道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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second action・2

 

 

「いやぁ本当にありがとうね!!剥ぎ取られた服を取り返してくれただけじゃなくて奢ってくれて!!」

 

「俺の精神衛生上の問題だよ。目の前にいきなりパンイチ白衣の男が飛び出してきた時の俺の気持ち分かるか?」

 

「欲情した?」

 

「ブチ殺すぞテメェ」

 

 

廃墟都市区間の一角にあるバー、そこのカウンターでジェイルと共に酒を飲む。ジェイルの格好は出会った時のパンイチ白衣ではなく、下にキチンとスーツを着込んでいた。

 

 

あの後しばらく落ち込んでからパンイチ白衣の格好のままで帰ろうとしていたジェイルを呼び止め、俺はジェイルが剥ぎ取られた賭博場でジェイルの服を取り戻したのだ。プレシア・テスタロッサを探していたのだが、才能で言えばジェイルの方が頭2つ以上飛び抜けている。服を取り返す事で恩を売ろうというのが半分、残りの半分は男のパンイチ白衣なんていう絵面を見たくなかったからだ。

 

 

「にしても、いい店を知ってるね。廃墟都市でこれだけのお酒を出せる店があるなんて知らなかったよ」

 

「知りたかったことがあってこういうグレーな所で良い具合の酒場を探してたんだよ」

 

「その心は?」

 

「情報を集めるのに人が多い場所に行くのは基本だろ?それに酒を飲めば気持ちが高揚する。気持ちが高揚すれば判断力が鈍ってペラペラと色んな事を話してくれる。後は俺の趣味だ」

 

「成る程、合理的だね」

 

 

グラスに残った蒸留酒を飲み干してカラカラと氷の音を響かせれば、カウンターの向こうに立っていた初老のバーテンダーが無言で蒸留酒のボトルを手にとってグラスに注いでくれた。ジェイルには偉そうな事を言ったのだが、このバーでは俺の望む情報は得られなかった。しかし、廃墟都市区間という地球で言えばスラムの様な場所でありながら、ここで出される酒の質は中々の物だったのだ。それにジュークボックスから流れている静かなクラッシックに薄暗く落ち着いた雰囲気も合わさって上流階級御用達の高級バーの様に感じられる。

 

 

騒がしく飲む事は嫌いではないが、落ち着いた雰囲気で飲みたい時にはここで飲む事を決めた。

 

 

「ふぅ……それにしてもお酒って初めて飲んだけど中々美味しい物だね」

 

「そうなのか?飲まない奴にしても少しは飲んだ事があると思ったが」

 

「頭の回転が鈍くなるからアルコールは飲まない様にしていたんだよ。白衣で分かると思うけど私は研究者でね、唐突に思いついた事を忘れないように気を遣ってたんだよ」

 

「パンイチのイメージが強過ぎて研究者とか信じられねぇ」

 

「解せぬ。あ、マスター、これもう一杯頂戴!!」

 

 

そう言われてバーテンダーが差し出したのはアルコール度数の低い、ジュースに近いカクテルだった。どうやらジェイルが酒に慣れていない事に気付き、酔わないように弱めの酒を出しているらしい。観察眼が凄すぎる。一つの事を極めようとすると全てに通ずると聞くが、その類の人間なのだろうか。

 

 

そしてジェイルの発言だが、彼の経歴を考えれば不自然では無かった。

 

 

詳しくは覚えてはいないが、ジェイル・スカリエッティという人間はこの時代では生まれなかったはずの人間だ。管理局最高評議会と呼ばれる人物たちが作り出した人工生命体。〝無限の欲望(アンリミテッドデザイア)〟という与えられたコードネーム通りに自分を動かしている欲望(どうりょく)が他人の都合によって作り出されたものであると理解して自覚しながらも、それで良しと受け入れている真性のキチガイ。そんな彼からすればアルコールの味よりも欲望を優先する事の方が重要だったのだろう。

 

 

それを思い出して、理解し、そういう人間だったなぁと同情する。()()()()()()()()

 

 

ジェイルの生まれた経歴を知って、首輪を付けられた境遇に同情はするがそれ以上の感情は湧かない。踏み込んだ間柄であるのなら、親友だと肩を組んで笑い合える関係であるのなら、俺は全力で力になった。そうでは無いから力にならない。俺が助けたいと思えば利益を度外視して力になるのだが、彼を助けようなんて思わなかった。

 

 

だってこいつstrikers編のラスボスだし。自力で最高評議会の首輪を外すし。

 

 

「……で、君の目的は一体なんだい?」

 

「なんだ、気がついてたのか?」

 

 

ジェイルに気付かれていた、その事実に驚きはしない。寧ろやっと気が付いたのかという反応を見せながらタバコに火を付ける。

 

 

