仮面ライダーだけど、俺は死ぬかもしれない。   作:下半身のセイバー(サイズ:アゾット剣)

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お絵描きばっかりしてます(事後報告)


♩.俺のラストバウトは始まったかもしれない。

 あの背中にはじめて触れたのは晩蝉(ひぐらし)の歌声響く風の中だった。

 

 夏の休暇も終盤に差し掛かったある日、祖母の実家に一人で遊びに行くことにした。いつも行動を共にする親友もその時期には家族旅行や親戚の付き合いで忙しそうにしていたので、小さな一人旅の計画を実行に移す決断はすんなりとしていた。

 思春期にありがちな自立への強い憧れが行動力に上乗せされていた側面もあった。今までに感じたことのなかった〝大人〟への憧憬が最近になって表に浮き出たのは何故だったのか。

 少女は知らないフリをする。

 あるいは、知らないものに戸惑っていただけなのかもしれない。

 

 電車を乗り継ぐほどの遠出には多少の不安が残っていたが、何の問題もなく健やかな状態で祖母の実家に辿り着き、心配性な祖母に元気な姿を見せてやることが叶った。

 少しだけ大人になれた気がした。

 やればできるんだと自信もついた。

 その晩は風流な畳の上に真っ白な布団を敷いて、蚊帳の中で丸まって瞼を閉じた。鈴虫の音色に包まれて、意識は自然と物静かに落ち着いていく。

 青春という甘美な言葉を誇るには色のない夏だったと後悔しながらも気分は悪くない。満足すら感じている。確かに同級生の胸踊るような色恋の話に耳を傾けていると劣等感に苛まれる時もあったが、不思議と今では同調できる。

 

 なぜだろうか。

 

 夏休みの少し前。

 梅雨の季節に出会った人。

 嵐のように騒がしくて、青空のように晴れやかで。

 

 やさしくて、あたたかくて、哀しそうな人。

 

 瞼の内側に広がる夢の世界はそんな人のことばかりだった。

 

 翌日、祖母に別れを告げて出発した。意気揚々とした足取りだった。帰りは気が休まると楽観的に捉えていたからだろう。

 その帰路にて問題が起きる。

 乗り換えの電車を間違えて、別の方角へと向かう車輌に乗り込んでしまった。油断が招いた初歩的なミスである。座席で少しうとうとしただけで、気づけば大自然の緑が車窓の隅まで埋め尽くしていた。

 そして不幸は立て続けに重なる。過疎化の進んだ地域なのか、時刻表が絶望的であった。加えてダメ押しと言わんばかりに財布を迂闊にもどこかで落としてしまったらしく、バスやタクシーといった別の交通手段も絶たれた。

 自分の不幸を招き寄せる体質をこの時ばかりは酷く恨みながら、寂れた無人の駅に降り立って途方に暮れる。

 空はいよいよ仄昏(ほのぐら)い赤みを深めていく。

 鴉の不吉な調(しらべ)(いたずら)に孤独感を加速させる。

 縋るような思いで携帯電話を握る。両親へ迎えに来てほしい旨を必死に伝える。しかし、父と母はそれぞれ仕事や用事で多忙の身。それを承知で出掛けたことが仇となっていた。娘のもとへすぐ駆けつけられるような暇は両者には無い。日が落ちるまで、朽ち果てたも同然の駅舎に一人辛抱強く待たねばならない。

 人懐っこい性格の彼女には少々気が重い時間だった。

 蜘蛛の巣が幾重にも連なる無人の駅舎から、夕焼けに照らされた軌条を無心で眺めながら、一秒が何時間にも肥大化する孤独の空間で迎えを待ち侘びる。周囲に誰もいないという心細さが雪解けの冷水のように足下からじわじわと気情を蝕んでいく。夜になればあっさり凍死するかもしれないと本気で思い始めて、身を小さく縮こませていた。

 

 そんな精神的に追い詰められていた時、いち早く彼女を迎えに来てくれたのが、何とも頼りないバイク乗りの青年であった。

 

「ヘイヘーイ。そこのカワイイお嬢ちゃん、お兄さんとタンデムしてかない?」

 

 都合が合わなかった両親に頼まれて来たのであろう青年は半帽の洒落たヘルメットを渡してから、そんなことを愉快そうな顔で言った。

 

「あー、そうそう。俺ね、実はまだ二人乗りしちゃダメなんだけど、そこは緊急事態っつーことで。二人だけの秘密だぜ? まあまあまあ! 心配はご無用。問題ナッシング。こう見えてもテクには自信あるんだ。教習所で華麗にドリフト決めて、教官に絶賛されたあとメッチャ怒られたこともある」

 

