道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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third title・4

 

 

朝、目覚ましが鳴る直前に目を覚まして手を乗せる。起きたばかりで頭が働かないが数分ほどボンヤリして意識がハッキリとしたところで改めて時刻の確認、しっかりと午前の5時前に起きる事が出来た。寝間着を脱ぎ捨ててジャージを引っ張り出し、誰も起こさないように細心の注意を払いながら家を出て走り出す。

 

 

ジョギングでのルートや距離なんてものは決めていない。決めていることがあるとすれば1時間以内で家まで帰れる距離を走る事だけ。その日の気分で今日走るルートを選び、30分が経った時点でUターン。走ってきた道をそのまま辿って家に帰る。

 

 

そしてそこから1時間程素振りをする。子供の身体に合わせて小太刀と同じサイズと重量の木刀を士郎さんから教わった通りに振るう。本人がこの場にいたらアドバイスをしてくれるのだが、今日は朝早くから高町家の方に行っているようで姿が見えなかった。普通に振って身体の調子を確かめ、ゆっくりと振る事で型の確認をして、素早く振って乱れていないか試してみる。

 

 

生憎と士郎さんから教わっているのは剣の振り方だけで彼が修めていた剣術を習っているわけではない。これに関しては俺からは何も無い。士郎さんからしてもこちらの事情を知っているとはいえ彼の家が伝えてきた技術云々を軽々しく教えることに良い感情を抱かないだろうし、俺がその剣術を修めて戦っている姿を誰かに見られた時、高町家に余計な疑いをかけられる可能性が出てしまうから。

 

 

 

前世の経験では命のやり取りなんて億劫になる程にやってきたが、それらは全て喧嘩の延長線上の様なものでしかなく、まともに稽古なんてしていないのだ。こうして基本中の基本である握り方や振り方を教えてもらえただけでもありがたい。

 

 

だが、出来る事ならば試合形式でも良いから打ち合える相手が欲しかった。前の黒須との戦闘で、近接戦の技術に関しては負けていると自覚した。指導者が原因で負けたからと言い訳をするつもりは無いが、素振りだけではいずれは限界を迎える。これ以上先の段階に進もうと思ったら、俺を簡単にあしらえる事の出来るほどの実力者か、同格の相手が欲しいところだ。

 

 

最近になってその悩みは解決したのだが。

 

 

「おはよう、リョーヤ」

 

「おう、おはよう」

 

 

目覚めが良いのか寝起きのはずなのにしっかりとしているフェイトに返事をしながら時計を確認すれば針は午前の7時を超えていた。いつもの平日ならばここで終わらせて学校に行く準備をするのだが、今日は週末で学校が休みなので気にしなくて済む。

 

 

黒のジャージを着込んだフェイトの手には、彼女が振るっているデバイスと同じくらいの長さの棒が握られていた。

 

 

「アルフはまだ寝てるのか?」

 

「うん、ご飯が出来れば起きると思うんだけど」

 

「いつも通りだなぁ……」

 

 

滅多な事が無い限りは彼女は自分から起きようとせずに朝食の匂いに釣られて目を覚ます。御剣(ストーカー)の被害から逃れられたからなのか、それとも自分が家事をしなくてはいけないという重圧から解放されたのか、どちらにしても気が緩んでいることは確かだった。

 

 

出来ることならばアルフにも起きていて欲しかった。達人とは言えないが徒手空拳での戦いをメインとしている彼女との試合は多くの事を学ぶ事ができるのだ。今はそんな戦い方をする者はアルフくらいしかいないのだが、これから先の事を考えれば経験しておいて損は無い。

 

 

そして胸。試合中に揺れる彼女の胸は素晴らしいの一言に尽きる。

 

 

「リョーヤ!!何を考えてるか分からないけどマナカが怒ってるから……!!」

 

「おっと、失敬」

 

 

