仮面ライダーだけど、俺は死ぬかもしれない。   作:下半身のセイバー(サイズ:アゾット剣)

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♩.俺はギルスでボドボドかもしれない。

 ライブ会場の惨劇から二年───。

 世界は依然として認定特異災害たるノイズの脅威に怯えていた。

 何の予兆もなく突如として此の世に現れ、その場に偶然居合わせた罪なき人々を炭素の塊へと無差別に変えてしまう理不尽な怪物。それがノイズ───死を呼ぶ雑音。

 ノイズが纏う位相障壁と呼ばれる不条理な防御膜は人類の叡智たる兵器を一方的に無効化し、ノイズの排除には必ずしも多大なる被害を強いられることになる。人々は恐怖で逃げ惑い、兵士は死を覚悟して銃を握る。嵐が過ぎ去るのを祈りながら待つように、奴等が自壊するのを待ちわびるしかない。それが認定特異災害に指定されたノイズの恐ろしさだった。

 出会うことが死を意味する不幸の災厄───〝ノイズ〟

 かつて、それと孤独に戦い続けた者がいた。

 赤と金に彩られた龍の顔を模したバイクに跨り、地獄と形容すべき戦場に颯爽と現れては、本来ならば有り得ない格闘戦(インファイト)で触れることすらできないはずのノイズを尋常ならざる力をもってして駆逐する正体不明の正義の味方———未確認生命体第2号。

 またの名を『仮面ライダー』

 彼を希望と呼んだ者がいた。彼に恐怖を抱いた者もいた。

 それでも人々は心の奥底で仮面ライダーを信じていたのだろう。ノイズによる年間被害者の総数は、未確認生命体第2号によって、極めて少数に抑えられ、二次被害による死傷者さえ彼の存在が歯止めとなって、限りなくゼロに近い数字を保っていた。

 仮面ライダーと呼ばれた存在。

 いつ寝ているのか。いつ休んでいるのか。いつ戦っていないのか。

 そんな心配がネットを中心に仄めかされるほど、未確認生命体第2号はノイズと絶え間ない激闘を繰り広げていた。

 そして、二年前───有名ボーカルユニット『ツヴァイウイング』の公演中に起きた大量のノイズの襲撃事件によって、彼の戦いは幕を閉じた。近年で最も多くの被害を生んだ惨劇───1874名に及ぶ死者、意識不明となった『ツヴァイウイング』の天羽奏───人々はその惨劇を嘆くことしかできなかった。

 そして、その悲しみに拍車をかけるように───。

 未確認生命体第2号───仮面ライダーはライブ会場の惨劇の後、その姿を見せなくなった。

 まるで、世界から消えてしまったかのように、高らかなエンジン音もろとも忽然と居なくなった。溢れるノイズの息の根を止めるべく、バイクと共に急行していた金色の戦士の姿は───どこにもなかった。

 多くのメディアは未確認生命体第2号の死を報道した。

 知的生命体として考えられていたものの、まさか、同じ人類に属するものとは思われていなかった故───ノイズ殲滅に勤しんでいた未確認生命体第2号の突然の活動の停止は、彼の死によって、やっと理由付けられるものだったのだ。

 ライブ会場の惨劇で───仮面ライダーは力尽きたのだ。

 そう思われて───多くの人々は嘆き悲しんだ。無論、得体の知れない化け物が死んだと安堵した者も少なからずいた。だが、それ以上に、未確認生命体第2号が人為的ではなかろうと、間接的であろうと、ノイズを殲滅する彼の尽力によって救われた人間は数え切れないほどに溢れている。中には、彼の手によって()()〝助けられた〟と口にする者も多く存在していた。

 多くの生命を救ってきた正義のヒーロー『仮面ライダー』の死。

 結局、その正体は永遠に謎のまま───誰に看取られることもなく、彼は孤独に果てたのだった。

 悲しみが世界を覆った。もうノイズと戦える存在は───公として───ノイズを討ち滅ぼす戦士は消えていなくなった。

 そして、仮面ライダーを偲ぶ声が相次ぐ悲しみの最中───新たな()()()が生まれた。

 

