仮面ライダーだけど、俺は死ぬかもしれない。   作:下半身のセイバー(サイズ:アゾット剣)

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♩.俺は過労で死ぬかもしれない。

 

 ちゅらい。

 

 仮面ライダーまじちゅらい。

 

 何が辛いっていうと勤務時間が凄くちゅらい。いや、ノイズたん単体も極めて面倒なんだけど、やっぱり総合してみると半日ぐらい働いてたりするし、移動時間を考えると死にたくなる。

 近場で現れてくれると楽なんだけど、普通に地方とか国単位で変わられるとスライダーモード不可避なんだよ。仮面ライダーに出張させんな。近場で来いや空気読め。

 

 てか、なんでノイズたん殲滅した後に人間相手に追いかけっこしなきゃダメなの? 俺のこと好きなの? ときめきクライシス? はいはい絶版な。

 ほんと勘弁して。まだ全然土地勘ないんです。都内全域使ってフルマラソンとかやめて。箱根駅伝かよ。

 まあ、こっちバイクだけど。しかもマシントルネイダーだけど。でもさ、キミらバイクどころかヘリ使うじゃん。やめない? 夜中とか寝てる人いっぱい居んのよ? 苦情きても俺のせいにしないでねマジで。

 

『+々a▽:⇔☆$g#<々:i♪☆^t=5o3¥……』

 

 ああ〜ちゅらい。

 なんで俺、戦ってんの? 給料でないのに。仮面ライダーだから? 響鬼さん観てから言えよ。シフト制だぞあっち。……はいはい滑舌勢と地獄兄弟はシャラップ。BORDとZECTはブラック会社な。

 

『◎y×<♭1ou:々r〆▲→d☆i*々|<e°⁉︎⁇』

 

 はいはい。今日も今日とてノイズたんは元気で大量ですね。やかましくて元気でウジャウジャ大量とか、なんか嫌なもんしか浮かばない。虫とか大概そうじゃん。蛾とかゴキとか……ねじれコンニャクはお呼びじゃない。

 

 嗚呼、帰りたい。チョー帰りたい。でも、帰ったらノイズたん炭素にしちゃうでしょ? どこのオルフェノクだよ。触れるだけとか尚さら面倒だわ。

 

 あぁ〜帰りたァァい! 休みたい! 家に帰って六時間くらいちゃんと睡眠したい! 別に連休とかそこまで大きな休暇は所望しないから、単に平均的な睡眠時間が───

 

『¥a$€%°g#*〆i×t+5>8*→o‼︎⁈』

 

「…………ッ!」

 

 飛びかかってきたノイズをカウンターキックで弾き返した。ノイズはそのままアスファルトと激突後、炭となって消えていく。南無三。

 ノイズは人間のような限りある命を燃やして生きているわけではない。それを証拠にノイズの死は何一つとして残さぬ消滅だ。あれは生きているというより、ただ存在しているだけ。虚無に近いものだと感じる。

 

 てか、ノイズってなんだっけ? 生物兵器? 絶滅させれんの? 今のところ、絶滅の可能性ゼロなんですけど。繁殖してんじゃねーのかアレ。

 つまり、俺の戦いは未来永劫続くってわけだな。なにそれ泣けりゅ。

 

「はぁ」

 

 思わず溜め息ポロリ。

 いかんいかん。今の俺は仮面ライダーアギト。情けない声を出すのは人間の時だけにするって決めたでしょ。

 前にも戦闘後に「ふぅ〜疲れたぁー。週末には温泉にでも行こっかな」とか間抜けな声出したら木陰からそっと覗いていた小さな子供に聞かれたでしょ。ナズェミテルンディス⁉︎

 

 翌朝のゴシップ雑誌にてかでかと

『未確認生命体2号、やっぱり疲れていた!〜週末はバイクで温泉旅行〜』

 とか書かれてた時は恥ずかしさで海老反ったわ。友人の響ちゃんがその記事を楽しそうに見せてきて反射的に雑誌をDIE SET DOWN‼︎ しそうになったのはまだ新しい記憶。

 

 気を引き締めねば、また同じことを繰り返すぞ。

 

「はぁぁぁ……ッ‼︎」

 

 手足に力を溜め込むように気合いを入れ、先ほどの溜め息を誤魔化してみる。無論、周囲に人の気配はないとはいえ、週七のペースで駆け出されている自分の第六感レーダーは信用できない。……てか、エブリデイ出勤かよ。ええ、仮面ライダーに休みはありましぇん。

 

「はぁアッ‼︎」

 

 蓄積したパワーを解放して、跳躍。

 ノイズたちの頭上を軽々と越え、密集する群れの背後へ着地。すぐさま構えをとり、ノイズの群れへと攻撃をしかける。

 

 グランドフォームの脚力舐めんな!

