道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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悪役日記・5

 

▲月d日

 

タナカから話を聞き出そうとして、連絡手段が無い事に気づいた。こちらからは連絡は取れないが、依頼の内容的には向こうからこちらの事は観測しているはずだ。なのでリビングに適当な魔法陣書いて供物として〝翠屋〟のシュークリームを置き、いあいあ叫びながら適当な踊りを踊った。家に招いていた桜木はその光景を見て内外共にドン引きしていた。

 

 

すると魔法陣が良かったのか、それともシュークリームが良かったのか分からないが、魔法陣が光り輝いて俺を転生させた男タナカがあの時と同じ姿で召喚された。

 

 

供物のシュークリームを齧りながら桜木の事を認識してタナカは動いた。手のひらでシュークリームを押し込んで一息で食べ、綺麗な円を形作りながら後方宙返り。そのままクルリクルリと三度回転して爪先、膝、手の順番で静かに着地ーーー俺の時と同じ様に、開幕から最終兵器である土下座を切り出した。

 

 

俺が見事な土下座だと感心し、桜木が突然の土下座に戸惑っているとタナカから事情が説明された。なんでも桜木は俺を転生させた悪神側でも、俺が転生する理由となった善神側でも無い、第三の神に転生させられた転生者だそうだ。元々は善神側が1人を転生させ、悪神側が俺を転生させて終わりだったはずなのだがそれを知った他の神が面白半分でこの世界に更に転生させたらしい。しかも複数人。桜木を含めて4人も。

 

 

それは規定違反らしく、その神は現在罰を受けているそうだ。善神と悪神の二柱による奇跡のタッグコンビが結成されたとタナカは言っていたが、どんな罰なのかが気になるところだ。

 

 

そしてその神が転生させた者たちに関しては特にお咎めは無いそうだ。しかしお咎め無しの代わりに何もしない、つまり桜木にかけられた呪いに関してもノータッチらしい。その事に桜木は口では神には頼りたくは無いと悪態をついていたが、筆談では「転生させてもらっただけでもありがたい事です。呪いに関しては少し残念ですけどね」などと真逆の様に思えることを言っていた。

 

 

それを聞いて再び土下座を決め、シュークリームを片手に帰ろうとしていたタナカを呼び止めて転生特典なる物について尋ねた。すると、俺と善神側の転生者に関してはデバイスとリンカーコア、それと可能性を与えたと教えてくれた。

 

 

桜木を転生させた神がやった様に能力を与えるだけでは人間は育たない。その能力を伸ばそうと努力はするだろうが、それはあくまで与えられた能力の延長でしか無い。悪神も善神も、人間の可能性を信じている。悪を知りながらも善に生き、善を尊びながらも悪を成す人間の事を愛している。なのでいずれは頭打ちを迎える能力を与えるのではなく、最低限の補助と大事を成せるかもしれない程度の可能性を与えたとの事らしい。勿論可能性だから、何もしなければ起こらないと付け加えられたが。

 

 

成る程、俺たちの事を信じているからこそ目に見える形では与えてくれなかったらしい。なら、その期待に応えられる様に努力しよう。神の使いの様な立ち位置ではあるが、神の玩具になったつもりなんぞ欠片も無い。

 

 

俺は俺の意思で、この世界で悪となる。

 

 

▲月y日

 

 

桜木と遊んだり、士郎さんとの鍛錬で時間が取れなかったせいで日記に間が空いてしまった。日記が見つからなかったという理由もあったが、掃除の最中にベッドの下から見つけたのでまた書こうと思う。

 

 

俺の住んでる家の隣に、沙条と言う一家が引っ越して来た。仕事の関係で越して来たという沙条さんは2人の娘を連れて引っ越し蕎麦を片手に挨拶に来た。沙条さんは少し疲れているのか草臥れているもののダンディズム溢れるミドルガイだった。俺も歳をとるのならそんな歳の取り方をしたい。

 

 

2人の娘の片方は綾香といい、まだ首も座っていない赤ん坊だった。よく顔を見ようと覗き込んだ瞬間に愚図られたので悲しくなった。

 

 

そしてもう1人の娘は愛歌といい、俺と同い年くらいの少女だった。きめ細かい金髪の髪に透き通った瞳、ドレスの様な服に愛らしい顔付きと相まってまるで人形の様に見えてしまう。沙条さんが唾を飛ばしながら愛歌がどれだけ可愛いのか自慢するのも分かる気がする。

 

 

この家の両隣は空き家だったので静かだったが、これからは騒がしくなりそうだ。前世では出来なかったご近所付き合いというものも少し期待している。

 

 