 未確認生命体第3号───そう呼称された正真正銘の()()()()

 

 緑色の皮膚に覆われた正体不明の()()。赤い(まなこ)でノイズを捉え、獣のような鉤爪と腕から伸びる触手で災害たるノイズを嬲り殺し、声ですらない雄叫びを上げる異形の化け物───。

 あろうことか、怪人(それ)はノイズを()()()()

 触れるだけで人間を単なる煤へ貶めるあの天災を───肉食動物が草食動物を狩るように───その肉を一方的に貪り喰らった。

 世界に激震が走った。底知れぬ恐怖が人々の身体を揺さぶった。

 災害を喰らう獣。

 それはただの災厄だ。

 怪人(それ)を実際に目にした者は認定特異災害たるノイズよりもそのノイズを喰らう彼の禍々しさに恐れ慄いた。次に喰われるのは、誰なのか。人々は未確認生命体第3号を恐れた。恐れるしかなかった。

 あの化け物を───誇り高く戦ったあの『仮面ライダー』と呼ぶわけにはいかない。

 今日も何処かで未確認生命体第3号の憤怒に染められた咆哮が響き渡る。

 未確認生命体第2号と入れ替わるように現れた未確認生命体第3号───彼は決して『仮面ライダー』と呼ばれることはなかった。

 

 彼の咆哮が涙すら流せぬ悲しみを叫んでいたとしても……。

 

 

 

**

 

 

 ちゅらい。

 

 仮面ライダーまぢちゅらい。

 

 いや、もう仮面ライダーとすら呼ばれていないんだけど……怪人扱いされてるけど……俺の中ではギルスは立派な仮面ライダーだから……うん……それはそれで置いといて……。

 ノイズたんはなーんでそんなに年がら年中お祭り騒ぎ(フェスティバル)なんですかね。お祭り男か。宮川○輔かよ。二年っすよ。もう二年───俺がアギトからギルスに転職(というか左遷)して、上司のエルさんが出張したと思ったら、代わりに奏ちゃんが俺にログインかまして、かれこれ二年の月日が経ちましたけど、ノイズたんはついに一度も休日をくれなかったねぇ⁉︎

 何? 俺と張り合ってんの? 実はそっちもブラック企業なん? バビロニアの労働基準法どうなってんの?

 じゃ〜あ〜仲良くしよぉ〜よぉ〜(懇願)

 なんで俺たち下っ端社畜同士が争わなきゃいけないんだよぉ〜(泣)

 俺たちで労働組合を立ち上げよう? 今こそ腐りきったこの社会に反旗を翻そう? これは自由という名のリベリオンだよ。ビバ休日。ビバ有給。夢のホワイト企業はすぐそこだぜ!

 

『g×>%′⇒*〆〒^il〆>>l$▽s!!??』

 

 おお! なんか興奮してるぞ! 真摯な労働者の思いが伝わったのか⁉︎

 

『k/□÷i><★ll°°◇$y€%o××u??!!!?』

 

 と、思ったら、なんか(キレ)てるノイズたんは血気お盛んに俺ことギルスに飛び掛かってきた。

 交渉決裂───結局、俺たちは会社の手の中で踊るしかないんだ……。

 反射的に俺の殺意マシマシの鉤爪が繰り出してしまった18禁必殺技(バイオレントパニッシュ)の餌食になってしまうノイズたん。目がチカチカする色合いのノイズたんの中身が曝け出されて───小麦粉みてぇな汁がブッシャー‼︎ エキサイティン‼︎ Foooooooo‼︎(末期キチガイテンション)

(───賢者タイム───)

 さ、さっきまでノイズたんだったものが辺り一面に転がってるよぉ……(震え声)

 なんで……どうして、俺たちは分かり合えないんだ……同じ社畜なのに、どうしてこうもすれ違うんだ……俺たちいつから道を違えちまったんだ……働くことしかできない社会なんて間違ってる!

