仮面ライダーだけど、俺は死ぬかもしれない。 作:下半身のセイバー(サイズ:アゾット剣)
むかしむかし、あるところに、世界を信じられなくなった捻くれたガキがいました。
嘘ばかりつく大人が嫌いで、現実を見ようとしない上っ面だけの綺麗事が嫌いで、奪うだけの世界が大嫌いでした。
嫌いで、嫌いで、大ッ嫌いで───苦しかった。
そんなガキの目の前に、天使と喧嘩してる泣き虫のバッタが現れました。
うん。泣き虫。変なバケモノとやりあった後は必ず泣いてやがった。なんで泣いてんだって聞いても、悲しいから泣いてんだって、泣きながら笑っていやがった。
その顔は……とても見てられなかった。
ごめんね、ごめんねって、泣きながら謝ってた。
今になって、あれが何だったのか……わかる気がする。
そいつはいっつもボロボロになってるくせに、平気な顔してヘラヘラ笑って、バカみたいにふざけて、人の心配ばかりしてやがるとんでもないお人好しだったんだ。
一度きりの人生をズルして二回も経験しようとしてるから何とか言って、せめて二度目は誰かのためにって───気難しいことを呟いて、泣きそうな顔して、辛そうに拳を握ってた。
殴るのは好きじゃないらしい。
でも、やらなきゃダメなんだって言ってた。
気づいたら、この世を壊したいほどに恨んでいたガキは傷ついてばかりいるバッタの後を追いかけるようになっていました。
興味とか好奇心とかじゃなくて……なんだろう。きっと、一緒にいたいって思ったから。ただ、それだけだったんだろうな。
ガキは色んなことをバッタから教わりました。バッタはえらく博識だった。聞いてて飽きないぐらいに話の種は尽きなかった。難しい話からくだらない洒落まで、古今東西の語り草を聞いてるうちに、いつのまにか、ガキは笑ってた。腹抱えて涙目になりながら笑ってた。もう笑えないと思ってたのに、簡単に笑えちまった。
ガキは数え切れないぐらい沢山のものを貰いました。笑顔や希望。世界の美しさ。人間の素晴らしさ。どれも反吐が出るほどの綺麗事ばっかりだったのに、あいつの語る綺麗事だけは嫌いにはなれなかった。
だって、世界は優しくないってことをあいつは誰よりも知っていたから───それでも頑張っていたから。
短い間だった。でも、あいつと一緒に過ごした時間は何よりも幸福な日常だった。銃弾が飛び交う物騒な場所のど真ん中も、ガキにとっちゃ、あのヘンテコなバッタがいる場所なら何処だろうと帰る場所みたいなもので、あいつの隣なら世界を少しだけ好きになれた気がしたんだ。
ある日、泣き虫のバッタが夢を語ってくれました。
かなしい夢でした。かなしくて、やさしくて、どうしても報われない夢でした。
だから、夢がなかったガキはバッタのために夢を持ちました。バッタが褒めてくれた拙い歌を。幼かったガキが大好きだった母の歌を。見様見真似で声にしたちっぽけな歌を。
祈りの歌を。
いつか、あいつに届けてあげたいなって───もう叶えられなくなっちまったけど。
……聴かせてやりたいやつがいなくなっちまった。
星が降ったんだ。夜空いっぱいに。星のシャワーみたいに。
バッタはお別れの言葉を告げました。
ありがとうって。
終わらせるには惜しい世界なんだと、教えてくれたのはキミなんだって。
だから、今度は俺がおてんとさまに教えてあげないとね───そう言って、笑っていました。
はなれたくなくて、ずっとそばにいてほしくて、ガキは泣いて喚いて散々駄々を捏ねて、バッタの手をでたらめに握りました。
そしたら、あいつはふざけた呪いのような言葉を一つだけ残して、ガキの手を優しく握り返してから、振り返りもせずに星降る空へ向かって跳んで───いや、
怒れる天の終末に逆らうべく。
陽よりも深い赤橙の翼を広げて。
龍のように気高く───。
だから、そいつはバッタじゃなくて、きっとドラゴンだったんだって話。
つまらない? ……私もそう思う。
でも、何の希望も持てなかった小さな手を、優しく握り締めてくれたあの手の
私は今でも覚えている。
会いたいのに、もう会えないね。
会いたいよ、私の
***
『───番組の途中ですが、ここで緊急速報です。○○区にて、認定特異災害警報が発令されました。周辺にお住まいの方は所定のシェルターへの避難を急いでください。繰り返します。○○区にて、認定特異災害警報が発令しております。ノイズです。○○区の住民の方は周りの人にも避難を呼びかけながら、シェルターまで逃げてください。繰り返します───』
