フェイト・テスタロッサの姿を確認した。
それがジェイルのところで診察を済ませて地球に帰還した時の桜木からの報告だった。タイミング的に入れ違いになったことを少しだけ残念に思いながら、偵察用の魔力スフィアを飛ばしてフェイト・テスタロッサ、そして使い魔であるアルフの監視をする。
ジェイルが見つかるまではプレシア・テスタロッサとの接触する為にフェイトの到着を待ち望んでいたのだが、プレシアよりも技術が優れているジェイルを見つけて愛歌の安全を確認した以上、進んでプレシアと接触する必要が無くなったのだ。それでも俺はプレシアのいる時の庭園の座標位置を知らず、このままでは最終決戦に参加して悪役ムーブをするという目的が果たせない。なのでフェイトを監視、そしてプレシアに報告する為に移動魔法を使う際にその魔法を解析して時の庭園の位置を知る事にした。
そして一夜明けて監視用の魔力スフィアから送られてくる光景をチェックしているのだが、彼女たちは拠点にするつもりらしいマンションの一室で荷解きをしていた。
『荷解き、荷解きかぁ……』
「引っ越しをしたら荷解きをする、何もおかしい事じゃ無いわよ?何で桜木君はそんな事を言うのかしら?」
「知っちゃいけない事を知ってしまった的な感じじゃないか?」
アニメだとそのままジュエルシードの探索を始めていたのだが、彼女たちの行動は愛歌が言うようにおかしなことでは無い。この世界を拠点として活動する以上、彼女たちは拠点で生活する事を余儀無くされる。だからこそ、持ち込んできた荷物の整理をしているのだが、桜木的には見たくなかった物を見てしまった感覚なのだろう。
例え、アルフがお隣さんへ引っ越しの挨拶をしていたとしてもだ。
「にしても呪いだったかしら?口ではとても偉そうな事を言っていたのに、実はこんな風だったなんて」
『ファッキュー腐れ神。出会った時に乖離剣を抜く事も辞さない』
表面上では不愉快そうに眉間に皺を寄せているだけだが、内心では両手の中指を立てている桜木君の姿が浮かび上がる。乖離剣とやらが何なのかは知らないが、桜木の言い方的には奥の手や切り札に該当する武器らしい。それを出会い頭に使うと言う辺り、桜木の神へのヘイトが天元突破している。
さて、シレッとチャットに参加している愛歌だが、ジェイルに緊急時の連絡用としてデバイスを渡されているので参加出来ているのだ。〝魔力変換:悪性情報〟とでも呼べるスキルを身につけ、触手をブンブン振り回すだけでこの世界の魔導師たちを一方的に蹂躙出来る愛歌だが、此方側には踏み込んできたばかりなので素人といっても過言では無い。そこでジェイルが護身用だと言ってデバイスを愛歌に渡して身体に不調があれば彼へ、魔導師たちにバレて危険を感じたら俺へ連絡出来るようにしたのだ。これにより愛歌の安全性は高まった。今の彼女の危険性は全て話してあるのでドンパチに巻き込まれに行くような事はないだろう。
『ただいま〜』
「あ、お帰り」
「え?両夜、誰に話してるの?」
『高町士郎さんっていう幽霊。加賀美さんはそういうのが見える人だからね』
壁からニュキっと士郎さんが現れたので挨拶をしたら不審がられてしまった。そういえば見える事を話していなかったなと思ったが、桜木が簡潔に説明して、それで納得してくれたので良しとする。
『今度の連休でなのはたちは友達を連れて温泉に行くみたいだよ。確か、温泉のある方にもジュエルシードがあるんじゃなかったかな?』
「温泉って言ったら……あぁ、山の方か。あそこのはもう俺が拾ったから無いぞ。反応はそれ以外には無かったから他にある可能性も無いし、純粋に休憩になるな」
『戦闘温泉回がただの温泉回になるのか……』
「温泉、温泉……あぁ、そういえばお父さんがこの間温泉旅行が当たったって言ってたわね。連休中に行くから両夜の事も誘ってって言われてたのすっかり忘れてわ」
「……御都合主義、なのか?」
戦闘に介入する事は無く、俺が魔導師兼魔術師だとバレる要因は無いのだが、主人公の行くところに偶然のように行く事になっているのは世界がそれを望んでいるからなのだろうか?
バレる可能性を考えれば行きたくない、そして愛歌を行かせたくない。俺だけがバレるのであればまだいいが、愛歌の存在がバレた時、それが時空管理局の耳に届くのが不味い。俺や桜木のように親のいないものならばまだしも、愛歌には家族がいる。バレてしまえば無抵抗でも抗っても家族から引き離される事になる。それを、俺は望んでいない。
『何を悩んでるんですか?らしくないですよ』
どうするべきかを考えていると、桜木が肩を叩いてきた。相変わらず外見は俺の事を見下したような目をしているが、チャットの文字は俺の事を労っている。
『バレるのが怖いのならバレなければ良いだけの事です。彼の宝物庫なら、そういう財宝があります。それを使えば大丈夫ですよ』
「桜木……お前、相変わらず外と中が違うな。可笑しいから笑っていい?」
『台無しだよこの人』
真面目な雰囲気だったが桜木の内外の温度差が違い過ぎて笑いが込み上げてきたのでこらえる事なく素直に笑う事にする。が、内心では桜木の心遣いに感謝をしていた。
今愛歌が魔力を誤魔化す為に使っている聖骸布は桜木が宝物庫と呼んでいる場所から出て来たものだ。ジュエルシード3つ分という控えめに言っても規格外な魔力を隠す事が出来る聖骸布がポンっと出て来るのなら、より高度な隠蔽効果のある財宝もあるはずだ。本来なら桜木はそれをしなくても良い。俺がこの先どんな事をするのかを知っているので無関係を装えばいいのに、彼は俺に進んで関わろうとしている。
『僕がそうしたいからそうしているんですよ。それに、今世と前世を含めて初めて出来た友達ですから。友達を助けるのは当たり前の事なんですよ』
前にどうして俺の先の事を知りながら付き合ってくれるのかを聞いた時にこう言われた。今世と前世で友達が俺以外にいなかった事実に泣きそうになるのを誤魔化す為に笑い、それと同時に納得した。
あぁ、こいつは善い奴だなぁと。
だからこそ、俺はこいつを拒まない。こいつが俺の事を見限り、自分から離れて行かない限り、俺は彼を側に居させ続ける。
「なら甘えさせてもらおうか。桜木、宜しくな」
『なんか釈然としないですけど……分かりました。家族同伴デート楽しんで来て下さいね!!』
「デ、デート……!!これってデートになるのかしら……」
「男女が出かける事をそう定義するのならデートになるんじゃないか?」
『お、加賀美君の反応が思ったよりも慣れててるぞ?もしかして手馴れてる感じかな?』
「ノーコメントで」
「両夜?何故か分からないけど貴方が女遊びに慣れているっていう情報が届いたのだけど……詳しく聞かせてもらえるかしら?」
「オーケー、落ち着こう。話すからその触手をしまってくれ」
『うーんこの修羅場』
外面はこの光景を眺めていやらしく笑っている桜木の顔面を全力で殴り抜きたい衝動に駆られるが、そんな事よりもドス黒い瘴気と悪性情報の触手を出しながらにじり寄ってくる愛歌の相手の方が優先事項だった。
露出狂ことファイトたん登場。でもカガっちの中での優先順位は低い。時の庭園の場所しれたらそれで良いし。
ホノボォノ。ただし最後の最後で修羅場る。