道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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third title・3

 

 

黒須龍斗という人間がどういう人間なのか理解出来た翌日。学校が終わり、今日の夕食は何にしようか迷いながら帰っていると持っていた携帯電話が鳴った。デバイスであるハスターを使えば桜木や愛歌と連絡を取ることは出来るのだがそれは魔導師である事が前提となっている。なので裏側の事を知らない人間用として携帯電話を購入しておいたのだ。

 

 

専ら掛かってくるのは新作が出来た事を教えてくれる〝翠屋〟からなので、この電話もそうかと思って取り出したのだが、画面に表示されている名前を見て固まった。

 

 

画面に表示されていたのは〝フェイト・テスタロッサ〟の文字。

 

 

俺は魔導師では無いと言っているのでフェイトには携帯電話の方の番号を教えてある。温泉の日に連絡先を教えてから何度か話した事はあったがそれは夜で、夕方にかけて来た事は無かったのだ。珍しいなと思いながら通話ボタンを押す。

 

 

「もしもし?こんな時間に珍しいな。何かあったのか?」

 

『うん、その……ちょっと相談したいことがあって……今から会えないかな?』

 

「良いけど、電話じゃダメな話か?」

 

『出来ればアルフと一緒に直接会って話したいんだけど……』

 

 

声色を聞く限りでは騙そうとしているようには聞こえないので俺が魔導師だと、昨日の乱入者と同一人物であるとはバレていないようだ。なら何を話したいのだろうかと考えるが、思いついたどれもが確証の持てないものばかり。数秒だけ悩み、俺の事を騙そうとしていないので会う事を決めた。

 

 

待ち合わせ場所は近くの公園で徒歩で行ける場所だったのでそのまま向かう。平日で夕暮れ時の公園には人がおらず、電話してから数分しか経っていないというのに既にフェイトとアルフが待っていた。

 

 

「あ、リョーヤ」

 

「よっすよっす」

 

「来てくれたんだね。それにしてもその制服似合ってないね」

 

「自覚はしているから放っておいてくれ」

 

「わ、私は似合ってる……と思う……よ?」

 

「フェイト、よく覚えておけ。他人を思いやったフォローが他人を傷つける事を」

 

 

聖祥大付属の制服は白を基調としたもので、明るい色合いの服が似合わない俺が着るとどうしても違和感を感じてしまう。バリアジャケットにしている黄色いトレンチコートだけは合うのにどうしてだろうかと1日かけて悩んだ事があったが結局答えを出す事はできなかった。

 

 

「で、今日は何があったんだ?」

 

 

いつもならこの時間の彼女たちはジュエルシードの探索をしているか拠点で身体を休めている時間帯だ。昨日の俺の乱入を警戒して探索を控えているのかもしれないが、それにしたって急に会いたいと言われるのは不思議に思ってしまう。

 

 

「言いにくいんだけど……ちょっとアンタに頼みたい事があるんだ」

 

「頼みたい事?」

 

 

えっと、や、その、などと言って言いにくそうにしていたフェイトを見兼ねたアルフがそう前置きをして口を開く。

 

 

「あぁ……その、なんだ、私たちをリョーヤの家に泊めてくれないか?」

 

「……はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話が長くなりそうだったのでベンチに腰をかけて話を聞けば頭が痛くなるような物だった。

 

 

彼女たちは海鳴にあるマンションで暮らしているのだが、ここ最近部屋に押し掛けている銀髪の少年がいるらしい。顔見知りの間柄でも何でもなく間違いなく初対面だというのにまるで既知の間柄のように親しげに、教えてもいない名前を呼んで話しかけ、頼んでもいないのに用事を手伝うと言ってついて来て足を引っ張る。その事を注意しても反省している素振りを欠片も見せず、それどころか心配してくれていると自分の都合の良い解釈をしているそうな。

 

 

どこからどう聞いても御剣の事です。誠に申し訳ございません。

 

 

「それってこの間の温泉に行った時にいた奴の事だよな?」

 

「うん、そうだよ」

 

「このままあいつに側に居られたら休むに休めないからね。一旦部屋から離れる事にしたんだけど、そうすると寝る場所が無くてね」

 

「だから俺の家に泊まらせてほしいと……警察に通報したらどうだ?」

 

「その、あんまり大事にしたく無くて……」

 

 

完全にストーカーとなっているので国家権力である警察に通報すれば解決すると考えたが、フェイトはそれをしたく無さそうであった。確かにジュエルシードを探すためにこの街にいる彼女たちは出来る限り目立つ事を避けなければならない。時空管理局が来た時にそれが原因で拠点の場所がバレてしまえば、彼女たちの今日までの苦労が水の泡になるから。

 

 