 その教官とは、今では一緒に峠のコーナーを攻める仲なんだ──と、何の自慢なのかは知らないが、矢継ぎ早に口を動かしつつ旧式の大型二輪車のエンジンを噴かした。

 もしかすると気を遣っているのだろうか。

 この青年との付き合いこそまだ浅いが、彼の温和な人物像を確信するに至る程度には見知っているつもりだ。だからこそ、安心して彼の背中に寄りかかることができる。

 青年は発進前に一度振り返って「それじゃあ立花家へイッテイーヨ! それまで後ろでマッテローヨ!」と拳をぶんぶん振り上げながら騒がしい奇声を上げた。大したテンションである。時間帯から察するにアルバイトが終わるとここまで直行してきたのだろうが、疲労をまったく感じさせないハツラツとした声色だ。

 これが大人とは思えない。

 だが、その感覚はすぐ否定することになった。

 ヘルメットのシールドから青年の柔らかい目元が見えて、これまでの積りに積もった寂しさが嘘のように吹き飛ばされた気がした。

 

 大人ってすごいなあ……。

 

 神秘的な黄昏の太陽が傾く茜色の水面(みなも)を背にして、二人を乗せた単車(バイク)は清爽な潮風に車体を撫でられながら駆動する。信号の少ない公道では風と一体となって()()()と翔んでいるような遠い錯覚すら感じた。

 気持ちが安らぐ。

 夏の終幕を物悲しく奏でる晩蝉(ひぐらし)の残響と独特なリズムを刻むマフラーの鳴動が子守唄を口ずさんでいるように聴こえて、(とろ)けるような微睡(まどろ)みに誘われた。

 速度は緩やかとはいえ、バイクの上で意識を手放せるほど図太い精神はまだ持ち合わせていない。

 何とか眠らないように気を張らねばならないと得心して、グリップを握る青年の腰に背後から両手を回した。離さないようにぎゅっと抱き着いて、精一杯しがみつく。

 小さな頬に大きな背が触れる。

 男らしい偉丈夫な背中からお日様の香りと人肌の温かさが囁くように転寝(うたたね)の感覚を(くす)ぐった。

 

 とくん、とくん──と。

 

 命の音がする背中。

 やさしい音だけが響く。

 

 とくん、とくん、とくん──と。

 

 少しだけ早い自分の胸の音と重なって、命の音律は奏響く。

 二人だけの音。

 二人だけの世界。

 できるなら、少しでも長く聴いていたい。深く感じていたい。

 星に願うように。

 空に祈るように。

 少女は目を閉じる。

 

 やがて消えていく切ない音に耳を傾けて。

 

 孤独な音を聴いていた。

 

 

***

 

 

 明朝六時を過ぎて。

 綿雲が揺蕩う平穏な青空を軍用ヘリが滑空する。

 風鳴弦十郎はプロペラが巻き上げる突風に髪を(なび)かせながら、剣呑な眼差しで地上を視界に収める。

 厳重な交通規制を実施した都内の公道は重苦しい静寂を露わにしていた。普遍を語る平凡な日常の景色とは一線を画す緊迫の空気が漂い、滴る朝露の微かな音さえ奇妙に響く。

 朝陽の光輝を浴びたアスファルト。

 車輪の群れがあるはずもない轍を踏みしめる。

 インターチェンジを抜けて、閑散とした高速道路へ何台もの車両が仰々しく通過していく。十や二十はくだらない大所帯。行軍のような威圧的な殺伐さを滲ませた四輪が列を成す様は異質極まりない光景として目に焼きつく。

 私立リディアン音楽院高等科の地下に構える特異災害対策機動部二課の本部から東京都千代田区永田町に位置する特別電算室『記憶の遺跡』まで《サクリストD》と呼称される完全聖遺物を移送するための行列。

 予想される敵襲に備えて、各車両には武装した構成員が待機している。緊張感はあって然るべき切迫の現場は首都を走り抜けていく。

 

 車両の列が黙々と高速道路を通過する。

 その列の中心。

 前後を他車両によって堅牢に守られた桜色の一般車──櫻井了子が運転する車の後部座席には、(くだん)完全聖遺物(サクリストD)が眠っている。助手席で不安そうにシートベルトを握る立花響は電子ロックが施された特殊なアッタシュケースを一瞥して、不可解な息苦しさを覚えた。

 

 不壊の剣(デュランダル)

 その出自はかの有名なフランスの叙事詩『ローランの歌』から。如何なる手段をもってしても決して破壊できない神秘の聖剣は天の御使によって王へと授けられたと記されている。

 永劫の不朽を謳う神聖の刃が神の加護によって成り立っていると仮定すれば、人類が積み上げた千年の叡智では小さな傷すらこの剣に残すことはできないのかもしれない。幾万年の時代を大した破損もせずに力強く生き永らえてきた完全な状態がそれを如実に物語っている。

 それならば、一つの可能性として。

 もしもの話として。

 人ならざるものであれば、それこそ神に近づいたものであれば──……。

 

 理屈(ルール)を喰い破る埒外な存在がいるとすれば、この剣は不滅不朽の絶対的な定理を保つことができるのだろうか。

 

