道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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normal day・6

 

この廃墟都市は俺が祭りの会場に選んだ場所であり、様々な仕込みが施されている。戦いとはいかに自分が有利に戦うか、相手に不利を押し付けるかであるのでこの程度の事で卑怯などと叫ばれても困ってしまう。

 

 

祭りの開催を告げる為に放ったカスパールの銃撃に呼応するように、廃墟都市のあちこちから細い光の柱が登る。予め仕掛けていたカートリッジが、このアクションで起動するように設定していたのだ。そして光の柱は俺の頭上に収束すると光球になり、脈動するように徐々に体積を増していく。

 

 

「祭りの始まりを告げるなら派手じゃないとなぁ!!受け取ってくれぇーーーッ!!」

 

『スコールレイン、射出』

 

 

光球が弾け、光の雨となって廃墟都市全体に降り注ぐ。それは正しく光の豪雨。一発一発は点で落ちてきながらも、その数により面での攻撃を実現させる。俺と磔にされているヴィータのいる廃墟を除いた全域に闇の書の騎士、管理局、そして桜木も関係なしに容赦無く撃ち抜くのではなく穿つ事を重視した光弾を落とした。

 

 

闇の書の騎士たちはめぐりが新たな才能らしい鎧姿になり、巨大な盾を傘がわりに使いシャマルと共に光弾を防いでいる。シグナムとザフィーラはこの程度、防御するまでもないと判断したようで、自分に当たる物だけを最低限の動きで避けている。

 

 

管理局は高町が障壁を張って盾となり、フェイトと黒須を庇っている。高町1人だけなら魔力に物を言わせたバリアジャケットの防御だけで耐えられそうなのだが、防御の薄い彼らの事を思って盾になったようだ。クロノと他の局員たちは高町と同じように何人かが障壁を張って盾となり、他の局員たちを守っている。

 

 

そして桜木は微動だにしていなかった。自身に落ちてきている光弾など知覚する必要は無いと考えているようで欠片も意識を割いているようには見えず、宝物庫からいくつか盾を取り出して頭上に置くだけで済ませている。

 

 

「成る程、開幕を告げる号砲としては及第点というところであろう……見るが良い。これが本当の開戦の号砲と言うものだ」

 

 

桜木の周囲に黄金の波紋が現れ、そこから宝物庫に納められていた財宝がガトリングのように射出された。

 

 

桜木の転生特典である英雄王ギルガメッシュ。彼は神が人を治める時代にあって、始めて人が人を治めた世界最古の王である。王族でありながら冒険家としても活躍したギルガメッシュは、集めた財宝をすべて自分の蔵へと納めた。その蔵はギルガメッシュの死後に開け放たれ、財宝は各地へと散ってしまったが、この世の全ての財を集めて己が手中に収めたという功績は変わらず、各地に散った財宝は数多の英雄たちの手に渡って伝説を共にした。

 

 

そうしてその逸話はギルガメッシュの宝具となり、桜木はそれを望んだ。世界との帳尻合わせの為に変化したその宝具はスキルとなり、だがその性質は宝具である時と全く変わらずに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という反則級のスキルとなっている。

 

 

宝物庫に納められた財宝は無尽蔵と言っても過言では無い量で、更に現在進行形で増え続けている。スキル保持者である桜木だけではなく、宝具として持っていたギルガメッシュでさえ把握し切れていない程の量だという。その為に桜木の戦闘スタイルは無尽蔵の財宝を利用した物量戦となる。ただ財宝を適当に射出する。それだけで有象無象であれば蒸発する程の威力を持った暴力となる。

 

 

現に幾らかの手心を加えているのだろう。射出される財宝に内包されている魔力は低いのだが、それでも英雄王の宝物庫に納められるに相応しい一級品ばかり。一発が爆撃を思わせる破壊力を発揮しながら、しかし()()()()()()()()という結果になっている。

 

 

一番被害が多いのは管理局だろう。連携こそはこの中に集まったものたちの中でも抜きん出ているかもしれないが個々の力はクロノを除いて並よりも優秀程度の物でしかなく、盾役となった者たちは財宝の暴威に晒されてボロボロになっている。それでも背後にいた者たちを守り抜いた事は評価するべきだろう。他に盾役に勤めていた高町とめぐりは無傷ではあるが消耗した様で肩で息をしている。

 

 

そして俺は無傷だった。桜木がわざと狙わなかった訳ではないのは俺の周囲の被害が周りと同じ事から見て明らか。前以て関与している事を悟らされない為に普通に攻撃しろと言ったのを守ってくれたらしい。

 

 