「見ず知らずの私のためにわざわざ賭博場に乗り込んで服を取り戻し、こうしてお酒まで奢ってくれたのだから何かしらの目的があるんじゃないかと考えるのは普通だと思うけど?」

 

「流石は〝無限の欲望(アンリミテッドデザイア)〟様だ。頭が良く回る」

 

 

無限の欲望(アンリミテッドデザイア)〟と、この時点ならば限られた存在しか知られないはずのジェイルのコードネームを告げても彼は何も反応を見せずにカクテルを楽しんでいた。恐らくはある程度自分のことを知っているのでは無いのかと予想していたのだろう。寧ろその返しは想定内だとドヤ顔を浮かべられた。

 

 

「あぁ、別にお前の事をバラそうだなんて考えてない。ただ、頼みたい事があるんだ」

 

「頼みたい事?」

 

「俺の友人がジュエルシードっていうロストロギアに憑かれてな、内包していた魔力を身体に宿しちまったんだよ。リンカーコアも無いのにな」

 

 

ほうっと、ジェイルの目に好奇心が浮かび上がる。〝無限の欲望(アンリミテッドデザイア)〟の名前の通りにジェイルは自分の欲望の赴くままに行動をする。その果てが自らの創造主への反逆に繋がるのだから笑えないのだが、今はそれが都合が良かった。

 

 

これでジェイルは愛歌に興味を持ってくれた。

 

 

「治療法は不明、今は安定しているがこの先どうなるのか分からない……だから、診てやってくれないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに会ったっていうのにこんな所に連れて来るなんて酷い人」

 

「ゴメン、超ゴメン」

 

「ちょっと雑じゃないかしらね」

 

 

ジェイルと出会った翌日、地球が夜になってから俺は愛歌を連れてジェイルに指定された管理外世界に来ていた。時空管理局の手が入っていないからなのかこの世界は密林に覆われていて、彼方此方から野生動物の気配を感じる。

 

 

地球の方は桜木に任せているので問題ないだろう。タナカには悪いが、今の俺の最優先は愛歌の安全だから。

 

 

俺は変身魔法を使わずに子供の姿のままでバリアジャケットを展開している。ジェイルには信用の証として元の姿を見せているので間違われる事はないだろう。今の愛歌の格好はあの夜と同じ翠色のドレスのような洋服。ただ、その上から鮮やかな蒼色の外套を羽織っている。これは桜木から貸してもらった魔力隠蔽効果を持つ聖骸布で、ハスターが本気で索敵しても愛歌の魔力を感じられないと言っていた。世の中に出回れば大騒ぎになるような代物なのだが、これでも桜木からしてみれば下の下クラスの財宝だという。

 

 

桜木の財宝の一部を売り払えば豪遊出来ると考えてしまった自分が憎い。

 

 

「でも、良かった。元気そうね」

 

「あ〜……一週間も顔を合わせて無かったからな」

 

「……私のためだって理解はしてるけど、それでも寂しかったんだから」

 

「ゴメン、今度埋め合わせするからさ」

 

「ならショッピングモールに買い物に行きましょう。それと気になる映画があったからそれも観たいわ。で、最後には翠屋でお茶をしましょう」

 

「いいなそれ、久しぶりにゆっくり出来そうだ」

 

 

いつもなら桜木を加えて3人で遊んでいるのだが、今回は愛歌への謝罪の意味合いもあるから2人で行かなくてはならない。

 

 

許せ、桜木。お土産に翠屋のシュークリーム買ってくるから。

 

 

「ゔぇぇぇぇ……頭いたぁい……」

 

「やっと来たーーー」

 

 

ガサゴソと、茂みを掻き分ける音とジェイルの気配を感じたのでそちらを見れば、二日酔いなのか顔を真っ青にさせたジェイルが今にも死にそうな顔をしながら現れた。

 

 

熊に乗って。

 

 

落ち着かせるために深呼吸をし、目頭を強めに揉んで再度ジェイルを見る。そこには変わらず、死にそうになっているジェイルの姿があった。

 

 

白熊に乗って。

 

 

「なんで白熊なのさ……!!」

 

「やぁカガミ君。メチャクチャ頭が痛いんだけど、これって何かの病気なのかな?」

 

「それは二日酔いだから!!酒飲みすぎて二日酔いになってるだけだから!!」

 

「そっか〜これが二日酔いなのか〜」

 

 

四つん這いになって歩く白熊の背中の上で、二日酔いで死に掛けているジェイルの姿を見て、ジェイルとは違った意味で頭が痛くなった。

 

 

 






カガっちはスカさんのことを知ってるからこのくらいやってもおかしくないと考え、スカさんは頭がおかしいレベルの天才なので僅かな手掛かりから簡単に真実に辿り着くので考えてる事が読まれても慌てないっていう。リリなのシリーズで一番のヤベー奴は間違いなくスカさん。

ところで全裸白衣の愛歌ちゃまを思い付いたんだが、どう思う?

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