東方鉄男録   作:角張った円

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十話書くのに半年。
なんと言う体たらく。


終話:最期くらいは真面目に。

今日は。最終話で初めて名前が決まったフェロだ。遅すぎだろうと言われても仕方がないとは思うが今まで親分や妖怪様で通用していたんだから仕方ないだろう。

しかし流石に名前がないのは不便と言うことで永林に名付けて貰った。フェロ。なかなか良い名前なんじゃあないだろうか?かなり気に入ってしまった。まあまだ俺自身が名前に慣れてなくて反応できなかったりするけどな。

 

さて、永林と友達になってから大体三ヶ月くらい経った。最初どうやって国の外に出るか、という問題を忘れていてかなり焦ったが永林が新型のロボットの実験と言ったら入るときよりもすんなりと通してもらえた。それなりに偉いというのは嘘じゃないようだ。まあ、そんなこんなで通してもらえた俺は山に帰り皆にもうすぐあの人間どももいなくなると説明し、突撃しようとする血迷った馬鹿達を諫める。そしてまた永林のところへ戻りコンピューターとして少しだけ協力するというのを三ヶ月ずっと続けていた。

俺のささやかな努力もあってかこの三ヶ月で人類月移住計画は加速度的に進み、移住の日取りまでが決まったと永林から聞いた。思わず安堵のため息を息してないのにしてしまった。永林が居なくなるのはかなり、いや物凄く寂しいがそろそろ山に居る妖怪達特に山の主を失った逃亡組は荒れており正に一触即発だったのだ。そんなものを三ヶ月間押し込んでおく、パワーがあるので肉体的には何ら問題ないがストレスがマッハだったのである。まあ、俺と話してるだけで永林のストレスが光速をこえていたようだが。

 

かなり話題がズれてしまったが、なにが言いたいかと言うともうすぐ移住だ、というだけだった。

 

日取りまで分かったので早速山に帰り皆に人間が居なくなる日を伝える。皆が安堵してくれたのを見て俺もまた少し気持ちが軽くなった。最近ますます人間の横暴が増してきているからなぁ。永林は別だが。そうだ、最後の日までは異世界に来て最初の友達永林と共に過ごそう、とそのときの俺はほっとしている群衆の中で光っている怪しい目に気付いていたが、無視してしまった。

 

 

 

 

数ヵ月後。

 

「もうお別れねぇ。」

 

『ああ。一年にも満たなかったがずいぶん楽しかった。最初の出会いはアレだったが。』

 

「ええ。最初の出会いは今思い出しても腸が煮えくり返るわ。」

 

『まあそう言うな。今もセンス変わってないけど、そう、アレだ。に、似合ってるぞ。』

 

「本当に永遠の別れの方が良いかしら?」

 

青筋が凄い。ここ数ヵ月で見慣れてしまったが。

俺は窓の外を見る。もうほとんどの人は移住のロケットに乗りに行ってしまった。

 

『出発は何時だ?』

 

「三十分後よ。友人に会うためって引き延ばしてきたの。」

 

『そうかい。』

 

「何よ。わざわざ私が時間を延ばしてまで此処に居るのよ?なんかないの?」

 

『いや、もう会えねぇんだなぁって……』

 

「……」

 

二人が無言になったその時だった。

 

ズズ……ン。

 

地響きのような音が。

 

『何だ?もう出発したのか?』

 

「?そんなはずないわ。私は此処に居るのよ?」

 

二人で慌てて外を見る。

 

火柱が上がっていた。

 

 

茫然とそれを見ていた。

 

「何……あれ…………」

 

『おい永林。お前が乗るロケットどれだ。』

 

「え?アレだけど…………きゃっ!!」

 

永林を抱き上げ指差したロケットに向かって飛ぶ。

上空からは状況がよく見えた。何匹かの妖怪を先頭に大量の妖怪達が地面にポッカリと空いた穴から這い出し、丁度移動中だった人間に襲い掛かっている。どうやら先程の火柱はこの穴を開けるための物だったらしいな。

しかしそれはほっとく。どうせ知らない人間だ。それよりも今は永林をロケットまで送り届けるのが最優先だ。永林が耐えられる速度にしたため少し時間が掛かったが二、三分でロケットに着く。

永林を下ろして今だ混乱していた兵士に向かって

 

『さっさと出発しろ!!殺されても知らんぞ!!』

 

と叫んですぐに妖怪達の所へ飛び立った。

すぐに永林をロケットの中に連れていこうとする兵士達。永林は連れていかれながらも一言だけ呟いた。

 

「頑張ってね………フェロ……」

 

 

 

 

 