「あら、またノイズ? 最近は本当に多いわね」
午後の夕暮れ時。
財布に優しい良心的な値段と濃厚な風味が多くの食通を唸らせ、その舌を虜にしてきた名店『ふらわー』の厨房から顔を覗かせたおばちゃん(本名不詳)は苦笑まじりに呟いた。
古めかしいラジオが垂れ流しにする陰鬱な放送は、この国に住う者なら誰もがウンザリするほど聞き飽きた内容だ。だが、命に大きく関わってしまう情報であるために無視もできない。ストレスばかりが溜まる内容だった。
カウンター席で静かに座る小日向未来は透明なグラスを満たす冷水を手にしたまま、石のように固まり、店内に妙な緊張感を抱かせるアナウンスに耳を傾けていた。無意識に唇を噛み、俯きがちの視線は震える白い手に注がれている。脳裏に焼き付いたあの光景───ノイズに囲まれたあの青年の虚しい笑顔がフラッシュバックして、心臓をバクバクと激しくさせる。
温かな胸に抱き寄せられて、真っ赤に染まった。
大好きな人の胸の中で、生命が終わる瞬間を肌で感じた。
今でも思い出す。二年前───あの日、逃げ遅れた自分を庇って、血の池に浸るように崩れ落ちた青年の姿を。
忘れられなかった。口から絶えず溢れる血を、死を予期した苦痛に歪んだ顔を、それでも優しかったあの声を───。
「…………」
しばらく店内には堅苦しい沈黙が続き、ラジオの声だけが粛々と流れていたが「なんだ遠いじゃないか」と豚玉を突く他の客が安堵したことによって緊張の糸がほぐれ、気怠げな午後の空気が『ふらわー』に戻ってきた。
未来も知らずにホッと胸を撫で下ろすが、今から数十分前に急用ができたとバツの悪そうな顔をして店を飛び出していった友人は果たして無事なのだろうかと心配になった。鞄から携帯電話を取り出して、慣れた手つきで通話画面まで進んだが、邪魔になるだろうと考え直した末に電源を落とした。
立花響はいま何処で何をしているのだろうか。
考えても無駄だった。きっといつもの人助けには違いないのだろうから───。
最近の響は何か隠し事をしているような素振りがある。誰からか着信を受けると、熱い衝動に駆られたように力強い眼差しで弾丸のように飛び出していく。そうして、しばらくしてから、疲労を浮かべた表情で帰宅する。後はひたすらぐったりだ。そのまま泥のように眠る日もある。そんなルーティンワークを立花響はここ一ヶ月間繰り返していた。
未来は一度、何をそんなに躍起になっているんだと響に直接問い質してみたことがあったが、内容も理由も言えないらしい。危ないことなのかと訊けば、響は申し訳なさそうに言葉を濁して目を泳がせた。嘘が下手な彼女の何よりも正直な答えだった。
結局のところ、未来は無事を祈って見送ることしかできなかった。
その背中を───二人の背中を。
一人で走り出して、一人で疲れて帰ってくる。元気など底をついているのに大丈夫だと笑いながら、重たい目蓋をこじ開けて、日常に帰ろうとしている。───そんな響の姿は、あの青年の背中と悲しいほどに酷似していた。
『ただいま入った情報によりますと、未確認生命体第三号がノイズと交戦中とのことです。第三号です。○○区にいる方は今すぐに逃げて下さい。避難勧告は出ております』
「3号も大変ねぇ。毎回毎回ノイズと戦ってるじゃない。ウチのサボリ魔も少しは見習って欲しいぐらいだわ」
そんな冗談を口にしながら、おばちゃんはカウンター席の上に乱雑に畳まれた手作りのエプロンを一瞥して、物憂げに小さく笑った。
さて、ウチのお節介なアルバイトはどこで何をがんばっているのやら───旧式ラジオのスピーカーから聞こえるアナウンサーの焦るような声音におばちゃんは複雑な顔色を浮かべて首を横に振った。
あれから四年も経とうしているが、彼はまだ探しているのだろうか───。
「私、わからないんです」
絞るようなか細い声だった。
「翔一さんが、どうして、いつもどこかへ走っていってしまうのか……私、何も知らないんです」
そう小さく呟いた未来の寂しそうな視線は隣の放埒に置かれたエプロンに移っていた。一つだけ溜め息を零した未来は使い古されたエプロンを優しく抱き締めるように手にとった。すっかり
未来は津上翔一が胡座をかきながら裁縫をしている姿を幾度となく覗き見したことがある。
好きだった。薄れた思い出を懐かしむように頬を緩ませて作業に没頭する彼の横顔は優しくて、穏やかな目をしていて、未来はその顔がどうしようもなく好きだった。