 サクリストDを狙う敵の存在。

 彼らは《デュランダル》に何の可能性を求め、何の目的を果たすために狙いを定めているのだろうか。

 

 予想される敵の実態は未だ闇の中にある。

 しかし、既存の兵器を物ともしない災害(ノイズ)を従える未踏の勢力であることだけは確か。ノイズと戦える確固たる存在は聖遺物の力を借りた装者ともう一つだけ──。

 車内のトランシーバーから定期的に発せられる先行車の報告には不審者や不審物の有無の他にもう一つ情報が加えられている。

 

 それはバイクに乗ったライダーの存否。

 

「…………」

 

 交通規制が施されている指定のルート近辺に単車と乗り手がいれば、報告を怠らないよう全車両に弦十郎から命令が下されていた。

 見た目は問わない。一見は一般人の様相であれ、可能であれば車種とナンバープレートに加えて人物の大まかな特徴も報告に合わせるようにと緻密な連絡が行き届いている。

 これらが何を意味する指令なのか分からないような勘の鈍い者は二課には当然いなかった。

 それは立花響を含めて、だ。

 

「そんなに緊張しなくたって大丈夫よ。こんなに気持ちの良い天気なんだし、案外平和に任務(こと)が終わるかもしれないわよ〜?」

 

 響の氷のように強張った表情を察して緊張を解そうとしているのか、了子はステアリングを握りながらも普段と変わらぬ茶目っ気ある声色で語りかける。

 

「心配事は大人に全部任せておきなさい。響ちゃんは自分の仕事だけに集中して良いの」

「…………」

「それとも他に何かあるの? 気になること? もしかして──恋の悩み⁉︎」

「ぶっ⁉︎」

「あら、まさかの当たり? やだ〜青春ね〜!」

 

 にやにやと口元を弛ませる了子に響は必死で弁解する。

 

「ち、ちち、違いますぅ! しょんなんじゃありませんッ! ま、ましてや作戦中に……そこまで空気読めない性格じゃないですよぉー⁉︎」

「ムキになっちゃってカワイイじゃない。図星ね」

 

 顔を真っ赤にしてあたふたする響を見て、了子は随分と楽しそうだった。

 

「気になる人からある日突然連絡が来なくなって居ても立っても居られないってカンジかしら」

「エスパーですかっ⁉︎」

「こう見えても恋の相談はよくされる方なの。もう何度迷える子羊たちを導いたことかしら。二課(トッキブツ)のキューピットとは私のことよ」

「はぇー……そういうのわかっちゃうもんなんですか? 私あんまり自覚ないんですけど」

「ふふ。この櫻井了子の目をもってすれば一目瞭然ね。恋する乙女の顔なんて一目見れば判別できるわね」

「どうすれば、そんな特技を会得できるんですか」

「本当の恋を知っている者なら、勝手に身につくわ」

 

 得意そうに鼻を鳴らす了子の横顔を覗きながら、響は少し口を尖らせる。

 

「了子さんは大人だから、そういう経験もたくさんあるんでしょうけど……」

「残念。私は一度っきりよ」

「ええーっ?」

「意外?」

「意外です!」

 

 思わぬ恋バナを前にして目をキラキラさせる響に了子は苦笑した。

 

「本気の恋だったから、ずっと尾を引いているのよ。未練がましくって自分でもヤになっちゃうわ」

「そんなに好きだったんですか」

「ええ。好きよ。今でも。この先もずっと」

「なんだかとってもステキな恋ですね」

「……ふふっ。ありがとう。でもね、私には時々これが呪いのように感じる時があるの」

「呪い?」

 

 ピンと来ないのか、小首を傾げる響に了子は構わず言葉を続けた。

 

「これは先人からのアドバイス。胸に留めておきなさい。

 どんな形であれ、手遅れになる前に、想いは伝えた方がいいわ。想いが届かないなら言葉で。言葉で足りないなら行動で。愛が呪いに変わる前に、愛を祈りなさい。そうやって人間は今まで長い歴史を紡いできたのだから。

 愛のない世界は寂しいわ。人間が生きるにはね」

 

 目をパチクリさせて当惑の表情を浮かべる響に、了子は恥ずかしそうに頬を指先で掻いた。

 

「ヤダもう。らしくないこと言っちゃったわ。今の話は二課のみんなには内緒よ。櫻井了子はミステリアスな美女で通ってるんだから──」

 

 その直後、二人の空間に水を差すような形でトランシーバーが反応した。定時報告かと疑いもせず、二人の視線が無線機に落ちる。ザザッと雑音が流れて一変──。

 

『下だ、了子くんッ!』

 

 弦十郎の怒鳴るような音声の真意を確かめ暇もなく、櫻井了子は反射的にハンドルを右に大きく切った。この咄嗟の判断が結果的に両名の命運を分けることになる。路面を滑るように傾いたタイヤが車全体を粗暴に揺らして公道(ストリート)に刻まれた車線を軽々と超えてしまう。

