックでは珍しくカルマ値が極善なのだ、セバスとしては助けに向かいたいのだろう。だがそれほど驚く事なのだろうか、いや顔に出してまで驚く事なのだろうか、ナザリックは異業種が多く居るためこのモモンガの見捨てる発言を聞いても異議を唱えるものは居ないだろう。ましてやモモンガの意見はナザリックにおいて絶対なのだ。

 

「モ、モモンガ様この方をご覧ください…この方は」

 

 セバスは遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リーモートビューイング)に映る映像を指差していたのだ、そこには二人の少女に背を向けた戦士の姿が見えた、少女を追って来た全身鎧たちと向い合っているように見える事から少なくとも少女達の味方なのだろう、だがそれが如何したのだろう。

 

「この戦士風の男がどうかしたのか?顔は見えないが少女達を助けに来たと言うことではないのか?」

 

「いつも装備されていた武装と違いますが、この方は至高の方々の御1人レオン・D・ファンション様です」

 

「なに!?」

 

 モモンガは慌てて映し出されている戦士を見る、映像に映し出されているのは後姿で顔までは分からない、急いで画面を動かし戦士の正面に移動させる。

 

「な!?レオンさん何故こんな所に!?」

 

 その顔は間違いなくアインズ・ウール・ゴウンの1人レオン・D・ファンションだったのだ、全身鎧達に向かって何か喋っているようだが遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リーモートビューイング)では音声までは聞こえない。

 

「セバスよ!私はこの場所に行く、ナザリックの警備レベルを最大限まで引き上げた後にアルベドに完全武装で来るように伝えろ。その後何名かの護衛を送れ!」

 

「畏まりました、ですが護衛となりますと私がモモンガ様と共に行くほうがよろしいのでは?」

 

「アルベドに伝達するものが居なくなるだろう?伝達をした後であればお前に任せる、それに、私とレオンさん二人が居るのだぞ?」

 

 モモンガは笑っていた、いや骨しかないのだから笑っているかは分からないがセバスは主人が笑ったと感じ取った。

 モモンガはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを取り出し魔法を唱えた『転移門(ゲート)

 

 

 

 

 

 

 

 転移門(ゲート)の先に居たのは全身鎧の騎士が2人と少女が2人恐らく姉妹なのだろう年上の少女は背中を切られている、セバスとの会話の間に切られたのだろうか、妹と思われる少女は姉にしがみ付いている。そしてその少女達を守るようにその前に立つ

戦士の男が1人右手に槍を持っているのが見える、槍を持つ手に力が入っているのが分かる、恐らく少女が傷付けられた事に怒りを覚えているのだろう。だがあの横顔は間違い。

 

「レオンさん!」

 

 モモンガの声に驚き男はモモンガの方へと顔を向けた。怒りに満ち溢れていた顔が驚きへと変わった。

 

「…え!?もしかしてモモンガ君?え!うそ!?」

 

「やっぱりレオンさんだったんですね!よかった、メッセージが繋がらないしナザリックの中にも居ないから心配したんですよ?」

 

「え、ナザリックもこっちに来てるの!?てか、え?本当にモモンガ君!?」

 

 レオンはあまりの予想外の出来事に慌てているようだった、だがモモンガの方へと近づいていく。

 

「ええ俺ですよ、モモンガです」

 

「本当に本当にモモンガ君?ギルド長のモモンガ君?」

 

「ええそうですよ」

 

「本当に?あのネーミングセンスがアレなモモンガ君?」

 

「ぐっ、ええ、そのモモンガで間違いないですよ」

 

 モモンガはギルド内でのネーミングセンスは評価が低いのだが本人確認で言われるとは思っていなかったのだ、本人的には消して悪くないと思ってつけても周りの評価は散々だったりもする。

 

「そっか…そっか…やっと会えた!」

 

 レオンは満面に喜悦の色を浮かべモモンガに抱きついた。モモンガは友人の突然の行動に驚く、やはり1人で転移して不安だったのだろうか。

 

「やっと会えた!もう二度と会えないかと思ってたのに!」

 

「レ、レオンさん如何したんですか!?」

 

「どうしたもこうしたも「き、貴様ら俺達を無視してるんじゃない!」あ?」

 

