道化の名は必要悪   作:鎌鼬

43 / 83


投稿が遅くなってゴメンね!!ちょっとFGOでケモナー大歓喜の世界滅ぼしてたんだ!!




vampire girl・5

 

 

「ーーーうるせぇ……」

 

 

折角気分良く眠っていたというのに連続して鳴り続けているインターフォンの音が聞こえて目を覚ます。時計を見れば午前の11時、目覚めるには遅い時間なのだが、月村の件で一徹した分を取り戻すたいので本音を言えばもっと眠りたいところだ。

 

 

月村安次郎の起こした事件からは一日が経っている。このタイミングでやって来る人物には心当たりがあったのだが、気分良く眠っているところを無理矢理起こされたとなればどんな聖人であろうと昇龍かますくらいに機嫌が悪くなって当然だろう。

 

 

なのでパジャマ姿のままで玄関に向かい、外にいる人物の姿を確認してチェーンを掛けたまま鍵を開けて扉を開く。

 

 

「おはよう、それともこんにちわが良いかしら?」

 

 

外に居たのは月村が成長したらこんな姿になるんじゃないかと思えるほどに月村に似た紫色の長髪の女性ーーー月村忍。彼女の背後、正確に言えば俺の家の前には前世の死因を思い出させる黒塗りの高級車が停められていて、そこから恭弥と月村、それとイレイン程ではない物の表情の硬いメイド服姿の女性の姿が見える。普段であれば月村の姉であるからとそれなりに対応していただろうが、無理矢理起こされて機嫌が悪い。

 

 

なので無言で扉を閉めようとした。

 

 

そしたら扉の隙間に足を入れられて防がれてしまう。

 

 

「なんで無言で閉めようとしたのかしら?私は一応お客様よね?地味に痛いから止めてほしいんだけど?」

 

「事前の連絡も無しで突然来てお客様扱いしろとか厚顔にも程があるだろ。寝不足なんだよ。あと10時間は寝たいから、用事があるならそれからにしてくれ」

 

「寝過ぎよ……!!事後処理が忙しくて時間が取れたの今くらいしかないのよ……!!出来る事なら開けて欲しいのだけどーーーあと、足踏むの止めてくれない!?小指ばかり踏まれて凄く痛いから!!」

 

 

彼女が忙しいのは理解しているが、それよりも睡眠の方が優先されるのだ。扉の隙間から入れられている足の小指を踏みながら全体重で引っ張っているので拮抗しているのだが、このままでは後ろにいる者たちが手を貸して俺の睡眠を妨害して来るに違いない。愛歌を心配させた事によるお仕置きを乗り越えてようやく眠る事が許されたのだ。今日1日は何があっても睡眠を貪る事を決めている。

 

 

なので、俺も助っ人を呼ぶことにした、

 

 

「イレイン、手伝ってくれ」

 

「承知しました」

 

「ちょーーー」

 

 

家の奥から現れたのは安次郎に仕えていた自動人形のイレイン。空になった洗濯物カゴを床に置き、扉の隙間に腕を入れて向こうで彼女の存在に驚いている月村忍の額にデコピンをかました。デコピンと聞けば子供がするような、イタズラでやるような軽いものをイメージするかもしれないが、スペックが人間よりも圧倒的に高く、夜の一族に迫る程の馬力を持つと自称しているイレインのデコピンはそんな微笑ましいものではない。

 

 

ドゴォっと、重々しい音と共に月村忍の額にイレインのデコピンが突き刺さった。

 

 

「いったぁーーー!!」

 

 

痛みで仰け反っている内に扉を閉める力を緩めて足を外に出し、扉を閉める。しっかりと鍵を掛けておく事も忘れない。これで一階からの侵入は不可能になった。ピッキングなどの非合法な手段や窓を割るなどの暴力的な手段で来られた場合にはそうはいかないが、そうなったら警察に電話するので大丈夫だろう。

 

 

これで安眠を邪魔する者は居なくなった。俺は部屋に戻ろうと、イレインは家事の続きに戻ろうとすると、月村忍が出しているであろうぐわぁっという悲鳴に紛れるように、控えめに扉がノックされた。

 

 

「寝てたとこをゴメンね?でも、大事なお話があるから開けて欲しいんだけど……」

 

 

聞こえてきたのは月村の声だった。その声色からはこちらに対する思いやりと、だけど話がしたいという思いが伝わってくる。機嫌が悪かった事もあるのだが、月村忍が新聞の押し売りでもやるように足を入れてきたのであんな対応をしてしまったのだ。数秒だけ思案し、そうするしかないかぁと結論を出してチェーンと鍵を外して扉を開ける。

 

 

するとそこに居たのは暑くなってきた気候に合わせたワンピース姿の月村、額を抑えながら地面を転げ回って姉の尊厳を失っている月村忍、両手で顔を覆い隠している恭也、転げ回っている月村忍の事を無表情で眺めているメイドの姿だった。

 

 

即座に視界から月村以外を追い出す。

 

 

「おはよう、月村」

 

「……うん、おはよう加賀美くん」

 

 