 響は助手席から女々しい悲鳴を上げながらも、前方の光景に目を疑った。血の気が引くように愕然とせざるを得なかった。

 

 車が飛び跳ねている。

 

『敵襲だッ‼︎ 敵は下水道から攻撃をしかけている! 繰り返す、奴等は下で待ち伏せていたッ‼︎ 全車両は今すぐ散開しろ!』

 

 重力に従って落下する車の顔面がアスファルトの地表に叩きつけられ、一瞬の内でスクラップと化した。金属片を吐き散らしながら、横転する衝撃的な光景に響は息を呑んで瞠目する。

 しかし、驚嘆に震えている場合ではなかった。

 落下の勢いでそのまま滑走するように横転するクルマが今度は走行ラインを阻む障害物となって、了子のクルマを押し潰さんと迫ってきたのだ。

 了子は切り返すようにハンドルを左へ。

 ブレーキングで荒ぶるGに逆らうようにクルマのコントロールを試みる。白煙とスキール音がけたたましく路面を這い、五センチも離れていない際の間隔で視界を横切り、一瞬の間にドアミラーの首をへし折って通り過ぎて行った。

 唖然としながら間一髪の回避に胸を撫で下ろすも束の間、背後から痛々しい轟音が飛び交った。それを確認するためのドアミラーは響の側から失われている。バックミラーに視線を上げると了子が隠すように畳んでしまった。

 後ろは見るなということらしい。

 

『ダメだッ‼︎ 上からでは敵の影すら捕捉すらできん! 地下水路の構造から先回りの難しいルートを構成する……了子くん、その先にある薬品工場へ回れ!』

 

「薬品工場……⁉︎ また無茶を言ってくれるわね!」

 

 下唇を噛む了子に思考の隙すら与えず、今度は道路脇の側溝からスプリンクラーのように何かが吹き出した。

 

「ノイズ⁉︎ ──うわあああああッ」

 

 こうなってしまえば、助手席に座る響は了子の技術(テクニック)を信じるしかない。ジェットコースターよりスリリングなアトラクションに乗せられた気分で息つく暇もなく、響は暴力的な横Gに晒されて金切り声を上げ続ける。

 高速で蛇行する桜色の自動車はノイズの奇想天外な強襲に対して幾度も劇的な回避を成功させた。前触れもなく地下から噴出するノイズを(かわ)しながら、市街地の国道を一目散に抜けていく。無茶な動作を強いられたタイヤが限界を迎えて危うい挙動をチラつかせているが、指定された薬品工場までは何とか辿り着けるだろうとアクセルペダルをほんの僅かに緩めたその時だった。

 頭上に()()()と。

 車の天井に何かが降ってきたような音がした、

 それは確実に響と了子を乗せたクルマの上に留まっている。脇目も振らぬスピードに物ともせず、そこに張り付いている。正体はわからない。かなり重量があった。無闇に振り下ろそうにも前輪がタレて制御も覚束ない現状では、あまり派手な走行は期待できない。

 黙って走り続けるか。

 了子が判断を下す直前、助手席の響が叫んだ。

 

「了子さん、シマウマ!」

「え?」

「たぶん、ロードノイズですッ!」

 

 颯爽と移ろいで過ぎ去る景色の中から、ビルのガラスに反射した異形の影を響の動体視力は捉えていた。

 今まさに二人の頭上には縞馬(ゼブラ)の貌を携えたノイズの上位種がいる。他の雑兵(ノイズ)に紛れて車上へと乗り移った黒色の縞馬(ゼブラ)は車内の様子など気にも止めず、鉄槌のように右拳を振り上げた。

 爆音と共に車体が揺れ、怪人(ロードノイズ)の拳は天井をあっさりと貫いた。

 殴打によって車上から穿貫した黒い怪腕は運良く運転席と助手席の間を殴りつけ、手応えの無さを感じ取ったのか、そのまま何事もなく上に引き戻される。

 

「ちょっとちょっと……一応は防弾よこのクルマ⁉︎ 対物ライフルにも耐えられる設計なんだけど……!」

 

 余程悔しいのか、了子は苦渋の嘆きを口にする。

 シートベルトを外した響は拳一つぶんの風穴が空いた車の天井から黒の縞馬(ゼブラ)が二人を見下ろしていることに気付いた。次は直撃させる。殺気めいた意志を読み取れる眼。このままでは一方的に殴殺されてしまう。

 離脱しなければマズい──!