未来と響が彼と出会ってまだ間もない頃、常連のお客さんから譲ってもらったという古いミシンを使って翔一が衣服を自作していた日がある。フリーマーケットに出品するのだと言って、無駄に可愛いワンピースを何枚か仕立てて、器用な指先で華や鳥の刺繍を装飾していた。かなり良い出来栄えだったのに、割に合わない値段のせいで懐に入った儲けはその日のお鍋で消えてしまった。
でも、当の本人は随分と満足そうにしていたので未来も響も何も言わなかった。代わりに響が自分たちの服も作って欲しいと懇願したら、女子中学生の採寸するとか犯罪の臭いがすごいからと渋い顔をされて拒否された。
それでも引き下がらない強気な響に根負けした翔一は二人に裁縫を一から教えるということで手打ちとなった。そうして、簡単な刺繍を縫ったり、小物入れを作ったりして、着々と上達していった二人がまず最初に作ったものがこのエプロンだった。
誕生日を持たない津上翔一に、何の特別でもない日に、初めてプレゼントしたものだった。
「初めての贈り物にすごく喜んでくれて、翔一さんいつもこのエプロンを着けてくれて、大切にしてくれて、本当にわかりやすい人で……」
それなのに───
「なにも教えてくれないんです。ずっと昔から、自分のことは何も教えてくれない。
涙ぐんだ声が小さな唇からぽつぽつと洩れていた。
「知らないんです、翔一さんのことを。ずっと一緒にいるのに、大事なところは何も知らないままなんです」
雨色が匂う曇天のように暗い表情を浮かべた未来はエプロンを丁寧に折りたたんで、そっと元の位置に戻した。
津上翔一と出会って、三年もの月日が経過して───小日向未来は何も知らないままだった。津上翔一という青年の優しさ以外は何一つとして知ることなく、彼の帰りをひたすら待ち続けている。
ずっと昔からそうだったように───未来は今でも待っていた。
「……翔一くんを拾った時はね、雨の日だったわ」
おばちゃんは顎に手を当てて唐突に話し始めた。
「傘もささないで、びしょ濡れになりながら、ずーっと雨空をぽかんと仰いでいる変な男の子がいたのよ」
その顔は懐かしそうで───少しだけ寂しそうだった。
「殴るような大雨だったの。だから、最初は気付いてあげられなかったんだけど……彼ね、ずっと泣いていたのよ」
「翔一さんが?」
「ええ。どうかしたのって聞いたら、ゆっくりと時間をかけて、弱々しい笑顔を作って───〝
背筋が凍りついた。
言葉を理解するのに時間がかかった。
死ねなかった───?
未来の中には嗚咽にも似た懐疑な感情だけが渦巻いて、いつも呑気に笑っていた青年の温かい面影が砕け散るような感覚を味わった。激しい動揺は脳を真っ白に染め上げて、良からぬ思考を止めようとする。
あの青年が、そんなことを言うはずがない。
結論はそれだった。なのに、頭の片隅ではその解を否定する自分がいた。
だって、小日向未来は、津上翔一のことを何も知らないのだから───。
あまりのショックで裂けんばかりに目を見開いたまま硬直する未来に、おばちゃんは茶化すように人差し指を口元に添えながら年甲斐もなくウィンクをした。妙にサマになっていて、場が少しだけ和んだ。どうやら、ここから先は内緒の話をしてくれるようだ。おばちゃんと翔一しか知らない馴れ初めの物語を語ってくれるらしい。
知りたいのなら、知る覚悟はあるか───そう目は語っていた。
未来は真剣な表情で一つ肯首すると、ゆっくりと身を乗り出した。
気付かないうちに、ラジオが流す緊急放送は終わっていて、夕方の天気予報に変わり、キャスターが淡々とした口調で傘の所持を勧めていた。
今週は雨が続くらしい。
流れ星を遮るほどの冷たい雨が───。
***
───エラ太郎ー? エラ太郎〜!(cv.高山○なみ)
HEKKEEEEEE!!!(ウォークライ)
♪イントロ♪(生々しい咀嚼音)
とっとこおおお‼︎ 働けエラ太郎おおお‼︎ すみっこおおお‼︎ 追い立てろエラ太郎おおお‼︎(歌ではない何かしらの咆哮)
───だ〜いすきなのは〜?(cv.ガン○ムWのOP)
ノイズたんの肉ゥゥゥゥゥゥ‼︎ ガツガツムシャムシャブルブルオッペケペムッキィィィ‼︎ 超エキサイティンティン‼︎ Oh……TINTIN? YES! OTINTIN! Night of fire‼︎(高☆速★回☆転) FOOOOOOOOO‼︎(末期キチガイダンシングテンション)
