仮面ライダーだけど、俺は死ぬかもしれない。   作:下半身のセイバー(サイズ:アゾット剣)

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日間に乗ってたのは気のせいだと思う(目逸らし)
こんな一夜の過ちみたいな作品に評価し過ぎでは? てか、まだ四話目なんですが…。


♬.俺はとんでもない爆弾3つ抱えているかもしれない。

 ───目覚めろ、アギトに覚醒せし者よ。

 

 森羅万象、あらゆる生命の頂点に立つが如く、圧倒的な威圧感を伴う声が脳裏に響いた。

 聞く者すべてを萎縮させる厳格な声の持ち主に身が強張り、寝ていた固いソファから転げ落ちた。しかも、頭からである。超痛い。

 

「いててて……な、何用でございますか〝火のエル〟さんっ⁉︎」

 

 とりあえず、頭を押さえながらその場に正座。火のエルさんの御言葉を待つ。

 

 ───交代の時間だ。さあ、働くのだ。

 

 あ、はい……。

 

 火のエルさんに促され、キャップを被り、懐中電灯片手に警備員室を出ようとした時、再び声が頭に響く。それも別の声だ。

 

 ───待つのだ。アギトの疲労は未だ回復しておらず。休憩に還るのだ。

 

「〝地のエル〟さん……!」

 

 ───地のエルよ。しかして、癒しの時は六十分と定めていよう。既に三千五百九十三秒、アギトは眠りを堪能したではないか。

 

 火のエルさんが地のエルさんに反論する。もちろん声だけがずっと頭に響いている。

 

 ───人間如きが定めた法度など、我々が従う義理はない。このままではノイズとの戦闘に支障が出よう。雑音如きに遅れを取るなどエルロードの恥ッ!

 

 ───愚か者。我々は今や肉体を持たぬ憑依体。霊媒たる者は人間であり、人間の法の下で生きておるのだぞ。それにノイズ如きに遅れを取るアギトではあるまい!

 

 ───このような未熟者をそこまで認めているとは……火のエル、やはり貴様は人間に甘いな!

 

 ───地のエルよ、アギトに力を貸しているのは我々。創造主の分身であるエルロードの力であるぞ。それを信じぬというのは、即ち創造主への冒涜ッ!

 

 ───な、何だと⁉︎ 貴様、嵌めたなッ!

 

「お疲れ様でーす。交代の時間になりました」

 

「あっ、お疲れ様です。休憩入りますね」

 

 バイトの先輩と交代して夜間警備を続ける。俺の頭の中で言い争う神の遣いの方々の声は当然のように他の人には聞こえない。

 

 ───そもそも火のエル! 汝がテオスを裏切らなければ、アギトは生まれず、人間は人間のままいられたのだ!

 

 ───人間を侮蔑し滅ぼそうとしたのはどこの天使だ? テオスの命令に背き、人間を狩り、あまつさえ人間に雑音を生み出させ……。

 

 なんかお二人が色々とメチャクチャ重大なことをホイホイ言っておりますが、ただの人間である俺には聞こえません。ええ、聞こえない。聞いたら絶対、なんか巻き込まれる。

 

 ───汝はただの人間ではない!

 

 ───汝はアギトだ!

 

 あっはい。ごめんなさい。

 ダブル天使に怒られた。

 

 ───火のエル、貴様と言い争っても仕方無し! 風のエルよ、答えを返すのだ。

 

 ───地のエルの頑固さには呆れる。風のエルよ、貴殿の意見は。

 

 火のエルさん、地のエルさんに呼ばれ、頭の中でもう一体の何かが降臨したのが解った。

 物静かに黙り込み、凪のような時間が過ぎ去り、そして〝風のエル〟さんは口を開いた。

 

 ───どうでもよい。

 

 う、うん。そうだね。

 

 こうして、俺の身体には合計三体の超越生命体が居座っている。俺がこの世界で目覚めた時から、ずっと憑依している。

 火のエルロード。

 地のエルロード。

 風のエルロード。

 創造主という謂わばこの世界の神様がその身から作り出した天使のような存在である七体のエルロード。その内の三体もこの身に宿っているので俺としては冷や汗ものであるが、この御三方のおかげで仮面ライダーに成れるので文句は言えまい。

 

 つーか、言ったらぶっ殺されるわ。

 原作アギトの方では神様がラスボスだけど、ちゃんと殴り合った敵で考えるならエルロードさん達は普通にラスボスである。つまり、俺はラスボス級の爆弾3つを抱えているわけですね。……ばかじゃねーの?