▲月z日

 

 

愛歌に懐かれた。超懐かれた。別れ際に頬にキスされるくらいに懐かれた。

 

 

事の始まりは本を読もうとこの街にある図書館に向かった事だった。俺の家から図書館までは距離が遠いのでバスを利用して行ったのだが、バス停から少し離れたベンチで泣きじゃくっている愛歌を発見したのだ。お隣さんなので見て見ぬ振りなど出来ずに落ち着かせてどうして泣いているのか聞いたところ、好奇心からバスに乗ったはいいが帰り道が分からなくなってしまったとの事だった。土地勘の無い街で親から離れて1人っきりというのは俺たち転生者の様に精神が成熟していない子供には泣きたくなる程に辛いのだろう。

 

 

なので予定を変更して愛歌と帰ることにした。憑いて来ていた士郎さんの安心させる為にという言葉に従い、手を繋いで。

 

 

帰る道中で街の案内もした。また泣き出さない様にと愛歌の好奇心を刺激しながら面白おかしく解説を交えてだ。前世ではペテン師紛いの事も経験があるので、寂しさを感じさせない程に感情を刺激する事など簡単だった。前の街とは違う街並みにはしゃぎ、散歩していた犬に怯えて俺の背中に隠れ、歩いていた野良猫に走っていく愛歌は年相応の少女だった。

 

 

だけど野良猫を追いかけようとして道路を横断するのはやめて欲しい。俺が止めたから大事には至らなかったが、間に合わなかったら車に轢かれてたぞ。

 

 

途中で〝翠屋〟で愛歌と一緒にシュークリームを食べて家に帰った。クリームで口の周りをベタベタにしながらシュークリームを頬張る愛歌は素直に可愛いと思った。その時に桃子さんと美由希さんから彼女が出来たのかと聞かれたけど反応に困る。確かに俺の目からしても愛歌の事は可愛いと思うが、それは沙条さんの様な父親的な意味合いだと思う。未来の事は分からないが、少なくとも今の愛歌をそういう対象としては見る事はできない。

 

 

沙条家の前に到着したところで包丁を両手に持った沙条さんに遭遇した。なんでも今愛歌が居ないことに気がつき、誘拐されたと考えて探しに出ようとしていたらしい。装備が探しに行く格好では無くて殺しに行く格好だったが、それはそれだけ沙条さんが愛歌の事を大切に思っている事の証だろう。実の親の顔を覚えていない、実の親から愛された覚えの無い俺からしたら羨ましいものだった。

 

 

そんな顔をしていた俺に、愛歌は抱きしめて無事を喜んでいた沙条さんから離れると俺の顔に手を添えて、「今日はありがとう、私の王子様」と言って俺の頬にキスをしたのだ。

 

 

俺は愛歌の行動に混乱した。

 

そして憤怒の表情を浮かべながら包丁を握っている沙条さんを見て正気に戻った。

 

 

デッドオアアライブな鬼ごっこの果てに何とか生きる権利を獲得することが出来たが、今後沙条さんに会うのは少しだけ怖くなってしまった。俺の明日は愛歌に掛かっている。沙条さんの事を落ち着かせてくれる様に祈ろう。

 

 

道中気になることがあった。愛歌と歩いていると、銀髪でオッドアイの少年が妙に馴れ馴れしい態度で俺の事など見えていない様に愛歌に話しかけて来たのだ。その事に愛歌は怯えて俺の背中に隠れたのだが、それに対して銀髪の少年は「俺の嫁に何をしやがる」「モブキャラ風情が生意気だ」などと言って殴りかかって来た。言動が完全に頭のヤベー奴のそれだった。幸いな事に近くを通りかかった大人が間に入ってくれ、その隙に逃げることが出来たのだがアレは一体何だったのだろうか?

 

 

それと、桜木が愛歌の事を見て白目を剥いて固まっていたのも気になる。今度会った時に聞いてみよう。

 

 

 





善神様と悪神様は人間が大好き。だからいずれ頭打ちになる能力の様な特典を与えずに、人間として頑張れって応援してくれてる。

転生者の数はカガっちと桜ギル君、他4名。これ以上は増えない。

カガっちのお隣に根源のヤベー奴がお引越し。カガっちは型月作品を知らないので愛歌ちゃまについて知らないが、桜ギル君は知っていたので白目を剥いていた。わかっていると思うがこの愛歌ちゃまは根源のヤベー奴の愛歌様ではないし、リリなの世界には根源は無いので安心してくれ。

あと、評価が低いので原作入る頃には日記形式を辞めて普通に書こうと思ってる。アンケートした方がいいかね?
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