アルフの胸の事を考えただけで愛歌は何かを察したのか、家の中から凄まじいプレッシャーを放ってくる。それはフェイトにも感じられる程のもので、今では慣れたのか冷や汗をかく程度で済んでいるが、初めての時には顔を真っ青にして腰を抜かしていた。

 

 

よく見ると陰の部分が僅かに蠢いているような気がする。魔力は使っていない、つまり悪性情報は使っていないはずなのにだ。

 

 

「それじゃいつも通りでいいな?」

 

「うん」

 

 

頭の中からアルフの事を追い出せば家から放たれていたプレッシャーは無くなる。そうして携帯のアラーム機能を1分後と30分後に設定してフェイトと対峙する。フェイトが俺が朝に素振りをしていることに気が付き、良かったら手合わせをして欲しいと頼まれたからこうして朝食前には手合わせをするようにしているのだ。

 

 

フェイトは棒を構え、俺は特に構えるようなことはせずに自然体のままで立つ。構え方を士郎さんから教わっていないわけでは無いが、構えると動作が限定される事、構えから動作を予想される事、構えない事で相手の油断を誘う事から俺は戦いになっても構えない。

 

 

そして1分が経って携帯のアラームが鳴り響き、フェイトが飛び出してくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜……また負けた」

 

「強い弱いとかの話じゃなくて、フェイトの方は拙いんだよなぁ」

 

 

30分が経ってもう一度アラームが鳴るのと同時にフェイトはその場に崩れ落ち、今回も勝てなかった事を悔しがって不貞腐れる。

 

 

フェイトは魔導師であり、その本領は魔法を使った戦闘である。その為に魔法の方に重きを置くのは当たり前で、接近戦に関しては出来なくは無い程度の練度しか備えていないのだ。その上にフェイトの膂力は華奢な見た目通りのものでしか無く、身体強化をしていなければ俺と打ち負けて当然である。

 

 

フェイトの師匠が悪いというわけでは無い。単純に魔法無しで戦えば俺が勝てるというだけの話だ。これが魔法有りの物になったら分からないが、互いに魔導師である事を隠している現状では有り得ない話だろう。

 

 

「両夜〜、フェイト〜、もうそろそろご飯出来るわよ〜」

 

 

開けてあった窓から愛歌の声が聞こえてくる。俺とフェイトが手合わせをしている間に朝食の用意を彼女がしてくれたのだ。それはフェイトたちが泊まる前から変わらない光景なのだが、愛歌はこの状況に危機感を感じているらしく、前よりも気合の入った朝食を用意してくれるようになった。

 

 

キャラ被り云々とチャットで言っていたが、天然箱入り娘のフェイトと肉食系のように見えて実はお姫様思考の愛歌とではキャラが全く異なると思うのは俺だけなのだろうか。その事をそれとなく愛歌に聞いてみたのだが彼女からすれば金髪美少女の部分が重要らしく、そこだけは例えフェイトであっても譲れないのだと燃えていた。一方的だが敵視しているように見えて、実際には仲は良いのだから女の友情は本当に不思議極まりない。

 

 

「先に風呂に入ってろよ。俺は後からで良いから」

 

「そう?それならお先に使わせてもらうね」

 

 

学校がある時には時間の関係で先に使わせてもらうのだが、今日は学校が休みで急ぐ理由も無いのでフェイトに先に風呂を使わせる。朝一番で気温は低いとはいえ、身体を動かした事で汗をかいていて気持ち悪いだろうという気遣いからで他意はない。御剣(ストーカー)が同じ事をすれば後ろ言葉に意味深とか付きそうだが。

 

 

風呂を使う為に家の中に戻っていったフェイトを見送ってから木刀や棒を元にあった位置に戻し、俺も家の中に入る。するとエプロンを着けた愛歌ーーーついでにその後ろにいる士郎さんが出迎えてくれた。

 

 

「おはよう、両夜」

 

『両夜君おはよう。今日は翠屋で新作を出すらしいから行ってみないかい?』

 

「おはよ」

 

 

