道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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science person

 

 

「うーん……つまらない程に異常が無くて安定してるねぇーーーちょっとだけでも良いから、軽く暴走して死にかけてくれないかな?」

 

「脊髄ぶっこ抜くぞテメェ……!!」

 

 

愛歌を検査した結果、モニターに表示される夥しい数の数字や文字を一目見ただけで全て把握し、安定している事に残念そうにしているジェイルにキレる。彼の性質的には変化が無くてつまらないと感じているだろうが、俺たちからしてみれば安定しているに越したことは無いのだ。

 

 

ジュエルシードに関する騒動が終わりを迎えて、フェイトたちと時空管理局の人間が去ったが愛歌の容体は変わらない。細胞の一つ一つが魔力を貯蔵する機能を持ってしまったが為にリンカーコアを持たない魔導師と言える状態のままである。幸いな事にこれまでは安定しているので異常は起きていないのだが、これから先がどうなるのか分からない。出来る事ならば治療して普通の人間に戻してやりたいのだが、どうやって治せば良いのかすら分からず、下手に手を出したら悪化するかもしれないので現状ではそのままでいさせるしか無いのだ。

 

 

「まぁ、そう意味ではカガミきゅんの方が私としては興味を引かれるんだけどね」

 

「眼球引っこ抜いて欲しいのか?」

 

「引っこ抜かれても義眼にすれば良いだけだからーーー」

 

 

そう言いながらキーボードを操作し、愛歌の資料とは別の資料をモニターに映し出す。

 

 

「さっき調べた君のデータなんだけどさぁ……これはどういう事なんだろうね?前に調べた時には無かったはずの物が身体中に張り巡らされている。まるで神経のようにね。しかもその神経自体がリンカーコアの生み出す魔力とは微妙に異なる魔力を生み出している!!こんなの初めて見たよ!!」

 

「神経が魔力を、ねぇ……」

 

 

ジェイルの言う神経とは魔術回路である擬似神経の事だろう。ほかに魔力を生み出せるような存在には心当たりはない。しかし、前回調べた時には魔術回路は確認されなかった。それなのに今回はしっかりと確認されてしまった。悪性情報の使い過ぎか、それともこちらの世界の魔法が原因なのか、どちらにしても身体には異変は無いので大丈夫だと思われる。

 

 

「俺のデータは好きにしてくれて構わないけど愛歌の方は気をつけてくれよな?」

 

「安心してくれたまえ、頭の先までマッドサイエンティストだって自覚している私だが契約は守るさ……いやはや、つまらない時代に生まれたと思ったが未知の出来事に出会えるとはなぁ!!」

 

 

高笑いをしながら俺と愛歌のデータを厳重にロックして保存している辺り、本当に俺たちに対して深い興味を持っているようだ。本人が言ったようにジェイルはマッドサイエンティストであるが、だからこそ()()()()()()()()()()()()()()()()()。鶏を殺せば鶏肉が得られる代わりに卵が得られないように、俺たちを解剖すればそれ以降の生体データが取れなくなると理解している。

 

 

俺たちがジェイルの興味を引く実験材料である限り、ジェイルは俺たちを死なせることは絶対にしないだろう。

 

 

「そういえば頼んでた物作った?」

 

「ん?あぁ、あれの事だね?製作は終わっているから後はマスター登録だけだよ」

 

 

ジェイルが手元にあったベルを鳴らすと空気の抜ける音と共にドアが自動で開き、白熊が二足歩行で歩きながらカートを押して入ってきた。

 

 

「二足歩行出来るのかよ」

 

「出来ることは多いに越したことは無いからね。そして、これが注文の品だ」

 

 

白熊に押されるカートの上に乗せられていたのは一本のレイピアのような形状の剣と、20本の小型のナイフ。刀剣類であるという以外にも外見が機械的な見た目をしている、そしてレイピアの方には刀身と柄の間にリボルバーが、ナイフの方には握り手にマガジンが付いているという共通点があった。

 

 

「剣型のデバイスにナイフ型のデバイスだ。細かい指示があったのは外見だけだったから細部には私の趣味全開で弄らせてもらったよ。レイピアの方は魔力変換機能を組み込んでいて電気に変換することが出来る。ナイフの方は同一規格に仕上げたけど、一本一本にAIが組み込んである。そしてどちらともカートリッジシステム搭載だーーー作っておいてなんだけど、戦争でもやるのかい?」

 

「俺としては頑丈なだけのデバイスでも良かったんだけど、お前がここまで仕上げたんじゃないか」

 

 

事の始まりは前の検査の時にジェイルから持ちかけられた話。与えられたものには相応の対価を払わなくてはならないと彼は言い出し、何か欲しいものはないのか尋ねてきたのだ。俺たちとしては診てもらえているだけで助かっているのでそれ以上は必要ないのだが、ジェイルからすればその程度では得られるデータの対価として足りないと言っていた。

 

 

なので、デバイスを作ってもらう事にしたのだ。

 

 

ハスターとカスパールの二つのデバイスを持っているのだがハスターはサポート特化で戦闘用では無く、カスパールは遠距離攻撃しか出来ないので近接戦に弱い。その上A's編になれば大人の姿に変身する前に見つかってそのまま戦闘になる可能性がある。そうなればカスパールを使わなければならなくなり、時空管理局に見つかった時に大人の俺(アクロ・ダカーハ)と俺が同一人物ではないかと怪しまれる事になる。

 

 

