安次郎から話を聞いた。彼の考えとその選択に関しては思うところはあるものの、何も口に出さずにそうかの一言で終わらせる。
彼の行動の理由はとても自己中心的な物だった。他人の都合も、心情も何も考えずに自分の思うままに行動した結果がこれなのだ。それに関して何かを口にしてしまえば、それは自分もだろうと盛大にブーメランが帰ってくる事になるので何も言えなかったのだ。
そうして安次郎からこれ以上話すことは無いと話を切られて、イレインに連れられて監禁されていた部屋に戻る。改めてイレインの事を観察してみると、彼女の行動はあまりにも規則的過ぎた。特に意識もせずに歩けば一定のリズムになるのは当然の事だが、人間ならば若干リズムが崩れたりとある程度の不規則性が生じてしまうのだが、機械である彼女は一定の速度で歩く様にプログラミングされているのかその不規則性が無かった。
それに重心も傾いている。メイド服の中に武器でも仕込んでいるのか、それとも機械である事を生かして身体の中に武器を隠しているのか。
《恐らくは後者かと。わざわざ外付けするよりも内包していた方が持ち運びに便利ですし、隠密にも向いています》
《だろうな》
ハスターと念話で会話しても、当然のことだがイレインは気がつく様子はない。盗聴防止の魔法を使っていないのにだ。それだけでイレインが別次元の魔法技術で作られた機械ではなく、地球で作られたものだと分かる。
「加賀美様、少々よろしいでしょうか?」
「何か?」
「すずかお嬢様の事です」
コツコツと靴の音を響かせながら、イレインは感情を感じさせない平坦な声でそう切り出した。
「彼女は夜の一族、吸血鬼と呼ばれる種族です。その事を知ってなお、貴方はお嬢様を友人として接しようとしている」
「そうだな。そのつもりでいる」
「何故、一体どうしてなのでしょうか?吸血鬼は貴方方人間からしてみれば異なる種類の生物、生き血を狙っている敵であるはずですーーーだと言うのに、どうして貴方はお嬢様の事を未だに友人として接することが出来るのでしょうか?」
イレインが足を止めて、理解が出来ないと疑問を投げかけて来た。
それを見て少しだけ驚く。彼女は純粋に俺の決めた事に対して疑問を抱いている。現在の地球の科学技術では優れたAIが作れないことは調べている。ハスターの様なまるで人間であるかの様な起伏に富んだ感情を持つAIは別次元にでも行かなければ手に入らない。
だと言うのにイレインは疑問を抱き、その疑問を解消するために質問していた。分からないから知りたいという、とても機械とは思えない理由で。
「どうして、ねぇ……俺の考えは一般的な考えじゃないって事は頭に入れておいてくれよな?」
「それは先ほどの安次郎様とのやりとりで理解しています。一般的な感性の持ち主であるのなら、吸血鬼の話を聞かされても冗談だと信じないものだと知っていますので」
「吸血鬼だーって言われても、
「……そういう考え方もあるのですね」
一般的な感性からは外れた考え方であると自覚している。だけどそれが俺の出した結論なのだ。月村すずかという少女は俺の友人であり、例え人外であろうと無かろうとその事実に変わりはない。
そもそも転生者なんていうかトンデモ存在である俺が人外云々を気にするとか笑い話でしか無い。
俺の答えに納得してくれたのか、納得は出来なくてもそういうものだと飲み込んだのか、イレインはそう呟いて再び歩き始めた。
どうやら彼女は特別な存在らしい。他の同類であるメイドたちは命じられた事だけをするように設計されている様に見えるのだが、イレインはその辺りの縛りが緩い様に感じられた。何かしらの不具合が生じてそうなったのか、それともわざとそういう風に設計されているのかは分からないが、観察する分には興味の尽きない相手であった。
他のメイドたちが人の形をした機械だとすれば、彼女は人と機械の間くらいだろうか。
これから先いろんな事を知って人に近づいていくのか、それとも言われた事だけを何も考えずにこなすだけの機械になるのかは分からないが、彼女が将来どうなるのか知りたいと思ってしまう。
そうして再び監禁されていた部屋に戻る。イレインは恭しく一礼をして、部屋の入り口で別れた。
「ただいま」