妖怪達が進軍している先頭に居たのはこの数ヵ月ですっかり友人になった下心だった。

 

『下心。こんなところで何してんだよ。さっさと皆を抑えてくれ。』

 

「何って……人間達を襲って殺してんですが?何か問題でも?」

 

『ふざけるなよ。冗談はここまでだ。早く皆で山まで帰れ……』

 

「嫌に決まっているだろう。あんたは人間が憎くないのか?山を荒し、俺達の居場所を奪った人間が。」

 

『だからもう居なくなるって言ってるだろう!!』

 

「そんなんで許せると思ってんのかい?居なくなるからって、恨みが消える訳じゃない。だから居なくなる前に復讐しに来たんだ。出発の日。一番警備が薄くなる日に!」

 

『………じゃあ残念だったな。復讐は出来ない。何故ならもうすぐロケットは発射されるし、ここから先を通ろうとするなら気絶してもらうからだ。』

 

「……甘い。甘すぎるよアンタ……」

 

『何?』

 

「ここまで手酷く裏切られてよ、まだ殺すつもりがないって言うことが、甘すぎる。中に人間でも入ってンじゃねえのか?」

 

『……中は無人だよ…面白がって何回も見てきたろう…』

 

「そう言うこと言ってるわけじゃないって分かってるだろう?心だよ、こころ。普段はあんまり気になんないけどさぁ、たまに虫酸が走るようなときがあったよ。アンタの考えは人間寄り過ぎて気持ち悪い。共存なんて出来ない。一度生まれた憎しみは消えることなんて無いんだ。」

 

『………もう、止まれないのか?どうしようもないのか?頼むから、退いてくれ。お前を殺したくなんてない。』

 

「くどいよ。俺達妖怪はしたい事をするだけだ。そのたm」

 

ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!

俺の背後でロケットが飛び立って行く。

永林が乗ってるロケットが最初に出発し、それに追々するように沢山のロケットが飛んでいった。少しスピードのある妖怪が何匹かロケットにすがり付いていたが加速に耐えきれず落ちていく。概ね計画通りだ。

 

「てめえ……!!まさかこのために………!」

 

『その通りだよ。憎しみなんて消えない。綺麗事だってのも分かってる。だから、お前らの姿を見た瞬間に嗚呼、そう言うことなんだって諦めがついたよ。でもお前らを殺したくないって言うのは本当だった。だからせめて時間を稼いでおこうと思ったんだ。』

 

「クソッ!おい!遠距離が攻撃できる奴連れてこい!!撃ち落とす!!」

 

『無理だよ。この星の重力を振り切れる様になる加速だ。絶対に追い付けないさ。』

 

俺が勝ちの宣言をしようとした時。

 

『……ッ!?』

 

都市の中心部から有り得ないほどの高濃度の、それこそ探知を強化していない今の状態でも感じ取れてしまうほどのエネルギー反応が。

 

「なんだこれ……!?有り得ない!!」

 

どうやら下心達も感じ取ったようだ。

 

『クソがッ! 下心!!今すぐ防御系のやつらを集めろ!!』

 

「ダメだ……攻撃系しか連れてきてない……」

 

『………ッ~!くそぉ~~!!』

 

俺は即座に反応の中心へ飛んだ。

 

 

『こいつか……やってくれるじゃねえか……』

 

中心、政治部の長の部屋に置いて在ったのは掌ほどの虹色に輝く小さな玉。しかしその輝きはあと三十秒ほどで地球その物を半壊させるほどの爆発を起こす。爆発を止めるためには玉の中にある核を壊さなければいけないが、回りの部分に少しでも傷が付くとアウト。漏れ無く爆発する。まあ早い話が爆発を止めることは出来ない、とそれだけだ。

 

『仕方、ないかなぁ。守るためだ……』

 

頭部を開き、中に玉を放り込む。幸いそこまで大きくもないので簡単に入った。

あとは四十億年ほぼ保存にしか使ってこなかった妖力のすべて解放し、一割をスラスターに、残りの全てを体の強化に廻す。恐らくよっぽどの事がない限りは傷一つ付かない筈。まあそのよっぽどが今回なのだが。

 

窓から飛び立ち都市から出来るだけ離れていく。少し迷ってしまっている間に随分時間が経ってしまったようだ。もう五秒しかない。しかしそれで十分。永林はもう月に行っただろうし、下心達も居なくなった人間相手に燃えるほど馬鹿じゃああるまい。

嗚呼、さよならぐらいは言いたk

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中に花が咲いた。何かに妨害されたかのように被害も出さず、ぼん、と音を立てただけだった。

 

 

虹色の、花だった。




勝った!!大全部、完ッッ!!!
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