最低でもA's編が終わるまで、出来る事ならばstrikers編が始まるまでは俺とアクロ・ダカーハが同一人物である事を隠して行動していたい。なので今の姿で使う用のデバイスと、アクロ・ダカーハとして使うデバイスの二つが欲しかったのだ。

 

 

そうしてジェイルに頼み、完成したのがこの二つのデバイスだった。レイピア、ナイフ20本を振るって具合を確かめてみる。レイピアの方は今の俺には重たく、扱い辛く感じられ、頼んでいた通りに大人の時に合わせて作られているようだ。対してナイフの方は小振りなのも相まって今の俺でも問題なく使うことが出来る。

 

 

「流石はジェイル、文句無しの仕上がりだな」

 

「そりゃあ特注品(ワンオフ)の方が文句ないのは当たり前さ。量産品は誰が使う事になるのか分からないから誰でも使えるようにしなきゃ行けないけど、特注品(ワンオフ)の方はそこを気にしなくてもいいからね。量産品を作るよりも楽しくやらせてもらったよ」

 

 

ジェイルの言う通りに、使う人間に合った調整をされている方が絶対的に使いやすい。弘法筆を選ばずという言葉がある。どんな物でも一定以上のレベルで使い熟せるのは確かに凄いが、ジェイルの言ったように合わせて作られた特注品(ワンオフ)ならばそれ以上のレベルを発揮することができる。

 

 

「さぁ、その子たちに名前をつけてやってくれ」

 

「その子ってなんだよ?」

 

「その子たちは私が作った作品だ。つまり、私の子供だと言っても過言ではないーーーということは私の子供たちがカガミきゅんの元に婿入りしたと言う事じゃないか……!?」

 

「ちょうど試し切りがしたいと思ってたところだ……!!」

 

 

レイピアに魔力を流し、それが本当に電気に変換されている事を確かめながらジェイルに向かって振るう。魔法で再現されているからなのか本来の物よりも遅いとはいえ雷の速度は人間の反応出来る範囲を超えてジェイルに迫りーーー間に入ってきた影に防がれる。

 

 

「確かに私は作品を作り上げた。そしてそれを君に渡したーーーならば、次は作品の性能テストだ。相手はこちらで用意してあるから存分に戦ってデータを収集させてくれ」

 

 

間に入ってきたのはーーープロテクターを着用したパンダだった。

 

 

目を擦って再度確認してもパンダだった。

 

 

急所を守るためにプロテクターを着用し、腰のベルトから剣と銃をぶら下げているパンダだった。

 

 

白熊、羆、月の輪熊に続く新たな熊が登場していた。

 

 

マジかよ、こいつの頭どうなってるんだと思うが、ジェイルがわざわざ用意したとあってそのパンダはマトモなパンダでは無かった。

 

 

少なくとも後に動いていたのにレイピアの放った雷に追いついて無傷でそれを防ぎきっている。動き方も武術でもインストールされているのか、前世の修羅の国アジアに生息しているマジカル拳法家の動き方と良く似た動きをしていた。少なくとも近接戦に関しては俺の上のレベルであるだろう。

 

 

「パンダか……相手をするのなら人型の方が良かったんだけどなぁ……」

 

 

出来る事ならば対人戦の戦闘経験が欲しかったのだが、わざわざ用意してくれたのでそんなに強くは言えない。少しだけガッカリしたように肩を落とすリアクションをしてみせる。

 

 

しかし、本気でガッカリしているわけではない。

 

 

ジェイルがデータを欲しがっているように、俺も戦闘経験が欲しいのだ。

 

 

パンダだとはいえ、ジェイルが用意したのだから相当に()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「レイピアの方はナルカミ、ナイフの方は……一本一本名前つけた方が良いのか?」

 

『名称設定完了ーーー当機はこれよりナルカミとして起動します』

 

『出来る事ならばそれぞれに名称を着けて頂きたいのですが、手間だと感じるのなら総称でも構いませんーーー何本か言う事を聞かない物が現れるかもしれないでしょうが』

 

「気難しい過ぎだろ!!もっとナルカミの方を見習えよ!!」

 

『これはこれは、新入り風情がマスターに意見とは……マスター、少々時間を頂いてもよろしいでしょうか?』

 

「あぁ……うん。ジェイルー、悪いけどハスターのお話が終わるまで待ちでお願い」

 

「上下関係の構築は当然の事だからね!!なら30分後に実験室に来てくれ、それまでに機材の用意しておくから」

 

 

そういうとジェイルは白熊が運んできたカートの上に乗り、白熊に押されて部屋から出て行った。

 

 

音声機能はオフにしてあるのか無言だが、何かしらのやり取りが行われているのかハスターとナイフ型のデバイスのコアはチカチカと激しく点滅していたーーーいや、よく見ればナイフ型のデバイスの方はモールス信号で俺に助けを求めていた。本当にAIかよと思ってしまう。

 

 

対するナルカミの方は完全に指示待ちの態勢で、語りかけるどころかコアを点滅させて俺の気を引こうともしていなかった。

 

 

機械なのに感情豊かだなぁ、と現実逃避のように思いながら、次第に弱々しくコアを点滅させているナイフ型のデバイスの名前を考える事にした。

 

 

 






表現規制に引っかかっていないかヒヤヒヤしながらの次話投稿。

カガっち強化回。A's編に入ると子供の姿のままで魔力を蒐集する騎士たちとの遭遇の可能性もあるので子供の時用のデバイスと、接近戦用のデバイスをスカさんに作ってもらった。

戦闘用魔導生物パンダさん登場。白熊たちとは違って戦闘だけのために作られたから強いぞぉ!!

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