道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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third title・6

 

 

時空管理局が接近しているらしい。

 

 

それが愛歌に罰を受けた桜木の残した最後の言葉だった。

 

 

詳しい詳細を聞くために死体蹴りを決行し、気絶していた桜木を起こして話を聞いたところ、少なくとも海鳴での魔法感知が出来るほどの距離まで接近しているようだ。これで隠蔽などの工作を行わなければ即座に捕捉される状況になった事になる。

 

 

俺はハスターが優秀なので、桜木は宝物庫の中身が優秀なので問題ない。愛歌の方も、桜木から宝物庫の中身を借りているので大丈夫だろう。もっとも現状で動くのは俺だけ。愛歌には自分から動く理由が無く、桜木は介入せずに傍観する事を選んでいるから。

 

 

そして管理局の接近により、フェイトとアルフは更に追い詰められた事になる。客観的にこの状況を見れば彼女たちの立ち位置は危険物を奪いに来た強盗と変わりない。後に真相が明かされれば情状酌量の余地があるなどと同情されるかもしれないが、今の段階で彼女たちの助けになろうなどと考える殊勝な人間なんて全ての事情を知っている転生者たちしかいない。

 

 

事実、彼らはそうした。木に取り憑いたジュエルシードを封印し、高町とフェイトがいざ勝負となりそうになった時に時空管理局の執務官を名乗るクロノ・ハラオウンが乱入、武装を解除して投降するように呼び掛けた。

 

 

黒須はその指示に従ってデバイスを解除した。ユーノから時空管理局の役割を聞いていたのか、元から知っていたのか分からないが大義名分は向こうにあると判断しての迷いの無い行動だった。

 

 

そして赤城と御剣は逆らった。ジュエルシードを奪う事を諦めて逃走しようとしたフェイトとアルフ。逃げる後ろ姿を背後から攻撃しようとしていたクロノの前に立ち、フェイトたちの逃走の手助けをしていた。

 

 

御剣はストーカーなのでフェイトたちから好かれたいと考えて行動しているのだと予想出来る。しかし赤城は何を考えているのか分からない。高町と黒須に手を貸し、危険物のジュエルシードの回収を手助けしていたというのに、ここに来てジュエルシードを奪う側のフェイトたちに手を貸して裏切っているのだ。言葉と行動が全く一致していない。ここまでは大して被害は出ていないので御剣ほど警戒しているわけでは無かったが、これからはあいつと同じくらいに警戒をしておいた方が良いだろう。

 

 

警告を無視して仕掛けて来た2人をクロノは一人で制圧していた。素人が見ても分かるような圧倒的な強さを持っているわけではないが、言葉にすれば上手い戦い方をしていた。

 

 

魔力の消費を避ける為にか魔力弾一つだけを操作してスキルによって作り出された剣を弾きながら御剣を打ち取り、

 

倍加する能力で力任せに攻めようとしている赤城の初動をバインドで阻害して冷静に砲撃魔法で仕留めた。

 

 

高町のような派手な砲撃魔法でも無く、フェイトのような圧倒的なスピードでも無く、黒須のような突き抜けた意志力を持っているわけでもない。ただ自分ができる事を判断し、最小限の労力で最大限の成果を得る。数多くの経験を積んだ安定した強さを見せつけてくれた。

 

 

そして高町と黒須はクロノの指示に従ってこの場から転移魔法で姿を消した。恐らくは彼らの拠点に向かったのだろう。居なくなった彼らの代わりに戦闘服のような同じデザインのバリアジャケットを着た人間が複数人現れ、認識阻害魔法を使用してから2人一組になって飛び立っていくのを彼らと同じように認識阻害魔法と変身魔法を使用して大人の姿になって近くのビルから見ていた。

 

 

「ツーマンセルねぇ。やっぱり組織は厄介だよな、場数を踏んでるからジュエルシードなんて危険物が近くにあるかもしれないっていうのに冷静に対処してやがる」

 