 既に二人を乗せたクルマは目標である薬品工場のゲートを潜り、敷地の奥へと進んでいる。車を捨て、櫻井了子と完全聖遺物(サクリストD)を背負って、工場内を逃げ回るしか道はない。

 響が決断に至る寸前、思いも寄らぬ救いの手が差し伸べられる。

 

「──フザケてんじゃねぇぞ、馬面ッ‼︎」

 

 車上で大きな物音が鳴り、組み合うような激しい足音が刻まれ、やがて後部の車窓から二つの影が路面に転がり落ちるのを響は目にした。その内の一つがあまりに想像の範疇を超えていたがゆえに、視界に入った青銅の装甲を目の錯覚かと疑いもした。

 しかし、それを見間違いで済ますにはまだ鮮明すぎる記憶であった。

 

「あの鎧は……⁉︎」

 

 三日前。

 網膜に焼きついた雨天の夜。

 装者である風鳴翼に重傷を負わせ、未確認生命体第三号の乱入によって撤退に追い込まれ──誰かを偲ぶように泣いていた少女。

 間違いない、あの子だ。

 此度の襲撃の首謀者と思われていた《ネフシュタンの鎧》を纏った少女が二人を庇うようにして怪人(ロードノイズ)と揉み合いになりながら戦闘を開始した。それだけでも混乱しかねない光景であるにも拘らず、拍車をかけるように工場内から溢れ出した災害(ノイズ)の大群が互いを攻撃し合う()()()()のような異常な行動を始めてしまうのだから、響は愕然とした表情で背後の惨状を見送るしかない。

 

「え……ええっ⁉︎ 何が起こってるんですか⁉︎ ノイズが……ケンカしちゃってるぅ……?」

「どうやら、私たちの想像以上に複雑な状況になってるみたいね。それに……どのみち厳しいわね」

 

 どこか諦めたような口調の了子は言うことを聞かなくなったステアリングから手を離した。お手上げのポーズと嘆息。そして、フロントガラスの向こう側へと響の視線を移らせた。

 

 直線上──前方に何かいる。

 

「────ッ⁉︎」

 

 二人を待ち構えていたのは人間のような四肢を持った異形──。

 

『owari da』

 

 もう一体の縞馬(ゼブラ)だった。

 

(間に合え──‼︎)

 

 白の縞馬(ゼブラ)が重心を落として拳を引き絞ると同時に、響は了子とアタッシュケースに手を伸ばしつつ、胸の内に秘めたる撃槍(ガングニール)を目覚めさせるべく聖詠を歌う。

 

「── Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 程なくして縞馬(ゼブラ)による鉄拳の一撃が桜色の車に正面から叩き込まれた。作動したエアバッグが破裂し、前部座席は勿論ながら後部座席に至るまで峻烈な衝撃が轟き、鉄屑のように粉砕された。

 黒煙を焚きながら静止したクルマに突き刺さった腕を引き抜き、白色の縞馬(ゼブラ)は背後へと顔を向けた。

 

『omae mo AGITΩ ka……???』

 

 問いかけの矛先には、黒と黄を基調とした色合いの装甲(プロテクター)に身を包ませた少女が握り締めた拳を前にして構えている。

 響は小さく息を吸って、力強く目を見開いた。

 

「違うッ! 私は立花響、十五歳! 乱暴なお馬さんにはこれ以上教えてあげない!」

 

 並々ならぬ戦意の現れが言葉に宿っていた。響の背後で静かにその成長を感心する了子は堪らず不気味な笑みを浮かべてしまった。

 たしかにこの子なら。

 この子ならアギトにだって──……。

 

「了子さん、下がっててください。私、戦います!」

 

 

***

 

 

 陰険な双眸が血湧き肉躍る戦場を俯瞰している。

 硝子細工のビー玉のような円型の(まなこ)には、えも言われぬ闇を孕んだ獰猛さが窺える。獲物の品格を査定しているかのような凍てつく視線は少女の頭上にのみ注がれていた。

 

 歌を口ずさみながら不慣れな徒手空拳を用いて四方から襲い来るノイズの軍勢と白の縞馬(ゼブラ)と必死に競り合う《撃槍(ガングニール)》の戦姫──立花響。

 数多のノイズを従えながらも黒の縞馬(ゼブラ)と他ノイズに邪魔をされ、応戦を余儀なくされる《ネフシュタンの鎧》の少女──雪音クリス。

 

 戦況は混沌の坩堝と化している。一見は三つ巴の様相を呈しているが、無尽蔵に現界を遂げる雑兵(ノイズ)の大群が節操もなく場を荒らし続けるため、現時点で陣営を隔てることは困難となっていた。

 雪音クリスは()()()()したノイズに当惑の表情を見せながらも、すかさず完全聖遺物《ソロモンの杖》を向けて、ノイズの活動の主導権を握ろうとするが、それを黙って見逃すほど手緩いロードノイズではない。射程圏内の際を維持しつつ常に目を光らせている。

 強靭な脚力に物を言わせて肉薄する怪人はクリスにとって不得手の存在である。微塵も気を抜くことが許されない。長期戦も視野に入れなければならない現状、縞馬(ゼブラ)から手痛い打撃を受けることは《ネフシュタンの鎧》の性質からしても決して好ましいとは判断できない。よって、クリスはロードノイズを相手取るのに精一杯の集中力を割いていた。