みーんな元気かーい? おじさんは過労で頭がブッ飛んでるよ。最近お家で寝てないことに気付いた。帰宅中に力尽きて道路端で体育座りして死んだように睡眠してる。この前なんかは公園のベンチで寒空の下おねんねしていたら、先住民の方から段ボールを頂いて、段ボールの暖かさと人間の温かさに触れて感激しました。あったけぇよ。寒いのにあったけぇよ。今度、御礼に焼酎でも持っていこう。
でもね、やっぱり、眠るならふかふかのお布団でぐっすりしたいんだ。
だから、菓子折り片手にノイズたんに直談判してみたけど、返ってきたのは殺意という名の門前払いだったよ。泣けりゅ。ぴえんこえてぱおん。もうまぢむり自粛しよ。でも、それを許してくれないノイズたんまぢ企業戦士。ノイズたんはみんな難波チルドレンかなんかなの? 忠誠誓ってんの? 杖折ったの? 俺の心は折れてるよ。ポッキリだよ。ポッキーだよ。その点トッポってすごいよな。最後までチョコたっぷりだもん。
はあ、来る日も来る日もノイズたん一色の人生。右も左もピコピコ8bit音声。二十四時間のうち、三分の一以上がノイズたん関連の業務という知りたくもない事実。壊れるほど働いても三分の一も仕事が終わらない。休みたいという純情な感情が空回っているでござるよ。
はあ~(クソデカ溜め息)こんなんじゃあ〜バイブスあがんね~なあ~(チラッ)気分がゴロッと変わるようなBGMとかがあれば別なんだけどなあ~(チラッチラチラッ)
───はいはい。歌ってやるから真面目に戦えよ。
いえええええい‼ ジャスティス‼︎ 現役JKアイドルの生演奏をバックにお仕事できるなんて幸せえええええ‼ テンションフォルテッシモ‼︎ 悔しいけど働いちゃうビクンビクン‼
へ? 仕事が辛い? そんなときは何もかも忘れて歌って踊ろうぜ! ほら、ノイズたんもそんなカマキリみたいな武器なんて捨ててかかって来いよ! ゲロ吐きノイズたんは袋かなんか持参して出直してこい! ちなみに3円な。嫌ならエコバッグ持ち歩けよ。アイロン神拳のノイズたんはむやみやたらに突っ込んでくんな! お触り禁止なんだから。こうなったらマナーを知らないノイズたんのお命でダンスフロアを沸かしてやるか。まあ、ここただの地下駐車場なんだけどね。車の上に立ってサタデーナイトフィーバーの決めポーズかましとこ。FOOOOO! バイブスがアゲアゲだぜえええ‼︎
「■■■■■■■■■ァァァァ‼︎(訳:これでも素面です)」
というわけで、本日も楽しい楽しいノイズたん狩りでございます。どっかのビルの地下駐車場で田舎のヤンキーよろしく
───へぇ〜……ノイズをヘッドロックしながら言われても全然頭に入ってこないんだけど。
もぉ〜!(オネエ風) これだからおっぱいに栄養をもっていかれている子はぁ〜! 集中力が足りていないわよぉ〜!
───おまえが言うな! 胸は関係ないだろ、変態ッ!
罵倒していただきありがとうございます! ありがとうございます! ありが───……むぅ。
───ん? どうしたんた?
休憩はいりまーす。
───いきなり⁉︎ まだノイズいるけど⁉︎
いや、ちょっとね。張り切っちゃってアクロバティックに動きすぎたせいなのか、脇腹が痛くなってきたアイタタタ……マラソン大会でよく目にするあんまり運動しない文化部の子みたいな動きになっちゃってる。
───そ、そうなのか。えーと、どうやって休むんだ?
どうせ、ノイズたんのタゲは俺が独占してるからね。一発だけ派手にシャウトしたら、ノイズたんもビビって十秒ぐらいオロオロするから、その間に休もうかな。
───十秒だけでいいのか?
10秒チャージだよ。10秒もあったらカップ麺にお湯だって注げるし、割り箸を慎重に割ることだってできる。10秒もあれば大抵のことはできるんだ。社畜の基礎だよ。よーし、じゃあ、朝礼で社訓を復唱するみたいにみんなで叫ぼうね! せーの、スゥ───。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ‼︎(訳:俺も在宅ワークがしてえええ‼︎)」
『♪+◇g::$i>°#l△*〆………………』
───おお、ノイズが動きを止めたぞ。
オエッ……イ、イマノデ喉ガ逝ッタカモ……(かすれ声)
───ダメじゃん!
声ガ某プロレスラーノ人ミタイニナッチッタ……! フフフ、怖イカ? ソレ違ウ人ヤ……ゲフンゲフン……マ、マア、隙ガ出来タノハ違イナイカラ、今ノウチニ休憩スルゾ奏チャン。
───あ、ああ。ギリギリ何言っているのかわかる……てか、脳内会話でも声が枯れるっておかしくないか?