 

「■■■■■■■■■■ッ‼︎(醜悪な労働環境に対する怒りの声)」

 

 叫んでみたら、ノイズたんがビビってあたふたしてる。なんや。ちょっとカワイイやんけ。よし、もう一回叫んでみるか。

 

「■■■■■■■ー!(訳:セコムしてますかー?)」

 

 いや、なんか違うな、これ……古いな。

 

「■■■■■■■■■■ー‼︎(訳:バイトするならタウンワーク‼︎)」

 

 いや、それなら「タウンワーク誰かな?」の方がいいな。よし、もう一回……。

 

 ───いや、うるせぇーよ!

 

 と、惚れ惚れとしたツッコミの声が頭の中に響く。

 

 ───無駄に叫ぶな、バカ! そんなんだからみんなビビっちまうんだよ!

 

 で、でも、ギルスは雄叫び上げてなんぼなんですよ……! 適度に叫んどかないとギルスじゃなくなります!(必死の弁明)

 

 ───そのせいで、一課の連中に背中から撃たれたの忘れたのか?

 

 ヴッ……(HP60/100)

 

 ───一課もプロだからな。バケモノ如きじゃ動じない。でも、とんでもなく強ェ緑色の化け物がノイズの喉笛を喰い千切って恐ろしい咆哮あげてんの見たら、そりゃ腰抜かすさ。

 

 アッ……(HP30/100)

 

 ───おまけに、目の前でノイズの肉を吐き捨てて、これ見よがしに吠えりゃ、銃のトリガーぐらい引いちまうさ。

 

 ハァン……(HP10/100)

 

 ───わかったら、もう無闇に吠えんなよ。

 

 …………でも、最後のやつ、アレは奏ちゃんが「おい! 人が倒れてる! アピールするチャンスだぞ!」って急かすから……。

 

 ───()()アピールだ! 誰が吠えろっつった⁉︎

 

 ヒッ……(HP1/100)

 

 ───とにかく、あんまり吠えんな! 返事は⁉︎

 

 ハァイ……(ヘーベルハウス風)

 

 ───反省してねぇな、翔一ッ!

 

 て・へ・ぺ・ろ☆

 

 ……みたいな感じで、俺の残念な頭には常に天羽奏が居座っている。

 天羽奏───大人気ボーカルユニット『ツヴァイウイング』の片翼にして、シンフォギアの装者である。彼女の意識───もとい魂は、色々と複雑な事情が重なって、今は社畜ライダー鰓である俺の肉体に宿り、こうして俺のくだらないボケを突っ込んでくれる程度の話し相手になってくれていた。

 もう二年もの間───片時も離れられず、互いに無視することもできず、共生するような関係を続けて二年───今じゃ、お笑い芸人としてコンビ組むかっていうぐらいには仲良くなった。

 過労に耐える俺の癒しである奏ちゃんは今日もツッコミが冴えている。そして、相変わらず俺の頭の中は残念である。しみじみ。

 鬼畜上司なエルさんとは違って、奏ちゃんは俺の身体のことめちゃくちゃ心配してくるし、今日は休んだら?とか甘いこと言ってくれるし、朝は七時に起こしてくれるし、たまに動きたいからって俺の身体使ってバイトの仕事勝手にやっちゃうし……。

 あれ? なんか俺捕まりそうだなこれ……人気JKアイドル使って何やっとんねんって……やべぇな、犯罪の臭いが俺からするな。

 まあ、それでも俺の身体なんで疲れるのは俺ですし、朝は五時に起きるのが染みついてしまっているし、ノイズたんとの激務は皆勤賞だし……エルさんの魔の手は健在だし……(震え声)

 

 二年前と大して変わってねぇ……!