付き纏われてまともに休めていないのだろう。休憩を削ってまで未成熟な身体を使っているフェイトは愚か、少なくとも身体は成熟しているアルフでさえ疲労を漂わせていた。今はまだそれだけで済んでいるのだが、近いうちに倒れてしまうだろう。

 

 

「……まぁ、部屋は空いてるから別に良いぞ」

 

 

そんな状態になっても頑張り続けている2人の姿が微笑ましくて、そして俺と同類である御剣が原因で2人が追い詰められているのが申し訳なくて、気がつけばそんな事を口にしていた。

 

 

「……本当に良いの?」

 

「私たちが頼んでおいてなんだけど、本当に大丈夫なのかい?親に相談も無しで」

 

「親父は仕事で飛び回ってるから実質一人暮らしだからな。あ、隣が愛歌の家でよく遊びに来るけど、それでも大丈夫か?」

 

 

そう聞くと2人は顔を綻ばせながらありがとうと言った。アルフに至っては深々と頭を下げている辺り、余程御剣の存在が負担であったと思い知らされる。俺よりも原作を知っているだろうに、どうしてこうも彼女たちを追い詰める事が出来るのかが不思議で仕方がない。

 

 

散々お礼を言われた後、2人を服などの必要な物を取りに帰らせた。彼女たちはそのまま家に来るつもりだったようだが、部屋はあっても女性用の服や下着は存在しないのだ。フェイトならばサイズは大きいだろうが俺の服を着れたかもしれない。しかしアルフに着せる服は無いのだ。室内裸族スタイルでいさせるというのも一つの手だったが、見た目子供中身成人男性の俺以外にも元気に高町家の背後霊をやっている士郎さんが家にいるのだ。流石に室内裸族スタイルをさせるわけにはいかなかった。

 

 

御剣にバレないようにと念を押してから彼女たちと別れ、チャット機能を開く。

 

 

『今日から我が家にフェイトとアルフが泊まる事になったぞ。これ決定事項だから』

 

『ファッ!?』

 

『両夜、愛歌ちゃんウィップが血に飢えているわよ?』

 

『のっけからお仕置き宣言はやめろ下さい……ネタとかじゃなくてマジで。あれは冗談抜きでヤバいから』

 

 

愛歌を納得させる事が出来なければ俺は死ぬ事になる。そう直感で察してフェイトたちが俺の家に泊まる事になった経緯を……御剣の行ったストーキング行為を2人に教える。

 

 

『マジかぁ……マジかよ』

 

『納得して頂けたでしょうか愛歌様?』

 

『確かにそんな状況なら家に居させるよりも別の場所に居させた方が良いわね……分かったわ。その代わりに、私も2人が泊まってる間は両夜の家に泊まるわ!!』

 

『ちょっと待て。そっちの家は大丈夫なのか?』

 

『お父さんなら事情を話せば許してくれるわ。綾香もフェイトとアルフに会いたがっていたし。それに……』

 

『……それに?』

 

『天然系箱入り娘属性のフェイトとやんちゃ系お姉ちゃん属性のアルフと一緒に暮らすとか許すわけにはいかないわ!!ちょっとしたハーレムじゃない!!ラッキースケベは私以外には認めないわ……!!あと、私とフェイトとちょっとキャラが被ってるから危機感を覚えてるのよ!!幼馴染系金髪美少女という絶対的なポジションの私と!!キャラが!!被ってるのよ!!金髪美少女の部分が!!』

 

『桜木助けて。愛歌が別次元の言葉を使い始めた』

 

『安心して下さい、それは全部日本語ですから。あぁ、散歩に出たついでにフェイトたちのいるマンションに行ったんですけど、加賀美さんが飛ばしているの以外の監視用の魔力スフィアを見つけたんで壊しておきました。多分御剣のですね』

 

『マジかよ、ありがとう』

 

 

時の庭園の場所を知るために監視用の魔力スフィアを飛ばしているが、求めている情報はそれだけなのでプライベートな部分は見ないようにしている。御剣辺り、そんな事知ったものかと平然と観ていそうだったので桜木の行動はグッジョブと言うしかない。魔力スフィアが壊された事に気がついて新しい物を飛ばすか、本人が出てきそうだが、その頃には彼女たちは準備を済ませて俺の家に向かっている頃だろう。

 

 

夕食をどうするか迷っていたが、彼女たちが来るのなら少し豪勢なものにしようと決め、材料を買うためにスーパーに向かう事にした。

 

 

 






踏み台とか噛ませの転生者の行動って一歩間違えればストーカーだよなって話と、そんなのに付き纏われたら精神的に追い詰められるわなって話。

愛歌ちゃまは天然箱入り娘属性のフェイトそんとやんちゃ系お姉ちゃん属性のアルフが暮らす事に危機感を覚えている模様。

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