…………天才か?(震え声)
───バカなのか?(呆れ声)
と、とにかく、近くに駐車してある車のボンネットの上に腰を下ろして……ふぃー………………疲れた(本音)
───おつかれさま。
へへ、ありがとう。
三連続のバク宙なんてするもんじゃないね。もう腰が辛いわ。体はまだ二十代なはずなんだけど、心の方が老いてるせいかな、日に日に動きが遅くなってきてる。後遺症の老化現象が影響してんのかなこれ。アレ? もしかして俺もうおじいちゃん? 定年退職していい? 年金は貰えますかー?(小声)
あー……心臓が痛ぇ……くないわ。ぜんぜんまったくこれっぽっちも痛くない。心拍数がちょこっとだけリミットブレイクしてるだけだから。デンジャーデンジャーしてないから問題はありません!(鋼の意思)
まあ、この状態で戦うとなると話は別なんだけどね。
こうも疲労の限界が早いと数で押せ押せノイズたん相手にはやっぱり厳しいものがある。特に今回みたいなマジカルステッキでウェーブ戦みたいに仕掛けられたらガチでキツい。……そのへんわかってんだろうな、ラスボス全裸は。
タイマン張らせてもらえる戦いなら俺の領分なんだけどね。そもそもカウンターって複数を相手にする戦法じゃないんだよ。やるなら一対一なんだよ。それなのにエルさんは「おまえには
───戦い方には個性が出るから仕方ないさ。
個性ねー……俺にそんなんがあるとは思えないけど。
───いつもの凄いカウンター技は個性だろ。
あれは矯正されたんだよ、エルさんたちに。
最初にアギトとして戦った時はもっと、なんか、こう……俺はいま殺し合いをしてんだなって感じがしたんだよ。……ん? でも、アレも相手の動きに合わせる攻防のカウンターだったような気がする。おろ? 自分でもよくわかんなくなってきたでおじゃる。
───なんだよそれ。
ごめんごめん。興味なかったから、あんまり考えたことがなかった。
───興味って、自分のことじゃないか……。
おっと、話の途中だがノイズたんだ。スタンから解放されたノイズたんがピコピコ恨み言を吐きながら、リストラされたリーマンが公園のブランコで項垂れてるみたいな格好してる俺氏に着々と近づいてきてる。キャー⁉︎ そんなに大勢で寄ってたかって包囲して、俺にナニする気なの⁉︎ 乱暴するんでしょ薄い本みたいに‼︎ R18なんかに絶対屈しないんだからね!(体ウネウネ)
はーどっこいしょ……まだ動けるよね、ギルス先輩。
心拍数ヤバいけど良ーし。足の震えガクブルだけど良ーし。喉の痛み治ってないけど良ーし。脇腹に刺さってたノイズたんの爪(引っこ抜いて)良ーし。……よぉおおおおし‼︎(勢いだけ)オールオッケぇええ!(無理やり)
第二ラウンドイクゾー! デッデッデデデデ (カーン)デデデデー!
「■■■■■ォォォ───!(訳:拙者はいつでもハイ☆テンションでござる⤴︎⤴︎⤴︎)」
───おっ、翼と立花の歌だ。二人とも来たみたいだぞ。
⤵︎⤵︎⤵︎
───せめてなんか喋れよ。
الثدي
───日本語で喋れ。
アッハイスンマセン。
ぐ、ぐぬぬ……来てしまったか、スケベな格好で歌って戦うお二人さん! なるべく早急にノイズたんを始末してトンズラしたかったが、コッチは熱中症対策で適度に休憩しないと心臓がすぐにバグってしまう呪いの体質のせいで、鉢合わせになる確率も上がってきてしまった。
出会っちゃう度に、響ちゃんから捨てたれた子犬を見るような哀れみの目を向けられるのは、なんか背中が痒い気分になるから嫌なんだよな……。
翼ちゃんは最近はガチガチに攻撃してこなくなったね。俺の意識が彼方にランナウェイして殴りかかった時はメッチャ仕返してくるけど。パンチ一発の代金として天ノ逆鱗で倍返ししてくるよね。半○直樹かよ。土下座するから許してくれないかな。
てか、毎度のことなんだけど、なんでそんなエッチな服装で平然と人前に出れるの? 恥ずかしくないのかい? 俺としてはあの肌面積多めのピチピチ衣装は目に毒だから、上着でもいいから是非とも羽織ってほしい。下にジャージを履くのはダサいからダメかい? でもね、毎回こっちもキツいんだ。なるべく視界に入れないように立ち回るのって、そこそこ難しいんだぜ?
───いい加減、慣れろよ。目に毒って言うけどさ、むしろ、あの二人は目の保養だろう? 男なんだからそのへんは堂々としてりゃいいんだよ。
男なんだから、か……。
確かに言われてみれば一理あるかもしれない。
花も恥じらう十代の乙女が地肌を晒し、ボディラインを明らかにした防御力など加味していないドスケベな格好をしているのにもかかわらず、それを見ないようにすることなど、むしろ、一人の男として罪ではないだろうか……?