 俺の身体は相変わらずボドボドだし、むしろ、ギルスの後遺症で凄まじく悪化してるし……ズタボロ精神が奏ちゃんの優しさに触れて、ギリギリ癒されて、辛うじてサバイブしているわ。

 脳内エア友が頼りって、大人として情けねぇ……!

 

 ───てか、毎度のことだけど、ノイズってさ、翔一のことスゲェ殺しに来てるよな。なんかしたのか?

 

 してない。してない。してない……よね?

 

『fa☆÷¥#<<ck÷$$^/yo%°°▽u!!??!!??』

 

 ───絶対、なんかしたな、これ。

 

「■■■■■■■■■■ーッ‼︎」

 

 ───なんで今叫んだ⁉︎

 

「■■■■……!(訳:ごめん。なんか悲しくて)」

 

 ───いや、その状態で話されてもわからないから。脳内会話で頼むって、いつも言ってるだろ。

 

「■■■(訳:おっぱい)」

 

 ───誰がおっぱいだとコラッ!

 

 伝わってんじゃん!

 

 ───なんか受信したんだよ! いいから手を休ませないでさっさと働けッ!

 

「■■■■■■■■■■■ッ⁉︎(訳:ヒェェェェェゴメンナサァイ⁉︎)」

 

 ───こちとら、あの天使サマに釘刺されてんだ。おまえを甘やかすなって!

 

「■■■■■■■■■■■■ーッ⁉︎(悲しみの咆哮)」

 

 ───しっかりと戦ってもらわなきゃ、あの天使サマに顔向け出来ねぇからな!

 

 ……と、いった感じで。

 俺の癒しである奏ちゃんは鬼畜天使(エルさん)の毒牙にかかり、俺がサボらぬようにキッチリと教育されていた。

 時は遡って二年───ライブ会場の一件。

 俺は死んだらしい。

 心臓が止まって、脈が絶たれ、呼吸を終えた完全なる死を迎えた。状況からして失血が主な死因だろう。他にもノイズたんにチクチクされて内臓が大変ヒドいことになっていたと思うし、元祖クライマックスフォームで無茶して衰弱してたし、それ以前に、未来ちゃんと女の子を庇ってぶっ刺された時点で生存確率は極めて低かった。死んで納得。むしろ、生きていた方がおかしい話だった。

 けれど、俺は生き残ってしまった。

 天羽奏が俺を生かした。

 ()()を使ったらしい。

 どうやら、エルさんが奏ちゃんを(そそのか)して、絶唱すれば俺を助けられると()()()()()()()()を言って、命を燃やす歌を───血の流れた絶唱を天羽奏に唄わせた。俺のシンフォギア知識なんてアテにならない些末なものだけど、絶唱に人を癒す効果はなかったはずだ。ましてや死人を蘇らせる力なんて、それこそアギト(こっち)側の領分だ。

 そう、()()()ならば───。

 蘇生も不可能ではない。

 絶唱はあくまで莫大なエネルギーを生み出すための手段だった。天羽奏が纏う神槍(ガングニール)に蓄積された潜在的な力を物質的なエネルギーへ還元するために取った方法が絶唱であった。絶唱によって放出されたシンフォギアの絶大なエネルギーを()()することにより、死に絶えた俺を地獄の底から蘇らせることに成功したのだ。

 蘇らせたのは絶唱ではなく───アギトの力。

 対価は絶唱による負荷───天羽奏の命。

 オルタリングが彼女の唄を()()()()らしい。天羽奏の命は歌となり、その歌を喰らうことで俺は生き長らえた。つまり、俺は奏ちゃんの命を奪って、生き延びたというわけで───それはとても穏やかな話じゃない。

