仮面ライダーだけど、俺は死ぬかもしれない。   作:下半身のセイバー(サイズ:アゾット剣)

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シンフォギアXDで爆死してムシャクシャして書いた。つまり勢い。反省はしてる(してるとは言ってない)
前からシンフォと仮面ライダー系書きたいなと思い、内容的にアギトならワンチャンあるなと暴走。挙句の果てにギャグ化した。過労に堪え忍ぶオリ主がOTONAならぬAGITO化していく様をお楽しみください。

作品コンセプト『戦っても生き残れない!』



AGITΩ-過労-編(本編前)
♪01.BELIEVE YOURSELF


 闇の中、見つめている。

 

 誰かを救わんと手を伸ばし、掴み取ったモノは〝力〟だったのか、それとも〝愛〟だったのか。

 求めたものはどこかへ消えた。信じたものはいつしか忘れてしまった。どこへも行けない折れた翼だけが無闇に残った。

 

 それでも、心だけは捨てなかった。

 

 これは夢だ。平気な顔をして笑ってみても、叫ぶように悲しく心が(すさ)ぶだけ。

 

 ───あなたは誰。

 

 ───あなたは何。

 

 ───なぜ、戦うの。

 

 ───なぜ、仮面で隠してしまうの。

 

 悲しい唄が鳴り響く。

 孤独な戦士が癒えぬ傷を背負って走る。

 闇の中、見つめていたのは誰だったのか。

 灼熱の肉体を焼き尽くし、ただ走り続けていたのは誰の為だったのか。

 

 ───待って。

 

 ───いかないで。

 

 ───戦わないで。

 

 我儘(わがまま)なんて言わない。

 私はただ、あなたの側に居たかった。居て欲しかった。それだけなのに。ただ一緒に生きていて欲しかっただけなのに。

 

 アギト───その仮面は、涙を隠すものだとするのなら、私はあなたにどう恩を返せばいいの?

 

 運命はこれからもあの人を陥れるだろう。

 想像を絶する苦痛を与えるだろう。

 だけど、あの人は迷わない。

 決して逃げない。

 どれほど辛くても、命から、悲鳴から、涙から、目を背けたりしない。

 

 それが〝仮面ライダー〟だから。

 そのための仮面なのだから。

 

 

 ───だから、どうか生きて。

 

 

 そんな声が聞こえた気がした。

 もう思い出すことはできないだろう。今はこの身もろとも修羅と化し(はし)り続けることしかできなくなった。

 

 ノイズ───認定特異災害とされる異形の存在は、人類を脅かす天敵ともなり得るものだった。

 なんの前触れもなく空間から滲むように現れ、罪なき人々を炭素の塊へと変貌させ、何事もなかったように自壊する。

 加えて、人間のみを固執して狙う。それが己に課せられた存在意義であるかのように、ノイズは人間を殺し尽くす。無慈悲な殺戮という恐怖に怯えぬ者など無いに等しい。

 

 既存の兵器はほぼ効果無しと言っても過言ではない。ノイズとの戦闘とは見栄を張った言い方で、実際は一方的な虐殺から自壊するまでの足止めに過ぎない。

 

 死傷者は年々増えるばかりだ。政府は対策に追われ、市民は不安で夜も眠れない。

 

 平和を望む人間のどれほどがノイズの脅威に怯えているだろうか? どれほどの涙が頬をつたって地へ落ちただろうか?

 

 わからない。

 

 青年は首を振る。

 

 ただ、やらねばならない。使命感がこの身体を、この魂を突き動かすのだ。

 戦わなくては。

 誰でもない、この自分が。

 胸にくすぶるのは正義ではない。断じて慈しみや優しさの心ではない。それはただの宿命(サダメ)というものなのだ。

 

 〝たとえ、この世界の人間でなくとも〟

 

 腰に巻きつくベルトのような変身器官が待機音を鳴らす。青年は引き絞った右手を前方へゆっくりと押し出し───

 

 〝変身ッ〟

 

 金色の輝きを放つ大地の戦士へと姿を変える。

 

 誰かが呼んだ。仮面ライダー、と。

 青年は苦笑しながら心の中で永遠に正されることのない訂正を繰り返す。

 

 俺は、仮面ライダーアギト。

 

 人間を超えた、ただの人間だ。

 ただの人間でありたいのだ。

 

 

***

 

 

 未確認生命体第2号と呼ばれる金色の戦士はある日、突然として人々の前に現れた。

 いや、悲惨なる戦場へ躍り出たのだ。

 世界がノイズの襲撃で大混乱に陥っている最中、それは何も語らず、何ごとにも動じず、圧倒的な力でノイズを組み伏せた。

 

 ノイズには位相差障壁という物理的な干渉を実質無効化してしまう能力がある。これにより、人類が築き上げてきた叡智の結晶とも言える兵器はほぼ無意味と化した。

 ノイズ相手に人間は殴る蹴る、挙句は銃弾などの攻撃さえ通すことは不可能になり、抵抗虚しいただ蹂躙されるだけの餌まで成り下がる運命を辿った。

 

 だが、未確認生命体第2号は違った。

 

 あれは自らの存在の大半を別世界に置くノイズという存在が、例えどれほど微かな存在であろうとも、そこに存在している認識、現象そのものに拳打を浴びせ、ノイズが人間界の物理法則に従っていようといなかろうと、直接それを粉砕する。