 

 ノイズたんもやる気元気いわきらしく不愉快な雑音を咆哮に襲いかかる。

 それをカウンターで迎撃する。

 無我の境地(笑)で戦う俺はあまり下手に考えず、反射に身を任せて丁寧に、尚且つ確実に一匹、また一匹と殲滅していく。

 

 だって仕方ない。ノイズたんは一体であれ、人間にとっては如何なる動植物よりも危険な存在だ。ノイズと偶然出会ってしまった不幸には必ずや死を確信して自身の命を諦めてしまうだろう。

 だから一匹も逃さない。幸いノイズはアギトに強い反応を示し、無力な人間より、遥か高みの存在であるアギトへ攻撃を優先、いや、アギト以外を見なくなる(・・・・・・・・・・・)。あらゆるものを視界から外し、アギトのみを消滅対象に変える。

 

 これが何を意味するのか俺にはまだ理解できないが、ただ一つ言えることがある。

 

 やっぱり、面倒くせえええええええッ‼︎ ちまちま一体ずつとかダルいよおおおおおお‼︎ 誰か虫捕り棒持ってきてええええええ‼︎ ───とか、思ってる隙にライダーキィィィぃぃッック‼︎‼︎(相手はしぬ)

 

 こうして、俺の一日は戦いで終わっていくのだ。いや、終わらないで(懇願)

 

 

 

 ***

 

 

 

「あれぇ……今日もお休みなんですか?」

 

「ごめんね響ちゃん。ちょっと人助けしてくるって言って出て行っちゃったの」

 

 お好み焼き屋『ふらわー』にて、立花響は頬を膨らませながら机に突っ伏した。前以(まえもっ)てこの時間には居ると確認を取ったにもかかわらず、この仕打ちとは如何(いかが)なものか。

 しかし、彼女の親友はまるで気にしていない素振りのまま、ほんのり温かいおしぼりで手を拭いていた。

 

「響、お行儀悪いよ」

 

「未来だって拗ねてんじゃん」

 

 向かいの席に座る小日向未来は予想外の言葉に目を丸くしたが、すぐに平静を装いそっぽを向いた。

 そういうところを自分は指摘しているのだが、今それを言ったところで面倒なことになるだけだ。

 

 特に今、この不快な気持ちに加えて空腹が響を板挟みしている状態で一度怒ると鬼より怖い未来と些細な喧嘩でもしてみるものなら、十秒足らずでノックダウンする自信がある。

 そんなことを考えていたら余計に腹立たしく感じた。彼はいつもそうだ。状況を搔き乱すだけ搔き乱して、後のことは知らぬ存ぜぬの放置を決め込む。

 

 まさに、無責任な男なのだ。

 

「最近、なんだか付き合い悪いね」

 

「そうだね。……今度会ったらお仕置きだね」

 

 未来のガチトーンに内心ビクッと震えたが、よくよく考えれば妥当である。直接的な約束はしていないとはいえ、嘘をついたのだ。

 それにお店を投げ出して、人助けというお節介を焼く彼に責任は大いにある。

 

「ちなみに、いつも人助けというお節介のせいで、放ったらかしにされてる私がいるんだけど、どう思う?」

 

「アッハイ。すいません以後気をつけます……」

 

 こっちに飛び火した。それに関しては頭を下げるしかない響であった。

 

 今日の未来は一段と機嫌が悪い。今朝から鼻唄を歌うほど楽しみにしていたことを思うと機嫌も斜めどころか九十度まで傾くというものだ。

 だが、その気持ちは響も同じだ。

 楽しみのあまり昼食を普段の半分までに抑えたのに、こんな複雑な気持ちではお好み焼きを満足に食べれそうにない。

 

「まったく、罪な男だね……」

 

 ふらわーの店主ことおばちゃんは苦笑いながらいつもより1.5増しのお好み焼きを焼いてやるのであった。

 そうでもしなければ、可愛らしい少女二人を放置した愚かなバイトに泣きつかれるかもしれないからだ。

 

 

 

 ***

 

 

 そもそもの話、俺はこの世界の人間ではない。

 俗に言う転生者ってやつだろう。ただし、自分がどうして死んだのか、どうしてここにいるのか全くわからない。

 生前、何をし、何を為し、何として生きたのか。

 親も、友人も、恋人も、自身の名前すら分からない。だが、どこかで生きた確信がこの魂に刻まれている。

 記憶に薄っすらと残っているのは精々ちょいちょい覚えている映画やアニメなどの視覚的記憶に残りやすい映像物。

 

 名前すら失った、無駄な思考力を持った男がこの俺である。

 

 気づけば、波に叩かれながら浜辺に打ち上げられ、この成人(?)した肉体とバイクが一台と三体の……いや、これに関しての説明は今はしないでおこう。なんか面倒くさい。

 つーか持ち物バイクってどうよ。どんだけライダーとして意識高ぇんだよ。売って金にしろってか? するかバーカ。

 

 でも、免許ないよ‼︎ 取って免許証宝物という名の遺品にするっきゃねぇな!(最優先事項)

 

 と、こんなノリで免許を取った俺。記憶喪失でも免許は取れるんですよ氷川さん!