 奏ちゃんはそれで死んでしまうのだから───絶唱とはそういうものだ。

 例に漏れず、絶唱した奏ちゃんはその場で意識を失った。絶唱の代償(バックファイア)。適合係数が低い奏ちゃんならば、絶唱とは命を落とす行為に他ならない。天羽奏は死んだ。彼女は俺の代わりに死んだ───と、なるはずが、そこでやっぱり「俺がルールだ!」でお馴染み大天使エルさんたちが頑張ってくれたらしい。

 今まさに朽ちようとしていた奏ちゃんの肉体に()()した。

 エルさんたちは死の淵に立たされた奏ちゃんの魂をしっかり引き留めて、絶唱の負荷によって損傷した肉体を大天使パワー(なんかバカっぽい)で治癒し始めたという。それで奏ちゃんは一命を取り留めた。

 

 ───絶唱(ウタ)による負荷など、我々の力で容易く癒せるわ。

 

 ───問題は、魂を注ぐ器に傷が入ったことである。これでは意識が覚醒できぬ。

 

 ───しばしの時を求める。何、完璧に治してみせよう。我々は神の化身、超越生命体(エルロード)であるのだから。

 

 と、自信ありげなエルさんか目に浮かぶ。

 なんつーか、俺としては複雑なんだけれど……奏ちゃんを巻き込んだことは誠に遺憾なんだけど……でも、やっぱり、あの鬼畜天使たちには感謝しておかなければならないだろう。

 エルさんが俺を───アギトを生かすことを第一の目的としていたのなら、絶唱によって命果てる奏ちゃんをわざわざ救わなくても良かったはずだ。奏ちゃんを助けなくても、絶唱をたらふく吸収した俺は生き延びていたはすだから、エルさんに支障はなかったはずだ。それでも助けてくれた。俺が守りたかったものを一緒に守ってくれた。それは少し嬉しい。大天使さんと心が通じ合った気がした。

 ただ、一つ不満があるとすれば───。

 奏ちゃんの肉体の治癒のため、彼女に取り憑いたのはいい。

 目覚めた俺がアギトじゃなくて、何故かギルスになっているのも、この際はいい。

 絶唱を使って瀕死の状態だった奏ちゃんを完全に()()するのは時間が掛かって、かれこれ二年待たされているのもいい。

 でも、だからと言って───。

 修復中、奏ちゃんの魂が()()だからと言って、俺の肉体にブチ込むのはどうかと思いますよ?

 いやいや、奏ちゃんに聞いた時はビックリしたよ。

 天使様に邪魔って言われて追い出されたって聞いて「え? 家主が追い出されんの?」って声出して同情しちゃったよ。しかも、理由が「邪魔だから」って……身体の持ち主なのに……天使の業界って、なんでそんなに器小さいん? どうなってんの天界(あっち)の常識。

 つーか、なんでとりあえず俺の肉体に入れちゃうの? 俺の身体はフリースペースなの? 無料Wi-Fiでも飛んでんの? しかも、仮にも花も恥じらう十代乙女をだ……こんな毎日が煩悩P.A.R.T.Y.のおっさんの頭の中にブチ込むかい普通? どんな酷い仕打ちだよ。

 

 ───いや〜、あん時はビビッたよな〜。

 

 うんうん。奏ちゃんは怒っていいよ……エルさんたちって、ああ見えて、全員もれなく天然ボケ発症してるから。

 

 ───天使って本当にいたんだな!

 

 そこかよ。純粋か。

 

 ───あんまり神サマとか信じないタチだったけど、あんな奇蹟見せられちまったら、もう信仰するしかないよな!

 

 ンン〜ッ⁉︎ やめときな〜⁉︎ あの天使たち、ロクでもないんだから〜!(OL風)

 

 ───カラダを追い出された時に「あの(バカ)を甘やかすのはならん。大きな災いを生む」って言われたし、お仕事引き継いじゃったし、なんか説明書(トリセツ)も貰ったし。

 

 なに作っとんの、あの天使。西○カナかよ。

 

 ───いち、働かせること。に、あんまり寝かせないこと。さん、休ませないこと。……以上。

 

 少なッ⁉︎ なにその三箇条。社畜三箇条? それ取り扱い説明書で合ってんの?社畜の取り壊し説明書じゃない? 一応、俺も一点物だから返品受け付けてないんだけど。割れ物注意なんだけど。 優しく正しく使ってください!(必死の人間アピール)

 

 ───というワケだから、働けぇ〜働けぇ〜!