 いわば、世界に干渉している。

 あれは世界そのものを超えている。

 神にも届き得るその拳は物理を超越した存在を殴り、万象悉くを無に還す一蹴は空間さえ歪め、雑音もろとも破壊し尽くす。

 

 特異災害対策機動部二課の最新設備を持ってしてでも遅れを取る、未確認生命体第2号のノイズ感知能力と行動の早さ。

 そして迅速かつ圧倒的なノイズ殲滅スピード。

 ただ、誰もその正体を知らない。

 

 未確認生命体第2号───誰かが呼称した『仮面ライダー』という名を持つ者。

 それは澄み切った金色の音色。

 大地そのものが唄を歌っている。フォニックゲインが溢れ出している。

 彼を祝福するように、地球が唄を歌っている。

 

 故に、何ものにも染まらず、何ものにも犯されない。

 

 魂の唄。

 

「はぁぁぁぁぁぁ……ッ‼︎」

 

 大地に浮かび上がる紋章がそう語る。

 

 特異災害対策機動部二課司令官、風鳴弦十郎は初めてそれを現実に視た時、そう言わざるを得なかった。

 

 ノイズ襲撃の連絡を受け、更には未確認生命体第2号の目撃情報も重なり、司令自ら出向いた。

 見極めねばならない。弦十郎は無意識に高鳴る胸を抑え込み、現場へと急行した。

 

 場所は某所の廃車置場。星々が薄気味悪く瞬く深夜の闇の中、軍団と化した雑音と一人戦う黄金が居た。

 そして、弦十郎は純粋に感動し、その総てに見惚れた。

 

 強い、極限的に。

 

 巧い、達人級に。

 

 そして、見惚れるほど美しい。

 

 動きに一切の無駄がない。

 ノイズに対して行動を予知しているかのような戦い方。拳を突き出せば、そこにノイズ自らが飛び込んでくる始末。一曲の演武を魅せられているようだった。

 武器も持たぬ平手の構えを中心に、己の肉体のみを駆使して敵を驚くべき速度で排除していく。四方から襲いかかるノイズの攻撃に一歩も怯まず、恐怖すら感じるほどの的確過ぎるカウンターをほぼ同時に複数叩き込む。

 

 戦い慣れている? いや、あれはそのような極致ではない。

 命そのものが戦いであった者の生き様だ。計り知れない幾たびの戦場を這いずった者の心裏だ。

 

 弦十郎は理解する。未確認生命体第2号が何たるかを。

 

 やがて、ノイズの群れが未確認生命体第2号の気迫に押し負け、陣形が大きく崩れると、大地に翼のような紋章が浮かび上がった。

 

 風鳴弦十郎は視た。未確認生命体第2号の仮面に聳える二枚の角が、熾天使がその三対の翼を広げ天に舞うが如く展開された瞬間を。

 

 クロスホーンが解放される。

 

 大地が唄い、噴火するようにフォニックゲインが吹き荒れる。

 大地の力をその身に宿し放つ最強たる必殺の一撃が唸る───!

 

 【ライダーキック】

 

「はぁぁぁ……ハァァァァァァッッ‼︎」

 

 まさに飛び蹴りであった。ただし、目にも留まらぬスピードで加速し放たれる弾丸の如き飛び蹴り。

 人間では到底不可能な速度で放たれた極致に至りし飛び蹴りは一体のヒューマノイドノイズに直撃後、そのまま地面にめり込ませ、莫大なエネルギーを大地から辺り一面に波打つように拡大させた。

 その一撃は大地を揺るがし、空間さえ歪め、地面に放流するエネルギーを浴びたノイズ数百匹を文字通り消し炭にした。

 大地を伝って凄惨なエネルギーが荒れ狂い、射程圏内に留まったすべての雑音を己の地の音色に染め上げたのだ。

 

 (のこ)るものなど何もない。

 風に揺られた煤が静かに月夜に舞う。

 騒がしいほどの雑音は静寂へと変わり、ただ一人の勝者である黄金の戦士を包んだ。

 

 森閑とした廃車置場を背中に未確認生命体第2号がゆっくりと戦場を後にすべく、一際目立つ赤と金のバイクへ歩み寄る。

 木陰から一部始終を眺めていた弦十郎は慌てて彼を引き止めた。

 

「待ってくれ! きみは……っ」

 

 突然現れた弦十郎にちらりと真っ赤な複眼を向ける。だが、その瞳には何も映らない。

 やがて、沈黙のままバイクに跨り、重たいエンジン音と共に颯爽とその場から立ち去った。

 金色の戦士の後ろ姿を見つめながら弦十郎は脳裏に刻まれたあの瞬間を反芻するように思い出す。

 

 神の領域に至った者の真髄。まさに、そんな言葉が似合う者だった。

 悪しき者ではない。動きを見れば判る。あの真っ赤な瞳には、確かな正義が見えた気がしたのだ。

 

「仮面ライダー、か……」

 

 あの仮面に隠されているのは何なのか、弦十郎は人知れず微笑んだ。仮面ライダーがこれからもたらすものを期待して。

 

(ギャアァァァァァァッ⁉︎⁉︎ OTONAダァァァァァァッ⁉︎⁉︎ 殺られるッ⁉︎)

 

 まさか、その仮面ライダーが内心ビビりまくって尻尾を巻いて逃げたとは誰も思うまい。

 




真面目なわけないんだよなぁ…。タグに偽りはない。

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