俺が無傷なのは桜木の財宝を防いだからだ。当たる物はナルカミで受け流し、躱せる物は見切った上で最低限の体捌きで躱し、当たらない物は無視した。そんな当たり前の事を当たり前のようにして、財宝の射出をやり過ごした。それはシグナムとザフィーラも同じな様で、彼らも俺と同じように周囲の被害は甚大だが本人たちは無傷で財宝をやり過ごしていた。

 

 

《うっわ、何で適当にばら撒いたとは言え避けれるんだよ……一応超広範囲の面制圧だったのに》

 

《やーいやーいクソガバエイムー》

 

《おっと、手が滑った》

 

 

表面上は変わった様子は見せていないのだがチャットでの反応を見る限りでは相当頭に来ていたらしく、俺へとピンポイントで二十を超える財宝が放たれた。煽り耐性低過ぎやしないかな?などと考えながら先ほどと同じ要領で宝具の射出をやり過ごしーーー内数本を左右へと弾き飛ばし、そこから迫っていたシグナムとフェイトの迎撃とする。

 

 

高速で軌道を変えて向かって来た宝具を物ともせず、2人は手にしているデバイスの一振りでそれを弾き飛ばし突貫してくる。それを避ける事なくナルカミとカスパールで受け止める。

 

 

「仲良いねぇ、敵対してたんじゃないの?」

 

「これは祭りなのだろう?ならばそれまでの関係を無視してはしゃいでも構わんはずだが?」

 

「貴方には母さんを傷つけられた個人的な恨みがあるので」

 

 

共闘のような事をしているのはここだけでは無かった。クロノの指揮する管理局員たちが砲撃やシューターを桜木に撃ち込み、それに便乗する形でザフィーラが突貫している。よく見ればここから離れた場所では高町が砲撃の機会を伺っており、その側では黒須が何かに堪えるようにしながら控えているのが見える。

 

 

どうやら序盤の全体攻撃が彼らの警戒心を煽ってしまったらしい。管理局と闇の書、敵対している関係でありながら俺たちという脅威に対して手を組むことにしたらしい。明言している訳ではないが、この状況を見る限りではそれで間違いなさそうだ。

 

 

それに関してこちらからは何も言わない。争っていた二者が外部からの敵勢力に対して一時的に手を組んで当たるなんて珍しいことでは無い。むしろ、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「良し、かかって来い」

 

 

その言葉を皮切りに、2人は同時に鍔迫り合いを辞めてその場から跳びのく。そしてフェイトはバルディッシュを振りかぶって三日月型の斬撃を、シグナムはレヴァンティンの形状を連結刃に変えて鞭のようにしならせながら斬撃を見舞う。

 

 

普段ならこの攻撃を避けていただろうがこれは祭りなのだ。馬鹿になって騒ぐ楽しい楽しい催し物である。避ける、いなすは無粋の極み。

 

 

故に、迎撃する。

 

 

「ナルカミ、稲走り」

 

『承知、カートリッジ使用許可』

 

「認める」

 

 

ナルカミの柄から空になった薬莢が3つ吐き出され、内包されていた魔力を電力に変えて刀身に帯電する。そしてそれを一閃。帯電していた雷が斬撃となって稲妻のような軌道を描きながらフェイトとシグナムの斬撃に命中する。

 

 

普段ならばカートリッジの使用は一つで済むのだが2人からの攻撃、それも二方面からなのを配慮しての増量なのだろう。消費は多かったものの、望んでいた通りに迎撃には成功する。しかし走る稲妻は迎撃には成功しても本命たる彼女たちには当たらない。直前になって()()()()()()()()。魔法による再現で本物よりも劣るとはいえ、少なくとも音速よりも速いそれを肉眼で見てから反応したとは考えられない。恐らくは直感なのだろう。そのバトルセンスには脱帽するしかない。

 

 

稲妻を軽く避けられ、ミドルレンジへと踏み込まれる。振るわれる鎌と剣。リーチの違う武器がそれぞれの振るい方で、バラバラのタイミングで襲い掛かってくる。流石にフェイトにはシグナム程の練度は見られないが、それでも接近戦が主体な為に並みの魔導師よりも上手いと感心させられる。

 

 

それを、ナルカミとカスパールで同時に捌く。シグナムの剣をナルカミで弾き、フェイトの鎌をカスパールでいなす。二方面から同時に攻撃されるので対処は面倒ではあるが、前世のように四方から襲い掛かられるよりはマシだ。

 

 

フェイトはまだ幼い為か正直に正面からしか攻めてこないが、シグナムはさり気無く俺の視界の外へと逃げようとしている。それをさせないように立ち回り、時折落ちてくる桜木の宝具を上半身を動かすだけで躱す。流石に管理局とザフィーラを同時に相手しながら俺を攻撃するのは厳しいのだろう。開幕で財宝をばら撒いた時よりも雑に放っているように感じられる。

 

 