 

「■■■■■■■■■■■■⁉︎(訳:なんでそんなに楽しそうなの⁉︎)」

 

 ……つまり、マイホープ奏ちゃんはエルさんの息がかかった俺の監視役だったわけなんです。まあ、エルさんなんかと比べりゃ天と地の差があるほどに優しいし、可愛いし、チョロいから良いんだけどさ……。

 まあ、なんというか、それがなんか歯痒くて、悪い気がして、結局はエルさんの思惑通りの働き尽くしの地獄のような二年だったわ(遠い目)

 社畜体質が……抜けません……(スーパー懺悔タイム)

 はぁ……エルさんたち、出張先の奏ちゃんの身体で元気にしてるかな。なんか良からぬこと考えてないかな。怖ぇなぁ。嫌な予感しかしないなぁ。

 まあ、ぼくはげんきじゃありませんけど。

 しにそうです。いつもどーりにかろうでしにそうです。

 

 ───よし、これで最後の一匹だな。

 

 ノイズたんの腕を引きちぎって、お腹に膝を叩き込んで───絶命。

 さーて、ランチタイムだ!(ヤケクソ)

 ギルスになってからというもの、なぜかノイズたんをムシャムシャしなきゃいけない身体になってしまった……(震え声)

 理由? いや、知らんけど……なんで自分がギルスになったのかすら分からないのに……ギルスになった途端、ノイズたんを捕食しなきゃならない理由なんて知るわけないでしょう……俺は基本、お馬鹿さんなんだから!(開き直り)

 うへぇ……ノイズたんって、どうして、こんなにも食欲を唆らせない肉付きしてんの? これって本当に無添加? オーガニックなの?

 でも、食べちゃう。カラダが勝手に食べちゃう。もうこればっかりはギルスの本能なんじゃない?

 まあ、俺の残念な脳味噌で考えて導き出した理由としては、エネルギー補給が一番有力だね、今のところ。

 ギルスって、アギトと違って、エネルギーを制御する供給及び循環器官(ワイズマン・モノリス)が無いせいで、燃費が悪いことで定評だから、ノイズたんから摂取でもしないとくたばるんじゃない? 三、四匹ぐらい丸呑みしたら満腹になるし……まあ、俺もなんか()()()()し……口はヨダレで一杯だし……ノイズたんをムシャムシャするのに抵抗はもう無いよ。うん。ナイナイ。

 

 ん? ノイズたんの味? 砂食ってるみたいよ、うん。

 

 でも、食べちゃう。お腹減ってるからね。それにノイズたん食ってないと人間襲うかもしれないしね。俺もよくわかんないのよ、この(ギルス)。戦ってる時は無我の境地(笑)が暴走して、たまに大変なことになるし、気抜いたらノイズたん以外も攻撃しようとしちゃうし、後遺症は思った以上に地獄だし、防御力に関しては紙だし……。

 アギトに戻りてぇぇぇぇ!(切実)

 いや、ギルス好きなんだけどさ、でも、なりたくない仮面ライダーランキング上位でしょ、こいつ。俺もなりたくないもん。今もそう思って止まないよ。

 はぁ……エルペディアさんは出張でいないし、俺の原作知識は当てはまらないし、奏ちゃんが知ってるわけないし、何もわからんし、怖いし、まじ怖いし、ノイズたん食べなかったら無意識に暴れちゃうし……なにそれ怖っ。

 ああ、不味(うまっ)不味(うまっ)不味(うまっ)……(自己暗示)

 多々食え……多々食え……じゃないと、いつもの日常生活に戻れないぞ……。

 

 ───マズいぞ、翔一!