「……おかえりなさい」
返って来た彼女の言葉は暗かった。何かされたのかと思いながら近くにいた見張りの者を少女趣味の変態でも見るような目付きで見てみるが、首が取れるのではないかと思うほどに激しく横に振られた。
ただそのリアクションが必死過ぎたのか、近くにいた他の見張りたちは彼は距離を取っていた。
「どうした?何かされたのか?あのロリコン野郎に」
「……安次郎叔父様から、私たちの一族の事を聞いたんだよね?」
それを聞いて納得する。つまり彼女は、自分が人間じゃなくて吸血鬼だと明かされたから拒絶されると怯えているのか。もうすでに答えを出している俺からすれば呆れてしまう程に馬鹿馬鹿しく思えるのだが、それを知らない彼女からすれば吸血鬼であるから拒絶される事なんて恐怖に違いない。
気持ちは分かる。俺も愛歌から全力で拒絶されたら死にたくなるだろうし。
「あぁ、聞かされた。月村の一族が吸血鬼だって事はなーーーで、だから?」
月村の座っているソファー、そこの彼女の隣に座る。近づき過ぎず、離れ過ぎず、図書館のベンチで座っていた時と同じ距離で。吸血鬼だと明かされても、この距離は変わらないという事を示すために。
「吸血鬼だろうが人間だろうが、それこそ宇宙人であろうが月村が友達だって事には変わりないんだ。そっちから離れていくのなら兎も角、俺からは離れる事はしねぇよ」
「……本当に?」
「本当だ。俺が今まで嘘吐いた事あったか?」
「……本当に、信じていいの?」
「おう、信じろよ。それくらいの甲斐性はあるつもりだ」
「う……うぅ……!!」
拒絶されなかった事に、受け入れられた事に安心したのだろう。月村は涙を流しながら俺に抱きついて来た。人間とは違う種族であると自覚しながら人間に紛れて生きていたので今まで溜まりに溜まった物もあるのか、嚙み殺しきれない嗚咽を零しながら。
泣きじゃくっている彼女を安心させる為に背中をさすりながら見張りたちを見れば、彼らは目を擦っていた。どうやらこのやり取りで感動して涙が出たらしい。中には良くやったと言いたそうにサムズアップをしている者までいる始末だ。
だけどこうなった原因がお前たちにあるのを忘れたわけじゃない。
というわけで報復を実行すべく、ポケットの中に入っていたサイコロを取り出して見張りたちに見えるように掲げる。
「おーい、えっと……そこのロリコン野郎。お前だよお前。違うって首振っても他の奴はロリコン認定してるから諦めろーーーこれからこのサイコロ振って奇数が出たらコレまであった恥ずかしい失敗談、偶数が出たらお前のこれまでの女性経験を話せ」
「!?」
月村が泣き疲れて眠り、ロリコン野郎の過去の失敗談と女性経験が全て吐き出されて一人死にかけている者が出ているがいい時間潰しにはなった。時計を見れば時刻は午前の5時、今の季節ではもう時期日の出の時間になる頃合い。
これだけ時間をかければ、月村の家族はこの場所を特定しているだろう。安次郎は月村の事を人質にして交渉をすると言っていた。交渉役を拷問してこの場所を吐かせるなり、電話で行われていたとしても逆探知したり、首謀者から監禁場所を推測したりなど様々な方法がある。少なくとも、すでにこの屋敷の場所は分かっていると考えていいだろう。
そして行動するのなら今の時間帯だ。夜の間中見張りを続ければ集中力が切れる。集団に対してアクションを起こすのならば早朝の時間帯が一番効果的だと前世の経験で知っている。
なので近いうちに何かしらのアクションがあるだろうと考えながら、サイコロを振ってロリコン野郎に完全にトドメを刺そうとすると、
前世では聞き慣れた轟音ーーー爆発音が屋敷の裏側から聞こえて来た。
とらハの原作知らないからウィキを見ながら執筆。もう原型留めてない気がしてならないんだよなぁ……いっそオリキャラとして見てくれ。
カガっちの感性からすれば吸血鬼とか関係無しで友人だからという理由ですずかちゃんを受け入れる。だって交友関係が呪われ系転生者の桜ギル君と根源に接続していない愛歌ちゃまにマッドサイエンティストのスカさん、それにクローン箱入り天然娘のフェイトそんと花の魔術師プロトマーリンに同人誌出演邪神のハスターだからな!!吸血鬼の1人や2人なんてどうって事ないさ!!