 騎士達が剣を向けていたのだが、モモンガ達は再会を邪魔された事に怒りを露にした、レオンとモモンガが騎士達を睨むと後ずさりした。

 

「少し黙っていろ『心臓掌握(グラスプ・ハート)』」

 

「黙れ糞ゴミ共が『龍雷(ドラゴン・ライトニング)』」

 

モモンガがスタッフを持っていない手をかざすと軟らかい何かを掴んだ感覚があり、それを握りつぶす、レオンも槍を持たない手をかざすと手から龍の形をした雷が放たれ1人の騎士を貫いた。

 

「ええ…こんなに弱いの?」

 

 モモンガはレオンが放った『龍雷(ドラゴン・ライトニング)』で騎士が死んでいくのを見下ろしながら自分が考えていたことが杞憂で終わったことに安堵する。モモンガはもし騎士が強かった場合レオンと少女達を連れて転移門(ゲート)で撤退するつもりだったのだ。

 

「ん?そらこの程度の連中ならこんなものでしょ?」

 

 モモンガの呟きが聞こえたのだろうか、レオンはさも当たり前のように。

 

「鎧についてる紋章はバハルス帝国みたいだけどまだなんとも言えないね、まあ帝国だろうが王国だろうが一般兵の強さなんてこの程度でしょ?」

 

 レオンは何をいまさらと言った顔で首を傾げているがモモンガは驚くことが3つに増えたのだ。1つはなぜレオンがナザリックの外に転移していたのかという事、2つ目は騎士風の者が予想以上に弱かったことについて、そして3つ目になぜ『レオンが騎士の強さと紋章の理解をしている』ということに。

 

「バハルス帝国?王国?レオンさんどういう事ですか?いや、あなたはいったい何処まで知っているんですか?」

 

「どこまでって、モモンガ君?君こそ何を言っているんだ?」

 

 2人はお互いが何を言っているのか理解できないという様子だ。方や騎士の強さはおろか自分の置かれた状況すら理解できているわけも無く、ましてや自分のいる国の名前すらわかっていないモモンガ。方や騎士の強さを把握し鎧の紋章から国名まで言ったレオン。

 2人は互いに疑問を浮かべた表情を向け合う、片方は骸骨の顔なので判断しかねるが。

 

「あ、あの、レオンさん!」

 

 モモンガ達が互いに困っているとそんな状況を如何にかしてくれるのは少女の声だった。

 

「ん?ああ!ごめんよエンリ痛かっただろ?すぐに治してあげるからな」

 

 レオンは声を掛けてきた少女に近づきながら槍を空間に仕舞い傷ついた少女の目線に合わせるようにしゃがみこみ右手をかざした。

 

「『大治癒(ヒール)』」

 

 レオンが魔法を唱えると少女の背中に負った傷が瞬く間に治っていった、少女の顔色も良くなったようだった。

 

「もう痛まないか?ネムも良くがんばったなえらいぞ」

 

そういうとレオンは2人の少女の頭を撫でた。

 

(レオンさんはこの2人と知り合いなのかな?ずいぶんと親しそうに話しているようだけど…)

 

 ネムと呼ばれた少女は目を細めながら撫でられエンリと呼ばれた少女は恥ずかしそうにしながらも撫でられている。レオンは気が済んだのかモモンガへと向き合う。

 

「さてと…せっかくの感動の出会いに懐旧談に浸りたいところだけど、ちょっとやる事があってね。積もる話はその後でもいいかな?」

 

 モモンガとしてもこの世界に来てNPC以外のプレイヤーと会えたのは喜ばしいことだ、それが自分の探していたギルドメンバーであるのなら尚更だ。

 

「ええ、もちろん大丈夫ですよこの村を助けるんですね?でしたら手伝いしますよ」

 

 モモンガの提案にレオンは微笑し何処か懐かしいものを見るように遠くを見ていた。

 

「それじゃあ宜しく頼むよ…ところでその『転移門(ゲート)』は何時まで開いてるのかな?」

 

 モモンガがこの場に着てからいまだにゲートは消滅していない。その場に居た者の目線が『転移門(ゲート)』へ向けられる。するとその中から黒の甲冑で覆われた戦士が出てきた、それを待っていたかのように『転移門(ゲート)』は消えていった。

 

「お待たせして申し訳ありません」

 