 

 しかも、記憶喪失の俺が最初に目覚めた頃から取り憑いていらっしゃる天使たちは今日もあまり仲がよろしいわけではないらしい。

 

 ───アギトよ。七歩先、廊下の端に筆有り。落し物ぼっくすとやらに入れておけ。

 

 ありがとうございます、風のエルさん。

 

 感謝を心の中で呟きつつ、言われた通りボールペンを拾い、失くさないように胸ポケットに挿しておく。

 

 ───む。それは先の同僚の物ではなかろうか?

 

 ───いや、あの人間の筆は押す方のものだ。これは蓋つきである。地のエルよ、記憶まで筋肉でできているのか?

 

 ───火のエル、塵に還るか?

 

 まーた喧嘩始まったよ、俺の中で。しかも、唯一の救いである風のエルさんは介入するつもりはないらしい。

 まあ、彼等は悪いものではない。

 平和かどうかは微妙であるが、俺の知っているエルロードとは違う、少なくとも人間を守るために戦っている〝アギト〟である俺に力を貸してくれている。

 

 頼もしい天使である。

 

 てか、エルロードってアギト大嫌いじゃなかった? 人間とか、憎くてしゃーない感じじゃなかった?

 それを聞いても、いつもはぐらかされてしまう。だから、今はエルロードさんたちを信じることにしています。

 

 じゃないと俺、死んじゃう。疲労で精一杯どころか過労死寸前なのに、他に神々の陰謀とか懸念しなきゃならなくなったら、もう、この世からイッテイーヨしちゃう。ていうか自主的にゴーするわ。

 頼むから、これ以上面倒ごとを増やさないでえええ(俺の怯える声)

 

 途端、俺のニュータイプ的な効果音のアレが閃くように何かを感知した。頭痛と共に胸の中に深く眠り続けた何かが目覚め、焦燥感で俺を揺さぶる。

 ノイズの発生。俺は行きたくない。

 だが、その気持ちは三体の大天使にはお見通し。三連続のお叱りを受ける。

 

 ───使命を果たせ、アギト。

 

 ───汝が、汝であるために。

 

 ───戦え、アギト!

 

 あの、でも、ちょっと今バイト中ですし、この世界、一応『特異災害対策機動部二課』っていう対ノイズ用の組織がありまして、シンフォギアっていう対抗手段がありますし、今回はパス……。

 

 ───〝戦え、アギト〟(三体同時に)

 

 い、行ッきまァァァァァす‼︎ 拒否権はナァァァイ‼︎ 本日五回目のノイズ狩りじゃァァァァァ‼︎ あっ、日付とっくに変わってら。

 ニゴリエースハオレノモノダー‼︎ と言わんばかりに駆け出す。駐車場に停めている相棒ファイアストームに跨り、エンジンに火をつける。

 

「変身ッ‼︎」

 

 腰に巻きつくように出現したオルタリングが輝き、人間である俺をアギトへと変質させる。

 地のエルが与えた力『超越筋肉の金(グランドフォーム)』を纏い、本来の姿にその身を変えたマシントルネイダーを加速させた。

 

 未知なる戦場、アギトの戦場へ。

 

 

 ***

 

 

 

 現場はどこかの工場だった。規模も大きく、油とオイルの濃厚な臭いがかなり蔓延しており、この場においては火気厳禁だと心に誓う。

 大量のノイズたんは相変わらず元気百倍。活きが良いのが揃っていた。

 

 数分に渡る戦闘はいつもと変わらず、アギトになった俺が地のエルさんの力でノイズたんを千切っては投げ、千切っては投げ、大型ノイズにライダーキックしようとしたら地のエルさんに「必殺技は甘えッ」と怒られたり、仕方ないからまたノイズたんを千切って千切ったりして大分片付いてきた。

 慣れたもんだと自嘲する。

 かれこれ二年近くノイズたんと果てない戦いを強いられているが、今ではノイズたんの動きを先読みできるぐらいに順応している。

 

 俺の身体がどんどん社畜体質になっていく……! やだ怖い!

