思いついた作品群   作:桜の果物

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ナンバー1を嫌うナンバー2少女兵器とナンバー1少女兵器


少女兵器

「自立式対人兵器少女型、SK-G-217、起動確認」

「出力良好、装備不良なし、コア異常なし」

「曇天空、視界、温度、湿度、全て良好、風向き北北西」

 

SK-G-217(ニイナ)に、出撃命令をください」

 

 

 

銃に倒れた兵士が、1人、また1人と倒れ伏す。

その遥か上空を飛ぶ私は、敵兵に対しまた新たな弾を撃ち込む。

広がる荒野を視界に収めて、全体的に見る様意識する。

今は狙撃用だが、2分後には広範囲高威力の散弾を使わなければならない。

スコープ倍率を少し引き上げて、もう1発撃つ。

 

手の感触は引き金を引いて人の命を奪った感覚しか伝わらない。

嗅覚には硝煙の香りと、死の匂いが風に乗ってやってくる。

聴覚には敵反応位置を伝えてくる通信の声と銃声と悲鳴とその他声。

体温調節機能は壊れていない筈なのに肌寒くなった気がして、胸部アーマーの首元を締め直した。

 

《どうしたニイナ、今日のノルマはまだ遠いぞ》

「分かっています」

 

出撃後3分が経ったにも関わらず殺害人数が少ないことを懸念したのか、突然司令塔から通信が入る。

私専属の通信士の声だ。

酒でも持ち出しそうな軽い声は、その実とても堅物の真面目な男だと知っている。

 

「自軍兵士が今頃慌てて戻っています」

《伝達が行き届いていなかったんだろう。だが、遥か前方でSK-G-89(ハク)が敵少女兵器4体相手に足止めしている今が好機だ、構わず撃て》

「了解」

 

ハクの名は、戦場にいれば必ず耳にする。

対人兵器である私と違い、対少女兵器、ひいては戦車や戦闘機など対物としての性能も併せ持つ、いなくてはならない高火力少女兵器の筆頭だ。

使う先を変えれば、オーバーキルではあるものの、対人であるともいえる。

また装甲は微粒子弾という対少女兵器の貫通も許さない固さでありながら、軽量化には成功し、飛行能力や運動、駆動に支障は一切ない。

高火力、高防御、高能力。

まさに少女兵器最強、戦場で彼女の姿を見て生きていられる“もの”はいないともっぱらの伝説だ。

 

私は彼女があまり好きではない。

プライベートで会ったことはないが、その無機質な力任せさがあまり好きではないからだ。

それに、自軍少女兵器1の戦果をあげてるにも関わらず、ナンバー1になれないのは、彼女のせいだ。

だが味方であってくれてとても助かるのもまた事実。

故にあまりこの感情を外に出すこともなく、また彼女に会いたいということもない。

 

「体温調整機能に不備を感じます、戻ったらメンテをよろしくお願いします」

《博士に報告しておこう》

 

ピピッと通信終了の音が鳴ると、同時に隣をすり抜けていく微粒子弾。

対自立式兵器の、それも上物であることが窺える。

遥か下方には、ロケットランチャーを担いだ人間。

新たな弾を旋回して避けて、またスコープの倍率を少し引き上げた。

 

 

基地に下り立つと、司令と研究員が出迎えた。

重い装備を一通り外されて、次々と奥に運び込まれていく。

これから私も点検か、と思った矢先、私の後方に新たな少女兵器が下り立った。

 

「ハク、戻りました」

 

装備は酷い損傷が見えるが、本体には一切の傷を作っていない少女兵器。

自軍ナンバー1、相手少女兵器の物だろう小さな部品とカスを所々につけたその人が、私の隣に立たんとしていた。

 

 

 

 

ハクは私同様、装備を研究員に預けてさっさと自室に戻っていった。

去り際、私に少し睨みをつけていたような気がする。

 

「点検は大丈夫なんですか。仮にも少女兵器4体を相手にしたんでしょう?」

「目立った怪我はないし、何より彼女たっての希望で、戻ってすぐの点検はしていないんだ」

「…彼女、私の事睨みましたよね?」

「目つき悪いから、そう見えただけかもしれないよ」

 

私も軽い点検は終わったらしい、気にするなと残して司令も行ってしまった。

研究員たちに軽い挨拶をして、自室に戻る。

 

司令はああ言ったが、彼女は確かに私と目が合ったし、少し細めた。

調子に乗るなとでも言いたいのか、良いご身分だ。

戻ってすぐの点検は少女兵器の義務だろう。

それを我儘でなくし、挨拶なしに帰っていく横暴さ。

やはり、彼女は気に入らない。

 

無機質なコンクリートに囲まれた自室。

色のないベッドに座り込む。

 

兵器である以上、別に愛想よくとか人間らしい感情とか、そういうのを求めるつもりはない。

むしろ高火力高性能を追求したばかりに感情系統が疎かになっているぐらいでも問題ない。

だがあの態度は明らかに驕りだし、プログラム順守の兵器にあるまじきもの。

さらに研究員に対しあの態度は自身の性能、原点を見誤っているのを感じる。

あの様子では司令に対してもあの態度だろう、苦労が窺い知れる。

 

ああ、考えていると無駄な苛立ちばかり募る。

気分転換に外の空気でも吸うか。

 

そう思って廊下を歩いていたら、誰かにぶつかった。

相手は転んでしまった、おそらく人間だ。

にしても、この無機質な場所にうさぎパーカーって。

 

「ごめんなさい、前をよく見ていませんでした」

 

尻をさするその人に手をさしのべる。

と、上げた顔の涙目と目が合って、私は目を見開いた。

 

「痛いのですよぉ……ごめんなさいですぅ…」

「あなた、ハク…!?」

「ふえ、ニイナ!?わ、は、違う……なんですか、お前の手は借りません」

「遅いですよ…」

 

自軍の希望、ナンバー1少女兵器の正体は、気が弱ければ身体も弱い、ぽんこつだった。

 




開発失敗で痛みを強く感じるようになったから、強く強くなるように作られたハク。
最強少女兵器っていうイメージ通りに振る舞ってるけど、実際はすごい可愛いもの好き。
ニイナの振る舞いにすっごい憧れてるし、関わるうちにガチ恋勢になる。
ニイナはニイナでハクの強さに少し憧れてたのにギャップでなんか怖くなった。
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