この素晴らしい異世界でチートらしいチートを貰わずに微妙なチートで神様転生して無双するテニスプレイヤーとかいう謎の職業に就いた勇者も魔王も超越する常識を置き去りにした強すぎる超次元スポーツ男に祝福を!? 作:神爪 勇人
後悔はしていない。
まず、結論から言おう。
どうやら、俺は死んだらしい。
「ようこそ死後の世界へ。私の名はアクア、あなたに新たな道を案内する女神。鏡見 武蔵さん、あなたは本日午後19時48分に亡くなりました。辛いでしょうが、あなたの約18年の人生は終わったのです」
目が覚めると、そこは洋館の事務室みたいな部屋の中だった。
そこで、唐突に俺は突っ立っている。
そして目の前には、事務椅子に座った一人の女神。
何故女神だと相手の言う事をすんなり信じたのかと言えば、無駄にキラキラと後光の様なものが射していたのと、現実にはありえない位の美少女だったからだ。
オマケに青髪だ。
こんな奴がリアルに居る訳がない!
ああ、本物の女神様なんだなと思ってしまった。
そして同時に、この女神様は凄まじく残念な臭いがした。
絶対頭に駄が付く類いの女神だろう。
ま、そんな女神でも、彼女の言葉を聞き、改めて自分が死んだ事を自覚した。
死んだと言われて落ち着いているのは、死ぬ直前の記憶があるからだ。
それは、俺にとってはついさっきの出来事。
激闘だった。
あの世界No.1の強敵を相手に戦い、そして・・・・・・死んだのだろう。
決着がどうなったのかまでは分からないが、こうやって俺が死んだという事は、俺は・・・・・・負けたのだろうな。
相手の攻撃に迎撃に出た所までは覚えていた。
「・・・・・・一つ聞いても?」
俺の質問に、女神がゆっくりうなずいた。
「どうぞ?」
「俺は・・・・・・負けたのか?」
大切な事だった。
戦って勝つ事も出来ずに、負けて死ぬ。
ああ、それはなんて屈辱的な事だろうか。
リベンジする機会がもう無いとか、無念すぎる。
「いえ、負けてませんよ。勝ってもいませんけど」
「???・・・・・・それはどういう意味だ?」
「えー、というかですね・・・・・・」
今まで荘厳的な雰囲気を纏っていた女神は、カッと目を開く。
「あなたいったい何なのよ!?」
「え?」
いや、何なのよって言われても・・・・・・。
「ごく普通の一般人だが?」
「ごく普通の一般人が――――――――――――テニスで死ぬわけないでしょ!?」
そうだ、俺はテニスで死んだのだ。
テニスというのは一々語るまでも無いだろう。
あのラケットを持って、ボールを打つ球技だ。
「いったい何が問題なんだ?」
「何がってねぇ・・・・・・ッ」
ワナワナと震える女神。
「何でテニスボールを打って人が吹っ飛んだりするのよぉっ‼ 分かる!? あなた勝ったとか負けたとかじゃないの‼ 大地にクレーターが出来る打球を打ち返して相手を半殺しに追いやって力尽きたの‼ そりゃ結果を見たら負けかもしれないけど、結果は相手も倒れて試合続行不可能で引き分け‼ テニスでそんなことが起きたの‼ 分かる!?」
「・・・・・・ソレの何処に問題が?」
「問題しかないでしょ!?」
俺の対戦相手は、世界ランキング一位の・・・世界最強のプロ選手だった。
こう見えても俺は中学や高校時代は全国クラスのテニスプレイヤーで、それはもう数々の激闘を繰り広げた物だ。
そして、高校を卒業してプロ入りをした矢先、ひょんなことから世界一のプロと試合をすることになったのだが・・・・・・
「・・・・・・あれが世界最強の洗礼ってやつか」
「そんなレベルじゃなかったわよ‼ 何なの? ボールが光ったり雷速で移動したり物理法則を無視した打球が飛んだり分身したり観客席を吹き飛ばしたり‼ テニスって何なの!?」
「テニスは何、か・・・・・・哲学だな」
「そうじゃないのよおぉぉぉーッ‼」
頭を掻きむしる女神様。
そんなに頭を掻きむしると禿げるぞ?