 

 ───ぬッ。気をつけよ、何か来るぞ。

 

 珍しく地のエルさんが警告する。

 何事ぞ? 殴りかかってきたノイズたんのアイロン拳を平手で押さえ込み、受け流した後に回し蹴り。消滅した後にこちらに迫る気配へ視線を向かわせる。

 それは遥か上空に滑空する戦闘用ヘリから。

 思わず、息を飲んでしまった。

 感じるフォニックゲインの奔流。

 奏でられた調律の唄。

 二人の歌姫が、星々の輝きを背中に、夜空から落ちて行く。

 

「〝Imyuteus amenohabakiri tron〟」

 

 SA、SAKIMORIダァァァァァァ⁉︎⁉︎

 

「〝Croitzal ronzell Gungnir zizzl〟」

 

 一話目から退場した名探偵ダァァァァァァ⁉︎

 

 上空を滑空するヘリから飛び降りた二人の少女。その身が輝き、光が両翼の天使を抱きながら純白のプロテクターを纏わせ華麗に着地する。

 美麗にして純粋な歌い手であり、勇敢であり不変の戦士。

 

 これがシンフォギア。

 

 ……うへっ、初めて見たぞシンフォギア。めっちゃピチピチ露出やん。嬉しい感情となんだか虚しい感情が相まって、その、なんか、ありがとうございます。

 

「おい今だれか失礼なこと言わなかったか?」

 

 胸が大きい赤い方の天羽奏ちゃんが何かを察知したのか辺りを見渡す。あ、目が合った。

 

「あれは、未確認生命体第2号……!」

 

 明らかに敵を見る目で睨む胸が小さい青い方の風鳴翼ちゃん、もといSAKIMORI。いや、この時はまだSAKIMORIではなかったっけ? いや、人間はみんなSAKIMORIなんだよってどこぞのライダーが言ってた気がする……。

 

 両者とも武器を構え、ノイズそっちのけで俺と相対する。いや、ノイズたん、まだいるからね? ほら、放置された可哀想なノイズたんが構ってくれと言わんばかりに俺に突貫してくるでしょ? いや、俺かよ。

 寂しいと死ぬのかてめーらは。ウサギかよ。

 とにかくノイズたんもラビットもタンクも落ち着け。ステイステイ……。

 

「あれが噂の第2号ってやつか。凄い覇気だな。おっちゃんと良い勝負だ。……で、どうする翼? ノイズまだ残ってるけど」

 

「ええ。でも、第2号には捕縛命令が下されている」

 

 ウェッ⁉︎ 捕縛ッ⁉︎ わたし聞いてない……って、まあ普通は出すよな、こんなクワガタだか龍だか判らん百式に。

 とりあえず、隙を見て逃げっかぁ……。

 

「奏、お願いが」

 

「わかってるよ。ここはあたしに任せな。翼はちゃちゃっと第2号取っ捕まえちゃって」

 

 どんと胸を張る奏ちゃん。ここは任せてとか言われても、そんなにノイズ居ないでしょうに。地のエルさん直伝の肉体言語で七割方滅したからね。あと五十匹ぐらいかな? うわっ少なっ。時限式でも大丈夫だね多分。

 しかし、翼ちゃんは大袈裟に感動しているようだった。少し頬を赤くして奏ちゃんを見る目は恋する乙女。SAKIMORIの面影はない。百合は偉大だなぁ……。

 

「ありがとう奏」

 

 翼ちゃんはノイズとは真逆の方向に立つ俺に向かい、奏ちゃんは残ったノイズの群れに向かう。背中合わせというやつか。つまり、俺の仲間はノイズたん。常に俺の背中を狙ってる。違うか。

 

「未確認生命体第2号。あなたの身柄を拘束します。大人しくせよ。これは警告である」

 