 

 不味い? 何言ってんの、美味しいに決まってるだろ、ノイズたんは。こーんなにブヨブヨしてギチョギチョして中身スッカスカなのに不味いわけないじゃーん(渋い顔)

 

 ───いや、違うって! マズいんだって!

 

 ンーモゥー‼︎ 人が頑張ってノイズたんの無味無臭を誤魔化そうとしてるのに、どうして水を差しちゃうのさ⁉︎ 鬼か、奏ちゃんは? 鍛えてんの? 音撃できんの? 宗派どこ⁉︎

 

 ───いやいや、だから、ほら、あそこ! ロードノイズがスタンバってるぞ! 若干なんか顔引きつってるけど……ちょっと引いてるけど……こっちメッチャ見てるって!

 

 うわっ、マジじゃん……ドン引きしてるやん。俺のアマゾンズに仲間入りできそうなバイオレントな食事(ランチタイム)を見てドン引きしてるよ、あのアンノウン(もど)き。

 

 ───どうする? 殺るか? 殺っちまうか?(なぜか楽しそう)

 

「■■■■■■■■■■ッ‼︎(訳:ナニミトンノジャワレェ‼︎)」

 

 ───見せもんじゃねぇぞ!(テンション↑↑)

 

「■■■■■■■■■■■■ッ‼︎(訳:ドツキマワシタラァァァ‼︎)」

 

 ───いけいけぇ〜!(すんごい楽しそう)

 

 あ、丁度いい感じのトラックが……。

 

 ───上に乗ったな、あいつ。

 

 運転手さん、気付いてないっぽいね。

 

 ───出発したな。

 

 ノイズを乗せて。

 

 ───……………………。

 

「………………」

 

 ───お、追えぇぇぇ‼︎ 翔一、ダッシュ! ダッシュダッシュ!

 

「■■■■■■■■■■■■■■ッ‼︎(訳:止まってええええええ!)」

 

 ───バカ⁉︎ 雄叫び上げんな! 運転手がお前に気付いて、ビビった挙句にスピード上げちまっただろ⁉︎

 

 ンン〜⁉︎ ぎ、ギルスレイダーたん! 俺の二代目バイク、ギルスレイダーたんを呼ぼう!

 

 ───ちょっと遠いぞ!

 

 なんで⁉︎

 

 ───翔一が好き勝手に暴れるからだろ!

 

 だって、ここ全然人の気配しないんだもーん!(現在地は人里離れた峠)

 

 ───いいから今は走れよ、全力で!

 

「■■■■■■■■■ーッ‼︎(訳: オデノカラダハボドボドダ‼︎)」

 

 

 

 

***

 

 

 

 化け物がいた。

 一匹の飢えた化け物が───。

 風を切り、咆哮を枯らして、獲物を狩り尽くす獣がそこにはいた。

 悪魔の顎が肉を砕き、残虐な爪が臓物を引きずり出す。

 蠢く触手が()と認識された雑音を拘束し、その心臓を迸らせるが如く死神の大鎌が深々と突き刺さる。怨嗟に満ちた声が轟き、人々の恐怖を駆り立てた。

 ギルス───仮面ライダーとすら呼ばれぬ異端の怪物。

 認定特異災害であるノイズを喰らう知性なき猛獣。

 それは今日も何処かで喰らっている。

 ノイズを殺して、生きている。

 獣のように───命を抱いていた。

 

(このノイズ美味しくないわッ! シェフを呼んで頂戴! シェフ〜!)

 

 ───どれも一緒だろ。……今度、塩でもかけてみるか?

 

(塩の味がしそう(小並感))

 

 心の中に少女を背負って───生きていた。




オリ主がノイズムシャムシャくんって言われてて草(他人事)

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