「はぁ・・・・・・もういいわ。どうせ地球での下界の話だし、此処では関係無いし」
気を取り直して、女神はコホンと咳払いする。
「さて・・・・・・死んだあなたには、いくつかの選択肢があります」
「選択肢?」
「それは、このまま地球に新たな命として転生するか。天国的な所でお爺ちゃんみたいな暮らしをするか。さぁ、どっち?」
なんだその身も蓋もない選択肢は。
つかお前、いくつかの選択肢って、二択しかねぇじゃねえか。
「つーか、天国的な所って何だ? そもそも、お爺ちゃんみたいな暮らしって何だ?」
「えっと、天国ってのはね。あなた達が想像している様な素敵な所ではないし、貴方が好きな漫画とかに出てくる閻魔大王とか界王とかっていないの。死んだんだからもう食べ物は必要ないし、死んでるんだから、物は当然生まれないわ。作ろうにも材料とかないし。がっかりさせて悪いけど、天国にはね、何にもないのよ。ネットもなければテレビも漫画もゲームもない。そこに居るのは、すでに死んだ先人達のみなの。もちろん死んだんだから、エロい事だってできないし、そもそも体がないんだからできないわね。彼らと永遠に意味もなく、ひなたぼっこでもしながら世間話するぐらいしかやる事がないわ」
「なん、だと・・・・・・!?」
それって、つまり・・・・・・
「界王様の所で修行したり、尸魂界で死神になって護廷十三隊に入る事も出来ない・・・・・・だと!?」
「そこなの!? もっと他に言う事ないの!?」
「無いよ」
「ないんかい‼」
クソ! 死んだ後の楽しみだったのに‼
それに近い感じの事すらないなんて‼
「というか、貴方が界王様の所で修行とか死神になれたりなんてどっちみち無理じゃない? 一般人なのに」
「そこはお前、アレだよ・・・・・・俺の超次元スポーツ技で」
「超次元って言った! 今超次元って言った‼ ごく普通の一般人の枠組みから思いっきり外れてるじゃない‼」
それはそれ、コレはこれだ。
無念残念そうにしている俺を見て、女神は嘆息しつつも「まぁ、いいか」と再び咳払いで仕切り直す。
「うんうん、天国なんて退屈な所行きたくないですよね? かといって、今更記憶を失って赤ちゃんからやり直すって言われても、あなたにとっては今までの記憶が消える以上、それってあなたって言う存在が消えちゃう様なものですよね。そこで! ちょっといい話があるのよお兄さん!」
とてもいい笑顔な女神様。
物凄く胡散臭い。
女神は警戒する俺にニコニコしながら、
「実はね? 今、ある異世界でちょっとマズイ事になってるのよね。って言うのも、俗に言う魔王率いる魔王軍ってのがいて、その連中にまぁ、その世界の人類みたいなのが随分数を減らされちゃってピンチなのよ。で、その世界で死んだ人達って、ほら魔王軍とかモンスターに殺された訳でしょう? なもんで、もう一度あんな死に方するのはヤダって怖がっちゃって、そこで死んだ人達は殆どが生まれ変わりをトラウマで拒否しちゃうの。はっきり言って、このままじゃ赤ちゃんも生まれないしその世界滅びちゃうから、それなら他の世界で死んじゃった人達を、そこに送り込んでしまえって事になったのね」
神様目線での移民政策みたいなもんか。
「で。どうせ送るなら、若くして死んだ未練タラタラな人なんかを、肉体と記憶はそのままで送ってあげようって事になったの。それも、送ってすぐ死んじゃうんじゃあ意味が無いから、何か一つだけ。向こうの世界に好きな物を持っていける権利をあげているの。それは、強力な固有スキルだったり。とんでもない才能だったり。神器級の装備を希望した人もいたわね。・・・・・・どう? これならお互いにメリットがある話でしょう? あなた達は、異世界とはいえ人生やり直せる。異世界の人達は即戦力になる人がやってくる。どう? 悪くないでしょ?」
なるほど、確かに悪くない話に思える。
それにコレはアレだな。
強力なチート能力もらって、俺TUEEEなあれか。
神様転生というやつだ。
「だからその異世界に行ってサクッと魔王を倒してきてくれない? ゲームみたいに!」
「だが断る」
「何でよおおぉぉぉーッ‼」
「興味がなくはないんだけどな?」
「楽しい所よー? 剣とか魔法とか‼ 好きなんでしょそーいうの!?」
「確かに好きなんだが・・・・・・」
「じゃあ良いでしょ!?」
「だって胡散臭いんだもの」
「ねぇお願い! 今月はノルマがとっても厳しいの‼」
と言われてもなぁ・・・・・・。
「取りあえず聞きたいんだが・・・向こうの言葉ってどうなるんだ? 俺、言葉喋れんのか?」
自慢じゃないが、英語の成績ですら赤点スレスレだ。
「その辺は問題ないわ。私達神による、アレ的な超パワー的なやつでサクッと都合よく解決済み。もちろん文字だって読めるし向こうの貨幣なんかも、日本円に脳内で換算されてくれる分かり易い便利システムを採用してるわ。だから、後は能力か装備かを選ぶだけよ」
最初に出会った時の重々しい口調は崩壊し、完全に地が出ている女神。
そして机の引き出しから結構分厚い本を取り出し、俺にパラパラっとページを開いて見せる。
「ほらほら、色んな特典があるでしょ? この中からどれでも一つ選んて行けるのよー? 楽しいわよー?」
