道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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dark knight・5

 

 

「ーーーハンバーガーのセットとか、育ち盛りの子供を舐めてるのかしら?ちゃんとバランスの取れた食事を用意して頂戴」

 

「ーーーなんだ、この畜生の餌にも劣る物は?こんな物を(オレ)に食せというのか?巫山戯た事を抜かしたな?普段であればその首を落としているが……良い、気まぐれで許してやろう。ただし、次は無いぞ」

 

「お前たち本当に自由だよな」

 

 

クロノ・ハラオウンの指示に従い、宇宙に停泊しているという超時空要塞アースラに連れて行かれた。そこで食事をまだ取っていないので何かを用意してくれないかと頼んだところの2人の反応がさっきの物だ。愛歌に関してはまだ理解が出来るが、桜木に関しては絶対に肉体の口調に任せているように見える。だって、いつもなら散々扱き下ろした挙句に普通に食べているのだから。

 

 

唯一桜木が一切文句を言う事なく食べたのは翠屋の商品くらいだ。

 

 

美由希さんのゲテモノ料理は出てきた瞬間に内外ともにブチ切れていたのだが。

 

 

俺は食に関しては大きな拘りは無いので運ばれてきた物を素直に食べている。下げられようとしていた2人の分まで残してもらっているので3人前と随分な量が目の前にあるが、このくらいの量ならまだ許容範囲内なので問題ない。それにシグナムとの戦闘で身体を酷使したので身体が栄養を求めている。味も質も関係無い、ただ栄養補給として食べているだけなのだ。

 

 

《マスター、念話機能とチャット機能のプロテクトを強化しました。これで外部からのハッキングを気にせずに使用することが出来ます》

 

《ありがと》

 

 

アースラ内、時空管理局の懐という事で盗聴や盗み見の可能性を考えて念話もチャットの使用も控えていたが、ハスターからの連絡でそれを解禁することにする。試しにその状態のままでしばらくいたが、愛歌と桜木の注文に右往左往しているだけで管理局員たちが気づいている様子は見えない。

 

 

《よし、バレる様子も無いからチャット解禁だ》

 

《やっとですか……警戒するのは分かってますけど、使えないと本当に不便ですね》

 

《桜木君の外と内の差が酷過ぎて笑いそうになったわ。訴訟するわね?》

 

《やっても良いですよ?その代わり、バビロン式弁護術によって間違いなく沙条さんは負けるでしょうけどねぇ……!!》

 

《フッフッフ……ドラマで見た検事の技術をアレンジした愛歌ちゃん式検事アーツが火を噴くわよ……!!》

 

《クッソ面白そうな事は後にしてあの転生者の特典に関して教えてくれ。さっきの様子なら気がついてるんだろ?》

 

 

バビロン式弁護術と愛歌ちゃん式検事アーツというパワーワードにはとても惹かれるのだが、今はそんな事をしている場合では無い。桜木が気がついた闇の書側に着いた転生者の転生特典の情報共有をしなくては。愛歌は転生者の存在を明かしているのでチャットで話題に出しても問題では無い。

 

 

《そうでしたそうでした……えっと、あの人の首から出てた花弁、それに使っていた黒いモヤと戦闘機の召喚から、転生特典は〝廻り者〟だと思います》

 

《〝廻り者〟?》

 

《輪廻返り……輪廻の枝という刃物で首を切って、前世を遡って偉人や犯罪者の才能を引き出す事……だったかな?輪廻返りを成した人の事を〝廻り者〟と言うんです。必ず〝廻り者〟になれるという訳ではなく、前世を引き出したからと言ってプラスの才能を得られるわけじゃないですけど、転生特典だから選べたんでしょうね。ちなみに使われていた才能はドイツ軍人のハンス=ウルリッヒ=ルーデルと楚の武将だった項羽です》

 

《……ルーデルと項羽って、もしかして空の魔王と西楚の覇王の事かしら?》

 

《そうです。ルーデルの才能は何度も撃墜されながらも生還した事による()()()()()という形での不死の〝不死鳥〟。項羽の方は万象あらゆるものを闘気で支配して武器にする才能の〝万象儀〟だったはずです。ちなみにメインはそれですけど、おまけのようにルーデルは爆撃機に搭載されていた武器と爆撃機そのものを出す事が出来ますし、項羽の方に至ってはどういっていいのか分からないくらいにチートです》

 

《ルーデルの不死とか言うのでもうお腹いっぱいなんだけどなぁ……で、どんな感じでチートなの?》

 

《〝万象儀〟の本質は支配で、作中では他人を傷つけさえすれば何でも出来る才能だと言われています。身体に纏わせて使えますし、モヤを使っての転移も出来ますし、致命傷を負っても延命出来る。ぶっちゃけ、何でもありな能力だったりします。確か最後まで使われてないけど()()()()()()()()()っていう意味不明な技もありましたし》

 

《ハッハッハ……ばっかじゃねぇの?》

 

《ちょっと何を言ってるのか分からないわね……》

 

 