 

彼らの行動の意図は分かる。ツーマンセルによる人海戦術だ。どうも魔導技術では暴走していないジュエルシードの探索は困難らしく、高町たちも暴走状態、もしくはその手前の状態になった時にようやくその存在を知る事が出来るようだった。彼らもある程度ジュエルシードの事を調べてから来ているのだろう。

 

 

組織というのは厄介な存在である。時空管理局という名前の通りにいくつもの時空を管理している、パワーピラミッドにおけるトップに位置している彼らは潤沢な資金と豊富な人材を所持している。潤沢な資金を用いて装備を整えて人材を鍛える。人材に関しても才能が無くてもある程度のレベルまでは訓練を積ませる事で至る事が出来るし、才能のある者に関してはその人間に合わせた特別なトレーニングを施す事だって可能だ。

 

 

そんな彼らが弱いはずが無い。今回やって来た中でトップクラスと思えるクロノほどの戦闘能力は無いにしても、隊による行動で事前に作戦を立てれば高町だって封殺出来るレベルにあると考えられる。高町は魔法が強力なので強く見られがちだが、数週間前まではただの少女で特別な訓練を受けた訳ではないのだ。

 

 

訓練を受けたことの無い天才と訓練を受けた凡人たち。まともにぶつかり合えば、幾らかは被害は出るだろうが後者が勝つに決まっているのだ。

 

 

まぁ、世の中にはそんなお決まりさえも蹂躙するような理不尽(御都合主義)も存在するわけだが。

 

 

『フェイトとアルフは逃げ切れたようですね。これからどうしますか?』

 

「時空管理局の内部が気になるから捕まえて聞き出すわ」

 

 

移動手段、人数、装備等々、知らないことは沢山ある。これからの活動予定は時の庭園での悪役ロールくらいしか無いのだが、それらの情報は知っておいて損はない。少なくとも後一度、A's編で起こる闇の書事件で彼らはやって来るのだ。その時が今回と同じになるのか分からないが、今回の情報を元にすればある程度は予想出来る。多少の危険を払ってでも知る価値はあると考える。

 

 

海鳴中に飛んで行った管理局員たちにマーキングを付け、その中でも都合の良い者を選んで近づく事にする。移動した先は人通りの少ない路地裏。夕暮れ時で光源が少なくなり、薄暗くなったそこで彼らは地面に足を着けてジュエルシードを探していた。

 

 

魔弾の射手(デア・フライシュッツェ)

 

 

隠蔽魔法を使っているために彼らは俺の存在に気がつく事なく、わざわざ前に出て俺の存在を教えてやる必要も無いのでカスパールの魔力弾転移を叩き込む。非殺傷設定されていたので傷は負っていないのだが、不意打ちを受けた彼らは苦しげな呻き声をあげながらその場に崩れ落ちた。

 

 

「ハスター」

 

『ハック、並びにデータのコピー完了しました。ダミー作成……完了。これでモニター上では彼らは通常通りに活動していると判断されます』

 

 

ヒュウっと、ハスターの優秀さを囃し立てるように口笛を吹きながら倒れている管理局員2人を回収する。緊急事態に陥った時の為に設定してあったのか、彼らのデバイスは救難信号を送っているようだがハスターによって阻害されて届くことは無い。

 

 

そして転移魔法を使用する事で管理局に捕捉されないように、近くにあった廃墟ビルへ徒歩で移動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……」

 

「何が……」

 

「起きたか」

 

 

準備を済ませたところでちょうど良く、彼らは目を覚ましたようだ。デバイスは取り上げ、それのせいかバリアジャケットは解除されて時空管理局の制服と思われる青いスーツ姿の2人は手足を拘束された状態で椅子に座らされている。

 

 

ちなみにデバイスは悪性情報を流し込んだ事とハスターの手によって初期状態にして俺が回収している。仮に彼らに戻したところで、使い物にはならなかった。

 

 