あの事件以来始めての再会であったが、口から出てきたのはいつも通りの声色でかけられる挨拶だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月村安次郎の事件は高町恭也らの活躍により無事収束した。過激派で作戦に参加していた吸血鬼は安次郎を含めて全員が捕らえられ、イレインのような自動人形も全て破棄されたとの事らしい。事件に巻き込まれ、夜の一族の事を聞かされたからなのか助けにきた月村忍に聞いたところ素直に教えてくれた。

 

 

ただし、1つだけ懸念があるとも言っていた。それはイレインの事だった。

 

 

メイド服姿の女性ーーーイレインと同じ自動人形であるノエル・Kエーアリヒカイトとの戦闘の最中でイレインは逃げ出したという。奇襲を悟られないようにする為に最小限の人数で行なっていた事もあり、イレインはその場からの逃走に成功した。安次郎によればイレインは自律回路を重きに置いて製造されているので通常の自動人形よりも思考に自由があるーーーつまり、何かしらの拍子で暴走する可能性があるとの事だった。

 

 

月村忍が言っていた事後処理の中にはイレインの事も入っていたのだろう。何せ現代ではありえない自意識を持った自動人形(オートマタ)だ。その存在そのものに天文学的な価値が付けられてもおかしくないし、何より夜の一族並みの馬力を使えば簡単に人間を殺す事が出来る。表沙汰になる前に見つけ、捕獲するか処理する。それが今まで続いてきた人間と夜の一族の関係を保つ為に必要な、最優先事項といっても過言ではない。

 

 

「加賀美様、お茶をどうぞ」

 

「あぁ」

 

「高町恭也様も、すずかお嬢様もどうぞ」

 

「頂こう」

 

「ありがとう」

 

「ーーー忍お嬢様には水道水を」

 

「……なんか私だけ扱い雑じゃないかしら?しかもなんでお皿なの?せめてコップで出しなさいよ」

 

「先ほどのやり取りから、忍お嬢様の扱いはこれで十分だと結論を出しましたので」

 

 

そんな最優先事項(イレイン)が我が家にいる。恭也と月村にお茶を、月村忍には水をお皿に入れて出すという人どころか犬のような扱いをした彼女は無表情のまま俺の後ろに控える。

 

 

ちなみにアリシアは話し合いがつまらないなどと言って四つん這いにさせた士郎さんの上に跨って家から飛び出して行った。彼女は一体どこに向かっているのかが気になってしょうがない。

 

 

「……色々と言いたいことがあり過ぎるのだけど、まずは自己紹介からね。私は月村忍。すずかの姉で、月村家の当主です。そして、彼女はノエル・K・エーアリヒカイト。私の従者でイレインと同じ自動人形よ」

 

「初めまして加賀美様」

 

 

月村忍に紹介されて、彼女の後ろに控えていたメイド服姿の女性ーーーノエルが一礼する。その動作は計算し尽くされていて完璧な物だったが、あまりにも滑らか過ぎて人にあるはずの不規則性が見当たらない。それだけでイレインと同じ自動人形であると察することが出来た。

 

 

「加賀美両夜、月村の友人だ」

 

「少しぐらい敬語で話そうって姿勢を見せないのかしら?」

 

「前までは一応目上は敬語で話してたんだけどあまりにも不評だったから止めることにしたんだよ」

 

「そっちの方が良いと思うぞ。敬語で話されるとどうも違和感が酷くてな。美由希の奴が良く似合わないっていってたし、俺も実はそう思ってだからな」

 

 

こういう事だと肩を震わせながら笑ってみるが月村忍は困ったような反応をするだけだった。味方がいない事を悲しく思いながら懐を漁ってタバコを吸おうとしたのだが、出てきたのは棒付きの飴だった。そもそもこの場には俺の事を知らない者もいるのでタバコが吸えなかったなぁと思いつつ、喫煙衝動を誤魔化すために飴を口に入れる。

 

 

「で、今日は何の用?寝たいから早く終わらせてくれると助かるんだけど」

 

「……そうね。まずはイレイン、彼女がどうしてここにいるのか教えて貰えるかしら?」

 

「安次郎から押し付けられたんだよ」

 

 

昨日、家に帰ったと同時に彼女は俺の前に現れたのだ。どうしてここにいるのかと聞けば、安次郎の最後の命令で俺に従うように言われたから来たとの事。どうやら最後に月村に事情を聴かせた事に気がついていたらしく、良いようにされたのが気に入らないから意趣返しのつもりで送りつけたらしい。

 

 

「それは本当なのかしら?」

 

「はい、私は安次郎様から加賀美様に仕える様にと命を下されました。勿論それは強制では無く拒否権もあったのですが、加賀美様からは快諾していただきました」

 

「強制では無かったかもしれなかったけどほとんど強制だったじゃねえか。断ったらプレス機に挟まれてサンドされるって言うんだぜ?」

 

「断られたのならそうする様にと安次郎様から言われておりましたので」

 

 