───そこまで言ってないんだけど。話が飛躍してんだけど。
俺がずっと疑問にしていたエロに長けた
俺の知らない戦場のロジックがあの魅惑と混沌のVラインに秘められているかもしれない。あの守るものを取っ払ったスベスベの脇のようなノーガード戦法が昨今では支流なのかもしれない。人体の急所を守護する気などまるでない薄っぺらい装甲は機動性を重視した結果なのかもしれない。
時代遅れは俺の方だ。彼女たちは何も悪くない。昔はこうだったからと現代に生きる若者に老兵の考えを押しつけるなど愚の骨頂。時代は移り変わるもの。今のトレンドやニーズも瞬きしている間に過去のものとなる。時の流れに取り残されて嘆くだけでは駄目なのだ。諸行無情の響きありとはまさしくこの事であったか。勉強になったよ、ありがとうシンフォギア。ありがとうエチエチな服。ありがとうありがとう───ってンなわけあるかああああああいッ‼︎
「■■■■■■■■■ォォォ───‼︎(訳:やっぱり未来ある女の子が易々と柔肌を晒すのはどうかと思います!)」
オラァ‼︎ そこのアンノウンもどき! さっきからワゴン車の影に隠れて、響ちゃんの健康スパッツを舐め回すようにジロジロ見てんのバレたんだからな! テメェらには百万年早いぜ! おじさんの自慢の大胸筋で我慢しやがれえええ!
『g gg GILLS??!!』
こんばんわあああああ‼︎(挨拶パンチ) おまっ、ちょ、なんか力強くない?(肩と肩を掴んでの取っ組み合い) ああ。俺が弱くなってんのか(高速理解) とりあえず戦いやすい場所にでも出ようぜ‼︎ もみくちゃになりながらアンノウンもどきと一緒に大ジャーンプ‼︎ 着地は失敗‼︎ 地面をごーろごろ。
「あ───第三号さん! それにロードノイズ……っ!」
ちょっと前をごろんごろんと転がりながら失礼しますよ。
くりくりお目めな響ちゃんが俺を悲しそうな表情でジロジロ見ておられる。なんか恥ずかC……お化粧してないからあんまり見ないで……///
割とマジで見られたくないんだけどなぁ……俺の戦い方とかグロッキーだもん。教育上よろしくないよ。モザイク案件だよ。Vシネにすら断られるよ。泣けりゅ。
はぁ、響ちゃんもこのクソアンノウンもどきを捻り潰せるぐらいには早く強くなってね。こいつら基本は不意打ちだから、そこさえ防げたら、あとは経験則と実力がものを言うステゴロにもっていけるよ。
おじさんもずっと守ってやれるわけじゃないから───さっさと殺気か何かしらを察知するニュータイプ的なレーダーかなんかを習得してくれ。響ちゃんは主人公なんだから、できるよ、できるできる。
───いや、無茶だろ。翔一はいつもどうやって発見してんだよ。
野生の勘(キリッ)
───……(なんか言いたげな沈黙)
とにかく、この犬っころみてぇなアンノウンもどきは俺が殉職させてやるしかないね。まだ響ちゃんには荷が重いだろうし、翼ちゃんはあっちで他のノイズたんと殺伐とじゃれてるし、消去法で俺に白羽の矢が立ちそうだ。
アンノウンもどきが四次元ポケットからデケェ大鎌を取り出して装備する。デスサイズ○ンダムか? 真○ッターか? コイツは原作でフレイムフォームに真っ二つにされたやつがモデルかな?
だったら、俺もギルスクロウで原作再現といきますかねェ〜……腕に寄生してるライヴアームズたんが反応してくれない。なになに……労働反対? 休ませろ? いやいや、俺に寄生してるんだから家賃ぐらい払って下さいよ。今月分は払った? だったら来月分を前借りさせてよ。んん? 死人がどうやって返済するつもりだコノヤローだと…………?
う、うるせぇな! 生意気言ってんじゃないわよ! いいから貸せよツメぇー! 出せよツメぇー! ツメぇーツメぇー!
───おい! 接近してくるぞ、あのロードノイズ!