 警告。翼ちゃんの目が研ぎ澄まされた刃のような剣呑な輝きを帯びる。刀を構える姿から、もはや戦闘は避けられないだろう。

 だから、嫌だった。

 シンフォギア装者が到着する前にノイズを殲滅し、自身は一切の痕跡無く姿を消す。こうすれば、彼女らに出会うことも戦うこともない。

 

 まあ、いつかは出会うだろうと思っていたけどさ。でもなぁ……。

 

「抵抗するなら容赦はしません! 我が剣の錆としてくれる!」

 

 うへぇ……マジか。さすがにSAKIMORIであれ、女の子は殴れないぞ俺。てか、まだ完全なSAKIMORIじゃないよねやっぱり。余計に殴れない。

 色々と尋問されるかもしれないが、女の子を痛めるよりかはマシか。二課って割とホワイトな印象あるし……あ、ラスボスゥ……。まあどうにでもなるか。

 

 戦意が無いことを伝えるため、両手を挙げて降参のポーズ。

 ……しようとしたが、止められた。突然、全身が石になってしまったように身体が硬直したのだ。自分の意思から強制力が奪われた感覚が支配した。

 

 なぜ? 決まっている。エルロードさんたちの力だ。

 エルロードは俺に憑依している。肉体の支配権はこちらが有しているとはいえ、このように一時的にコントロールを奪ったり、運動に介入してくるなど天使にとっては朝飯前。いや、朝飯どころか何も食べないけどねあの方たち。

 

 驚くべきは、彼等が直接的に肉体の支配権を奪うことなど滅多にないという事実だった。

 二年間で三回だけ。まだ俺が社畜初心者だったため、疲労に耐え切れず、戦闘中に倒れ寝そうになった。その時、エルロードさんに無理やり身体を乗っ取られ、自分で自分を殴って吹っ飛んだ。ある意味、寝そうになった。二度と覚めない方の意味で。

 

 つまり、この状態は俺にとっては全くの予想外であったのだ。

 

 ───ならぬ。敗北は認めん。

 

 最初に反対の意を示したのは地のエルさんだった。声が割とマジだ。いや、いつもマジなんけど、今回は多少の怒気が入り混じっている。

 

 ───アギトであるならば、もの歌いなどに遅れを取るべからず。

 

 地のエルさんの言葉に乗るように風のエルさんも俺の行動に反対する。冷たい声は、俺の気持ちを与する気はないことが伝わった。

 

 ───アギトよ、戦うのだ。汝の道はそこに在り。

 

 ついに火のエルさんまでも。

 三体の意見が一致する。つまり、それは完全に俺から拒否権が無くなったということを表す。

 大天使三体の決断は絶対。神の意に背いた人間がどうなってきたか、永く積み重なってきた英雄たちの歴史を見れば明らかだろう。俺は今、そういう状況に立たされているのだ。

 

 それでも俺は精一杯、あるがままに駄々を捏ねる。

 

 (まじ勘弁してくださいあんな華奢な女の子アギトで殴ったら骨折どころの話じゃないんですシンフォギアだろうとスペックおかしいアギト相手に戦えないでしょうしそもそも俺がまだ手加減できるぐらいの技量もってないんです勘弁してください)

 

 ───戦え……戦え……戦え……!

 

 (女の子傷つけたら俺もう生き残れないですてか作品違いますSAKIMORIは鍛錬してるから大丈夫とかそんな話じゃないでしょエルロードさんたちなら分かるでしょ分かって言ってるでしょ)

 

 ───戦え……戦わなければ生き残れない!

 

 (戦っても生き残れねぇよ毎日毎日おかしいだろノイズたんも俺の身体も労基訴えるぞつーか労働基準法も一周回ってOKだすわって話変わっとるがなとにかくSAKIMORIは殴れないのSAKIMORI以前に女の子つーか子供は殴りたくないの‼︎ 絶対に嫌ッ‼︎)

 

 ───……ならば、明日から馬を禁止する。

 

 えっ……馬? ま、マシントルネイダーたんですか?

 

 ───文明の力に頼るなど惰弱な発想。この際である。敗北者らしく脚を使い……。

 

 あぁぁぁ‼︎ セコイ! この天使たちセコいぞ!