自動人形でありながら人間に近づいている彼女の事を俺は気になっている。それなのに断ったら自壊するなんて言われたら、承諾する以外に選択肢は無かった。それに家事をしてくれるのは正直なところ助かる。俺も自分でする様にはしているのだが、殆どの事は愛歌が済ませてしまうのだ。彼女の負担が減るので、イレインが来てくれたのは素直に嬉しい事だと言える。

 

 

「そう……加賀美君も知っていると思うけど、イレインは自動人形でロストテクノロジーの塊なの。情報規制はしているのだけど、どこからかそのことが漏れてしまうかもしれない。そうなったら、貴方や周りの人を傷付けてでも奪い取ろうとする奴がきっと現れるわ。だからーーー」

 

「だから、イレインの身柄をそちらに渡せと?」

 

 

月村忍の首が縦に振られる。彼女の声色からは、純粋にこちらを心配していることが伺えた。

 

 

確かに言われた通りにイレインが自動人形であることが知られればそうなる可能性がある。それは彼女から選択肢のない選択を迫られた時点で気が付いていた事だった。それだけの事をしてもデメリットを上回るほどのメリットが得られる。イレインにはそれだけの価値があった。

 

 

だが、

 

 

「断るよ」

 

 

それを承知の上で、俺はイレインをそばに置く事を決めている。

 

 

「生憎とその可能性を承知の上で俺は彼女を受け入れたんだ。改めて教えられたからと言って手のひらを返す様な事はしたくないんだよ」

 

「無理矢理にでも、連れて行くと言ったら?」

 

 

恭也の身体が僅かばかりに強張る。言葉の通りに無理矢理に、力任せに連れて行こうとしているのだろう。四年前の荒れていた時期は恭也のメンタルと身体が満身創痍だったので勝てたが、今の万全の状態の彼には敵わない。魔法や魔術を使えば勝てるかもしれないが断言出来るほどの勝率では無いし、そもそも論外である。

 

 

だからこそ笑う。それがどうしたと言いたげに。

 

 

「連れて行けば良いさ。ただ、その場合はこちらも好きにやらせてもらう。俺がやったと明確に分かるように、小事大事色んな事をイレインを返してくれるまでな」

 

「……こちらは善意で言っているのにか?」

 

「善意で言っているとしても、だ」

 

 

恭也との間に嫌な緊張が漂う。向こうが善意からイレインを引き取ると言っているのは重々承知している。だが、危険があるからなんて理由で彼女を手放すような無責任にはなりたく無いし、それを愛歌に知られれば間違いなくお仕置きが待っている。

 

 

それに、一瞬であるとはいえガリア・オールライトの面影を魅せてくれた彼の頼みを無碍にするわけにはいかないから。

 

 

数瞬間か、数秒か、数分かの睨み合いの果てに恭也は息を吐いて身体から力を抜いた。そして月村忍の方を見て、首を横に振る。

 

 

「ダメだ、試しに軽く脅してみたけど少しも動じやしない。こう言う手合いは言い出した事を梃子でも曲げないぞ」

 

「つまりは引き渡しには応じないと……はぁ、目に届くところに居てくれるだけで良しとしますか」

 

「認めてくれるって事で良いんだな?」

 

「えぇ、その代わりにこの町から私の許可無しで出るのは遠慮してほしいわ。流石に町の外になると事前に根回ししなきゃならないからね」

 

「それくらいはしないと安心出来ないよな」

 

 

思ったよりも軽い条件でイレインがいることを認められて内心で安堵する。外出禁止や、見張りを付けるなどの条件が付けられると思っていたのだがそこまで厳しくするつもりは無いらしい。

 

 

「ところで興味本位で聞くのだけど、好きな事をやるってどんな事をやるつもりだったのかしら?」

 

「テロるつもりだった」

 

「テロる」

 

「具体的に言えば月村の家と関わりがある企業を中心的に超テロる。親父から餅は餅屋だって色んな事を教えてもらってるから可能か不可能かで言えば可能だからな」

 

「イレインの事を認めて本当に良かった……!!」

 

 

実際には保護者からでは無くて前世の経験なのだが、どちらにしても俺にテロの知識がある事には間違いないので大差無いだろう。恭也から僅かに侮蔑の目線が向けられているが、それは士郎さんの事があるからだと考えられる。流石に完全には割り切ることは出来ないと納得し、言い訳もせずに素直にその視線を受け止める事にする。

 

 

「ふぅ……それじゃあ次の、というよりはこれが本題なのだけど」

 

 

気分を落ち着けるためにか、目の前に置かれている皿の水を飲もうか迷い、最終的に恭也から差し出されたお茶を飲んで、

 

 

「私たち夜の一族に関する記憶を失うか、それともすずかの婚約者になるか、どっちが良いかしら?」

 

 

まるで世間話でもするかのような気軽さで爆弾を放り投げて来た。

 

 

 






安次郎の意趣返しでロボメイドイレインがカガっち組に参加。きっと安次郎は今頃、塀の中で上手く行ったことを電波で受信して知り、中指を突き立てながらガッツポーズを決めているに違いない。

無表情でメイドでロボットという属性持ちである。これは愛歌ちゃまの影が薄くなる予感……!!

そして忍ネキの焚き火の中にC4を放り投げるような発言で修羅場の予感……!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。