道化の名は必要悪   作:鎌鼬

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ランキング確認したら乗っていて、すぐに消えるだろうと思ってたら日刊の三位まで浮上していたあの現象は一体何だったのか……

なんか週一で投稿になっちゃってるけどゴメンね!!オラァ!!最新話(エサ)だぞぉ!!喜べや!!



darkness heart・10

 

 

「何故だ……」

 

 

スターライトブレイカーによって削ぎ落とされていた部位と臓器を補っている最中、桜木の宝具によって吹き飛ばされた管制人格が無傷で砂埃の中から現れる。顔は俯いているので分からないが、声が震えている。

 

 

「何故……何故お前もその男に手を貸すのだ!!その男は主から騎士たちを奪ったのだぞ!!それなのに……どうして誰もがその男の肩を持つのだ……!!」

 

「決まっている。それは貴様の方が危険だからだ」

 

 

管制人格の叫びは悲痛だった。彼女の立場からすれば、彼女は主である八神の為という大義を持っている。八神から家族である騎士たちを奪った俺こそが倒さなければならない悪であるという認識が出来上がっている。高町たちの立場からしても、俺の行いを庇い立てる事は出来ないだろう。これを最初から知っていてそれでいてなお俺の事を悪ではないと庇い立てる奴がいるのなら、そいつは間違い無く狂人の類でしかない。

 

 

桜木は全てを知っている。その上で、管制人格の叫びを一蹴してみせた。

 

 

「貴様の出現はそれ即ち世界が滅びる事を意味している。滅びを前にして醜く足掻くのは生物として当然の帰結である。ならば、大事を前にして些事を置いておく事など珍しくもないであろう?」

 

「だとしても……だとしても……!!」

 

「理解しろ、そして納得しろ。貴様の事を憐れみはすれども貴様の味方をする者は誰もいない。この場において最大の悪性は貴様である」

 

 

それは桜木が言っているはずの言葉。しかし、呪いによって強制されている喋り方の所為なのか、暴論でしかないはずの理由なのにそれが正論であるかのように聞こえてしまう。

 

 

「貴様の境遇には同情をしよう、憐れみもしようーーーだが、それだけだ。道具であるのならば道具らしく人の心を捨て去るべきであった。それが出来ぬのならば疾く自害するべきであった。道具であると悟りながらも人の心を捨てる事が出来なかった、己が罪であると心得よ」

 

 

桜木の背後に現れていた2つの黄金の渦、その内の1つがチェーンバインドで縛られている高町とフェイトの方を向き、蔵の中に収められていた槍を射出してバインドを砕いた。これによりフェイトたちは自由になり、それと同時に九頭龍によって連れ去られていた黒須たちがやって来る。事前に交戦の経験があるせいか高町たちは桜木の事を警戒していたようだが、桜木の視線は管制人格に固定されていて、それでこの場では敵対しないだろうと判断したのか誰もがデバイスを管制人格に向ける。

 

 

「しかし、この(オレ)がそうであると断じても、否であると叫ぶのであれば足掻いて魅せよ」

 

 

桜木の背後に現れていた黄金の渦が数を増やす。2つから4つに、4つから8つに。倍々で数を増していき、最終的には32で増える事を止めてその全てから蔵に収められている宝具を展開する。

 

 

「さすればその散り様はさぞ見応えのあるものとなろうーーー!!」

 

 

内1つだけでも想像を絶する威力を誇る宝具の原点。それの32丁が同時のタイミングで射出され、中座されていた戦いを再開する号砲となる。

 

 

桜木の乱入時の初撃により、その威力を味わっていたせいか管制人格は障壁による防御ではなくて空中に飛んで避難する事を選ぶ。しかし元からそういう性能だったのか、あるいは管制人格がそうすると予想していたからなのか、宝具は管制人格の後を猟犬のように軌道を変えて追いかける。

 

 

それに対して管制人格は血染めの短剣を同数展開、それを射出して追いかけてくる宝具を撃ち落とすが背後から黒須とフェイトにデバイスを振るわれて障壁で防いだ物の急拵えなのか弾き飛ばされる。

 

 

さらに吹き飛ばされた先、体勢を立て直そうとしたところに高町の砲撃が放たれて飲み込まれた。

 

