《そろそろアクロ・ダカーハとして大々的に動こうかと思ってる》
《唐突にとんでもない事言いますね?頭大丈夫ですか?》
《馬鹿野郎!!頭大丈夫じゃなかったらこんな事言いださないだろうが!!》
《頭が大丈夫じゃないって自覚してるから救いようが無いんだよなぁ……》
深夜になって恒例となっている念話チャットで桜木との会話を始める。いつもなら愛歌とイレインが参加しているのだが愛歌は弄りすぎてしまったからなのか早いうちに別の部屋で寝てしまい、イレインは充電が切れて動けなくなって現在は部屋の隅で落ちたままコンセントに繋がれて充電中である。
《ってかこのタイミングでアクロ・ダカーハとして動くんですか?最終決戦まで動くつもりは無いんじゃないかと思ってましたけど》
《それも考えてたけど、最終決戦に参加するってなると間違いなく闇の書を相手する事になるから。そうなると悪というよりもツンデレ拗らせてる奴になっちゃうんだよなぁ。ほら、ゲームで良くある敵対してると思ってたらボス戦になって味方になるライバルキャラ的な感じで》
《加賀美さんの中でそれをしようとしている時点で手遅れなような気が……》
《だから最終決戦前に大暴れして印象付けてやろうと思ってな。それに俺の可愛い復讐鬼ちゃんにそろそろ復讐させてやりたいし》
《あぁ、リーゼロッテですか。調教の具合はどうですか?》
《調教じゃなくて洗脳……どっちでも変わらないか。どのくらいかと聞かれたら足を出したら迷う事なくキスすらくらいに従順で、ギル・グレアムとリーゼアリアの名前を出したら怒気と殺意を垂れ流すくらいには2人にヘイトを集めてるな。管理局の奴らがいるから隠れ家に住ませたままだけど行ったら猫の尻尾を振り回して全身で喜びを表してる》
《完全に落ちてますねぇ……》
《アクロ・ダカーハの時の姿しか見せてないけどな。兎も角、大暴れした時に出て来るであろうリーゼアリアの相手をさせるつもりだ。その時の対応次第で彼女に加賀美両夜としての姿を明かすか決めるから》
桜木が言うようにリーゼロッテの洗脳はほぼ完了していると見て良いだろう。俺もそれを主観ではなくて客観的に見てそう判断している。
だが、それでも
今回の件はアクロ・ダカーハの悪の印象付けにリーゼロッテの洗脳が完了しているのかの確認をするつもりだ。躊躇する素振りを欠片も見せる事なく、俺に躊躇っている事を感じさせる事なく、リーゼアリアの相手をする事が出来たのであれば、彼女の洗脳は完璧だと判断してこれから先、彼女の事を従順な手駒として大切に扱う事にする。
仮にそうでなければーーー洗脳をやり直すか、新しい手駒を探す事にする。
《でも、そんなに都合よくリーゼアリアが来ますかね?前の時に加賀美さんのリンカーコアに触ったせいで片手失くなったんですよね?普通だったらそこで諦めるなり、別の人に任せるなりすると思いますけど……》
《闇の書の騎士たちが劣勢になれば絶対に来る。リーゼアリアとギル・グレアムの目的は覚醒した闇の書を氷結魔法で封印する事だ。闇の書が完成する前に騎士たちが居なくなってしまうのは蒐集の効率が落ちるから避けたいだろうし、内容が内容なだけあって誰にも計画を話す事は出来ない筈だ。加えてギル・グレアムはそこそこのポジションに着いてるんだろ?偉くなれば出来る事は増えるだろうけど、その分立場に縛られる事になる。自由に動く事は出来ないはずだ。だから闇の書の騎士たちが劣勢になったら片手が無くなっていようが自由に動けるリーゼアリアが来る》
《言われてみればその通りですけど……それってヴォルケンリッターたちが劣勢になる事が前提ですよね?追い詰められるんですか?》
《前に言っただろ?頭と手を貸してくれって。特典の財宝使って正体がバレないようにして暴れようぜ?》
《あ〜そういう事ですか……仕方ないなぁ、ちょっと使えそうな物を探すんで見つかるまで待ってくださいね》
《宜しく》
それを最後に桜木からの返信が途絶えた。言っていた通りに今から宝物庫を漁って使えそうな財宝を探しているようだ。もう遅いから明日にでもすれば良いのに真面目な性格をしていると感心する。外面は傍若無人を体現したようなものだというのに。
明日も学校があるので寝ようとしているのだが、どうも眠れない。どうしてかと考え、すぐに愛歌がいない事が理由なのだと気が付いた。管理局の護衛が着いてから、寝るときはいつも愛歌が側に居た。自分でも気がつかない間にそれが当たり前になってしまい、居ない今の状況に違和感を覚えて眠る事が出来ないようだ。