 ただでさえ、出現場所が予測不能且つ疎らなノイズたん。バイクで急行してギリギリ間に合うかという瀬戸際にもかかわらず、それを徒歩でやれと言われてできるのか? できるか馬鹿。犠牲者でるし、俺の負担も増えるだけじゃねーか。

 

 ───地を這う姿が、敗北者である汝に相応しいとは思わんか?

 

 ああーっ‼︎ わかりましたわかりました! 戦いますよ戦えばいいんでしょ!

 完全に恐喝から脅迫に変わった瞬間だった。やっぱりこの天使たち人間救う気ねぇな。ちなみに俺個人を救う気は百パーセント無い。

 

 ───物分かりのいいアギトだ。

 

 ご満悦な地のエルさん。卑怯者ッ! この野郎、ぜってぇ今、(^U^)みたいな顔してるわ。直感でわかるわ。腹立つ。

 とにかく、翼ちゃんには悪いけど、凡人である俺はエルロードさんたちの暴挙に屈するしかない。マシントルネイダーまで禁止にされたら俺は一週間以内に死ねる自信がある。

 ノイズたんの数はそこまでじゃない。バーロー奏ちゃん一人でも事足りるだろう。ここは彼女に任せて……。

 

 SAKIMORIと相対する。

 両者睨み合い、互いに隙を伺う。さすがは風鳴翼と言ったところか。あのOTONAの血筋は伊達ではない。下手に踏み込めない威圧がある。

 カウンター大好き俺としては翼ちゃんから来てくれると非常に有難い。でも、翼ちゃんは一定の間隔を保ったまま、攻撃する素振りすら見せない。

 

 やだ……なんか強者同士の戦いみたい。

 

 ちなみに俺の構え方は原作アギトを形だけ真似ただけの模造に過ぎない。隙だらけだと思うのだが、翼ちゃんの警戒心は高い。どうしたもんか……。

 

 ふと、ケツが痒くなった。

 仮面ライダーが白昼堂々と尻をポリポリするわけにもいかず、バレないように片手を後ろに回して掻こうとした。

 

 それが戦いの合図だった。

 

 翼ちゃんの眼つきが変わる。

 踏み締めた一歩は一瞬の内に間合いを詰め、回避不能の鋭い一閃が俺を捉えた。って、怖ッ⁉︎

 ええいヤケクソ! 真剣白刃取りィ‼︎ 獲ったァ‼︎

 

「なにッ⁉︎」

 

 零距離。翼ちゃんの驚愕した顔がよく見える。今、めちゃくちゃマグレだった……。二度とやらない。

 

「まさか、わざと隙を見せたのか……⁉︎」

 

 いや、わざとじゃないです。隙だらけなのはいつものことです。

 内心申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、翼ちゃんの刀を逸らして、僅かな隙に蹴り上げる。

 後方に押し戻される翼ちゃん。それでも手応えが少なかったので、あの一瞬で防御を取ったのだろう。やっぱりすごいなSAKIMORIは。

 

 だが、いかにSAKIMORIであれ、距離さえ開ければ、その剣技は役に立たない。

 つまり、二人の距離が開いた今こそが俺のターンッ‼︎

 

 ダァァァッシュ‼︎ 逃げるぜ俺は!

 

 ───〝⁉︎⁉︎〟

 

「ッ⁉︎ 逃すか!」

 

 HAHAHA! SAKIMORIよ、私は無駄な戦闘はしない主義でな! 戦わなければ敗北ではない! 戦略的撤退は敗北ではない!(デスヨネ? セーフッスヨネ?)精々走るといいわ! このグランドフォームの足に付いていけるものなら……って速いね。すごい速い。

 ああああああああノイズたぁぁぁぁんッ⁉︎ 邪魔しないでええええええ⁉︎ 追いつかれるううううううう⁉︎⁉︎

 

 ───馬鹿か。

 

 左様でごぜぇまぁぁぁすエルロード様ぁぁぁぁ! お助けぇぇぇぇぇ!