 

さらに砲撃から逃れた先で待ち構えていたのは赤城と御剣。御剣が転生特典である〝無限の剣製(アンリミテッド・ブレイドワークス)〟で作り上げた剣群で管制人格の動きを阻害し、その隙に赤城が数段階倍加させた魔力を使って大火力を叩き込む。

 

 

即席にしては中々の連携だが、そのどれもが決定打に成り得ていない。手数を重視している黒須とフェイトと御剣では管制人格の障壁を抜く事が出来ない。高町と赤城ならば威力としては十分なのだが彼女もそれを理解しているのか2人への警戒を怠っていない。その上、桜木が要所要所で管制人格に牽制をしているから今の状況が成り立っているのだ。もしもそれが無ければ、今頃は連携の粗さを突かれて各個撃破されているだろう。

 

 

そして気になるのが1つ。戦っている者たちの中でめぐりの姿が見えないのだ。隠れて管制人格の隙を伺っているのか、それともこの後に及んで八神と戦う事が出来ないのか。前者であればまだいいが、後者ならば残念でしかない。まぁ、現状では彼女が来ても戦力になり得るかは怪しいのだが。

 

 

管制人格と高町たちの戦いを地面で仰向けになりながら観戦しつつ、傷の()()()()を続ける。治療では無く修理と言ったのは間違いなどでは無くてそう言い表すしか出来ないから。初めはハスターに頼んで魔法で治そうとしたのだが、あまりにも傷が深すぎるので魔法での治療はできないと言われたのだ。

 

 

流石に臓器が無くなれば治せないかと魔法の限界を再認識しつつ、取った手段は悪性情報による欠損部位の補充。

 

 

具現化した悪性情報は泥の形状を取らせているが決まった形を持たず、俺の意思で自由に形を変える事ができる。それを活かして無くなった臓器を、血管を、神経を、骨を、筋肉を、皮を、全てを悪性情報で代用して埋めている。治しているわけでは無くて別の物で代用しているというのは修理というしか無いだろう。幸いな事に医学書を読んで人体の構造は一通り把握しているので修理そのものには問題はない。ただし、初めての試みなので手こずっているのだが。

 

 

「どうして……どうして、貴方はこんな事をしたんですか?」

 

 

修理作業の最中、俺の側で腰が抜けたのか地面に座っていた月村がそんな事を聞いて来た。その声色はとても悲しそうで、そして苦しそうであった。その反応、そして管制人格に立ちはだかって俺の事を庇ってくれた事から月村は俺の正体に気が付いているのだと分かってしまう。

 

 

立ち振る舞いから気づかれるようなヘマはしていないと自信を持って言える。顔は仮面で隠しているので見えていないはず。それなのに確信を持っているように見えるので何かしらの方法で俺の正体が加賀美両夜であることに気がついたのだろう。

 

 

だからこそ、この問いには真摯に答えなければならない。いつものように適当な対応で煙に巻く事は出来るが、そんな事をしたくは無いと考えてしまったから。

 

 

「どうしてね……必要な事だからだよ」

 

「必要な事だから……?あの人があんなに悲しんで、貴方もこんな大怪我をして……そうしてまでしなくちゃならない事って一体何なんですか?」

 

「それは教えられない。どうしてこんな事をしたんだと罵られる覚悟はしてるさ。そうでなきゃとてもじゃないがやってられないからな。だけど、これは必要なんだ。今は理解されなくても、いつか理解されるだろうさ」

 

 

一から十まで、それこそ俺がそういう考えに至った理由を話したところで理解も納得もされる事はないのは分かっている。答えるつもりであったが、この質問が来ると予想はしていたが、だからといってこの場で打ち明けられるようなものではないので結局いつも通りにはぐらかすような返事になってしまう。

 

 

「……何か大変な事になっているのに、教えてくれないのね?」

 

「生憎と気軽に打ち明けられるようなものじゃないんでな。お前の秘密と同じさ」

 

「ズルい。それを言われたら何も言えないじゃない」

 

「ハハッ、許してくれ」

 

 