 結果として大半のノイズはコントロールされることなく、災害としての役割を全うすべく破壊活動に殉ずる。

 雪音クリスが操る意図的なノイズは縞馬(ゼブラ)を含む不慮の災害として顕現した自然的なノイズと工場の広大な敷地の真ん中で血風逆巻く合戦のように激突する運びとなっていた。

 

 ただ一つ明確に孤立している戦力は、すべてのノイズに等しく敵と看做(みな)される立花響である。

 彼女の役目は完全聖遺物《デュランダル》の強奪を目論む者から剣を死守すること。そして、櫻井了子の人命を是が非でも守り抜くこと。つまり、響は《ネフシュタンの鎧》の少女の動向に気を巡らせつつも、不運にも自然発生してしまった人類殺戮に長けた災害(ノイズ)から非力な了子を防衛せねばならなかった。

 

 とても一人でやり切れる仕事量ではない。

 ことノイズの掃討戦に関して並々ならぬキャリアを積んでいる風鳴翼から日夜闘いの教えを請うていたとしても肉体と精神には限度がある。超人的な風鳴弦十郎から特訓をつけてもらったとしても今はまだ付け焼き刃でしかない。むしろ、ここまで立ち回られていることこそ日々の成果と表しても過言ではない。

 しかして、現実は非情であるのが常である。ここから先は努力の問題ではなく、結果的な実力が試される世界に加速していく。

 厳しい戦いを強いられる響の額に汗が滲む。

 恐怖(おそれ)ではない。確実に追い詰められていく敗北の感覚を幾度も振り上げた拳の熱から本能的に察してしまった。この状況を退ける未来図(ビジョン)が浮かばない。援軍を期待するにも相手が物理法則を超越するノイズである以上、装者である自分が頼みの綱であることには変わりない。

 疲弊した喉が掠れていく。

 まだ歌える歌えるんだと腹の底から空気を吐き出すように歌を奏でる声量を高らかにした。

 

(弱音を吐いたら……! 負けそうって思ってしまったら……!)

 

 来てしまう。

 

 彼なら、きっと来てしまう。

 

 如何なる時も、弱き声に手を差し伸べてしまうヒーローなのだから。

 

 仮面ライダーが来てしまう。

 

(挫けてたまるものかああああああッ‼︎)

 

 響の激昂が電流のように手足へ巡ったのか、疲労を全く感じさせない猛進するような打撃の数々は怒涛の勢いでノイズを粉砕していく。鎧袖一触を体現するような凄まじい猛攻である。

 そんな勇敢極まる少女の背中を遠くの物陰から見つめる櫻井了子は冷たい判断を下さざるを得なかった。

 

「限界ね」

 

 それは一切の人情を削ぎ落とした客観性に基づく研究者としての判断であった。

 

「予想より耐えた方だと思うわ。これまでの戦闘データから天性の才覚に近い片鱗は感じていたけれど、まさか僅か二月足らずでここまで成長するとはね。……それだけ彼への想いが強かったのかしら」

 

 なぜか温かな微笑みを瞬目の間に浮かべた櫻井了子はスイッチが切り替わったかのように鋭利な眼光を細め、工場施設の至る箇所から伸びている巨大な排煙の筒を見上げた。

 

「多少は因果律を捻じ曲げたとはいえ、まさかアレが出張って来るとは……」

 

 そのとき、視線は確かに交わったかのように思えた。

 俗界を俯瞰する神官の慈悲深き食肉目が櫻井了子を一瞥したかのように見えた。

 しかし、それは錯覚だろう。

 アレはアギトにしか興味を示さない。(さと)ることすらできぬ脆弱な人間は地に這いつくばる虫螻(ムシケラ)と同然。甘く見られているのだ。

 

「普遍的なノイズでは手に余るがゆえ、アギト抹殺のために造られたロードノイズ。その中でも、とりわけ殺戮能力に秀でた個体に与えられる階級──女王(クイーン)

 

 その口調はどこか懐かしむような、あるいは悔恨を噛み締めるかのような何とも言えぬ余韻があった。

 

「今の第三号(ギルス)で勝てるとは到底思えんが……さあ、どうする、()()()()()()

 

 

 直径三十メートルほど有する煙突の頂上にて、三体の異形たる怪人(ロードノイズ)は熾烈な火花を散らす戦場を無感情に見下ろしていた。

 それはいつかの(ジャガー)と瓜二つの(すがた)

 霊長を模した戦士の躯体と俊敏な肉食の獣たる豹の頭をもった異形の影が三つ。互いの関係性は誰の目から見ても明らかである。地位の優劣を歴然とさせていたのは、赤と青の豹人間が片膝を地につかせ、従者のように首を深々と垂れているからであろう。そして、二体の屈強な(ジャガー)を侍らせる隊長(リーダー)格の異形は所謂クロヒョウに分類される豹の頭部を得た()()のロードノイズであった。