「・・・・・・もう一つ聞きたいんだけどよ」
「何々?」
「アンタ等神が、俺らみたいな奴を異世界に送り込んで、どの位の時が経って、どの位の数の死者を送り出したんだ?」
女神アクアは俺の問いに「え?」と首を傾げながら、思い出す様に「んー」と唸りながら虚空を見上げる。
「10人を越えてからは数えてないし、そんな昔の事は一々覚えてないわ!」
「って事は相当昔から転生者を送り込んで、尚且つ相当な人数の転生者がいる訳だな?」
「ええ、そうよ? ちなみに、あなたの後にもまだ結構死んでる人がいるから、その人たちも送るつもりよ」
「・・・・・・もう一つ聞くけどよ」
「何?」
「現状、その魔王討伐ってどのくらい解決してんだ?」
そんなに昔から魔王を倒すとかなんとかで、相当な数のチート持ち転生者を送り込んでるんだ。
魔王を倒せてはいないまでも、相当数の敵軍を倒してると思うんだが、俺は如何にも嫌な予感がした。
案の定、アクアは目を逸らしやがった。
「・・・・・実はまだ幹部もロクに倒せてなかったりして」
「やっぱ俺いいわ異世界生活とか。かと言って天国もなんかアレだから、もう記憶消しても良いから赤ちゃんからスタートさせてくれ。全てをやり直すわ」
「ちょっと待って‼ お願いだからちょっと待って!?」
踵を返す俺にアクアが縋り付く。
「えぇい鬱陶しい、離せ‼」
「いーや、離さない‼ 離したらノルマが熟せないのよ‼ 今月とっても厳しいのよ‼」
「知るか! つか、ノルマって何だよ!? んな何人もチート持ち送り込んどいて何も進展してねぇとかクソゲー通り越して無理ゲーだろうがッ‼」
「おーねーがーいーッ‼ 私を助けると思って‼」
「イ・ヤ・だ・ねッ‼ んな世界でチート持ってったって如何にもならねぇんなら行く価値なんざねぇよッ‼」
「分かった! 特典を2つ・・・いや、3つまでなら持って行っていいから‼」
「・・・・・・3つ?」
それはかなり破格な条件に聞こえるが・・・・・・。
「んなことやって大丈夫なのか?」
「大丈夫! 一般人の3倍の強さの転生者を送った事にしとけばなんとかなるわッ‼」
んな理屈でイケんのかよ。
「それなら他の転生者にも複数の特典を与えりゃいいのに・・・・・・」
「それが簡単に出来ないから、1つしか選べないのよ。上が五月蠅いの」
どこも上司とか先輩とか、目上の存在は口うるさいものらしい。
「まぁ、3つも選べるんなら大丈夫か」
ちょっと不安はあるけどな。
俺が行く気になったのを感じたのか、アクアが目に見えて喜色を表す。
「行ってくれるのね!?」
「ま、そこまで言うんなら・・・・・・」
興味はあった訳だし、どっちかっていうなら記憶を無くしたくはないしな。
俺はアクアから、持っていける特典が書かれたカタログを受け取り目を通す。
カタログには能力系とか装備系とかステータス弄れる系だとか色々書かれていた。
「んー・・・・・・」
なんかどれもしっくりこないな。
「なぁ、アクア。転生特典って此処に書いてあるやつしか出来ねぇの?」
俺は、暇そうに回転椅子に座ってクルクル回っていたアクアに説明を求めた。
「え? まぁ、出来ないって事は無いけど・・・・・・あんまり複雑なのは無理よ」
「例えば?」
「無限に願いを叶えられるドラゴンボールとかは無理ね!」
それは色々チートが過ぎるな。
「じゃあよ、ちょっと聞きたいんだが――――――」
俺は自分が望む特典を口にする。
「――――――・・・って、出来るか?」
「いや、まぁ、それくらい出来るけど・・・・・・え、本当にそんなので良いの?」
アクアが信じられないモノを視るように俺を視た。
何をそんなに驚く事があるというのか。
「寧ろ俺の能力を考えたら妥当だろ?」
「そうかもしれないけど・・・・・・けど、こんなのを特典に選んだ奴って今までいないわよ!?」
「何事も初体験ってあるよな」
信じられなくても特に問題はない様で、アクアはちょっと戸惑い気に俺に特典を付ける。
「特典は『破壊不能属性を付加したテニスラケット』『色々アビリティが付いてるテニス衣装一式』『無限にテニスボールを生み出す力・・・・・・【
「おう」
「・・・・・・本当にコレで良いのね?」
「諄いな。だから良いっつってんだろ」
「本当に大丈夫なのかしら・・・・・・」
なんかアクアの眼が死んでる。
「それじゃ、この魔法陣の中央から出ない様に」
「おう」
言われた通りに、俺は魔法陣が描かれた床の中央に立つ。
そして、魔法陣が輝き出した。
「ではでは、ゴホン。・・・・・・さぁ、勇者よ。魔王を討ち倒す為旅立つのです。・・・・・・ていうか、特典3つも付けたんだから、魔王倒してよね!」
「女神らしさが微塵も無くなったな」
今更だろうが。
「ま、それなりに上手くやるさ」
そして俺は、白い光に包まれた。
「光速で移動? 雷を操る? 未来視? コピー能力? いらねーよ、んなもん。つーか、そんなもんがチート特典に入んのかよ。それくらいの使い手、全国にはゴロゴロいるぜ‼」
魔王だろうがチート持ち転生者だろうが関係ねぇ!
俺に立ち塞がるやつは全部ぶっ潰す‼
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テニプリ書くのもアリかもしれん。