ルーデルの才能の不死の時点で厄介極まり無いと言うのに、項羽の才能はそれを上回るレベルで意味不明な才能だった。何だよ、略式的なビッグバンって。

 

 

しかも、才能がそれだけだとは限らないのが厄介だ。桜木の言葉からすれば、普通は才能は1人につき一つなのだろうが、あの転生者はルーデルと項羽の二つの才能を使っていた。二つ使ったから二つだけだとは考えられない。それ以上の数の才能を使えてもおかしくは無い。幸い、同時に別々の才能を使う事は出来ないようだが、ルーデルと項羽の才能のそれぞれが優秀過ぎるのでさして問題にはならないのだろう。

 

 

桜木キラーになり得る〝無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)〟の御剣、10秒ごとに自分の力を倍加させる赤城の〝赤龍帝の籠手(ブースデッド・ギア)〟、前世を遡って偉人や犯罪者の才能を引き出す〝廻り者〟。

 

 

改めて並べてみると、どいつもこいつも頭がおかしいレベルの転生特典だった。

 

 

《まぁ、〝廻り者〟に関しては魔力を消費して行われるスキルって事になってるはずなんで永遠にって事は無いと思いますよ》

 

《問題はそこじゃない。あの転生者が明確に俺の事を敵として見てる事だ》

 

《そういえば別れ際に何か言われてたわね》

 

 

あの転生者は俺がシグナムを傷付けた事を怒っていた。襲ってきたのはシグナムの方だし、俺は被害者だと向こうは理解しているが、()()()()()()()()()()。正面から堂々と襲ってくれるのならまだ良い。最悪なのは俺の周りの人間に手を出す事だ。事前の調査でそれをするような人間ではないと分かっているが、だからといって無警戒でいる事は馬鹿のする事だ。A's編が終わるまでは警戒しておいた方がいいのかもしれない。

 

 

そんな事を考えながら最後のハンバーガーに手を出すと、部屋の扉がノックされて自動で開く。そこには肩にトゲを生やした黒いバリアジャケットに身を包んだクロノ・ハラオウンの姿があった。

 

 

「待たせてしまって済まないな。君たちの件とは別にもう一つ事件があってね……それと食事の件だが、悪いが今のアースラでは彼女は兎も角、そちらの少年の注文に応えられそうにない」

 

「なら無視してオッケーだから。むしろ、この場に居ないと認識してくれた方が話がスムーズに進むし」

 

「カガミィッ!!貴様ぁ!!」

《加賀美さん!?》

 

「分かった、ならそうさせてもらおう」

 

「!?」

 

 

流石は執務官というべきか、桜木の肉体の方の問題を知ってこちらに合わせてくれる。アイコンタクトで愛歌に桜木を下げさせて、空になったトレーを積み上げて机の上を空ける。これで俺とクロノが対峙する形になった。桜木は呪いのせいで初見だとまともに意思の疎通を交わすことが難しいので論外。愛歌は頭が良く、交渉ごとに向いていそうだが、経験が無い上に魔法世界に関する知識が不足している。なので、俺がクロノと話す事になるのは必然だった。

 

 

「改めて自己紹介だ。僕は時空管理局執務官のクロノ・ハラオウンだ」

 

「加賀美両夜。自称魔術師だけど……そっちの言い方だと魔導師の方が良いのか?それをやってる。後ろの2人は桜木累と沙条愛歌。どっちも魔法の存在は知ってる」

 

《私よりも先に桜木君の名前が出たのはどうしてかしら?》

 

《沙条さん、お静かに》

 

 

最近、愛歌の地雷が分からなくなってきた。ちょっとした事ですぐに機嫌が悪くなってしまうので気を使わなくてはならない。

 

 

「そうか……どうして管理外世界なのにこうも魔導師が出てくるんだ……地球は修羅の国か何かか?」

 

「半年前くらいにも馬鹿みたいに魔力の多い宝石がばら撒かれたみたいだし、間違ってないんだよなぁ……」

 

「魔力の多い宝石……もしかして、蒼い宝石の事を言ってるのか?」

 

「そうそう、それに巻き込まれたせいで魔法の事を知らなかった愛歌は知っちゃったし。何とか助けれたけどな」

 

 

間違いでは無い。重要な部分は言っていないだけで、実際にあった事を話しているだけなのだから。嘘を付いているわけではない上にこの程度の事では心拍数は乱れる程に柔な精神はしていないので嘘発見器に掛けられてもバレないだろう。実際、クロノはデバイスらしきものに目を向けているが顔色一つ変えずに、少しも動じる事は無かった。

 

 

アースラに招かれる前に桜木から新たな隠密の財宝を愛歌に渡してもらったので、愛歌にはジュエルシード三つ分の魔力がある事はバレていない筈だ。もしもバレていれば、もっとアースラは慌ただしくなっているに違いない。

 

 

「それで君たちが襲われた件に関してだが、詳しく話してもらえると助かる。最近、近くの世界で魔力を奪われるという事件が多発している。もしかしたら同一犯かもしれないんだ」

 

「その様子じゃ情報は足りてないみたいだな?」

 