あん? そんな大鎌の振り方じゃ、俺の美脚の方がリーチ長いわ! 大鎌を右脚で蹴り止めて、すかさず左脚で顔面をキックする。そこそこ吹っ飛んだ。執拗に追いかけて、休む暇もなく畳み掛けてやるぜ! あ、やっべ、そっちにはSAKIMORIの目のやり場にクッソ困る逆羅刹ミキサーが───あああああ目があああああお股がああああああ(自重)
『suki drake dana GILLS!?!?』
ちょっと後ろから抱きついてくんな! しゅきしゅきホールドすんなって! HA☆NA☆SE!(背後の車に叩きつけて脱出) この野郎! 追い討ちパンチを喰らえー! その場でスゴい跳躍をされて躱されてしまった。標的を見失った拳は車の窓ガラスを殴り砕き、防犯のアラームがうるさく鳴り始める。
ご、ごめん……持ち主の人、ほんまごめん……(スーパー懺悔タイム)
ぐぬぬぬ……あのワンワンアンノウンもどき、今度は駐車してある善良な一般市民のクルマの上に乗って、これ見よがしに車から車へ乗り移って移動してやがる。車一台購入するのにどれだけの勇気と資金がいると思ってんだお前! 中古でも高いんだぞ! ホントごめんなさい! 不可抗力とはいえ、さっきから割と車の窓とか砕いてます! 別に尾○豊直伝の卒業式みたいに割ってるわけじゃないんで許してくだしゃい!
───謝んのか、戦うのか、どっちかにしろよ。てか、翔一も車の上にのって戦ってんじゃねぇか!
ハッ⁉︎ いつのまに⁉︎
でも、仕方ないじゃん? 相手が一向に降りてこないなら、こっちが同じ土俵に上がるしかないもの。べ、別に車の上でファイトするのに、ちょっと惹かれるなぁーとかカッコいいなぁーとか思ってたわけじゃない。ホント社畜ライダーウソツカナイ。
そ〜ら(グラグラ)犬っころアンノウンもどきよ(クルマノウエッテ)おまえの命(グラグラナノネ)神に返しちゃおうね〜(コンナニグラグラシテタラ)そんな風に鎌を振り回しても当たらないよ〜(コケソウナンダケド)もう見切って(ズルッ)───あ。足が滑った。
すっこんころりん。背中にビターン‼︎ 心臓がビクーン‼︎
おかしいね。天井が見えるよ。ついでに少し遅れて大鎌が視界を通過していったよ。怖E。でも、奇跡的にもワンワン野郎の殺意高めのデスサイズを絶妙な位置で回避できたので、お腹がガラ空きになっておられる。なんだか申し訳ない気もするけど容赦せずにキックしとこ。オラァ‼︎ 吹っ飛べバーカ‼︎(子供の煽り) 中指立ててやる。
───地面に落下したな。そこそこ効いてるみたいだ。
トドメのお時間いっとく?
来おおおい!(テレパシー的なやつ) カーモンベイビー我が相棒ギルスレイダーたん! 百鬼夜行もぶった斬れねぇようなワンワン野郎に得意のファイナルベント喰らわしてやろうぜ!
おお。聞こえてくる聞こえてくる。かっちょいいエンジン音が俺の方めがけてどんどん近づいてくる。うんうん。ちょっとスピード速すぎじゃない? 法定速度ガン無視やん。しかも、なんで俺の方に真っ直ぐ速度を上げて詰めてきてんの? 緩めて緩めて。待って。止まって! オイ止まれって‼︎ ブレーキブレーキ‼︎ ちょっ、待っ止ま───(以下、断末魔)
気づけば、俺は踊るように宙を舞っていた。これが本当のダンシングトゥナイト……。
『nanda sono kougeki waaaaaaaaa????!!』
偶然にも射線上にアンノウンもどきがいたのでドロップキックかましておいた。巻き込み事故である。ごめん。
───…………ふふっ。
な に わ ろ と ん ね ん (大の字)
───よ、よく、あんな、あんな状態から、し、姿勢制御が、できる、よな……ふふふッ。
褒めんのか、笑うのか、どちらかにしてもらえますかね?(白目)
呼べば来てくれるのはありがたいんだけど、なんでギルスレイダーたんはだいたい俺の尻に突っ込んでくるの? ブレーキでもイカれてんのか。俺のケツは輪止めじゃないんだけど。もしかして俺を抹殺しようとしてる? バイクに下克上されんのかよ。世も末なんだけど。頼むからバトルホッパーを見習ってくれ(懇願)
お尻をさすりながらギルスレイダーたんに跨って、爆音のエンジンを田舎の暴走族よろしく響かせる。パラリラパラリラ〜(セルフSE) すると、あら不思議! 他のノイズたんも騒音被害を訴えるように飛びかかってくるではありませんか!