このまま我慢比べに付き合っても良いが、それではつまらない。フェイトの足元へと振るわれた一撃を飛んで躱し、シグナムの一閃をナルカミで受け止め、その勢いで吹き飛ばされる。そうして廃墟都市を一望できる程の高さからの自然落下が始まる。

 

 

壁面のスレスレを落下しながら身体の正面を上に向ければ、視界に追いかけてくる2人の姿が映り込む。ただ落下しているだけのこちらに対して向こうは魔法による飛行だ。ただこうしているだけでは追い付かれるのは目に見えている。

 

 

なので牽制にカスパールの弾丸をばら撒き、落下しながら壁面を蹴って下に向かって落下する。スピードタイプのフェイトには避けられ、シグナムには剣で弾かれてしまうが、その行動に意識が割かれてしまい速度を上げられないので差は開く事になる。

 

 

加速した状態でその速度を殺すこと無く着地し、その際にかかる負荷を全て横へと向けることでダメージを無くしながら速度を落とすこと無く着地して移動する。

 

 

そして、さっきまで居た廃墟の元に仕掛けていた爆弾を起動させる。支えになっていた4本の柱の内の2本を無くしたことで支えをなくし、廃墟がこちらに向かって倒れ込んでくる。それを見てシグナムは俺を追いかける事を諦めて全力で倒れる廃墟へと向かっていった。何せあそこにはまだ磔にされているヴィータがいる。彼女を助ける為に罠だと分かっていながらもシグナムたちはこの場に来たのだ。

 

 

俺よりもヴィータを優先することは当然でありーーーその背後目掛けて砲撃魔法を放つ。

 

 

シグナムならばこれに気が付き、振り返ること無く避けるくらいのことはやるだろう。しかし砲撃の射線上にはヴィータの姿がある。避けてしまえばヴィータに当たってしまう、絶対に避ける事が許されない攻撃。殺ったとは考えられない。シグナムのバリアジャケットの硬さから推測するに、精々ダメージを与えられる程度の物。

 

 

それは別方向から放たれた桃色の魔力光の砲撃により、あえなく掻き消される。

 

 

「チィッ!!」

 

 

魔力の輝きを見ただけでその砲撃が高町の物だと分かり、思わず舌打ちしてしまう。強引に行われている乱戦で、利害が一致したとは言え敵対している相手が攻撃されたのだ。戦力が減るのは痛いかもしれないが、今後の事を考えれば見捨ててダメージを与えておくのが定石である。事実、クロノたちはザフィーラを助ける事無く、ザフィーラもまたクロノたちを助けるような行動をしていない。

 

 

手を貸すことはあっても、助ける事はしない。それがこの場のルールだと思い込んでしまっていた。だからこそ、高町の行動でそんなルールなんて無いんだと気付かされ、そんな自分に苛立ってしまう。

 

 

「ハァァッ!!」

 

 

高町に意識を取られた瞬間を好機と読んだのか、フェイトが加速して斬りかかってくる。

 

 

「緩い」

 

 

それが振るわれるよりも先に彼女の顔面を蹴り飛ばす。

 

 

フェイトの体躯と鎌の形状が原因で、彼女がバルディッシュを使うにはどうしても振りかぶらなければならなくなってしまい、どうしても初動が遅くなるという欠点がある。さっきまではシグナムと共闘していたのでその欠点をつく事が出来なかったが、こうして一対一になったのであれば容易くつく事が出来る。

 

 

加速をしていた事で自分から突っ込む形で蹴られたフェイトは仰け反り、体勢を立て直そうとしたところをナルカミの柄で、カスパールの銃底で殴り抜く。鎌のリーチよりも内側に入り込まれた事でフェイトは反撃する事は出来ず、逃れようと電気を放電するが、無視出来る程度のダメージだったので御構い無しで殴り続ける。

 

 

「ぁ……」

 

「こんなもんか」

 

 

十数発も一方的に殴られた事でフェイトはその場で崩れ落ちる。バリアジャケットの防御のお陰で骨折や打撲程の傷は負っていない様だが、内部にはダメージが残っていて少なくともこの戦闘での復帰は不可能だろう。

 

 

フェイトに興味を無くし、次は誰にしようかと品定めを始めたところで猛烈な勢いで炎が向かってくるのが見えた。

 

 

「アクロォォォーーーッ!!」

 

「お前が来るか、同類」

 

 

その目に怒りと憎悪を宿しながら、前世で同じ世界の住人であったであろう黒須が向かって来るのを嬉々として迎え撃つことにした。

 

 

 





四つ巴とか言ってたけど、実際は殆ど管理局&ヴォルケンリッターとカガっち桜ギル君って言う。チート具合で言ったら桜ギル君が、危険度で言ったらカガっちが突き抜けてやばいから当たり前なんだけど。

なお、未だにロヴィータはクソ雑魚看板をぶら下げられている。

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