 戦士の声は女性のものだった。モモンガは声でアルベドだと分かったようだがレオンは首を傾げている様子だ。

アルベドはモモンガとレオンへ深く頭を下げ臣下の礼を取った。

 

「至高の四十一人御方々の御一人であるレオン・D・ファンション様、このような場所ですが我が忠義を示す事をお許しください」

 

「ん?うん…すまないが黒の戦士よ、久しく君と会っていなかったせいか顔が見えずに声だけでは君が何者か分からないんだ、申し訳ないがその綺麗な声で俺に名前を教えてくれないかな?」

 

「謝罪などおやめください!至高の御身であるレオン・D・ファンション様に名を名乗らずに忠義を示そうとした私が悪いのです、申し訳ありません!」

 

 アルベドはレオンが気分を害したと思い頭をさらに深く下げた。

 

(あーレオンさん良く分からないけどとりあえず名前聞こうとしたらさらによく分からない状況になったって感じなんだろうな目が泳いでるよ、まあ目の前に現れた人物が自分を至高の御身だとか忠義だとか言われたら困るよな、俺も精神が抑圧されるからどうにか動揺を隠せたけど…ここは助け舟を出した方がいいよな)

 

「アルベドよ、レオンさんは謝罪ではなくお前の役職と名を聞いているのだ、ならば如何するべきか分かるな?」

 

「は!では、ナザリック大墳墓守護者統括アルベド、至高の御身であるレオン・D・ファンション様の前に平伏し奉る…我が忠義を御身に捧げます」

 

「…………アルベド、またこうして君に会えた事を嬉しく思うよ」

 

「勿体無いお言葉でございます…ところでこの下等な生物はいかがなさいましょう?」

 

 アルベドは横目で状況が飲み込めずに座り込んでいる姉妹を見る、アルベドからすれば至高の御身であるモモンガとレオンに平伏していない人間が許せないのだろう。隠そうともしていないのかアルベドから漂う殺気が漏れている。

 姉妹は自分達に向けられた殺気に脅えてしまっている、先ほどまで自分達を襲っていた戦士風の者達よりも強力な殺気を感じ取ったのだろう。姉妹はより強くお互いを抱きしめ合った。

 

「アルベド止めないか。その子達は私が大切にしている姉妹だ危害を加えることは許さん」

 

「…畏まりました」

 

「アルベド、エンリ、ネム、少しそこで待っていなさい」

 

 レオンはそう言うとモモンガを連れて少し離れた場所に歩いていく。三人の姿は見えるが会話までは聞こえないであろう距離まで離れたうえで声を下げモモンガに尋ねた。

 

「ちょっとモモンガ君如何いう事?なにアレ?至高の何て?忠義ってなに?アルベドってあのNPCのアルベドだよね?何がどうなってるの?俺に分かり易く三行で説明してくれない?あ、久し振りだねまた会えて本当に嬉しいよ」

 

「いや…自分も全部理解できた訳ではな無いんですけど…取り合えず『NPCは恐らく味方・NPCの忠義は本気とかいてマジ・自分もまた会えて嬉しいです。ですかね」

 

「んー…まあそんな事も有るのかな?まあいいか…うん」

 

「えぇ…いいんですか…」

 

「いやー今は考えたって無駄かなって、今はやらなきゃいけない事も有るし、だったら考えることは後回しでいいでしょ?アルベドは味方なんでしょ?ならおーけーおーけー」

 

「…相変らずですね、何も変わられて無いようで安心しました」

 

 レオンは苦笑いをしながら三人のもとに戻っていった。

 

 

 

「さてとそれじゃあエンリ、ネム、村を助けに言ってくるよ」

 

2人を安心させるように頭を撫で村へと歩いていく。

 

「あ、あの!レオンさん!お父さんを、お母さんを助けてください!」

 

「おう、任せとけ!二人も隠れとけよ!」

 

 村へと歩いていくレオンの横を大きな巨体が咆哮を響かせながら駆け抜けて行った、その咆哮は獲物を狙う獣のようだった。

 

「アレは死の騎士(デスナイト)か、モモンガ君が召喚したのか…よし、アルカディア!お前は村の周囲に居る騎士共を始末してから死の騎士(デスナイト)と合流しろ!」

 