 感情に乏しい野獣の顔貌から鋼鉄のように冷たい殺戮者としての側面を余すことなく空気に滲ませ、手掌に握る巨大な権杖は異端の神秘性すら彷彿とさせる威圧感が伴っていた。

 真紅の豹と深青の豹。

 それを従える女神官の黒豹。

 認定特異災害たるノイズの上位種──ロードノイズの指揮権を与えられた女王(クイーン)は眼下に拡がる戦火の大地を一瞥すると興味を損なったかのようにさらりと踵を返した。

 

『d*◆<on'×£●□t±le÷a°v¢e||on==e』

 

 聞くに耐えぬ不快な雑音が言語のように投げられる。

 

『@m_#☆y◎ai×m↓>>i〆:s〝GILLS〟……\\I'lll//e*°a⇒▲v▽et♭≪h::e♧r€♢e£s^^≒t』

 

 黒豹の女王は理解を困難とする雑音の羅列を残し、何事も無かったかのように煙突から飛び降りてしまった。一呼吸の間を置いて、指揮官の離脱を合図に豹型のロードノイズもようやく動き出した。

 その瞳に残虐な情動を滾らせて。

 

『←▽:a+α@A/GITΩ no hachou kiken no kaori』

『÷°○♠︎:<|>¥°m=inogasu douri nashi』

 

 真紅と深青の(ジャガー)も女王に倣うが如く煙突の頂から軽々しい足取りで落下した。地表との間に生まれた差が即死の域に達しているにも拘らず、物音一つ響かない紙が舞うような異質な軽快さで着地する。路面に転がる小石だけが風圧に負けて飛び上がり、それらが幻想の類ではないことを知らしめる。

 二匹の豹は戦場の中心──二人の少女が(しのぎ)を削る激戦区へ爪先を向ける。

 万物の根源を成す四元素(プリマ・マテリア)の塵によって構成された肉体へ己が腕を抉るように突っ込み、そこから意匠が共通する両刃の剣を抜刀する。片手で扱うには巨大で厚みのある刀身。(ジャガー)はこれを片手剣として巧みに操る術を会得している。

 真紅と深青に彩られた豹顔の剣士は一歩ずつ着実に激しい乱戦と化している中心地へと歩みを進める。その悠々とした歩幅には、己が力量に対する贔屓なき自信の現れと闘争に心躍らせる戦士の驕りそのものが垣間見えた。

 白黒の縞馬(ゼブラ)を含めたこれまでのロードノイズと大きく異なるものがあるとすれば、それは超越せし者を狩らねばならない絶対的な使命感の正体に由来する。何者かによってインプットされた仮初の使命ではない。炭素の肉体に宿る黒き心臓が鼓動すれば、それは自ずと怨恨の(ほむら)と化して手に足に底知れない力を(みた)す。

 それを人は魂と呼ぶ。

 魂の声がする。魂の音がなる。

 ゆるすな。けっしてゆるすな。

 

『ware ra wo konoyouna sugata ni kaeta mono』

『AGITΩ wo yurusuna』

 

 遥か古来より数多の殺戮を遂行してきたロードノイズは現代の地に降り立っても尚、その血塗られた使命から背くことはない。

 それこそが己に課せられた(ことわり)なのだから。

 

『ware ra no shimei ware ra no tatakai』

『AGITΩ no shimatsu AGITΩ no konzetu』

 

 弱者と強者の自然的連鎖よって積み上げられたヒエラルキーの頂上は常に得体の知れぬ愚像によって塗り潰されている。それは往々にして神という名を語り、道徳と倫理を得た生命を言葉巧みに闘乱の渦へと駆り立てた。

 いつからだろう。運命というものに神という具像を重ねたのは。

 いつからなんだろう。抗えないものに神罰と名付けたのは。

 神が人を創造(つく)り、人が神を想像(つく)ったというのなら──。

 彼を呼び覚ましたのは誰なのだろうか。

 闘争(たたかい)の中でしか生きられず、生と死の輪廻から零れ落ちた〝獣〟は何のためにここにいるのだろうか。

 

 その答えは無い。

 

『────!!??!!??』

 

 焼きつくエンジンの音律が路上を(こす)る。

 摩擦の暴力は風と共に吹き荒れる。

 鼻腔を叩くようなゴムが焦げる芳香が漂い、峻烈に回転する車輪(タイヤ)が豹型の怪人を蹴散らさんと目前を横切った。スリップした後輪が路面に火花を走らせ、異形の体躯を吹き飛ばす。不意を突かれた赤と青の豹人間(ロードノイズ)は辛うじて受け身を取ることに成功し、次の瞬間には跳ね上がるように身体を起こした。