 

 

 

 ***

 

 

 風鳴翼は戸惑っていた。

 武人として常に冷静であることを心掛けている彼女でさえ、目の前の存在に困惑を隠せなかった。

 わざと巧妙な隙を見せ、こちらの攻撃を誘発。音速にさえ至る翼の斬撃を受け止め、力の差をその身をもって教え込む。

 この時点で翼の戦意は徐々に恐怖へ変わっていた。しかし、第2号はあえて背を向けて逃走。翼の防人としてのプライドを刺激した。

 

 すぐに追いかける翼だったが、やはり第2号はその力量を残酷なまでに未熟な剣に見せつけた。

 シンフォギアを纏った翼でさえ、息を切らすほどの長い距離を全力疾走しているが、双方の距離は一向に縮まる様子はない。

 

 何よりも、あちらは襲いかかる無数のノイズをすれ違いざまに葬り去りながら走っているのだ。ついでと言わんばかりに。

 疲労の色は未だ見えない。長時間に渡ってノイズとの戦闘を続け、シンフォギア装者相手に余裕すら感じさせる疾走を続ける。

 

 その背中は別格に遠い。

 

 (私は、未確認生命体第2号(あいつ)に勝てるのか?)

 

 翼の叔父に当たる風鳴弦十郎の言葉が思い返された。

 

「未確認生命体第2号は格が違う。正面からの戦闘は避けろ。いいな?」

 

 翼は司令官であり師父である弦十郎に従わなかった。己の力を過信したわけではない。ただ、ノイズの脅威から人々を守る防人として、理解不能な行動を取り続ける第2号に怒りを覚えていたのだ。

 戦場にふらりと現れては、ノイズ諸共すべてを掻き乱す。人類の敵か味方すら判断し兼ねる存在を善しと思えるはずがない。

 

 天羽奏もそれを見越した上で行かせてくれた。彼女には自分の全てが筒抜けである。気恥ずかしくもあるが、同時に嬉しい気持ちもある。自分は彼女に信頼されているのだ。

 

 なのに、今は弱気になっている。

 飛びかかる幾多のノイズに顔すら向けず、一切の無駄無き拳を一撃ずつ腹部に捻り込む。破裂するような音が響き、ノイズは爆散。まるで、拳の辻斬り。第2号はついに走る速度さえ弱めなかった。

 

 弦十郎が言っていた意味が分かった。

 あれは規格外だ。

 ノイズを倒すためだけに生まれたような機械(マシン)。翼と奏を人類を守る盾と形容するならば、アレはノイズを殺すためだけのミサイル。世に蔓延る雑音を獄炎で呑み込み掻き消す歩く戦略兵器。

 

 (勝てる未来が浮かばない……!)

 

 はっと我に返った翼は辺りが薄暗くなっていることに気づいた。どこかの工場内に入ってしまったようだ。

 目の前には金色の戦士が足を止め、ゆっくりと翼に向かい合う。どうやら、追いかけっこは終わりというわけらしい。

 

 そこで翼はやっと気付いてしまった。

 誘われていたのだ。ここまで至るまで自分はずっと誘導されていたのだ。

 既にもう一人のシンフォギア装者である天羽奏との距離はかなり大きく、奏の援護は望めなくなった。

 

 確実に一対一の状況を作り出す。

 焦った自分を手玉に取ったのだ。

 

 風鳴翼は奥歯を噛み締めながら、得体の知れない恐怖に震える手を押さえながら、刀の切っ先を黄金の戦士へ向けた。

 その赤い瞳は何も語らず、既に八相の構えをとった翼に徒手空拳の構えで迎え撃つ。

 

 その構えに翼は唾を飲んだ。一連の動作がせせらぐ川のように一切の隙が見当たらない。洗練され尽くされている。

 やはり、未確認生命体第2号はできる……!

 

 (どないしょ……迷ったし、詰んだ)

 

 実は、全然できていないことを翼はまだ知らない。




Q.オリ主が戦う理由は?

A.「中の人たちがうるさいから」

Q.こいつら原作とキャラ違くね?

A.作 者 が 覚 え て な い だ け

つまり全部私のせいだアーハッハッハッ!
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