 レオンが空に向かって叫ぶと何処からかワイバーンのアルカディアが飛び去っていった、死の騎士(デスナイト)と違い咆哮こそ無いがその目は餌となる獲物を見つけた獣であった。

モモンガはデスナイトを召喚し指示を出すとエンリ達に魔法を掛けていた。

 モモンガとしては名前も知らない姉妹だが友人であるレオンが『大切にしている姉妹』と言ったのだ、ならば最低限でも魔法による守りなどを施しておいても良いだろう。

 

「魔法による守りを掛けてやった、そこから出ない限りは安全だ」

 

「あ、有難うございます!…あの、レオンさんのご友人の方でよろしいんでしょうか?」

 

「そうだ」

 

「でしたらお名前を教えていただけないでしょうか!」

 

 先ほどまでレオンがモモンガと呼んでいたが、気が動転していたてはっきりと名前を聞き取れていなかったのか、改めて本人から名前を聞きたいのか分からないがエンリはモモンガに名前を尋ねた。

 モモンガは考える、自分はナザリック大墳墓の主、今では2人しか残っていないが上位ギルドのギルドマスター、NPCが忠誠を誓う至高の支配者、ここが何処なのかも、如何いった世界なのかも分からない、では自分はいったい誰なのか、もしかしたらレオン以外の友も来ているのかも知れない…なら自分が名乗るのはモモンガではなく。

 

「我はレオン・D・ファンションの盟友――アインズ・ウール・ゴウン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 簡単な任務だった『村を襲いある程度の村人を生かし村は焼き払う』王国領の村とはいえ王都や町から離れている辺鄙な村だ、冒険者も居たとしても少数だろう、そもそも自衛出来るような力を持っている村などはこの周辺には無い。

 詳しい事こそ教えられていないが、村をある程度襲い王国の軍が来る前に撤退する。王国の軍が来たら後詰の部隊に任せる、どの様な部隊かは聞いていないしどうやって軍を滅ぼすのかは俺の知った事では無いが。

 そう俺の隊は誘導部隊なのだ、村には恨みは無いがこれも人類のため。……等と言ってはいるが正直こんな楽な任務で報酬をもらえて俺はツいている。国の為に軍を率いたと言う箔も付く、これほど楽なことは無い。

 気に入らないことが有るとすれば先ほど逃がした中々に俺好みの身体をしていた娘を捕まえれなかった事だ、娘の父親が邪魔さえしなければ今頃お楽しみだったというのに…ちっ使えない部下だこの俺が隊長に就いてやっているのだから俺の為に立ち回れクズ共が。まあいい、生き残りの中にさっきの娘がいなければその時は代わりの娘でも選ぶまでだ。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

なんだ?村の連中は粗方集めたはずだ、いったい何の悲鳴だ!?

 

 声のほうへ振り向くと目の前を悲鳴を上げたであろう男が宙を舞っていた。部下が村人を投げたのかと思ったが、そうじゃない。地面に叩き付けられた男は俺と同じ全身鎧を着ている、なぜ俺の部下が宙を舞った?そもそもなぜ全身鎧を着た男が吹き飛ばされる!?

 

「ひゃぁぁぁ!!」

 

 また悲鳴が聞こえる!いやだ!見たくない!なにが起きている!……後ろに何かいる!な、なにが!

 

「ひ、ひぃぃ!」

 

そこに立っていたのは全ての者を殺す『死の騎士』だった。

 

「ひぃぃ!」

 

いやだ!死にたくない!こんなとこで死にたくない!

 

「お、お前達!早く俺を助けろ!なにをしてる!俺は隊長だぞ!?早くこの化け物から俺を守れ!」

 

なぜ誰も俺を助けに来ない!?

 

「金か!?金が欲しいのか!?俺が無事に帰れたら金をやるぞ!?」

 

 とにかくこの化け物から離れないと、後ろに下がって逃げないと。そうだ!誰か部下の近くにまで逃げればそいつを囮に俺は助かるかもしれない!そうだ!副隊長のほうに逃げればどうにかなるかもしれない!

 

「副隊長!どこだ!?早く俺を助けろ!」

 

 副隊長のやろうどこにいる!そこか!?早く俺を助けろ!あ?化け物が離れて行く!?よかった!俺は助かる!早くそっちに行け!その間に逃げてやる!いまのうち――

 

「ぎゃ!?」

 

痛い!?何が起きた!?なんで俺は地面に押さえつけられてる!?化け物は向こうに歩いて行ってるじゃないか!俺を押さえつけてるのはなんだ!?