 二体のロードノイズの前に立ち塞がるは、赤色の単車(オートバイ)に跨る人影。

 フルフェイスのヘルメットの奥から覗く冷血な瞳孔が射殺すほどの殺気を帯びて二体の怪人を見据えている。

 心臓を掴まれたような威迫。

 圧倒的な強者の風格。

 間違いない。

 (ジャガー)は感覚的に察知した。身慄(みぶる)いするほどの圧巻とした雰囲気は体現する死神のそれである。バケモノ以外の何者でもない暴力の化身。人間の皮を被った()()の獣。

 堕天の獣(ネフィリム)

 またの名を〝ギルス〟──。

 ヘルメットを脱ぎ捨てたライダーは垂れ下がった前髪の奥から(うつろ)の眼光を鈍く輝かせる。途轍もない重圧(プレッシャー)が首筋に刃を突きたれられたかのような幻惑を(もたら)し、(ジャガー)は竦み上がるような冷たさを感じ取った。

 

『GILLS……!!?? mada ikinobite itanoka……!?!?』

『shinizokonai ga imasara nani wo??!!』

 

 青年は物憂げに細まった横目で二体の異形を機械のように見つめている。何の感情もそこにはない。まるで無関心。ただ目の前の現実を客観視しているかのような不気味さがある。

 やがて、自嘲の吐露するかのように動き出した口唇から心を殺されたような冷淡な声が絞り出された。

 

「不思議なんだよ。生命(いのち)の瀬戸際。臨界点(デッドライン)がすぐそこまで差し迫ってるていうのに、笑えるぐらいに何も感じない。感じさせてくれない」

 

 バイクのエンジンを切って降車する。

 死を目前に控えた青年の命は驚くほどに冷静な様相を保っていた。緊迫感すらない。虚無めいた心象。それが少しだけ愉快に思えて笑うしかない。

 

「壊れてんだよ。()っくに俺の魂はさ」

 

 ただの人間として生きるには、欠けてはいけないものがこの胸には欠けていた。ただの人間を演じるには、手に余る壮絶な力を背負わされた。

 そして、ただの人間のように笑って過ごすには、守りたいものがあまりに多すぎた。

 

 壊れている。きっと壊れている。

 

 壊れていなければ、俺は何だというのだ。

 

「だったらもう、戦うことでしか生きている意味を見出せないのなら、命の価値すら失ったっていうなら、そんなくだらない命なら──お互い潰し合うしかないよなぁア……!」

 

 その時はじめて、虚無の漆黒に染まっていた感情の湖面が荒々しく波打ち、情動の大波となって魂の内側から揺さぶった。無から有へと変わる。闘争への衝動が津上翔一の壊れ果てた魂に狂おしいほどの熱を灯す。

 この感じだ。

 寝ても覚めてもこの感覚だけは消えなかった。

 マグマのようにどろりとした耐え難い熱が心臓の裏側から流れ込んでくる。生き死の執着さえ見失おうと、この感覚だけは彼の手元から離れることはなかった。呪いのように纏わりついて津上翔一という人間を決して離そうとしない。

 

 壊れていやがる。

 何もかも壊したくて仕方がなくて。

 壊れた腕でまた壊そうとしている。

 

 なんなんだろうな、俺は──。

 

 靴底が路面を削る。

 空気を引き裂くように爪を立てた両手の交差で表情(カオ)を覆い隠す。

 

 いる。

 悪魔がそこにいる。

 俺のカラダを乗っ取ろうとしていやがる。

 

 顔中の血管が浮かび上がる。

 細胞の末端に至るまで異端の変質を強制する証として血流が狂い始めたのだ。

 人体を形成する骨格がヒトのカタチを保つ限界に達して、悲痛を喘ぐように烈々と軋み始めた。殻を突き破る雛のように、繭を食い破る蚕のように、人間という殻を獣はその牙で破壊する。

 

 いいだろう。

 貸してやるよ。

 

 額に目を殺すほどの閃光が輝いて、第三の眼(ワイズマン・オーヴ)が開眼した。

 全神経が加速する。

 意識が真っ逆さまに堕ちていく。

 

 そして、できるなら……。

 

 人と獣の境界線──その糸を断つために超因子(メタファクター)()()言葉を急かす。

 

 もう返してくれるな。

 

「変……身……ッ‼︎」

 

 二体の豹型の怪人(ロードノイズ)は腰を落としつつ得物を構える。臨戦態勢に移行。迎撃の準備は終わっている。あとはもうどちらが強者であるか、どちらが優れているか、ただそれだけを見せつける。

 対話などあり得ない。

 終着点は最初から〝死〟以外に認めない。

 これより先に待ち受ける世界とは、互いの生殺を奪い合う熾烈な戦争──……。

 

「■■■■■■■ァァァ──‼︎」

 

 殺し合いと呼ばれる由緒正しき聖戦(たたかい)なのだから。




えっ⁉︎ナーフされまくって搾りカスみたいになったギルスで、いかにもガチそうなヤツらとファイティンしろって言うですか⁉︎・・・できらあ!(末期)

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