泣きそうになりながらも笑みを浮かべる月村に、露出している口元を歪めて笑っている事を示す。上空で繰り広げられている高町たちの戦いを眺め、欠けた部位を修理している中で月村との会話はとても穏やかに行われていた。このまま話を続けていたいと思ってしまうが、そんな事をすれば手遅れになってしまうので名残惜しく思いながらも修理を終了して立ち上がる。

 

 

背骨が無くなっていたので動くかどうか怪しかった下半身も以前と同じように動いてくれる。血液の流れも良好であり、問題なく動かす事が出来る。とはいえ重傷の身でこれがただの延命行為であることには変わりは無い。これが終わってからジェイルにキチンとした治療をしてもらう事にしよう。

 

 

「行くんだね?」

 

「あぁ、行くよ。生憎と決定打に欠けているからな。あいつが真面目にやってくれればすぐに終わるんだがそんなつもりは無いらしい。それに、あの拗らせてるクソアマの顔面をグチャグチャにしてやりたい」

 

 

背中を抉られた事に関してはまぁいいだろう。それをされても仕方がないような事をしでかしたという自覚があるし、される覚悟をしていたのだから。

 

 

しかし月村とバニングスをーーーいや、月村を攻撃した事が許せない。気がついていなかったかもしれないが、それが何の免罪符になると言うのか。仮にも八神を主と仰ぐのであれば、彼女の友人である2人に手を出して良いはずがない。

 

 

自分を傷つけられたと言うことよりも、月村に危害を加えられたと言う事に対して沸々と怒りが込み上げて来る。

 

 

「リーゼロッテ、2人を結界の外に出してやってくれ。それが無理なら守れ」

 

「ーーー分かった。任せて」

 

 

この場に月村とバニングスを放置しておくのは心配なので隠れていたリーゼロッテを呼び出し、この場から脱出させる事にする。とはいえこの結界は中にいる者を外に出さないためのものなので出られない可能性もあるが、その場合はリーゼロッテに守らせれば問題ないだろう。

 

 

「てな訳で行って来るわ」

 

「……怪我をしないでなんて言わない。だけど、ちゃんと帰ってきて」

 

「……あぁ、約束だ」

 

 

できる限りのことはしたので手を振りながら約束を交わして別れ、調子を確かめるついでに歩いて戦闘の行われている場所まで移動をする。月村とバニングスを巻き込まない為にか戦場は2人から離れた場所に移動していて海に近づいているように見える。

 

 

『桜木、見えてるか?』

 

『あ、やっと復活しました?』

 

『心配させたな。そっちに合流するけど、それに合わせて管制人格地面に落としてくれない?』

 

『オッケー、それくらいなら問題ないです……あ、あと沙条からメッセージ預かって来てます』

 

『おう、足が震えるけどドンと来い』

 

『そんな気を張るようなものじゃないですから安心して下さいーーー両夜の性格から無茶をするのは分かってるわ。だから、無傷でなんて言わないけどちゃんと帰って来なさい。だそうです』

 

 

桜木から伝えられた愛歌のメッセージ、それを見て呆気に取られ、そして声に出して笑ってしまった。何せそれは月村が言った言葉と同じだったから。

 

 

本当ならば俺が傷ついている姿を見るだけで心が痛いのだろうに、その痛みを堪えて俺の背中を押してくれている。あぁ、2人ともなんていい女たちなのだろうか。前世で彼女たちに出会えなかった事に神を呪いたくなり、そして今生で彼女たちに出会えた事を神に感謝したくなってしまう。

 

 

ただしクトゥルフ神話の邪神ども、テメーらはダメだ。感謝の代わりに同人誌を製作してやる。

 

 

遥か彼方から泣き叫ぶような突っ込みがされたような気がしたのだが、気のせいだと無視する事にする。

 

 

「さて、あいつの事だから丁度いいタイミングであのクソアマを叩き落としてくれるだろう。顔面殴ってからファイナルラウンドだな」

 

 

桜木たちが戦っている場所に行くため、そして激しく動かしても以前と同じように動くかどうかを確かめるため、地面を全力で蹴り、戦場へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー来たか」

 

 