今よ、ギルスレイダーたん! 発進してノイズたんを蹴散らすのよって───その場でぐるぐるドリフト回転されると酔っちゃうよおおおおお⁉︎ だめえええなんか口から出ちゃうううう‼︎ ……お、俺も人間ベイブレードできるんだぜ翼ちゃん(ガクッ) ……止まったのか。止まってくれたのか。なんで操縦してないのに勝手に動いちゃ───急発進しないでギルスレイダーたあああん‼︎ 俺まだアクセル回してないよおおおおお⁉︎
「───ッ⁉︎」
SAKIMORIさん、戦闘中に申し訳ありませんけど真横から失礼しますよおおお‼︎(悲鳴)
ぶちぶちとノイズたんをドリフトとかで轢き逃げファイナルベントしてるけど、これもう止められないんです。ギルスレイダーたん、なんだか今日は機嫌が良いみたいで、俺もうハンドル操作しかしてないんです。昨日、綺麗に洗ってあげたからかな。真っ赤なヘッドライトをチカチカさせて、楽しそうに暴れ回っておられるよ……(諦め)
『onore gills no bunzai de???!!』
ふらふらになりながらも立ち上がるワンワンのアンノウンもどきが大鎌を構えて突進してくる。ギルスレイダーたんも殺気を探知したのか、ぐるんと前輪をアンノウンもどきに向けた。前照灯が瞬くように何度も光る。ツーツツー……これモールス信号だね。
───なんて言ってんだ?
て・き・は・た・お・す……oh yeah.
───……い、意欲が高いマシンだよな。
殺る気まんまん過ぎて、俺がついていけない時があるんだけどね。だって、ほら、今もこうして勝手にアクセル全開で突っ込んでいくじゃあああああああああん⁉︎
『sono mi o kirisaite sinu ga ii??!!??!!』
ちょーッ⁉︎ ストップよギルスレイダーたん⁉︎ 当たる当たる‼︎ このままだと鎌にスッパーンされて生首ころりんになっちゃうよおおお⁉︎ それは流石に絵的にマズいって⁉︎ お願いだから言うこと聞いてえええ‼︎───ええい、ままよ!
タイミングはたぶんこのへん!(曖昧) あとはお祈りゲーミング!
急ブレーキを掛けると同時にハンドルを全力で曲げる。体重を前方に預けるとマシンの後輪タイヤがアスファルトを蹴り上げて、力強く飛び跳ねた。
振るわれた大鎌の刃が俺を斬り裂くよりも早く、殺傷力に乏しい長柄が跳ね上がった荒々しい後輪とぶつかって叩き落とされる。カラン、と虚しい音を耳が拾う。焦るアンノウンもどきが後ろへ跳ぶように撤退。逃してやる道理もないので、後輪が地面に落ちるとスロットルを全開にして、マシンを爆進させる。
逃亡するアンノウンもどきの背中を捉えて───五指を突き立てる。
ウォントゥー‼︎ キミの
『gG G o Ooo───?!??!!』
急所をブッ刺されたアンノウンもどきはその場でトリプルアクセルしながら炭化してお亡くなりになられた。俺は突き指で死にそう。フツーに痛い。冷やせるものを買ってさっさと帰ろう。
バイクの運転中にジャパニーズ辻斬りスタイルのバイオレントパニッシュはやめようね! 指の骨が折れるかもしれないよ!(バイクの上で悶えながら)
「あの! 第三号さん!」
戦闘が終わったのか、響ちゃんが無用心に近づいてくる。その後ろで翼ちゃんが俺を睨んでる。
仕事は終わったから、この場に残る理由もない。ギルスレイダーたんのエンジンを再点火させて俺は走り去ろうとした。
「第三号さん、待ってください! 私は───」
聞かない聞かない。
心を鬼にして、アクセル全開で戦場を後にする。
やさしい響ちゃんのことだから、ギルスのことも救いたいとか思ってんでしょ? キミは誰にだって手を差し伸べる優しい子だもんね。こんな筋肉モリモリマッチョマンの変態にも救いの手を伸ばすだろうさ。
でも、残念ながら、そいつは無理な話だ。
紛い物とはいえ、仮面ライダーの力でさんざん好き勝手に暴れてるんだから、相応の報いは受けるべきだ。
それに響ちゃんの手で救うべきものは他にある。これから先に待ち受ける『戦姫絶唱シンフォギア』の物語がそれを示している。道を違えずに進んで欲しい。キミの優しさを待っている人たちが沢山いるのだから───。
何よりも、俺は今……。
突き指が超痛いから、はやく氷とかスーパーで買いたくて仕方ないのおおお‼︎
───なぁ、翔一、ギルスレイダーがヘッドライトで何かを訴えかけてるぞ。
ガ・ソ・リ・ン・き・れ・そ・う……?
俺はキレそう(真顔)
いつになったら休めるんだよおおおお‼︎ ぴええええん‼︎(泣)
今のうちにギャグしとけ精神。つまりこれからが地獄。
冒頭のやつは気にしたら負けです。あれ?こいつ世界救ってね?みたいな感覚でおけまる水産。
いよいよ赤い子が登場します。なおオリ主の余命は考えないものとする。