「あぁ、だけどようやく犯人の姿を見る事が出来たんだ。これ以上被害を出さない為に、協力してくれ」

 

「良いぞ、少なくとも出された飯分は話してやる」

 

 

こちらはあくまで情報提供を求められたからそれに応じて来てやっている立場で、クロノは下手にいる立場なのだ。それを間違えればいいように利用される未来しかやって来ないので、そういう立場にあるんだと教えるように出来るだけ高圧な態度を心掛ける。

 

 

クロノの方もそれを承知しているのか、それともそういう態度に慣れているのかは平然とデバイスの録音機能を起動させている。

 

 

「俺と愛歌が買い物から帰ってる途中で結界が張られてな、シグナムっていうポニーテールの女とザフィーラっていう狼に魔力を寄越せって襲われた……といっても直接戦ったのはシグナムの方だけなんだけどな」

 

「ザフィーラに関しては分からないと……シグナムの戦闘スタイルは?」

 

「剣一本で戦う男らしいスタイルだった。だけど剣を連結刃に変えていたから、近距離中距離はシグナムの間合いだろうな。あと、見た目に反して長い間戦ってたのか経験が豊富そうだった。俺が囮になって上から必殺かまそうとしたら、視線動かさずに何が来るのか分かった様子で避けられたからな」

 

「成る程……」

 

「シグナム倒そうと思ったら純粋に強い奴を1人だけぶつけた方が良い。中途半端な奴を集めて物量戦で挑もうとしたら食い散らかされるぞ?実際に戦ってだけど、間違いなくそうなるって言える。集団で挑んでも良いけど、封殺出来るだけの奴ら集めないとキツいぞ」

 

「ならカガミはどうやったんだ?」

 

「俺は速さで超えた。他に勝ててそうなのが無かったからな……経験からくる先読みも、反応の行動も全部それよりも速く動けば良いって感じでハイテンションで……お陰で終わってから一度ぶっ倒れたけどな」

 

「医療チームでも呼ぼうか?」

 

「治療はしてるから大丈夫」

 

 

シグナムの情報をいくら明かしたところで俺たちには痛手にはならないので遠慮無く明かしていく。管理局の戦力がどれ程のものかは分からないが、少なくとも()()()()()()()()()()()()。管理局と闇の書側の戦力が拮抗していた方がこちらとしては好ましいのだ。その差を少しでも埋める為に、管理局はこの情報を糧に頑張って欲しい。

 

 

「それで、シグナムは速さで負けたから引いたのか?」

 

「いや、左腕斬ったけどそのまま続けようとしてな。そのタイミングでもう1人乱入して来たんだよ。で、確かヴィータって奴が時空管理局と交戦しているからって言って2人を連れて行った……さっきクロノが言ってた別の件ってそっちの方だろ?」

 

「流石に分かるか……その通りだ。前回、僕らが地球に来た時に協力してくれた女の子が襲われてね、さっきまでその対応に追われていたんだ。彼女はリンカーコアを抜かれて命に別状は無いけど魔法が使えない状態にある……回復の見込みがあるのが幸いだな」

 

「負けてたらそうなってたのかよ……」

 

 

魔力を蒐集されたらどうなるか知っていたとは言え負けなかった事に、そして引いてくれた事に安堵する。リンカーコアが使えなくても魔術回路があるので魔術は使えるが、だからといって手札の一つが減るのは困る。

 

 

最終決戦時、とんでも決戦兵器が生まれる可能性は残っているが。

 

 

「と、分かってるのはこのくらいだな」

 

 

敢えて転生者の事を話しても能力については話さない。なぜ知っているかと追求されれば回答に困るし、あいつは俺を見れば優先して俺のことを狙ってくる筈だから。目的があるのでそれを達成しようと行動するだろうが、あの手合いは()()()()()()()()()()()()()()()()。適当に煽って我を忘れさせ、俺にヘイトを集めておけば管理局は転生者と戦わずに済むだろう。

 

 

現時点で管理局ではあの転生者に勝つ事は出来ないし、高町やフェイトであっても勝負にもなりやしない。いくらか手札を明かす事になりそうだが、出し惜しめばとんでも決戦兵器が誕生して地球がアポカリプスなうしてしまう。

 

 

「情報の提供、感謝する……ところで、一つ提案があるんだが聞いてくれないか?」

 

「聞くだけならな」

 

 

クロノが何を言いたいのか察している。なので聞かずに断るような事をせずに、その先を促す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強制はしないが……よければ僕たちに手を貸してくれないだろうか」

 

 

 






桜ギル君によって公開されていく闇の書サイドの転生者の特典。感想見る限りじゃ知ってる人と知らない人と半々って感じだったので、知らない人の為に説明フェイズ。改めて並べると本当に転生特典って頭おかしいわ。

シグシグの情報を公開していくスタイル。だってここのシグシグ、管理局員よりも強いから。実力で劣っている以上、メタを張って挑まないと話にならないんだよなぁ。

そしてバビロン式弁護術に愛歌ちゃん式検事アーツとかいう力強いワードのぶつかり合い。

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