 それから色々と警察やらお役所にお世話になりながら、紛いなりに身分が証明できるようになった記憶喪失(笑)は現在バイトに明け暮れている。

 社会的地位は最底辺である。

 肉体的疲労は限界値である。

 でも、幸せならおっけーです! ……つまりオッケーじゃねぇな。幸せ感0だもんな今。

 

 なけなしの前世の記憶、役に立たねぇなオイ。余計なものばかり頭に残して、大事なものはすっぽ抜けている。

 自分のことすら分からない人間に、何ができるというのだ。何が守れるというのだ。仮面ライダーの名が泣くぞ。本郷猛に殴られても文句言えないぞ。

 

 でも、まあ、アニメとか特撮とか色々そっちの記憶はあるので九割方オタクであったに違いない。

 自分が転生したことに驚きを持ちつつ、普通に対応できているのも、この無駄な記憶から得た知識と順応性のおかげであろう。

 

 問題はこの世界が『戦姫絶唱シンフォギア』という萌えより燃えに特化したアニメーション作品であり、なぜか俺が仮面ライダーの力を持っているというわけで……。

 当初は戸惑いつつも原作キャラに会えるのかと興奮しながら醜悪な勤務時間を耐え続けた。仮面ライダーとして戦えば、いつか彼女たちの隣に立てるのではないかと淡い希望も抱いたものだ。

 

 そんな時、偶然にも一人の原作キャラと出会ってしまい、希望は儚く打ち砕かれた。総てを悟ってしまったのだ。

 

 まあ、原作前ダヨネ(白目)

 

 ……え、ノイズ? 装者いない?

 

 戦うしかナイヨネー(涙目)

 

 何が一番嫌かというと、ノイズがこの世に出現すると耳鳴りのような、金切り音というか、ニュータイプの某ピキーンみたく感知能力があるということだ。

 しかも何気に優秀。多分、ノイズ出現前から感知しているのかもしれない。予知能力と言っていいだろう。

 

 つまり、シンフォギア装者が来る前にノイズを片付けろと? ()()に及んで仕事スピードも求めるのね。エエ、ヤッテヤリマショウ。子供ヲ守ルノハ大人ノ仕事。

 

 あとは我が相棒マシントルネイダーたんでひとっ走り付き合えよ! 的な感じで現場入り。わいわいノイズたんと戯れて、疲れて帰る。……疲れて帰る。

 給料? 貰ってるかよンなもん。

 仮面ライダーは孤独なんだよ!(必死)

 

 ちなみに、住み込みでバイトしているのでなんとか生活はできてまふ。とあるお好み焼き屋さんの空室を借りてます。

 ええ。生活できてるんです辛うじて。知ってるかい? 人間って睡眠時間二時間でも生きていけるんだぜ? ええ。俺もびっくりだよ。ぜってぇ俺ん中のオルタリングが生命維持頑張ってるもん。オルタリングが先に過労死したって俺は驚かないよ。

 

 ああ、辛い。

 なんで俺を仮面ライダーにしたのさ神様。

 

 ああ、泣きたい。

 しかも、なんでアギトよ。いいけどさ。好きだけどさ。でも、こんなんじゃ魂目覚められねぇよ。

 

 ああ、休みたい。

 マジで助けて神様。じゃねぇと自分、神様殴っちゃうぞ。ウンメイノーすっぞごら。

 

『『×a〆g:*☆it〒o^-△m→u^s+○*t÷#+d$ie¥⁈⁉︎』』

 

 …………。

 

 いいから助けろよおおおおおおおお‼︎(魂の叫び)

 てか、ノイズたんは戦ってる最中に増えんなああああああ馬鹿ああああああ‼︎(号泣)

 

 オデノカラダハボドボドダ‼︎‼︎

 




※ノイズ語は作者がテキトーに文字記号打ちまくってるだけですが、その後にちゃんとした言語ぶち込んでるので解読は可能DEATH。割と簡単なので解読してみまSHOW。
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