理由は分かったが、だからと言って今から愛歌の眠っている部屋に向かい、ベッドに潜り込むのはダメだと却下する。試しに布団を丸めて抱き枕にしてみたのだが、愛歌に比べると抱き心地が悪くて眠るどころか目が覚めてしまう。自然に眠るまで待つかと考えて横になった時、控えめにだが部屋の扉がノックされたのが聞こえて来た。こんな時間に誰だと思いながら扉を開けるとーーーそこには愛歌の姿があった。
「どうしたんだ?先に寝るって言ってたのに」
「寝ようと思ったのだけど寝れなくて……」
そう言いながらほんのりの朱の刺した顔を抱き抱えていた枕に埋めながら上目遣いになる。どうやら俺が愛歌が居ない事に違和感を覚えて眠れなかったように、彼女も俺が居ない事で眠れなかったらしい。
それを断る理由も無いし、わざわざ来てくれたのに無下にしたく無い。愛歌を部屋に入れ、一緒にベッドに入る。その時に廊下の影の方で管理局の護衛たちがトーテムポールのように顔を縦に並べながらこちらを見ていたのを目撃してしまう。後にクロノに報告すると決める。
「あぁ〜……これよこれ。両夜の温もりが無かったから寂しくて寂しくて……」
「俺もだよ。いつも愛歌が居たのに今日に限って居なかったからどうにも寝れなくてな……」
いつものように抱き締められ、そして抱き締めながら横になる。すっぽりと腕の中に収まる愛歌の存在と、彼女から伝わって来る温もりが言いようもない安心感を与えてくれて、さっきまでどうやって寝ようかと悩んで居たのにすぐに睡魔がやって来た。
「お休み、愛歌」
「お休みなさい、両夜」
どうやらそれは愛歌も同じだったようで、眠たそうな声でそう言われたのを聞き届けて睡魔に従って眠りにつく事にした。
「ーーーさてさて、それじゃあ動きますか」
数日後、地球から然程離れていない管理外世界で闇の書の騎士の1人であるヴィータが活動しているのを確認した。どうやら一人で蒐集をしているようで、ヴィータ以外の騎士たちの姿は見えない。この状況は好都合だった。
アクロ・ダカーハとして戦えば加賀美両夜の時のように制限を設ける事なく全力で戦う事が出来るので、騎士たち全員が相手だろうが負けるつもりはない。だが、それで悪役を印象付けられるのかと聞かれれば首を傾げるしか無い。だが、先にヴィータを倒して確保し、彼女を使って他の騎士たちを呼び出せば解決出来る。その時についでに管理局にもリークしておけば問題ないだろう。
「悪いな、ナルカミ。せっかくジェイルに作ってもらったってのに全然使ってやらなくて」
『問題無し、主が思うがままに振るわれよ。我らはそれについて行くのみ』
「カッコイイなぁオイ」
ジェイルの元でパンダ相手にデータを取って以降使う事が無かったナルカミを稼働させる。子供の姿では大き過ぎて使い物にならないナルカミだが、すでに変身魔法で大人の姿になっているので問題ない。調子を確かめる為に数回程振るえばそれだけで感覚を思い出し、手に馴染んでくる。逆の手にはこれまた久しぶりの稼働となるカスパールを握る。AIを積んでいないので自我は持っていないはずなのだが、僅かに震えて喜びを露わにしているような気がする。
本当にゴメン。超ゴメン。
内心で二機に謝りながら、ヴィータがこの世界に生息している巨大な魚のような生物相手に無双しているのを見下ろす。騎士たちの中で最年少の外見をしていふとはいえ闇の書の騎士の一人である事には変わらない。ハンマーというその体躯に似合わない武装を慣れた手つきで振るいながら魚の急所に遠心力を利用した一撃を叩き込み、その反動を利用して別の魚に向かって行っている。
だが、それだけだ。いくら技術が優れていようとも設計上の設定で精神が幼く設定されているヴィータではシグナム以上の戦士足り得ない。
ハスターに頼んで魔力を固めて作っていた足場を消し、眼下で戦っているヴィータに向かって自然落下で強襲を仕掛ける。
カガっち、アクロ・ダカーハとして活動開始。管理外世界でなのは地球だとカガっちとして管理局に協力しなきゃいけないから。
悪役ムーヴをする為という理由でヴォルケンリッターに襲い掛かるカガっち!!まずはロヴィータ、お前からだ!!さっさと負けてシグシグたちを誘き寄せるための餌になるんだよぉ!!