 

「ひ!?ド、ドラゴン!?なんでこんなのまで居るんだ!?やだ!死にたくない!誰かたす――」

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばモモンガ君さっき名前名乗ってたけど、改名するの?」

 

 レオンは全身鎧の胸を貫いた槍を抜きながら先ほど聞こえていた会話を思い出す。モモンガも全身鎧が持っていた剣を投げ捨て先ほどの会話を思い出す。

 

「やっぱり私がみんなのギルド名を名乗るのはおかしいですかね…」

 

「んー何を思って名乗ったのかは分からないけど別に良いんじゃない?俺は構わないと思うよ?モモンガ君がアインズ・ウール・ゴウンに対する思いは知ってるつもりだし」

 

 ギルドメンバー全員がそろっていた頃から一部のメンバー達にはモモンガのギルドに対する思い入れは凄いと話題に上がっていたのだ。それだけギルドを愛している証拠でもあったが心配する声もあったのは確かだ。

(『好き』や『想う』って感情や価値観なんて人それぞれだし他人がどうこう言う事でもないしね、モモンガ君のギルドへの想いは他人より強かったって事だし)

 

「アルベド、君はモモンガ君がギルドの名前を名乗ることをどう思う?」

 

「はい、私達しもべは至高の方々がお決めになった事であるのであればそれに従う次第でございます」

 

「本当に思うところは無いのか?他の40人の意見を聞かずに私が名乗る事に対して」

 

 モモンガとしては多数決を重んじるギルドに対して自分1人の意見で勝手に動かしてしまってよかったのか不安なのだ。

 

「では…もし私の言葉を不快に思われた場合は即座に首を刎ねていただきたく思います。…正直申し上げますと至高の御方々41人のまとめ役であったモモンガ様が名乗られるのであれば私達にとって喜ばしいことはありません、もちろんモモンガ様と共に最後までナザリックに残って下さったレオン・D・ファンション様が名乗られるのでしたら私達はそれに従います。ですがお隠れになった至高の御方々が名乗られるのでしたら思うところはあるかもしれません。ですがやはり私の愛するお方!モモンガ様がその尊きお名前を名乗られるのでしたらこれほど喜ばしいことはありません!」

 

 最後まで残って下さった…たしかにモモンガはレオンと共にサービス最終日まで残っていた、なら名乗る資格は自分だけでは無いのでは。

 

「いいじゃないかモモンガ君、少なくとも今のナザリックに、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』にギルドマスターモモンガがアインズ・ウール・ゴウンを名乗る事を咎める奴は1人も居ないってことだよ」

 

 レオンは「それでいいんだよ」と微笑みながら右手を差し伸べてきた。

 最後まで共にナザリックに居てくれた友が言うのであれば。

 

「なら、他のギルドメンバーが止めるまでは私はアインズ・ウール・ゴウンを名乗らせてもらいます」

 

 そう言うとレオンの右手を握る、骸骨の顔なので表情は分からないがレオンと同じように微笑んだようにアルベドは感じた。

 

「よろしくなアインズ・ウール・ゴウン君…長いな」

 

「アインズで構いませんよ流石に毎回フルで呼ぶと長すぎるでしょ?アルベドもアインズと呼んでくれて構わん」

 

「よ、よろしいのでしょうか?私如きが尊き御名前を省略して」

 

「構わないとも」

 

「では、私の愛する方アインズ様と…くふー!」

 

「アルベド、俺の名前もフルで呼ばなくていいからな?ながったるいからレオンでいいから」

 

「畏まりました」

 

(えぇーなんか扱い違わない?さっきからちょくちょくモモンガ君のことを『愛する』とか言ってるし、知らない間に何かあったのかな?)

 

(愛するって…あぁ…レオンさんに何て言えばいいんだ…)

 

 2人の間に何とも言い難い空気が流れ始めたが。

 

「ん?笛の音が聞こえたな…撤退しようとしたのかな?」

 

「そうですね、話はこれ位にしてそろそろ行きますか?」

 

2人はよく分からなくなった空気から逃げるように村の方へ移動を始めるのだった。

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