「っ!?何をするつもりだ!!」

 

「威勢が良くて何より何より。これから〝質問〟するのに、弱々しい奴は使えないからな」

 

 

ゴトリと態とらしく音を立てながら2人の目の前に2つのバケツをーーー正確にはバケツの中に放り込んだ物を見せる。初めは威嚇するように叫んでいた彼らだが、バケツの中身を見た瞬間に顔を青くして絶句していた。

 

 

バケツの中身は様々な道具。ノコギリ、ハンマー、ペンチ、電動ドライバー、釘、針金、ホース……この状況で見せられれば、本来の使い方をされないだろうと簡単に予想が出来る物がこれでもかと詰められている。

 

 

「君たちは時空管理局の人間だ。そこに所属しているという事は名誉であり、その事を誇りに思っているだろう。ただ馬鹿正直に聞いたところで素直に教えてくれるなんて思っていないからな……だから、こうやって真心を込めて〝質問〟する事にした」

 

 

バケツの中から電動ドライバーを取り出し、スイッチを入れる。けたたましい音を立てながら回転するドライバーの先端部、何をされるのかを察した2人は逃げ出そうともがくのだが拘束されているのだからそれは叶わない。

 

 

「出来る事ならば早く教えて欲しい物だ……あぁ、だけど教えられたそれが本当なのかどうかは俺には判断が付かないからな、何度も同じ事を〝質問〟するかもしれないがそれは許してくれ」

 

 

この場所には魔法ではなく魔術で防音と人払いをかけているので邪魔が入る心配も無い。

 

 

電動ドライバーの先端を向かって右側の管理局員の足に当て、〝質問〟を始める事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーまぁこんなところか」

 

 

2時間ほど時間を掛け、2人から懇切丁寧に〝質問〟をした事で得た情報を纏める。何度も何度も嘘を吐いていないのか確認しながら〝質問〟をしていたので嘘は言っていない筈だ。信憑性を確かめる為に他の管理局員にも〝質問〟をしておきたいところだ。

 

 

「御協力ありがとう、感謝するよ」

 

「あ……ァァ……」

 

「……」

 

 

協力してくれた事にお礼を言ったのだが、返ってきたのは言葉になっていない声だけ。それはそうだろう。彼らの有様はやった自分で言うのもなんだが酷い状態だった。

 

 

オブラートに包んで言えば、形が残る程度にミンチにされた生肉だから。

 

 

前世ではこう言う事は良くやっていた。今世では久し振りにやったのだが、案外腕は衰えていなかったようで、キチンと死なない程度に留めることができた。

 

 

知りたかった事を知れた今となっては彼らを生かしておく意味も、義理も無い。仮にこの場所を教えて彼らを助けさせたとしても、彼らの身体は治療不可能な程にボロボロで精神は崩壊済み。生かしてやるよりも死なせた方が彼らの為だろうと考え、用意しておいた灯油タンクをひっくり返し、そこへ火のついたマッチ棒を投げる。2人が炎に包まれて生き絶えたのを確認してから飛ばしの携帯で消防署に連絡を入れる。予めこの周囲には誰も住んでいない事は確認してあるので、余計な被害が出る事もないだろう。

 

 

時空管理局の人間で、この世界の人間ではない彼らを知る者はこの世界にはいない。身元不明の焼死体として扱われる事になる。

 

 

炎に巻き込まれないように注意しながら忘れ物はないか確認し、帰った頃には丁度夕食の時間になるな、なんて考えながら廃墟ビルを後にした。

 

 

 






時空管理局の事は知っていてもどの程度の規模で来たのか分からないから尋ねる……普通だな!!(尚、方法

よく管理局の隊員の扱いが噛ませみたいになってるけど、普通に考えれば次元を超えて管理するような組織の人員が弱いわけないじゃん、って事で管理局の隊員は軽く強化。今回の平メンバーでも複数人なら現段階の魔王様を制圧出来るくらいにしてある。

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