近づいて来る彼の気配に気がつき、桜木は管制人格の隙を作るために行なっていた宝具の射出を一旦止める。彼がその気になれば初撃の時点で彼女を殺すことは可能であった。それをしなかったのはこれからの展開の事を考えてと、友人を傷付けられた憂さ晴らしをする為に嬲りたかったから。故に自分の力でこの場を解決するつもりは無く、彼が来た以上もうこの場にいる理由は無くなってしまった。

 

 

ならばあとは頼まれごとをするだけだと、桜木は宝物庫から一際大きな槌を取り出し、黒須とフェイトの相手をしている僅かな隙を見極めて管制人格に振り下ろす。これまでの行動を阻害するものではない一撃は管制人格を的確に捉え、防御の為に展開された障壁を突き破って彼女を地面に叩き落とす。

 

 

「ク……ッ!!まだあのような武器を隠していたのか……!!」

 

 

それまでの宝具の射出は避けられる、あるいは障壁で防げる物でしか無かった。それは桜木がこの場ではその程度の物で事足りると判断していたからなのだが、両夜のオーダーに応える為に一級品の宝具を取り出して使用したのだ。少なくとも片手間程度で展開された障壁などでは防げるような代物ではない。

 

 

悪態をつきながらも先の宝具のデータを組み込んで障壁の強度を上げる。これであれと同程度の宝具が来ようとも確実に防ぐ事は出来る。そう結論付けて敵のいる空中へと飛び立とうとした瞬間ーーー管制人格の肩に手が置かれた。

 

 

「どこ行くの?」

 

 

音符でも付きそうな程に喜色を含んだ声色とは裏腹に、彼女の肩に置かれた手は万力の様に締め付けて振り解く事を許そうとはしない。

 

 

管制人格は忘れていた。いや、忘れていたはずが無いが高町たちが予想していた以上に健闘していた事、桜木の危険性、そしてあの怪我では動けないだろうと考えて彼の存在を注意から外してしまった。

 

 

振り返りながら手に砲撃魔法を準備し、それを振り返るのと同時に確認する事なく放つ。ゼロ距離で高火力の砲撃魔法は非殺傷設定などされておらず、当たれば上半身が消し飛ぶだけの威力を秘めていた。

 

 

それを下手人は踏み込み、更に距離を詰める事で躱す。紙一重の回避で仮面の一部が欠損したが、それを気にすることなく硬く握り締めた拳を振り抜いた。

 

 

「ハスター」

 

『barrier braek』

 

 

本来ならばその一撃は障壁に遮られて不発に終わるはずだった。しかしデバイスと思わしきペンダントから無機質な声が発せられ、拳が触れると同時に障壁はヒビ割れて砕け散った。

 

 

そして拳が管制人格の顔面に突き刺さる。強化も施されていない素面の一撃で頭蓋骨が軋みをあげ、頬骨が砕け、管制人格は初めて殴られて吹き飛ばされると言う経験を味わう。無論それだけの威力で殴ったのなら殴った方も無事では済まない。殴った手はひしゃげて使い物にならなくなってしまっている。

 

 

だというのに殴った張本人は痛みなど感じていないようで実に清々しい顔をしていた。

 

 

「スッキリ、超スッキリ」

 

『強化なしで殴ったせいで完全に手が砕けてますけど……』

 

「あいつらが感じた恐怖に比べたらこんなの屁でもねぇよ。それに手が砕けた程度で痛がってたら話にならん」

 

 

取り込んだ騎士の1人であるシャマルの回復魔法で傷を癒しながら立ち上がる管制人格に対し、彼は砕けた骨を元の位置に戻して泥で覆うことでそれを固定する。

 

 

「さぁ、ファイナルラウンドだーーー長かった馬鹿騒ぎもそろそろ終いにしようや」

 

 

不敵な笑みを浮かべ、露出した目には怒りの炎を燃やしながらアクロ・ダカーハは傲岸不遜にそう宣った。

 

 

 






脊髄や内臓が無くなっても泥で補って直すって人間辞めてるなぁ……でも所詮は別のパーツで補っているだけなので治っているわけじゃないという。終わったらスカさんが治してくれるぞ!!

本当だったら『どこ行くの?』はハートマーク付けたかったけど、雰囲気に合わなさそうだから断念。良いぞ!!私は一向に構わんッ!!というのならそっちでやりたい(願望

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