愛歌には言葉で返し、士郎さんにはフェイトたちに聞かれないように親指を立てる事で返事にする。幽霊なんてオカルトチックなものが見えているのを彼女たちには知らせていない。それを知らせるほどに親密な間柄では無いという判断からだ。

 

 

それにしても翠屋の新作は楽しみだ。この間作られた美由希さん作のロシアンプチシューとかでなければ良いけど。パーティー用に作ったと言っていたが、外れの当たる確率が6分の6というのは流石に罰ゲームの域を超えていると思う。

 

 

笑顔で俺に差し出してから、笑顔を浮かべながら背後に鬼神を従えた桃子さんに引き摺られていったので桃子さん的にもアウトだったに違いない。

 

 

靴を脱いで家の中に上がると、向かって左側の部屋のドアが内側から開かれる。あそこはフェイトたちに貸し与えた部屋なので、アルフが朝食の匂いを嗅ぎ取って目を覚ましたのだろう。外見だけならば我が家の中で一番高齢なのにそれで良いのかと疑問に思っていたが、そんなものは部屋から出てきたアルフを見て吹き飛んだ。

 

 

「ふぁ〜……おはよぉリョーヤ、マナカ……」

 

 

目覚めたばかりで寝惚けているのか、アルフは眠たそうに目をこすりながら身体を伸ばしているがそんなものは些事でしかない。寝間着代わりのつもりなのか、今のアルフの格好は第3ボタンだけ閉じられたワイシャツのみ。下着であるショーツは流石に履いている。適度に鍛えられてスラリとした脚とキュッと締まった尻、括れている腰回りが丸見え。さらに寝る時には付けない派なのか大きく見せられている胸元にはブラジャーが存在しなかった。

 

 

マーベラスと叫びたくなるような光景がそこにはあった。

 

 

「ーーー」

 

「……」

 

 

それを見て愛歌は絶句し、俺は無言で頭を下げた。

 

 

愛歌はアルフの胸を見て、自分の胸を見、そしてアルフの胸を見直す。アルフと自分の胸の差を確認しているのだろう。何度見ても結果が変わる事など無いし、そもそも成熟しているアルフと未成熟な愛歌を比べる事自体が間違っているのだが彼女からすれば関係無いのだろう。

 

 

何度も見比べる行動をし、最終的に愛歌はその場で崩れ落ちた。

 

 

「何なのよその胸部装甲はぁ……!!反則、反則よ!!その凶悪なもので両夜の事を誑かしておねショタ展開に持っていくつもりなのね!!このどすけべワンコォ……ッ!!」

 

「あ〜……マナカはまた朝から飛ばしてるねぇ」

 

「アルフ、余計な事を言わずに部屋に戻って服を着てくれ。このままだと愛歌が闇落ちするから」

 

「もう半分くらい落ちてるような気がするんだけど……」

 

 

残り半分を残す為にもだ。仮に愛歌が完全に闇落ちした場合、地球消滅待った無しだと桜木からカケラもありがたく無いお言葉を頂いている。胸囲の格差社会が原因で地球消滅とか笑い話にもならないので意識を完全に覚醒させたアルフを部屋に戻す。

 

 

これがフェイトとアルフが我が家に泊まってからありふれた光景になっていた。

 

 

 






花粉症の季節がやって来た!!作者は花粉症になって死にかけているので、ガバッたりすると思うけど笑って許してくれ!!


フェイトさほんとアルフがカガっち邸にやって来てからの一コマ。こんな事を書いてるから無駄に話数が増えていくんだよなぁ……でもこうして掘り下げて書きたいとも思っているから書いてしまうというジレンマ。

愛歌ちゃま、アルフの胸部装甲に絶望して闇落ちしかける。なお、完全に闇落ちした場合は地球は消滅すると桜ギル君の眼は見ている模様。

大丈夫だよ愛歌ちゃま、成長したら胸部装甲だって……あっ(愛歌様画像を見て

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